とある上条さんの年齢変換   作:亀さん

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七月二十八日 その七

 

一緒に戦っていた三人が戦闘を行うのが難しくなりながらも少年はたった一人魔神に立ち向かう。

「うぉおおおおおおっ!!」

少年が雄叫びを上げながら何十と魔神が飛ばしてくる魔術をボロボロの翼を必死に振るい弾き飛ばし続ける。

それでも弾き飛ばせない魔術が少年の腕や腿、脇腹の肉を抉り、焼き焦がす。

それでも少年は雨のように降り注ぐ魔術を弾き続け少年は一つでも後ろにそらさないと言うかのように、弾きそこなった魔術をわざわざ体で受け止める。

 

 

そんな少年の耳にぎりぎり届く小さな声。

「・・・・オレを見捨てやがれクソメルヘン。そのほうがあのガキを救う確率が上がる」

その少年に庇われる形で仰向けに動けなくなっている百合子が静かに少年に言った。

 

 

 

「馬鹿野郎、今度こそ俺に守らせやがれ」

少年の脳裏に浮かぶのは燃え落ちる研究所。

そのそばで泣いている子供達と、きれいな白い髪を血で真っ赤に染めて気を失いながら青年に抱きかかえられている少女。

少年が覚えている一番どうしようもなかった思い出で、一番悔しかった思い出だ。

 

 

少年は繰り返さないために、戦い続ける。

 

 

しかしそれをあざ笑うかのように出現した真っ白な光を放つ太陽が落ちてくるのに少年は立ち向かうとそれを受け止めゆっくりと地面に落ちる前に押し返していく。

 

 

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

咆哮する少年の心に反応するかのように翼が白銀に変化していき、その太陽を押し返す。

その太陽は新たな力を手に入れた少年に押され、禁書目録に向かってゆっくりと押し返されていく。

 

 

 

 

しかしそこに二つ目の太陽が落下する。

 

 

 

押し返していた少年はいきなりの質量の増加に驚いた声を上げつつも押し上げようとするが奮闘空しく少年は一気に押し返され、どんどん地面が近くなっていく。

「くそ、やろう、がぁ・・・・・」

必死に上に押し返そうとするがそれを放った禁書目録が道端の小石を蹴り飛ばすかのような表情で手を振り下ろすとその太陽は遊んでいたかのかと思うほどの力で少年を押し切り、地面に倒れている百合子と、その近くで魔術という禁書目録の土俵で戦い疲労の蓄積スピードが普段の軽く倍を超えるせいで膝をついたまま動けなくなった二人をめがけて落ちていく。

 

 

これまでか、四人がそう思った瞬間、赤色で染めたんじゃないかと思うほどに赤色をした白衣を纏いながら背中に翼をはやした青年が右手でその太陽を弾き飛ばす。

 

 

「大丈夫か?」

「遅いぜヒーロー」

「はは、悪かった」

 

 

 

 

「あとは任せろ」

 

 

 

 

自分も深手を負っているのにもかかわらず上条当麻が四人を背中に庇うように禁書目録に立ちふさがった。

「(そうだ・・・・。俺はこの背中に憧れたんだ・・・・・・・)」

フラフラと立っていることもやっとな少年はふっと笑いが漏れる。

この絶対的信頼を寄せてしまう背中、少年は強くなってそうなりたかったのだ。

その身を包むかのような存在感に安心して緊張が解けた少年は疲労からその場に倒れこんだ。

 

禁書目録を睨み付けながら、ゆっくりと背後で立ち上がった魔術師二人に声をかける。

「二人とも動けるか?」

「ええ、その少年が時間を稼いでくれたので生命力はある程度回復しています。ですが戦闘を行うのはかなり厳しいです」

生命力とはすなわち体を動かす体力や魔術や超能力などの異能を発動させるための魔力などを生成するための原油のようなもの、それは戦闘行為を行えばすぐに消耗し枯渇すれば命に係わる。

わずかな回復では到底戦闘に参加することなどできなかった。

 

 

「そうか。ならその二人を連れてカエル顔の医者がいる病院に向かってくれ。ステイル、使い方はわかるな?」

「わかりました。神裂、僕はそこの少年を背負おう」

プロ二人がここにいては邪魔になると判断し、二人が百合子たちを背負い離脱するのを見送ると当麻は禁書目録に悲しみの視線を向ける。

 

「ごめんな」

無表情、氷のように冷たい光を放つ瞳に当麻は謝る。

 

 

「お前を禁書目録にしたのは俺のせいだ」

 

 

当麻が少女に謝る理由。

それは当麻自身がその悲劇の引き金を引いたようなものだった。

 

ある時、上条当麻が連れて帰ってきた少女に備わっていた天性の才能、完全記憶能力と原典に対する超人的な耐性を発見した必要悪の教会の上層部は絶対的な兵器として、また上条当麻に対する人質として少女を今代の禁書目録にした。

もし当麻が少女を連れて帰ってこなければ、もし上条当麻が上層部に恐れられるほどの危険性を持っていなければとあの日から数年、何度も当麻は後悔した。

 

しかしそんな当麻の弁解を許さないとでもいうように、帝督に放っていた魔術とは規模も数も桁違いに違う規模使ってを当麻の四方八方から攻撃する。

弾幕は当麻を包み込み、大爆発を引き起こした。

 

 

 

 

「ごめん」

 

 

 

 

ボソッと呟きながらいきなり目の前に現れた当麻に禁書目録は反応することもできず、一瞬で伸びた当麻の右手が禁書目録の頭を触れ首輪を破壊した。

首輪が破壊されたことで禁書目録も機能を停止し、インデックスの体が重力によって落ち始める。

それを当麻が受け止め地面に降りるとインデックスが目を開けた。

首輪を破壊されたインデックスからゆっくりと目に浮かんでいた術式が消え、インデックス本来の温かみのある瞳に戻ると目に入ってきた青年に目を見開く。

 

「あれ・・・・・とうま・・・・?」

「ああ、久しぶり・・・・」

柔らかく笑いながら当麻がインデックスをなでる。

 

その手に嬉しそうにしていたインデックスは真っ赤に染まった赤い白衣が目に入った瞬間、表情を一気に厳しくして当麻をにらむ。

「ってとうま、また怪我してっ!!いつもいつも私を心配させてるかも!!」

「ごめん」

「自分で危険な事件に飛び込んでいつ命を落とすか「ごめん・・・・・」」

当麻が頭を下げる。

 

 

「遅くなった」

「もう、怒る気が無くなっちゃったかも。とうまも一生懸命だったと思うし、また会えたからね」

 

この少女は上条当麻と別れてから一年前までの間の時間の事をあることを除いて一切覚えていない。

覚えているのは上条当麻がそばに居なかったことだけ。

迎えに来てくれないという現実に折れそうになりながらもそれでも少女は待ち続けていた。

「必ず助けに行く」

彼が言ったただこの言葉だけを信じてひたすら待っていた。

 

「遅くなったけどとうまは迎えに来てくれたから。だから許してあげるかも」

「よかった。これで許してくれなかったらどうしようかと、思っ、た、ぜ・・・・・・・」

少女が許してくれたのを聞いた当麻は電池が切れた玩具のようにゆっくりと倒れこんだ。

「って、とうま!?」

「焦るな。さっき規格外の化け物と戦ったせいでダメージが体にたまっててな。緊張が解けて体が動けなくなったんだ。すぐに医者に連れて行けば問題はない」

「そう・・・・・」

インデックスがそばにいる子猫ほどの少年にそう言われ安堵の息をつくが、ふと重大なことを思い出す。

 

 

「私、けいたいでんわ使えないかもっ!!」

「はぁ・・・・・・」

 

シリアスな雰囲気が若干空気が読めない少女にぶち殺されたのに溜息を吐きながら少年が代わりに当麻の携帯から電話をかけて救急車を呼んだ。

その後当麻が病院のベットで目を覚ました時、また病院でひと騒動あるのはまた別の話。

 


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