その白い、雪のように白い少女は最強の盾を持っている。
その盾は理論上では核爆弾でさえ防ぐだろう力だ。
それは生物がもっとも無防備になるであろう睡眠時にも自動で少女を守ってくれる。
だがいくらその盾に守られ、人よりも危機回避能力が人並み以下になっているとはいえ、その盾が無効化されたのぐらいは気がつく。
つまり、
「(な、なっ、なンなンですかァこの状況はァ!?)」
少女は青年の右手に触れられた時点で起きていた。
しかも目の前の家族としてではなく、一人の男性として見ている青年の笑顔をちらっと見てしまい余計にパニックに陥った少女は今起きたように振舞えばいいものを、寝たふりを続行することを選択してしまう。
「ま、ここで寝たら体痛くなりそうだし、さっさとベットに寝かせますか」
青年は少女の膝裏と背中に手を回して抱き上げる、所轄『お姫様抱っこ』をする。
「(えェっ!?マジかよっ、上条くンが俺をお姫様抱っこしてるだとォ!?)」
学園都市最高の頭脳を持っていても一度パニックになったら簡単には抜け出せない。
恥ずかしさから顔を真っ赤にした少女はついに限界を超え爆発した。
少女が目を開けるとそこには起きると毎朝見える天井が見えた。
「あァ・・・?ここは俺の部屋か・・・っ//」
さっきの事を思い出し、余計に顔が赤くなる。
夢かと思ったが、少女がこの部屋にいることと、ちょうどタオルと水が入った洗面器を持ってきた青年がそれを現実だと証明している。
「おっ、気がついたか?」
風邪ひいたんじゃないかと心配したぞ、と笑っている青年に馬鹿じゃねェのか?と少女は少しそっけなく言う。
「確かにお前の能力を知ってればそれは無いと思うけどさ」
青年、当麻は少女の頭に手を置きながら優しくなでる。
「子供があんなところで寝ていたら上条さんは心配するのですよー」
彼の恩師の口調を真似しながら当麻がにっこりと笑う。
「っ////」
少女は赤くなっているのが自分でも分かる程に火照った顔を当麻が持ってた水を適度に絞ったタオルをすばやく奪い、顔を隠す。
「ん、そこまで元気なら大丈夫だな」
当麻は立ち上がると少女の部屋のドアに向かおうとすると少女が青年に声をかける。
「ん?」
「お、俺の夕飯を持ってきてくれっ」
このまま一緒に夕飯を食べて真っ赤になった顔を見られたくは無かった少女はそう当麻に頼んだ。
「ん、分かった。あっためてくるから少し待ってろ」
青年が出て行ってから少し立つと、電子レンジで温めたのか温かくなっている料理を持ってきた。
青年は箸を持ち、料理をつまむと少女の顔の前に持ってくる。
「ほれっ、口あけろ」
「はァっ!?」
「食わしてやろうかって言ってるんだよ。自分で食うならこのまま置いとくけど」
「じ、自分で食うから、そこに置いとけっ!!」
「お、おう」
少女がいきなり大声出したのでびっくりした青年は少しだけ慌てて部屋を出て行った。
青年が出て行った後、少女は枕にこれ異常ないくらい赤くなった顔をうずめる。
「ったくよォ、ありえねェだろうが・・・・。普通、高校生相手にするもンじゃねえだろォ・・・」
少女は頭の中ではだれこれ状態の上条さんがにっこり笑いながら少女に食べさしている光景を想像してしまう。
「くそっ、俺のキャラじゃねェだろうがっ!!もう寝ンぞっ」
レベル5の想像力を無駄に発揮し、余計に恥かしくなった少女は自分の夕飯を全て食べきると寝る準備をしてすぐに目を瞑り、意識を手放した。
その夜、少女が風邪をひいていると勘違いした青年が隣の住人の妹に土下座をしながら少女の介護を頼みこんで、また隣の住人とひと騒動あったという。