「だぁ~、あちぃ~~~~」
「溶けちゃうかもなんだよ~~~~」
「そうか?」
「オレはそォは感じねェけどなァ」
いかにも夏の日差しというほどの太陽光で熱せられたアスファルトやコンクリートから立ち上る熱気によって学園都市全体が灼熱の地獄と変わる中、当麻達の寮も例外なくエアコン、扇風機、その他諸々の冷房を全開にしていても体を蝕む熱気に当麻とインデックスが体中から絞り出された汗を滝のように流す中、住人である二人の超能力者は涼しげな表情で各々の好きなことをやっていた。
もちろん『一方通行』の能力を有する百合子は常時自分の周りだけを適温に保てるし、帝督も自分の能力で作り出した新たな法則を持つ物質で暑さをシャットダウンしているためだ。
「レベル0の上条さんには異能はぶち殺せても暑さはぶち殺せないんでせうよ~~」
「私の『歩く教会』も暑さは無理なんだよ~~~。冷凍庫の中のアイスは全部食べちゃったし、私はこのまま死んじゃうかもしれないんだよ・・・・・・・・・・」
「ってか、昨日買ってきたアイスの箱三箱ともみんな一人で食ったんかい・・・・・・・」
暑さにやられてか、当麻の突込みも勢いがない。
クーラーの冷気が直接当たる場所でグデ~っとしている当麻が首をちょこっとだけ動かして帝督のやっているゲームを見ていると近くに転がっていた当麻の携帯が鳴りだした。
手を伸ばして電話を掴んで電話の主の名前を見ると非通知と行事されていた。
「もしもし・・・・・・・」
「どうしたんだにゃ~カミやん?声に元気がないぜい?」
聞こえてきた声に当麻がまたかと言う顔をして
「・・・・・・ど~したもこ~したもね~よ。ってかお前は元気だな・・・・・・。お前の部屋は大丈夫なのか?俺んちの隣だから同じように地獄だと思うんだが・・・・・」
「え・・・・・・。こんな暑いのにカミやん家ん中にいるのかにゃ~?」
「え・・・・・・・・・」
「マジですかい。さっと外でてファミレスに入ったほうがいいと思うにゃ~。ちなみに俺は今さっきまで舞夏の通っている繚乱家政女学校に行ってたんだぜい!!まじロリメイドサイコーですたい!!」
「・・・・・・で、用件はなんだ?」
電話越しにでもわかる土御門の興奮と暑さの二重コンボに電話を切りそうになるが必死に抑え込み用件を尋ねる。
「カミやんこれから集まれるか?もちろんインデックスは連れずにだ」
「・・・・・分かった・・・」
「じゃあ今から第十七学区にある三沢塾近くの公園に来れるか?俺が行くのは立場上不味いから代わりの奴が待機している」
そう土御門が言った後、グシャリといった音が聞こえ電話が切れた。
当麻がため息を吐いて掛けてある新しい防護服を羽織ると玄関に向かう。
「急な用事が入ったから出かけて来る」
「とうま、アイスッ、アイスが食べたいんだよ!!」
「わかった。帰りに買ってくる。百合子と帝督はなんかあるか?」
「いんや、別に俺はいらねえよ」
「オレもだ。別にインデックスと違って外に出て買ってこればいいだけだしなァ」
帝督と百合子はテレビ画面や持っている本に目を向けながらそう答える。
「行ってくる」
「行ってら」
「行ってらっしゃいなんだよ」
「あァ」
「うっし、早めに帰ってくるぞっ」
三者三様に送り出され当麻は待ち合わせの公園に足を向けた。
公園にたどり着いた当麻はベンチに座って煙草をくわえている2メートルを超える大男を見つけると一息ついて額に浮かぶ汗をぬぐう。
コンクリートがほぼ地表を覆い、街路樹やビル群の真ん中にある小さな公園に申し訳程度に植えられている植物では焼け石に水状態な典型的ヒートアイランド現象の代表である学園都市の熱気に当麻は顔をしかめ、このまま引き返して冷房の効いた店で過ごしたい気分になるが、あのまま放っておけば今よりもさらに得意の魔術で気温を上げかねないのであきらめて当麻はその男に歩み寄った。
「待ったか?」
「いえ、そんなに待ってませんよ上条さん」
言葉とは裏腹に額や首筋には玉のような汗がいくつも浮かび、その目線が真夏なのにもかかわらず当麻を震え上がらせる。
「嘘つけっ。青筋立ててんじゃねぇかっ!!上条さんは寄り道もせずに土御門からの連絡の後ここまで全力疾走してきたんだ。第一こんな真夏日の炎天下の中そんな暑そうな神父服を着込んで待っているステイルにも責任があると思いますっ!!」
「・・・・・・・しょうがない。資料をさっさと読んでください」
深々とため息を吐く全身真っ黒な神父服を着たステイルは封筒に入っている書類を投げ渡すと懐から煙草を取り出して口にくわえて火をつけようとするが付ける直前に煙草は伸びてきた右手に奪われてしまう。
「何するんですか」
「ったく、一応上条さんも教師なんだぞ。未成年は煙草を吸っちゃいけません」
「・・・・・・読んだんですよね資料?」
「ああ」
当麻はしっかりと頷くとライターを取り出して資料に火を付ける。
「会いに行こうか。同類に」