「ん・・・?」
瞼だけでは防ぎきれない程の明るい光が当麻の目に入ってきた。
「・・・・・何処だ、ここ・・・・?」
目を覚ますと、当麻は市街地に立っていた。
「俺は昨日、舞夏にユリの看護を頼んで飯食って寝たはずなんだがな・・・・・」
あたりを見渡すと、一軒家がずらっとズラッと並んでいた。
間違いなくここは当麻の家の近くではない。
「・・・・ここは・・・・」
当麻が道を歩いて行くとある公園に辿り着く。
「・・・・・何の悪戯だこりゃ・・・・・」
そこに居たのは石を投げている子供たちやそれを見て見ぬふりしている大人たち。
そして、
石を投げつけられ、額に血がにじんでいる男の子がいた。
「これは・・・?すみませんこれはいったい・・・・・」
当麻が周りに立っている大人達に声をかけても誰も振り向かない。
否、誰も当麻の存在に気が付いていなかった。
公園の中では子供たちが笑いながらその男の子に石を投げつける。
「こっちにくんな、やくびょうがみっ!!」
「・・・・・・」
「なんなんだよ、これ・・・・」
大人たちはちらちらと男の子を見ているが子供達を止めようとはせず、むしろこれが日常の様に世間話で盛り上がっている。
そんな時だった。
「おいっ、人の弟に何やってやがるっ!!」
石を投げつけられていた男の子より一、二歳ほど上の少年が公園に駆けてくると石を投げていた子供たちは蜘蛛の子が散るように親の所まで逃げていく。
「・・・・・臆病共が・・・」
少年は親の影に隠れ怯えている子供たちを蔑みの目で見ると、男の子を連れて公園を出て行った。
「おいっ、待ってくれ!!」
はっと気がついた当麻が少年と男の子を追いかけるが全然少年達には追いつけない。
むしろ、当麻の方がどんどんと離されて行っている。
「待ってくれ、君は、君は誰なんだっ・・・・」
息を切らしながら当麻は呼ぶ。
「その俺の横に居る君は誰なんだっ!!」
「・・・・・・・」
当麻の声に反応したのか少年が後ろを向く。
「・・・当麻・・・・・」
「っ!?」
「大事な、大事な俺の弟・・・・」
少年が当麻に笑いかける。
「当麻・・・・・」
そう少年が当麻に笑いかけたのと同時に世界が崩れていく。
「教えてくれっ、君は誰なんだっ!!」
「悪いな当麻、また今度だ・・・・」
そう少年が言うと当麻の立っているところが崩れ、落ちていく。
「また、新しい物語の始まりで・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・」
当麻はそこで目が覚めた。
「・・・・・さっきのは夢か?」
ベットの上で寝ているのを確認した当麻は適当に服を引っ張り出し、キッチンに向かう。
「あれは俺の小さいときの記憶なのか・・・・・?」
当麻は小さい頃を覚えていない、
正確には10年前から記憶が無い
「誰なんだ・・・・・」
その当麻の呟きは誰にも聞かれることは無く、フライパンの上でベーコンが焼かれている音にかき消された。