やはり俺のVRMMOは間違っている。《凍結》 作:あぽくりふ
一話 やはり比企谷八幡は犬を助ける。
慣れないことはするもんじゃない。病室で寝転びながらそんなことを思った。
2週間前。高校へ向かう俺の前に、突如車に轢かれそうな犬が現れる!
そして俺は反射的に、何処かの物語の主人公のようなヒロイックな、例えるなら上条さんレベルな行動をとった。つまり、犬を助けるべく車の前に飛び込んだのだ。
.........なんかデジャヴが。
しかし、現実はそんなに甘くない。俺の中にいる何かが目覚めるわけでも、奇跡のパゥワーで助けられるわけでもなく、ドンとかバンとかいう鈍い音を立てながら、俺は車に撥ねられた。
またかよ。というか俺の無意識が犬好きすぎて困る。犬が擬人化できたら俺今頃ハーレムじゃないか?........いや、由比ヶ浜のとこの犬っころはオスだったか。確か......ブリュレ?
まあ、犬は無事だったそうだし、俺も死ななかっただけ運が良かったのかもしれない。雪ノ下には病院で淡々と説教されたが。.........軽く3時間。解せぬ。ガハマさんには少し泣かれて対応に困った。
他には材木座や戸塚とか戸塚とか戸塚とか戸塚とか戸塚とか戸塚とかが見舞いに来た。俺戸塚のこと好きすぎだろ。
...........他にはほら、川.......川.......川なんとかさん(諦めた)とか。
ちなみに平塚先生も来たが、ひたすら仕事の愚痴を聞かされただけだった。帰れ。
ともあれ、怪我人は暇である。部活も行けないし、病院でひたすら勉強以外することがないから成績がどんどん上がっている。数学?ワタシスウガクワカリマセン。
そんな時、いや具体的には高校2年生の11月6日に、妹の小町がとあるゲームをもってきたのだ。
そのゲームの名前は、「ソードアート・オンライン」である。
俺自身ゲームはそれなりにやってきたが、このゲームは今までのものとは全く異質なものらしい。なんでも、なーぶぎあ?なーヴぎあ?と呼ばれるヘルメット型ハードを通して意識ごとゲームに入り込めるという何とも未来的なものなのだ。
我が日本の科学力は世界一イイイイイイイイイイイ!!!!!!
ゲームの中に入り込めるなんて誰でも一度はやってみたいと思うだろうが、このゲームは価格にして10数万円であり、とても俺が買える代物ではなかった。だが、小町が親父におねだりしたところあっさりと買ってもらえたらしい。親父、マジで小町に甘すぎだろ……。
マッカンより甘い。..........いや、それはないな、うん。
まだ小町はやったこと無いらしいが、病院で暇な俺のために使わせてくれることになったのだ。やっぱ妹ってマジ天使。
天使さん呆れた目でこっちを見ないでください。
ベータテストが終わり、今日が正式稼働日である。ソフトがどういった経緯で発売日当日に手にできたかは知らないが、親父の小町愛による努力だと考えると、どうでもいいことだ。どうせ発売日からできるならラッキーだと思ってやるだけさ。割と楽しみだしな。
よし、どうでもいい前置きはその辺にして、俺はゲームを始めることにしよう。ハンドルネームは……ヒキガエル?ヒキコモリ?ヒッキー?なんでこんな悲しいものばかり浮かんでくるんだ……あといつの間にヒッキーという名前は定着したんだろうか。今さらながら腹が立つ。
まあ、あまり気取ったものや痛々しいものにすると黒歴史になっちまうし、無難に「hachiman」でいいか。
中学の頃アンケートの名前の記入で「シュヴァルツェア・ナイト」と書いたのがクラス全員にばれたのは今となってはいいトラウマです。せめて英語かドイツ語か統一しようぜ。
「……リンクスタート」
いやなことを思い出していたからなのか、自分でもびっくりするくらいの低い声が出た。暗すぎだろ、俺。これから楽しいゲームをやるんだ、テンション上げていこうぜ!