「あァ、もう朝か・・・・」
「そうだぞー、上条から聞いていたがユリはほんとにねぼすけさんなんだなー」
「ン?あァ、舞夏か・・・なンでここにいるンだ」
少女は自分の顔を覗き込んできた少女が隣の家に住む、土御門元春の妹で友人の舞夏だと分かり、首をかしげる。
「上条に頼まれたからだぞー」
「はァ?」
「上条はユリが風邪をひいたんじゃないかと心配しててなー。昨日の夜にうちの前で土下座して私にユリの看病を頼んできたんだー」
そのとき家の兄貴が勘違いして大変だったけどなー、と舞夏が気楽に言っているが、その兄貴が最高位の陰陽師の実力を遺憾なく発揮し、あと少しで第七学区の三分の一が消し飛びそうになっていたのを舞夏は知る由も無かった。
「で、昨日上条と何してたんだー?」
「何もねェよっ」
もうきらきら輝いて見えるほどのいい笑顔で少女を見ている目の前のメイドにから逃げるように布団にもぐる。
「そうかー、私と兄貴の予想ではユリが上条と病人プレイぐらいしそうだと思ってたのだがなー」
「なっ、なンで知ってやがる!?」
正確には少女の想像内でだが、盛大な自爆をした少女にメイドはニヤニヤと見つめる。
「ほほー、これは兄貴や御坂にも教えてやら無きゃなー」
「ちょっと待てェ!!」
「って、うわぁっ!?」
踊るように上機嫌で出て行く舞夏を追いかけようとした少女はいきなりドアの前に現れた壁を避けれず、激突した。
「何が起こっ・・・・・」
「いってぇ・・・・」
少女の下敷きになったその青年は、壁にぶつけた頭をさすりながら上体を起こした。
ちなみに今、少女は青年の太ももあたりに馬乗りになっていたため、
「いつつ、ユリは大丈夫だったか?」
「・・・・・・・」
「おーい、大丈夫かー?」
少女の目の前に青年の顔があと数センチの位置に来る。
「・・・・・・・」バタッ
「おいっ!?しっかりしろユリっ!!舞夏っ、ユリが真っ赤になって倒れたぞ!!」
顔を真っ赤にして倒れた少女を抱え、必死に舞夏を探すが、机の上に紙が一枚、
『馬に蹴られて死にたくはないので、私は帰るぞー』
とだけ書かれていた。
「ここに馬がいる訳ねえだろ・・・・」
「・・・・・」キュ~
この部屋には見当違いな事を言っている青年と、青年に抱えられながら顔を真っ赤にして眼をまわしている少女がいたという。