とある上条さんの年齢変換   作:亀さん

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七月二十日 そのニ

 

「どうだ?」

早朝に出かけていた当麻は駒場が率いるスキルアウトに与えた様々な設備の整ったアジトで少年達に進展の度合いを問いかける。

 

「駄目だ、幻想御手っぽい物はなに一つ見当たらねえ。まあ、これくらいで見つかってりゃアンチスキルが見付けてるか」

「・・・・気絶した使用者の家に第六位が忍びこんで探索したが特別な装置は見当たらなかったそうだ」

 

「じゃあ、共通していたものは見つかったか?」

「あ~、わりいんだがな大将。使用者は全員が中高生の学生たちだぜ?」

「そうか・・・・・、じゃあ使用者の物品リストを並べられるか?」

「分かった」

半蔵と呼ばれている少年が後ろにいる一人に合図をすると、室内の電気が消え、スクリーンに画像が映し出される。

 

「まぁ、別段不思議な物はねぇな」

「だろ?どうやって能力のレベルを上げてるのか俺が知りたいくらいだ」

「いや、まてよ・・・・」

当麻の目線はスクリーンに映し出されているある一つの品物に止まる。

 

 

「解った・・・」

 

 

「はぁ!?」

「・・・・本当か?」

「ああ、半蔵っ」

「なんだ?」

「陽華に連絡しろ、なんとしてでも使用者が使っていた音楽プレイヤーを集めてこいってな」

「了解」

少年はそのまま携帯から陽華に使用者の名前と当麻の指示を伝える。

 

「浜面はスキルアウトの中でも戦える奴を連れて見周り」

「ま、それ位しか俺には出来ねえからな」

「駒場は使用者が持っているだろう何らかの音楽ディスクのルートを見付けだして情報を浜面と俺に連絡しろ」

「・・・・・解った」

 

 

「じゃ、頼んだ」

 

 

当麻はそう言うとそのまま冥土帰しの病院に向かった。

 

 

当麻は顔なじみとなっている程にお世話になっている医者の部屋にやってきた。

「先生、頼みたいものがあるんですけど」

ノックして中に入るとその医者は自分のデスクにあるコンピューターの前から退き、

当麻にその画面を見せる。

 

「これのことかい?」

「・・・・さすがですね」

どこからその情報を手に入れたと、当麻が呆れていると冥土帰しは君もだけどね?とつぶやく。

 

冥土帰しは当麻の横から画面を覗き込むと米神を指で押さえる。

「まったく、こんなことを考える人間はアレイスターぐらいだと思っていたんだけどね?」

「幻想御手は妹達のミサかネットワークを応用した物らしいですからね・・・・」

当麻がそう言った時、わずかに顔を暗くしたのを医者は見落とさなかった。

 

「・・・・・妹達は君の責任で生まれた訳じゃないと思うけどね?」

「俺のせいですよ。俺がアレイスターと立てた計画を天井亜雄が再利用したからあいつ等は生まれてきて、そして実験動物として殺されるとこだったんですから」

自分に怒りを抱いている当麻に冥土帰しはため息をつくと当麻を見る。

「ま、いいけどね?これだけは一つだけ言っておくよ?」

 

 

「思い上がるなよ。個人の力なんて高が知れてる、全てを救うなんて神にでもなったつもりか?」

 

 

さっきの穏やかな表情から一変して当麻に怒鳴りつける。

「全員を救いたいのは僕だって一緒だ。だけどこの街に根付いた闇は到底一人では排除できないってことが闇の最深部に生きる君なら分かるだろう?」

「それは分かってます。全てを救うなんて一回も考えてないですよ先生。俺はただ・・・・」

 

 

 

「せめて俺の手が届く範囲のガキ共は傷ついて欲しくないだけなんです」

 

 

 

それでもそういった当麻に冥土帰しはため息をつくとデータのコピーが入った封筒を差し出す。

「なるほどね・・・・、でも気を付けるんだよ?あまりに責任を負いすぎると周りが見えなくなるからね?」

「分かってますよ」

「なら早くこれを持って行ってくれるかい?次の患者さんを待たせているからね?」

「ありがとうございました」

 

 

 

 

扉を閉めて帰っていった当麻にため息をつくとすぐそこに立っている助手の一人に声をかける。

「まったく、彼には困ったものだね?君もそう思うだろ?」

「本当です、あの人が居なかったら私や妹たちはどちらにせよ存在できなかったのですから、とミサカは憤慨します」

以前よりだいぶ表情を表せるようになった妹達の一人がむくれながらそう言う。

 

「彼は知るべきだね?彼がどれだけの人間を救っているのかをね?」

いまでも世話をかける少年のままな青年に苦笑を漏らしながら冥土帰しは次の患者を呼ぶボタンを押した。

 


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