長時間画面と向き合いながら作業していた当麻はすっと立ち上がり扉に向かう。
「休まれますか?」
「ああ」
「僕らで作業は続けますから上条さんもどうぞ睡眠も取ってください」
「じゃ、そのまま探索しといてくれよ。俺は少しばかり寝る」
「あ、はいっ。上条さんが持って来てくれた患者の脳波データのおかげでだいぶ絞り込めてきましたからあと数日で情報をまとめれると思いますので、それまで休んでいてください」
「おぉ、わりいな。頼んだ」
今も情報を整理し続けている少年や少女達にそう言って部屋を出てアジトにある自分のベットに身を投げ出すと、直ぐに襲ってきた睡魔に身をゆだねた。
「兄ちゃん、兄ちゃんっ。あれやってよっ、あの火がでるやつ!!」
ツンツン頭の子供が部屋で寝転んで窓から空を見上げていた少年を揺すっている。
「ん、どうした当麻?」
「だから、あの火がでるやつをやってよ。あのここから火をだすやつっ!!」
子供は自分の指先を指しながらきらきらと目を光らせて少年を見上げている。
「しょうがないな」
そう言いつつも子供のリクエストに答え、ぼそぼそっと呟くと指先に火を灯す。
「(魔術師か・・・・・)」
「すごい・・・・」
「だろ?いつでもこの力があれば火が使える・・・・」
「どうしたの兄ちゃん?」
そう言いつつ少しだけ顔を曇らせた少年に子供が首をかしげる。
「ああ、残念なことにこの力を使って人を傷つける奴もいるんだ」
「へぇ・・・・」
「この力はもう一つの力に対抗するために人々に教えたものだったんだけどな」
「わかった。大丈夫だよ兄ちゃん」
「何故だい?」
「ぼくがそんなやつをぶっとばして、みんなが幸せになれるようにするからっ!!」
「・・・・・ふっ、そうか。じゃあ頼んだ」
「うんっ」
にっこりと子供らしく壮大な夢を宣言した子供の頭を少年が笑いながら撫でる。
「じゃあ、頑張って強くならないとな。っと、そろそろ母さんがおやつを作ってくれてるだろうからな。さ、行こうかっ!?」
少年は立ち上がり子供の右手を取って歩きだそうとした時だった。
何かが砕ける音と共に、少年が目を見開く。
「どうしたの兄ちゃん?」
「は、はは・・・・。これは気が付かなかった・・・・・」
「・・・・・・・・?」
「歓迎しよう、今代の担い手よ」
「どうしたの兄ちゃん?こんだいのにないてってなに?」
「いや、それは後々話そうか。それより母さんが待ってる」
二人はそのままリビングに向かうと子供の母親、上条詩菜がテーブルにクッキーを並べていた。
「あらあら、真人さん、当麻さん。いま呼びにいこうと思ってたんですよ。さ、手を洗って食べましょ」
にっこりと笑う詩菜は子供の手を少年から譲り受けると洗面所に子供を連れていく。
「そういや俺の歳が今二十三だから、母さんは・・・・」
そこで当麻の思考がフリーズした。
「ありえねえだろ・・・・・。十一、ニで俺を生んでる計算になるじゃねえか・・・・・・」
当麻は冷や汗を流しながら三人を見ていると、少年がふとこちらを見てテレビを指さす。
「どうしたのかしら真人さん?いきなりテレビを指差して」
「いや、また学園都市が技術を売り出したんだって。これでまた生活も変わるね」
「え、どういうこと?」
「・・・・・・っ!?」
そのテレビのニュースを見て当麻は固まる。
「な、なんで・・・・・」
「ただいま~」
「あ、おかえりっ!!」
固まっている当麻のすぐ横を子供が走って通りすぎ、男に抱きつく。
「お、当麻っ。いい子にしてたか?」
子供を抱き上げ、頬ずりしている男はそのまま奥に進むと彼の家族ににっこりと笑う。
「ああ、当麻はいい子にしてたぜ。な?」
「うんっ」
少年と抱きかかえられた子供は一緒に頷く。
「お帰りなさい刀夜さん」
「ただいま母さん」
「刀夜さんはお茶にします?それともコーヒーにします?」
「じゃあ、コーヒーをお願いしようかな」
「父ちゃん、ぼく、わるいまじゅつしをたおすヒーローになるからっ」
「お、当麻はヒーローになるのか。じゃあ頑張らないとな」
「うんっ」
撫でられてニコニコと笑っている子供と優しく子供を撫でている男を見て当麻もようやくまともな思考を出来るようになってきた。
「じゃ、俺は部屋に戻るよ」
「ああ、分かった」
「兄ちゃん待ってっ」
一足先に食べ終わった少年が部屋に歩きだす。
「あと数日だ」
「は・・・・・・?」
少年の本当に小さな呟きに目を見開いていると、当麻はいきなり崩れた地面に落ちて行った。
「がっ!?」
ベットから落ちて、頭を打った当麻はさすりながら立ち上がる。
「いって~~~。そんなに寝像は悪くないんだけどな・・・・・」
ふと時計を見るとすでに次の日の朝を指していた。
「ま、頑張りますか」