一方、修行を始めている二人は音速を超え続ける超高速戦闘を繰り広げていた。
「どらぁあああっ!!」
さまざまな色の爆発と共に、青年に向って言葉にできない何かが勢いよく飛んでいく。
「大技を使いすぎだ、隙が大きすぎる」
それを難なく避け、いまだ体勢を立て直していない軍覇の懐に低く潜り込むとアッパー気味に左拳を繰り出した。
「なぬっ!?」
いつの間にか懐に潜り込んでいた当麻に少しだけ軍覇の挙動が遅れたが、何とかこれをガードする。
しかしこれを待っていたかのように当麻は右拳を軽く握り後ろに引く。
「力に頼るなよ軍覇、力のごり押しが通じるのは自分より弱い相手だけだ」
当麻は軍覇の注意が下にむいた瞬間、体を回転させ右拳を軍覇目掛けて打ち出す。
「ぐぼぉっ!?」
軍覇はその衝撃に耐えきれず、地面をバウンドしながら転がった。
当麻は速度を緩め、軍覇のほうを見る。
「どうした軍覇、もう止めるか?」
それを聞いた軍覇は負けじと砂を服に付着させたまま勢いよく立ちあがった。
「もういっちょうっ!!」
「よし来たっ」
また二人はスピードを上げ、あたりに地面を蹴る音だけが響く。
「オラララララララァッ!!」
今度は音速を超えるスピードで肉弾戦を挑んできた軍覇の攻撃を当麻は全て捌いて行く。
「足元がお留守だぞっと」
「えっ!?」
しかし軸足を当麻に蹴られ、軍覇は一回転して地面に転がる。
「ほれ、水浴びでもしてこい」
当麻はそのまま倒れている軍覇を川に蹴り込んだ。
「根性だぁ~っ!!」
「反射」
「未元物質」
「七閃」
「君達ずるくないかいっ!?」
突如起こった爆発により舞い上がった大量の水は周りに居た四人にも降りかかるが、
そこに居たのは自分に向かってきた物体のベクトルを反対にして跳ね返す防御を持った少女や翼を生やし、傘代わりに使う少年、ワイヤーを人外の力と精密な動作で操り、直ぐに石で出来た簡易式の屋根を作りだせる女だったりしたので、ずぶ濡れになったのはたったの一人だけだった。
その爆発を引き起こし川の水を撒き散らして上がってきた軍覇は当麻の前に戻ってくる。
「もう一回、お願いしますっ!!」
「おう、行くぞ軍覇っ」
「はいっ!!」
それからも相変わらず、攻めた軍覇が吹き飛び戻ってくるのを続けているともともと待つのが苦手な少女は嫌気がさしてきた。
「まだ終わンねェなァ・・・・」
土手に寝転びながら、今だ修行している二人に呆れながら昼寝をしようと少女が目を瞑ろうとすると、先ほどまでギラギラと輝いていた真夏の太陽が何かによって遮られる。
「缶コーヒー買って来たけど、飲むか?」
「あァ、飲むわ・・・・・・」
帝督が買ってきた缶コーヒーを受け取った百合子はその缶コーヒーを見て固まった。
「な、なァ垣根くン?なンでこの缶コーヒーの蓋が開いてンだ?」
「決まってるだろ?俺が一口貰ったからなっ!!」
「じゃあテメエが処理しろよっ!!」
百合子は目の前で「ついでに間接キスも貰おうかと」と胸を張って言っている変態目掛けて思いっきりその缶コーヒーを投げつける。
「ゴバァッ!?」
缶コーヒーの缶と侮るなかれ、百合子が投擲したそれは音速を超え、変態の眉間を的確にとらえた。
「どォしてそンなに垣根くンは変態なンでしょうねェ?あァっ!?」
地面で目をまわしている帝督を百合子が百二十パーセント本気で踏みつける。
「ふ・・・・、そんなの決まってるじゃねぇか」
「お前が可愛いからだっ!!」
某マンガなら背景にドンッ!!と書かれるような決め顔で帝督が断言する。
「お前に言われてもうれしくねェってのっ、気色悪りィ!!」
「ぐぎゃああああああ」
まあ、今ので完全に切れた百合子が、修行が終わって戻ってきた当麻が止めに入るまで帝督をミンチにしようと踏み続けたのはまた別の話。