「イテテテっ」
「ったく、お前もつくづく命知らずだよな・・・・」
体のいたる所がありえない事になっている帝督の腕に添え木になりそうなものを当てて応急処置をしている当麻は呆れながら呟く。
「そういや当麻君も同じような感じで吹き飛んでる時があるけどさ、なんで無事なんだ?」
当麻は右手に幻想殺しがあるだけで、ほかの部分は人間の肉体である。
しかし百合子の攻撃を喰らって吹き飛んでも何も無かったかのように立ち上がる当麻に帝督は疑問を抱いていた。
「ああ、ただの肉体だけじゃもたねえからな。魔力で強化してんだ」
「魔力・・・?」
「おっと。ん~、まぁ人間が生命力を精製して作るエネルギーの一種だと思っててくれ」
「だがそれだとその魔力、ってのも当麻君の右手の対象にならねえか?」
「なってたぞ、数年前まで」
「・・・・・・・?」
余計に疑問が増えたと言いたげな表情に当麻が苦笑する。
「ま、そんなことよりお前はもっと普通にユリと接しろよ。今のままじゃただの変態だぞ」
「俺に常識は通用しねえっ!!」ドヤァッ
「うん、どう見ても変態です。本当にありがとうございました」
当麻は呆れながらもこの手のかかる少年の応急処置を終え、顔なじみとなっている医者に電話して予約を取る。
「帝督、冥土帰しのとこに行って治療してもらってこい」
「おう、じゃあな当麻君」
歩いていく帝督の背中に当麻は声をかける。
「いい加減、ユリにちょっかい出すのやめろよな。顔合わせるたびにあの病院に通ってたら話になんねえぞ?」
「無理に決まってるだろ当麻君」
少年は当麻のほうに振り向き、笑う。
「だってこれが俺が選んだ百合子との関係なんだからさ」
この先もあの少女が自分に振り向くことは無い事を知りながら、
それでも少女と一緒にいるために『悪友』を選んだ少年は当麻に向って笑う。
「そうかい、じゃあ俺は何も言わねえよ」
「まぁ当麻君が百合子を振ってくれれば俺がもらうけどね」
「ば~か、ユリは俺なんか恋愛対象として見てねえよ」
「・・・・そんな訳ねえから困ってんだけどな・・・・・」
帝督は当麻がそばにいない時に少女が浮かべる寂しそうな顔を思い出し呟く。
「アンタが鈍感すぎるだけだっての・・・・」
帝督はそういい残すと歩き去っていった。
帝督が去っていってから少したった後、当麻が呟く。
「・・・・・・まぁ、俺がガキ達をそういう目で見るわけにもいかねえからだけどな・・・・」
「ロリコン扱いは嫌だし」
帝督の呟きを全て拾っていた当麻は苦笑しながら帝督の去っていったほうを見ていた。