「で、お前が手も足も出ないほどにやられたと」
少年はニヤニヤしながら少女に向ってそう言った。
第七学区にある超高級の野外ホットドック屋のテーブルに座っているのは特殊なカリキュラムを取り入れ、全員を合わせて180万人の能力者を保有するこの街でも第一位、第二位の二人。
「やられてねェって言ってんだろォが、クソメルヘンっ!!」
「でもそのインデックスって奴を連れ去られたのは事実だろ?」
「クソッ・・・・」
苛立ちながら百合子がテーブルに手を叩き付け、テーブルを真っ二つに割る。
帝督が自分のホットドックを持ち上げながら百合子を睨む。
「物に当たるなよ・・・。俺のザクロコーラが零れただろうが」
地面に模様を描いている自分の飲み物を見てため息をつく。
「チッ・・・・・」
「じゃあそろそろ行こうぜ。そのインデックスってガキを助けにな」
「あァ、足ひっぱンじゃねェぞクソメルヘン」
「こっちのセリフだ白もやし」
二人はそう言い合うと、おのおのの能力を使い音速の数倍で移動し始める。
二人は音速の数倍で並走しながら飛び回る。
「で、敵はどんな奴なんだ?」
「昨日会った神父と痴女だァ」
「なるほどね・・・・」
会ったときから感じていた違和感はやはり闇側の存在だったからかと納得し、周りを見渡す。
「どうすんだよ。たった二人をこの広い街でどうやって見つけ出す?」
「妹達を使うに決まってんだろォが」
「なるほど」
この街や世界中のいろいろなところに点在している軍用クローン。彼女たちはある脳波ネットワークで繋がっているために一人に聞けばほかの全員分の情報も集められるからだ。
「おいクソガキっ。ミサカネットワークの中覗いて季節感無視した真っ黒な神父服着てる赤毛と長身でポニーテールの痴女ババァを見つけたら俺に連絡をよこせ」
「クソガキじゃないもんっ、てミサカはミサカはその呼称を止めてって文句を言いながらそれでも健気に情報を集めてみるっ」
電話の向こうから幼い少女のむくれた声が聞こえる。
「あァ、頼むわ」
「あ、そうだっ。このお礼はお父さんを一日貸してくれるってのはって、ミサカはミサ」
最後に聞こえてきた要求を無視して電話を切るとため息を吐く。
「アキが居ればなァ」
「確かにあの動物的直感は宝探しには向いてるよな」
いくら言っても無い袖には触れれないと知っている二人はいったん別れて捜索し始めた。
「あっ、やっと繋がった。そういえばさっきミサカの要求を聞かないように電話を切ったなってミサカはミサカはさっきあなたがいきなり電話を切ったことに少しだけ怒ってみたり」
「ンな事はいいからさっさと教えやがれ」
「しょうがないな・・・・神父の人だけど、第七学区にあるスーパーで買い物してたって、ミサカはミサカはつい先ほど手に入れた情報を伝えてみたり」
「第七学区だと?場所はどこだ」
「妹達の一人が働いている、いつもあなたが買い物をしているスーパーだよってミサカはミサカは即刻返答っ」
「な・・・・・」
自分が住んでいる寮からわずか数百メートルの場所で買い物をしていることに百合子は唖然とする。
「しかもかなりの食品を買ってるから、もしかすると近くに住んでいるのかもってミサカはミサカは自分の推理を披」ブチッ
電話の向こうで少女がそういったのを聞いた百合子はすぐさま電話を切り、帝督の携帯電話にかけ直した。
「おいクソメルヘン、すぐに寮の近くに戻れっ。神父の野郎ォの目撃情報があった」」
「ったく、わかったよ」
すぐに切れた携帯をしまい、自らも全力で寮まで戻り始めた。
「ステイル、彼らが戻ってきたようです」
ある部屋の一室で外を覗いていた女が寝ている少女のそばに座っている神父に話す。
「ああ、分かってる」
彼の手元には一枚のルーンがあり、それは特定の魔力の持ち主が近づくと反応するようになっている。
「だがここでこの子を奪われるわけには行かない。なんとしてでも上条さんに届けるんだ」
「はい、そうでなければまたこの子の記憶を奪わなければいけなくなりますからね」
禁書目録、それはイギリス清教が誇る対魔術師機関の中でも最終兵器に値するほどのシステムの名称。
魔術を知り尽くし、敵の魔術の解を乱し、無効化する。
だがその為に作られた兵器はあまりにも強力で、結局所持者のイギリス清教さえも恐怖した。
だからその人間兵器はイギリス清教による一年に一回のメンテナンスという名目の鎖で縛られた。
「今回こそは、今回こそはこの子の記憶を奪わせない。もう僕らのような悲しい思いは誰にもさせない」
神父はそう言うと魔術の準備に取り掛かる。
彼の魔術は貼ってあるルーンの枚数によって効果が上がる。
その為、追撃戦などの動き回る戦いには向いていないが、拠点の制圧戦、防衛戦には類稀なる強さを発揮する。
彼が彼の守りたかった少女のために生み出した魔術は数々の敵を焼き尽くしてきた、がそれは今まで一度も彼の願いを叶えては居ない。
それを果たす時がようやく来たのだ。
「絶対に救って見せる」
神父はただ黙々と少女を助けるために自分の生み出した全てを出し切るために立ち上がりドアに向う。
「僕は準備をしてくる。神裂、この子を頼んだ」
「分かりました、あなたも気を付けて」
「分かってる」
神父はそう言うと部屋を出て行った。