「さ、さぁ、修行を始めようか軍覇・・・・・」
川原で軍覇の前に立ち、当麻は顔を引きつらせながら言った。
当麻の表情を見た少年二人は当麻に質問を投げつける。
「師匠っ、なんでそんな顔をしてるんだ!?」
「そうだぜ当麻君、そんな大人な体系の美人が抱きついてくれてるのになんで顔を引きつらせてるんだ?」
「(お前ら、わざわざピンポイントで地雷を踏むんじゃねぇっ!!それに帝督っ、お前は理由分かってんだろっ)」
当麻は内心で二人に怒鳴るが軍覇はもとより、白い悪魔にボロボロにされた帝督は少し離れたところに立ち、ニヤニヤしながら『大人な体系の美人』を特に強調する。
「そォだよなァ、上条くンはそいつみたいに大きな女が大好きだもんなァ・・・・」
「げっ・・・・」
帝督の横に立っていた少女を当麻が見ると、少女はその赤い目に怒り七割、悲しみ三割の混じった視線で当麻を睨み付ける。
「い、いやそ、そんな事は無いと思うぞ、うんっ」
「そうなんですか先輩・・・・?」
「ぐっ・・・・」
少女の機嫌を良くする為に否定しようとした当麻は、抱きついている美人にそう言われ言葉に詰まる。
当麻が頭を抱えている中、今のやり取りの中で視線が交わった二人はすぐに理解した。
「((コイツ(この少女)は当麻くン(先輩)に依存しているっ!!))」
片や学園都市最強の超能力者、片や世界に二十人といない人間を超越した聖人、
同じような境遇の二人は自分にとって有一と言ってもいい程に少ないただの少女として甘えられる存在である当麻を取りあうライバルの一人であると。
当麻に抱きついていた女は当麻から少し離れ、少女と相対する。
「・・・・・そンで、当麻くンに抱きついてるテメエはいったいどこのどいつなンだよォ?」
「あなたこそ誰なんです。先輩に親しい方のようですが?」
「当麻くンは俺の保護者ですゥ」
「ぐっ・・・。し、しかし、先輩はイギリスにいたときは私の保護者代わりでしたっ。それにいろいろ教えてもらいましたしっ」
「なっ、で、でもオレは当麻くンと一緒に住ンでるしっ。ここ二年ぐらいっ」
「わ、私も一緒の部屋で住んでましたよっ、一年くらいですが」
それを聞いた百合子がニヤリと勝ち誇る。
「だよなァ、当麻くンと一番一緒にいるのはオレだもンなァ?」
「で、ですが先輩がイギリスに来たときは今でも私の部屋に泊まってくれますっ」
「な、だ、だけどオレは当麻くンの部屋に何度も入ったことがあるしっ。か、家族だからなァ」
「私も入ったことがありますよっ。それにこの前来たときこれを貰いましたしっ」
「オレもこれを貰ってるし」
「ですが私は・・・・・」
その二人の様子を少し離れたところで見ている男性陣は、その光景を茫然と見ていた。
「なんなんだありゃ・・・・」
「僕に聞かないでくれるかい?」
帝督が唖然としている横で赤毛の神父が煙草を吸いながら首を振る。
この神父から自分と同じような物を感じた帝督は自分の体験談を自然に話しだした。
「・・・・・知ってるか?この前、俺がデートに誘って出かけた時な?わずか数分で当麻君を見つけたからってその場でサヨナラだぜ?」
「ふっ、なら僕の仕事場に来るかい?あそこは仕事中でも上条さんが来たってだけで帰り始める人間の巣窟だぞ?」
「・・・・・お前のところ、仕事大丈夫なのか?」
「上条さんにがんばれよって言われただけで仕事の速度が倍になるからいいんだけどさ」
「苦労してんだな」
「君のところも同じようなものじゃないか?」
「・・・大丈夫だ、自覚はある・・・・」
「・・・・・」
「「はぁ・・・・」」
少女たちは競争に盛り上がり、軍覇に連れられ当麻が修行に行った為、やることが無くなった帝督と季節感完全に無視したように真っ黒な神父服を着た少年は一緒に肩を落とした。