「さ、仕事に行きますかね」
残っている仕事を思い出し、百合子たちに別れを言って目的地に向う。
「これ以上、昏睡していくガキを見過ごすわけにも行かないしな。」
先と変わり真剣な表情になった当麻は電話をかけ、車を呼んだ。
そこらへんとなんら変わらない見掛けの乗用車の後部座席に座っていた当麻はふと思いついたように目を開いた。
「浜面、幻想御手って知ってるか?」
当麻は車を運転しているスキルアウトの少年、浜面仕上に問いかける。
「知ってるけど、それがどうしたんだ大将?」
「お前らのチームに第七学区での回収を頼みたい」
「・・・・・それは俺じゃ決めれないんだが」
困ったような顔で浜面が言うと当麻は目的地の変更を伝える。
「じゃあ駒場の居場所に連れて行け」
「了解っ!!」
当麻が乗った車は一気に方向転換しスキルアウトのアジトに向い始めた。
「ここだぜ大将」
浜面がある程度広い路地裏の前で車を止めるとそう言った。
「ああ、じゃあ帰りもここに足を用意しといてくれ」
「はいよ」
浜面にそう頼んだ後、当麻は薄暗い路地裏に踏み込んでいく。
「止まれ」
物陰に隠れた少年が当麻に声をかける。
「駒場に依頼を持ってきた。すぐに知らせろ」
当麻がそう言うと、少年はそこから奥の建物に走っていった。
しばらくすると、その少年が戻ってきて当麻を先導する。
「依頼内容を聞こうか・・・・・」
声の主は熊のように大きな体躯を二人がけのソファーに沈めながら当麻を射抜く。
「幻想御手の捜索、およびそれの回収だ」
「我々に何の得があるというのだ・・・・・・?」
「それによって一時的に力を付けた能力者の暴走による被害が減るな」
すでに何人もの人々が被害にあっている、その中に彼のグループのスキルアウトや何の力も無い無能力者も被害にあっているはずだ。
「・・・・分かった、ただ何人かの手伝いが必要だ」
「ふむ、なら陽華と帝督を出そうか」
「・・・そんなに手駒を出していいのか?」
「ああ、まだ俺にはユリにアキがいるからな」
「・・・・・・ならいい、雇用主に死なれては俺たちが困るからな」
「じゃあ頼んだぞ」
当麻は席を立つとそのまま扉を開け外に出て行く。
「・・・・恐ろしいな」
当麻が出て行った扉を見つめながらスキルアウトのボス、駒場利徳は冷や汗を流しながら呟いた。
先ほどの会話の中で自分たちを手伝うために送られる人材、陽華に帝督、この二人はこの街に在籍している180万人を超える生徒の中で五本指にはいる実力を持っている。
そして、
その強大な力を持つ二人を簡単にほかの仕事に派遣することができる程の層の厚さに駒場は戦慄する。
「敵に回したくは無いものだ・・・・・」
そう呟きながら目を閉じ、依頼の達成のための作戦を考えるため仲間の少年を呼んだ。
車に乗り込んだ当麻は携帯から帝督に電話していた。
「そういう事で、その怪我治ったらすぐに駒場のバックアップに入れ」
「あ~了解」
「じゃあな」
気の抜けた、嫌そうな返事が返ってきたのを確認すると当麻は電話を切った。
「次は陽華か・・・」
電話番号をプッシュし、電話をかける。
「あ、もしもしっ。当麻さんですか?」
「ああ、お前に仕事ができた」
「え~と、どんな仕事ですか当麻さん?」
「幻想御手の捜索と回収だ。やってくれるか?」
「はいっ、当麻さんの為ならたとえ火の中水の中、当麻さんが入ってる浴室の中まで」
「最後のはお前の欲望だろうが・・・」
「てへっ☆」
「あ~、電話越しでは見えないから意味無いぞ」
「そ、そうですか・・・・」
「ま、頼んだ」
「はいっ、陽華にお任せください」
当麻は電話を切り、運転している少年に声をかけそこで車を止めさせる。
「さ、俺は証拠集めかな」
この事件を起こした黒幕を正規の手段で捕まえようと当麻は情報を集めるために街中を歩き始めた。