やはり俺のVRMMOは間違っている。《凍結》   作:あぽくりふ

11 / 51
だ、だれか私に文才をわけてくだちい・・・!





十一話 対25層ボス戦①

 

 

ボス部屋に入ってまず、俺の目に飛びこんできたのは「金」だった。

 

 

ゆっくりと羽ばたきながら、金と紅で彩られし不死鳥の王が舞い降りてくる。

 

舐めるように体表を撫でる熱波。金と紅が入り交じる焔でできた翼。ルビーのような瞳は敵意を放ち、額には炎を固めて作ったかのような真紅の王冠が燦然と輝いている。

 

とてもデータのみで作られたものとは思えない程の重厚な存在感。それ自体がプレッシャーの如く体にのしかかってくる。

 

 

「................ッ」

 

 

恐怖を通りこして畏怖を覚えるほどの美しさと存在感。

―――なるほど、これまでのボスとは格が違うらしい。

 

 

「行くぞ!」

 

 

キリトの掛け声と、それに続くプレイヤー達の咆哮がボス部屋に響く。

 

直後、キェェェェェェェ!というジ・イグニファトゥス・フェニックスロードの甲高い咆哮が響き、初めてプレイヤー達と25層フロアボスは激突した。

 

 

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

 

軍がHPバーを1本削る暇すら与えず壊滅させたボスの攻撃力はすさまじいものだ。

不死鳥という特性からか主に炎のブレスなどを使用する攻撃は非常に強力であり、さらに継続ダメージまで発生させる。

 

舐めるように地面を這う炎の波。ボスのブレスを半ば跳躍するようにして回避しつつ、俺は舌打ちをする。

 

正直非常にやりにくい。そのやりにくさを周りのプレイヤー達やキリト及びアスナも感じているのか、顔をしかめている。

 

 

―――実体の掴みにくい炎の攻撃は避けにくい。それが波のように押し寄せるとなると尚更だ。

今までのボス達のように剣を使うのなら軌道などから予測するのも容易い。しかしこのボスが使用する明確な物理攻撃と言えば爪くらいだ。こういう敵は普通のRPGならば魔法を使うだろうが、残念ながらSAOには剣以外が存在しない。

 

炎そのもののような輪郭の捉えにくいボスへの攻撃は、霞でも切っているような不安感さえ与えるが、HPバーはそれなりに減っているため攻撃が通じていないということはないだろう。

 

 

再びボスが放つ炎柱攻撃。それはまともに食らえば一撃でHPをレッドにされるほどの攻撃力を誇る。

 

だが、平均的にレベルが上がった攻略組はそれをよく耐え凌ぎ、順調にボスの体力を削っていっていた。

 

 

「なんだ?」

 

 

順調なはずだった攻略。

 

異変が起こったのは5本あるボスのHPバーを1本削ることに成功した直後だった。

 

 

キェェェェェェェ!と再び甲高い声でボスが咆哮。同時にボスの巨体が浮く。

 

炎に包まれた両翼がさほど羽ばたく必用もなくボスの巨体が空へと舞い上がる。

 

プレイヤーの手から逃れたボスは螺旋を描きながら上昇していく。羽ばたくたびに巨大な炎の翼からは羽根のような形をした炎の塊が撒き散らされ――――――羽根?

 

ボス部屋全体にばらまかれるようにして、ゆっくりと羽根が落下していく。

 

 

「な―――」

 

 

―――まさか。

 

 

「みんな避けろッ」

 

 

キリトが叫ぶ間もなく盾を構えたタンク隊に羽根が接触し―――音もなく爆ぜる。

 

 

「くそっ」

「タンク、どうなった!?」

 

 

口々に周りの奴等が叫ぶが、タンク隊自体のダメージはそこまで多くない。

 

見た目の派手さによる一時的な視界の妨げになることと、ダメージそのものは少ないが爆発の衝撃によってタンク隊のうち何人かは吹きとばされていた。

 

―――だが、頭上を見上げると無数の羽根がゆっくりと舞い降りてくるのが見える。それはまるで絨毯爆撃のようだった。

 

 

「どうしろってんだ、これ」

 

 

思わず顔がひきつる。なんだこりゃ。

 

 

―――そして連鎖するようにして視界が爆ぜた。

閃光と同時にプレイヤー達が吹き飛んでゆくのが見える。無論俺も例外ではなく、ぶっ飛ばされて地面に転がった。

 

 

くそったれ。強打したあばらが悲鳴を上げている。ブラッディマンティスを杖代わりに俺は立ち上がった。

 

―――直撃は避けたが、それでもHPは七割を切っていた。回復結晶を使用する必要がある。

 

見ると、周りのプレイヤー達もふらつきながら立ち上がっていた。あの全員あの絨毯爆撃を凌ぐことができたらしい。

 

思わずほっとした空気がプレイヤー達の間を流れる。レベルを上げていなければヤバかっただろう。

 

 

―――一瞬。一瞬の油断だった。

 

 

羽根爆弾を凌いだ直後。全プレイヤーが油断していた瞬間。

 

 

「え」

 

 

巨大な炎の塊が俺の目の前に着弾し―――大爆発を起こした。

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――何が起きた?

 

再び思いっきり地面に叩きつけられ、衝撃息を詰まらせた。無様に地面に這いつくばりながらも巨大爆弾の正体を見極めるため前を向く。

 

―――俺の視界に飛びこんできたのは一斉に破砕音を鳴らしながらポリゴンになって砕け散る八人のプレイヤーと、燃え盛る業火の中からゆっくりと羽根を伸ばすボスの姿だった。

 

 

 

「...........は?」

 

 

―――死んだ。

 

愕然としながら散ってゆくポリゴンを俺は見つめた。思えば、プレイヤーが死ぬのを見るのはこれが初だった。

 

そしてボスに目を移した俺はさらに愕然とすることになった。

 

 

「―――ボスのHPが、戻っている―――!?」

 

 

ゆっくりと、ゆっくりと―――殻を破る雛鳥の如く不死鳥の王が翼を広げる。

 

―――不死鳥。炎。回復。

 

忘れていた。

不死鳥の特性は炎ではない。

最も大きな特性は不死身であること。不死鳥は死が近付けば燃え上がり、再び雛鳥となって蘇るという。

 

その可能性は攻略会議でも当然言われていたが、まさか攻撃と同時に行われるとは誰も思わなかったに違いない。

 

呆然とするプレイヤー達を睨むルビーの瞳。

油断していたプレイヤー達をねめつけるようなその瞳の奥には茅場がいるのだろうか。

 

 

 

 

―――俺達を嘲笑うかのように獄炎の霊鳥は三度目の咆哮を上げるのだった。

 




UA10000突破!嬉しいZE !

記念になにか番外編でも書いたほうがいいんでしょうか。けど本編すらまだこんなのだし・・・

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。