やはり俺のVRMMOは間違っている。《凍結》 作:あぽくりふ
感想でも言いましたが、この作品はもはやオリジナルとして楽しんでいただければと。割と原作ブレイクです。ええ。サチは死なせませんとも。あんなええ子を死なせてたまるか。
あまりにも酷い矛盾点があれば指摘してください。
では、決闘です。ドゾー。
先程の集合場所から少し離れたフィールド。森が少し開けたようなここは決闘に丁度いい。
「さて、準備は整ったかしら」
「ああ、いつでも来いよ」
手元にポップするのは「決闘を受けますか?Y/N」という簡潔な問いかけ。勿論Yes、モードは初撃決着モード。
カウントダウンが始まり、ユキノがふと呟く。
「思えば、あなたとの直接対決ってこれが初めてよね」
「ん、ああ―――」
「―――だから。胸を借りさせてもらうつもりで、最初から全力で行くわ」
カウントダウンがゼロを刻み―――下段からの神速の剣閃が俺に向かって伸びた。
※※※※※※※※
「―――ッ!?」
金属同士が激突する高音が響く。左腕が跳ね上がり、ハチマンがかろうじてユキノの一撃を凌いでいた。
―――速すぎる。
不味い、とハチマンは内心呟く。
先程のハチマンの防御行動。あれは半ば反射に近い動作だ。あの速度についていけなければ、おそらくすぐにやられる。
「―――さすがね、今のを防ぐなんて」
そう感嘆の意を示しながらもユキノの刀は下段へと構えられ―――直後に再び斬撃が放たれる。
再度響く激突音。
―――ソードスキルによるシステムアシストなしで、この速度だと.......!?
最初の一撃を見たことである程度は捉えられるようになったが、それでも尚速い。今まで見た中で間違いなく最速。
連続する高音。それは徐々に速くなっていく。
上段下段と切り返すように迫る剣閃。それらをギリギリで回避しつつもハチマンはユキノを倒すべく必死で思考する。
しかし―――
「ハッ」
―――キィィィン、という澄んだ破砕音とともに盾と剣が砕け散る。
瞠目するハチマンの目に映るのは刀を振り切った姿勢でこちらを見据えるユキノとその刀に僅かに纏われているエフェクト。
―――見えなかった。
カタナ中段水平基本剣技、「
基本技であるはずのそれはユキノの鍛え上げた敏捷値と隔絶した技量によって、通常のものとは格が違う完成度を誇る。
その剣は至極単純で基本的な払い。しかしユキノが振るえばそれは視認すら許されない剣速へと至る。
最速の剣は、普通なら一つだけでもかなりの技量が必要とされるシステム外スキル「武器破壊」を同時に盾と剣の二つに発生させるという離れ業すら可能にしていた。
―――しかし。
「―――貰ったぜ、雪ノ下」
武器破壊の同時発動。それはハチマンの度肝を抜いたし、ハチマンの武装解除を為した。
だから、ユキノには落ち度はない。
もしあるとすれば―――
「―――え?」
―――グラディウス・アウルム。その特性を見極めることなくソードスキルを発動してしまったことだろう。
砕けたはずのグラディウス・アウルム。それはハチマンの手の中で紅蓮の炎を撒き散らしながら再生を果たす。
それはまさしく25層ボス、ジ・イグニファトゥス・フェニックスロードの特性そのもの。
「―――らァッ!」
技後硬直を狙うように牙を剥くのは片手用直剣縦四連撃ソードスキル、バーチカル・スクエア。
「―――くっ!」
基本技故の技後硬直の短さ。それが幸いし、ユキノはギリギリでバーチカル・スクエアの迎撃に移る。
右上から振り下ろす一撃目。袈裟懸けに振り下ろされたそれを手に持つ刀で力を分散させるようにして受け流す。
V字を描くように跳ね上げるニ撃目は刀の腹で受けるようにして防ぐ。
「ッッッ―――!」
返し胴にも似た動き。もはや凌ぎきれないと判断したのか。
続く三撃目と交差するように振るわれた高速の剣。―――だが、不完全な体勢から振るわれた剣は、システムアシストを受けた剣の速度には敵わなかった。
ユキノの刀がハチマンの首を跳ねるより速く、金の剣がユキノの胸を貫いて後方へ吹き飛ばす。
ハチマンの視界に表示されるYou win!という文字。
空振る四撃目と正方形のエフェクト。技後硬直が解除されたハチマンは前方へ吹き飛ばされたユキノの元へ歩いていくのだった。
※※※※※※※※
地べたにへたりこんで俯いているユキノを見ながら俺はがしがしと頭を掻いた。一体どうしたのか。
「―――ねぇ、比企谷くん」
俯いたままのユキノが言葉を吐き出す。
「あなたはどうしてそんなに強いの?」
―――強い?俺が?
まあ確かに今回はこいつに勝ったが、グラディウスを用いたあれはもう通用しないだろう。地力で言えばこいつのほうが強いし速い。
そんな俺の思考を読んだのか、ユキノはさらに付け足した。
「単なる戦闘能力だけではないわ。精神的な強さもよ」
.......精神的な、か。
強いのだろうか。全くそんな気はしなかったが。
「―――あなたがいなければ、アスナさんは死んでいたわ」
脳裏に浮かぶのはあの光景。武器を破壊され、素手で呆然とするアスナの姿。
「................だけどあなたが死んでいた可能性も高い。相手はボスよ。―――リスクリターンの計算に優れているあなたがわからないわけがない。どうして自分の命よりアスナさんのことを優先したの?」
違う。
あの時の俺はそんなことは考えていなかった。ただ命の軽さに耐えきれなくて、暴発気味に飛び出しただけだ。違う、俺は。
「私はあなたのやり方が嫌いよ。そうやっていつも一人で完結させて、最終的には最高の結果を残す。過程が間違っているのに結果は出す。..........認められるわけないじゃない、そんなの」
――――――。
「どうしてあなたは自分のことが誰よりも好きなくせに、自分が傷付くことを容認するの?どうして自分だけがリスクを背負うようにするの?どうして誰にも頼らないの?」
どうして。どうして。どうして!
途中から泣きながらそう連呼する
「―――どうして、私はこんなに弱いの?」
―――――――――。
「どうやったら、私はあなたの隣に立てるようになるの―――?」
―――そうか。
途方にくれた迷子。そんな目をしながら泣いている
きっとこいつは、
俺がかつて
―――雪ノ下雪乃は、この世界で俺を追いかけてきていたのか。
誰かを救いたいという願いを叶えるために俺を追いかけた。俺のやり方は間違っているが、結果だけなら人を救っているから。
このボスの件についてはこいつの勘違いだ。あれは俺の暴走だ。俺の中の、ナニカが溢れて出た結果だ。
だけど、こいつが俺を目指してしまったのは俺の責任だろう。なら、放って置くわけにはいかない。
かと言って無責任な言葉を吐くなど持っての他だ。俺はどこぞの主人公じゃない。
なにより、そんな薄っぺらな言葉を投げかけても、こいつにはわかるだろう。俺が雪ノ下雪乃の変化を微細に感じとったように。
結局は全部雪ノ下自身のことだ。
こいつの変化、つまり―――まあ、なんだ。こいつ曰く「俺の隣に立てるようになること」、つまり俺に匹敵する何かしらのものを手に入れようと、掴み取ろうとしているのか。
それが良い変化か悪い変化かはわからない。
それは俺ではなく彼女や彼女の周囲が後々判断することだろう。
―――だから。
「........ボス戦、期待してんぞ」
俺が言えるのは、これくらいだ。
くしゃっ、と。僅かに雪ノ下の頭を撫でて、俺は集合場所へと戻るのだった。 .......まぁなに、お兄ちゃんスキルの自動発動ってことにしといてくれ。
「隣に立てない」うんぬんの発言は雪乃ちゃんが乙女に目覚めた影響です。SAOの中で彼女も色々あったんでしょう(適当)
八幡が羨ましい今日この頃。次は26層ボス戦。割とさっくり倒す予定です。ではでは。