やはり俺のVRMMOは間違っている。《凍結》   作:あぽくりふ

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うぇーい、テスト終わって春休み突入でテンションMax、かと思いきやアホみたいな量の宿題を出されて戦慄しているあぽくりふです。

前回の番外編、感想欄を見るとなかなかに好評だった模様。プロットが決まれば八幡主人公でFate/書こうかしら。とりあえず、この小説がSAO編終了するまでは書けなさそう。



本編です。ドゾー。








六話 そしてハチマンは遭遇する。

 

 

 

 

 

 

「ふーん、リアルでの知り合いねえ」

 

「そーゆーこと。お前が想像してたような関係じゃねえっつーの」

 

 

 

 

23層の迷宮区を歩きながら、俺とリズベットは周囲を警戒しつつも、のほほんと喋りながら歩いていた。

 

あの後迷宮区に引きずられてきて、ようやく解放された俺は変な噂を広められたら堪らないと必死で釈明したのだが。

 

 

 

「ねえ帰っていい?いいよね?」

 

「いーじゃない、どうせここまで来たんだからあたしのレベリングに付き合いなさい」

 

とのことで、誤解が解けたのはいいもののレベリングに付き合わされていたのだった。

 

 

いや、帰りたいよ?帰りたいんだけど、ここで置いてきぼりにして後でアルゴにあることないこと吹き込まれたりしたらヤバい。具体的に言えば俺がユキノに処刑されてヤバい。

 

 

「うん、あたしのメイスの熟練度もなかなか上がってきたわね」

 

「そのレベルで熟練度がそんだけしかないのはかなり違和感があるけどな」

 

「鍛治やってると経験値貯まるから、レベルはそこそこ上がるんだけどね。肝心の熟練度は戦闘しないから上がんないのよ」

 

 

あー、なるへそ。

 

鍛治屋―――つまりマスタースミス兼メイス使いのであるリズベット。RPGの職業的に言うならマスターメイサー、といった所か。

 

鍛治は武器の強化をすることでそれなりに経験値を得られるためレベルは上がるが、武器を使用しているわけではないため熟練度は上がらない。

 

 

「鍛治一直線でいい気がするんだけど」

 

「けど、戦えたらいちいち依頼しなくても素材集められるでしょ。そっちのほうが楽だったりすんのよ」

 

「そーゆーもんなのか」

 

「そーゆーもんよ」

 

 

そこで猿型のMobが湧いたため会話が途切れ、メイスを引き抜いたリズベットが突撃していく。

 

俺の役目は主にリズベットが取り逃した

Mobを狩ることだ。...........いや、だって経験値ショボいし。ただでさえ最前線の階層+24というアホみたいなレベルの俺にとっては雀の涙にすらならない。どうせなら熟練度が低いリズベットがやるべきだろう。めんどくさいのもあるが。

 

今回はあっさりとMobを狩れたのか、こちらにMobは流れてこなかった。メイスを担いだリズベットがてけてけとこちらに歩いてくる。

 

 

「どうよ?」

 

「いいんじゃねえの」

 

どうでも。

 

―――はいウソだから睨むな睨むな。どうどうと宥めると「あたしは馬じゃないっ」と言われたが無視する。

 

「あんたって本当に攻略組なの?」

 

あまりにもやる気のなさそうな俺をジト目で見るリズベット。失礼な。いや、別に進んで攻略組にいるわけじゃねえんだけど。

 

「じゃなきゃこんなにレベル高くねえよ」

 

「どーだか。攻略組って、もっと......なんというか」

 

「戦闘狂?」

 

「いや、それもあるんだけど、なんというかな。偉そげだったような気がするんだけど」

 

「あー.....そうだな」

 

 

それはある。

 

そもそも攻略組の連中はもっと情報を開示するべきであり、下層に来るべきだ。

 

中層のプレイヤーを育成し、それを攻略組に参加可能なレベルにまで引き上げ、プレイヤー全体のレベルを上げるべきなのだ。その方が効率が良いし、なにより軍が崩壊した今攻略組のプレイヤーの数はどうやっても薄くなっている。ゲームをクリアする最善の方法はこれなのだ。

 

ならば、攻略組はなぜ下層のプレイヤーに協力を求めたりしないのか。答えは簡単、―――プライドだ。

 

 

最強でありたい。プレイヤー達の頂点でありたい。ごく単純な名誉欲を、無意識的にしろ意識的にしろ攻略組の連中が持っているのは確実だ。キリトやアスナもそうだろう。だからこそ誰も中層のプレイヤーの育成を提案しないし、そして提案したとしてもそれは却下されるに違いない。

 

 

 

人民を纏める最高の指導者、それは共通の敵だ。

 

よくそう言われたりもするが、茅場昌彦という敵がいてもなお、プレイヤー達は一つになれていないのが現状だった。

 

 

「―――ねえ、あんたはなんで攻略組で戦ってんの?」

 

「...............なんで、か」

 

唐突なリズベットの問い。何故俺が戦っているのか。

 

「―――そうだな。いつの間にかこんなことになってた、って感じが七割だな」

 

「なによそれ。で、あとの三割は?」

 

リズベットが呆れたような目を向けてくる。しょうがないだろ、実際なんで俺が攻略組にいるのか俺にもわかんねえんだよ。

 

「あとの三割は仕事と.........まあ、約束だな」

 

 

 

『約束―――ゆきのんが困ってたら、助けること』

 

『あー、できる範囲でな』

 

『そっか、なら安心だ』

 

 

 

 

 

「仕事ってなによ。あんた、一応高校生でしょ?」

 

「............部活だよ」

 

「どんな部活よ」

 

「うちの高校にはよくわからん部活が多くてな.........奉仕部とか言う部活があったんだよ」

 

「なによそれ!?メイドでもいるの?」

 

「残念ながら、メイドはいねえな。いたら良かったんだが」

 

「......引くわー」

 

「お前が言い出したんだろうが!」

 

 

そんなバカみたいなやり取りをしながらリズベットと迷宮区を歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

―――このクソみたいなゲームのせいで、奉仕部が瓦解してしまったという現実から、目を逸らしているのを自覚しながら。

 

 

だが、それでも.........こんなぬるま湯みたいな空気に浸っていたい、と。そう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

 

迷宮区突入から2時間。そこで異変が起こった。

 

 

 

 

―――ぁぁ―――

 

 

 

「........なんか言ったか?」

 

「あたしはなにも言ってないわよ」

 

人工的な質感の23層迷宮区。微かだが、前の通路から声が響いた気がした。

 

リズベットが止まって耳をすます。すると、

 

 

―――ぁぁぁぁ―――

 

 

 

 

「―――ッッ、聞こえたか?」

 

「うん、なんか悲鳴、みたいな」

 

思わずリズベットと顔を見合わせた。

 

 

「........行くか」

 

「うん、行ってみよう」

 

声が聴こえてきた方向へと俺達は走り出す。

 

迷宮というだけあって、やたらグネグネした通路の構造を頭に叩きこみながら悲鳴の主の元へ駆ける。

 

 

―――ゃ――ぉぉ―――

 

 

「こっちか........!」

 

「ちょ、あんた、速っ!?」

 

俺とリズベットの15以上に及ぶレベル差、そして俺はAGI特化であることから走り出すとすぐに差が開く。だがわざわざ待つ暇もなさそうなのでリズベットを放置して先の通路へと俺は飛び込んだ。

 

 

「や......ろお!」

 

「ッ」

 

 

こっちだ。今度ははっきりと聴こえた。

 

目の前にある扉を蹴破るようにして俺は部屋に侵入した―――ところで。

 

 

「た、すけ―――」

 

「.............え?」

 

 

 

俺の目の前で、一人の男がポリゴンになって、砕け散った。

 

 

 

「くひひ......あれぇ?ヘッド、見られちまったみたいですぜ?」

 

「Ha、哀れな通りすがりのプレイヤーか。―――やれ、ジョニー」

 

「そういうと思ってたぜ、ヘッド!」

 

「な―――ッ!?」

 

 

叩きつけられる片手半剣の一撃を反射的にグラディウス・アウルムで防ぐ。ガキィ、という金属同士が噛み合う音が響いた。

 

 

「へーえ、これを防ぐなんて。テメェ、さては攻略組かァ?」

 

「―――はっ、知るかっつーの........!」

 

 

 

よくわからないが、一つだけ確かな事がある。―――こいつらは敵で、PKだ。

 

アルゴから聞いてはいたが、まさか自分がプレイヤーキラーに遭遇するとは思わなかった。

 

数度刃が空中で激突し合うが、結局引いたのは俺だった。相手の一撃の重さを利用して後方へとバックしつつ距離を取る。

 

 

「へェ........ヘッド、こいつは俺に相手させてくれねェっすか?」

 

「........そうだな、いいだろう。ただしジョニー、十分だ。十分以内に片付けろ」

 

「さっすがヘッド!わかってるゥ!」

 

 

ヒュー、と口笛を吹いた直後にジョニーとやらが再び片手半剣を持って切りかかってくる。

 

 

「ヒャハァ、やるねェ兄さん!」

 

「ぐッ.......!」

 

凄まじい速度で迫る剣戟をグラディウス・アウルムで凌ぐが、押されている。

 

 

「ッ、ハァァァ!」

 

 

不味い、こちらのペースを崩されている。

 

レベルでは俺のほうが高いはずなのだ。焦った俺は相手をうち崩すべく、剣を打ち込むが―――

 

 

「がッッッ!?」

 

 

突然顎に衝撃が走り、同時に俺の視界がぐるぐると回って背中に衝撃が走る。

 

なんだ今のは。あの威力はソードスキル以外にあり得ない。だが、ソードスキルは撃たせる暇すら与えていないはずだが―――

 

―――そうか、

「幻月.......体術か!」

 

「だいせーかい、ってなァ!」

 

 

恐らく俺をサマーソルト気味に吹き飛ばしたソードスキルは幻月。体術スキルならば、下半身のみのモーションでソードスキルを放つこともできるだろう。

 

先程の一撃で俺の体力は二割弱削れている。―――つまり、あと四回、これを食らえば俺は死ぬ。

 

 

「―――ッ」

 

 

出し惜しみしている場合じゃない。あの速度の戦闘にあっさりついていく動体視力、さらに体術を絡めてくる戦闘センス。こいつは、強い。

 

酷薄な笑みを浮かべて、片手半剣を再び手にしてこちらに走り出すジョニー・デップだかなんだかを見て、俺は霊鋼を抜刀する。

 

 

「―――Ha、おもしろい」

 

「―――ハッ!」

 

なにやら後ろの黒ポンチョが呟いているが、無視して俺は気合いの声をあげるとともに右の金刀で、迫る片手半剣を叩き落とす。

 

 

「フッ―――」

 

「ん、なァ!?」

 

 

驚愕するPK野郎をよそに、俺は左右の二刀を入れ替えるようにして斬撃を浴びせていく。

 

―――これはもはや武器ではなく、自身の手足の延長だとイメージしろ。重心を常に意識し、舞うようにして攻防一体の型を叩きつけろ。

 

三日間とはいえ、ユキノに教わった双剣は俺の中で一つの技能に昇華されつつある。完成には遠いが、こうして不意をつけば十分に戦える程に。

 

 

「が、ふ」

 

十数秒の攻防の後、ついに金と黒の乱舞がPK野郎の片手半剣を弾き飛ばし、二本の短刀がその胸を深々と貫いて吹き飛ばした。

 

 

「ぐッ........ヘッド!」

 

「君の負けだ、ジョニー。ここは引くぞ」

 

 

 

吹き飛ばされたPK野郎を黒ポンチョが受け止め、何事か囁く。

 

悔しそうに顔を歪めるPK野郎はこちらを向いて言い放った。

 

 

「おい、攻略組。俺の名前はジョニーブラックだ。―――テメェはいつか、俺が殺す」

 

「Good、なかなか良い見せ物だったぜ」

 

 

黒ポンチョが転移結晶を砕くのを見て、俺が慌ててグラディウス・アウルムを投擲するが遅かった。

 

 

「.........なんだったんだ、あいつら」

 

 

残っているのは疲弊した俺とプレイヤードロップの装備のみ。

 

 

 

「あんた.......今の、なに?」

 

 

 

そして、更に面倒くさい案件も残していったのだった。

 

 





謎の黒ポンチョ。いったい何プーなんだ。


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