IFストーリー〜もしも過去に残っていたら〜   作:幼馴染み最強伝説

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到着!セカンド幼馴染

 

「まーくんに会う為にぃ、IS学園よ!私は帰ってきたぁ!」

 

「おい、帰ってきて早々、多方面から突っ込まれそうな事言ってんじゃない」

 

「いやぁ、なんか言わないといけない気がして、つい」

 

束から日本に帰ってくるとの旨を伝えられた三日後。

 

政府の懇願に次ぐ懇願で手続きが終わってからとの事で、日本に到着次第、空港まで迎えに行くと連絡をしていたにもかかわらず、この兎はよりにもよって、その前日。つまり今日の朝、IS学園の入り口に立っていた。鈴を連れて。

 

いきなり部屋に突撃してこなかっただけ、ミジンコ並みに自重を覚えたようだが、相変わらず予定や計画を守れないというところは変わってないらしい。

 

「さて……一応聞くが、『それ』で帰ってきたのか?」

 

俺が指差したのは二人の後方にある縦横十メートルぐらいの正方形の物体。真っ黒なそれはどう考えても昨日まではなかった代物だ。何せ、学園前の道路を完全に封鎖している。

 

「まあねー。最初は飛行機にしようと思ったんだけどーー」

 

「師匠ってば、将輝さんに会えるってわかって限界だったらしく、人道的な範囲で無茶をした結果、これに……」

 

げんなりしている鈴を見ればわかる。多分、これは起きたらもう乗せられていた感じだろう。

 

「……馬鹿なの、お前?つーか、普通に来なきゃ追い返すって言ったよな?」

 

「あっはっはー、何を言ってるのか、さっぱりだよ、まーくん。それにねー、束さんはもちろん」

 

「馬鹿に決まってるじゃないですか、師匠ですよ?」

 

「ああ、そうだったな」

 

「ちょっ、鈴ちゃんもまーくんも何言ってるのかな!?私は天才だもん!馬鹿じゃないもん!」

 

「おう、そうだな」

 

「あー、そうですね」

 

「何、その適当な返事!?久しぶりに会ったのにこの扱いは酷いよ!でも、まーくんが相手ならそれも性的興奮に変わるというか」

 

「それ以上言うな、変質者」

 

何言ってるですかね、この阿呆は。

 

とはいえ、これがマジなので掘り下げはしない。いや、本当に俺も悪かったと思っている。まさか、本当に目覚めるとは思っていなかった。良い子の皆、可愛いからってイジメるのはやめような。色んな意味で良くないぞ。

 

「さてと、おふざけはこの辺にして」

 

「いや、お前大概ふざけてるだろ」

 

「うん、まあそうなんだけどね。話の腰折らないでね。鈴ちゃん、いってみようか」

 

「はい。では、早速」

 

鈴は肩にかけていたボストンバッグ二つを地面に置くとーー。

 

「はっ!」

 

殆ど予備動作なしに腹部めがけて拳を放ってきた。

 

まさかいきなり攻撃してくるとは驚いたが、止められない速さじゃない。俺は普通にその拳を受け止めた。

 

「なかなかの威力だな。強くなったみたいでなによりだ」

 

手のひらに伝わる感触に、鈴の実力が感じ取れた。最後に会ったのは二年前。いやはや、束の無茶苦茶な指導の元、よくここまで強くなったものだ。身も心も。

 

「はぁ……その割には将輝さん達って、本当に涼しい顔で止めますよね。お世辞言われてるみたいで自信無くしそうになるんですが」

 

「そこはごめん。大人の意地みたいなもんだ。強がりたいもんなんだよ」

 

「強がりとか、実質世界最強の人がいう言葉じゃないですよ、本当に……」

 

俺は努力で得た力っていうのとはちょっと違うしな。実質最強でも、実力=自信とならないので、自分で最強だとはあまり豪語出来ない。

 

まあ、それはともかく。

 

「ようこそIS学園へ。歓迎するよ」

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転校生が来た。

 

この時期に、と騒ぐクラスメイトを尻目に俺は息を飲む。

 

確かにこの時期に、まだ始まって一月も経っていないこの状況で転校生が来るというのは首をかしげるだろう。それはわかる。

 

だが、その程度の事は俺も知っている。何の理由で、何が目的かなんて、この世界を知っている俺からしてみれば、造作もないことだ。伊達にこの世界がISとわかった瞬間に、覚えているありったけの事をノートに書き写し、あの化け物教師の影響で変わった部分と照らし合わせつつ記憶したわけじゃない。日常パートはともかく、ストーリーに関係する事は全て覚えてる自負がある。

 

だからこそ、俺は息を飲んだ。

 

何を隠そう、このクラスに来る転校生はメインキャラ。あの化け物教師の影響を受けた人間の一人なのだ。ソースは一夏。つまり、その転校生も原作なんて見る影もないくらいにーー。

 

「初めまして!私の名前は凰鈴音!もう知ってるかと思うけど、中国の代表候補生よ!専用機の関係で入学するのが遅れたんだけど、これからよろしく!」

 

あーだこーだと考えている内に教室に入ってきて壇上に立っていた凰が、元気な声で挨拶をする。

 

その明朗快活と言える様子は確かに原作における凰鈴音のイメージと一致している。いや、普通は転生したからって変わらないはずなんだけどよ。奴の影響力はどれほどのモンなのか、そこは無視できねえ。

 

パチパチと拍手が聞こえ、凰は満足そうに頷く。まぁ、あのキャラで浮く事はねえな。

 

「ところで、このクラスの代表って誰?」

 

唐突に投げられた質問に、クラスメイトの視線が一気に俺に集まった。

 

俺が何を言うでもなく、凰にそれは伝わり、ものすごくイイ笑顔を見せて、こちらに歩いてきた。

 

「八重垣龍二、で合ってるわよね?」

 

「お、おう」

 

なんで俺の事を?とは聞かねえ。いくら化け物教師やイケメン主人公に見劣りするとは言っても、世にも珍しい三人しかいない男性IS操縦者の一人なんだ。知らない人間の方が少ないのはわかっている。

 

「単刀直入に言うわ。クラス代表をーー」

 

「変わりゃいいんだな?OK、変わる」

 

凰が言い切る前に、俺は先に肯定の返事をした。

 

何故わかったのか、それは至って簡単。あっちのクラス代表は一夏。そしてこの凰は一夏の事が好きだ。多分、その辺は変わってねえはずだ。なら、クラス代表交代を持ちかけてきても何にもおかしくないし、むしろ大歓迎だ。

 

俺の返事が意外だったのか、凰は目を瞬かせると怪訝な表情を見せた。

 

「普通聞くのは逆だと思うんだけど一応聞くわ。どういうつもり?」

 

「断る理由がねえ。あっちのクラス代表はISも腕っぷしもバカみたいに強い。俺みたいなのじゃ手も足も出ないし、クラス対抗戦で醜態晒したくねえ」

 

あんなのと戦えるわけがない。ビットのレーザー光線を斬り払うようなやつだぞ。原作みたいな状態なら頑張れば勝機も見えるだろうが、あんなの逆立ちしたって勝てるわけがない。俺は人間なんだ。

 

「そ。まぁ、妥当な判断よね。少しは鍛えてるみたいだけど……せいぜい二年半前の私と互角ぐらいだし」

 

「……褒めてんのか?」

 

「少なくとも貶してはないわよ。褒めてるかって聞かれても怪しいけどね」

 

凰はそう言って肩を竦めた。まぁ、確かに貶してるようには聞こえねえな。凰は至極単純に力量を測っただけっつーことだろう……つっても、見た瞬間にどれぐらいの強さかわかるってどういう仕掛けなんだよ。

 

「そういうわけで、先生。クラス代表交代するんスけど、双方同意の上っつーことで、OKっスよね?」

 

俺が言うと、先生は一瞬迷うような素振りを見せたが、頷いてくれた。元々、原作の一夏同様に男子だからって理由でクラス代表に任命されただけだし、あんな化け物と闘わずに済んだのは非常にありがたい。一発も攻撃が当たらずにボロ雑巾にならずに済んだんだからな。

 

専用機もある事にはあるが、性能バランスは俺の方が圧倒的に良くても、操縦者の技量差が歴然。それなら一点特化のあっちの方が有利なんだ。攻撃力は馬鹿高く、結構速い上に本人の影響で手数もある。

 

はぁ………本当にここってISの世界なのか。全員(生身で)強すぎんだけど……。

 

憑依転生ってろくな事ねえなぁ……。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーってわけなのよ」

 

「そうだったのか……鈴も大変だな」

 

「う、うむ。私も尊敬するぞ」

 

「な、なんといいますか……篠ノ之博士は尋常ならざる方なのですで」

 

鈴が転校してきたということで、昼休みに食堂に集まり、昼食も兼ねて久しぶりの再会と顔合わせをしていた。

 

新顔のセシリアと軽く自己紹介をした後、鈴の話を聞いていたが………束さんはあっちに行っても、相変わらずだったらしい。その成果なんだと思うが、鈴はかなり強くなっているようだった。これは闘うのが楽しみだ。

 

「……天才は総じて変人。偉い人も言ってた」

 

「だね~。あれ~、でも藤本先生は~?」

 

「……あの人は天才じゃないらしいから。だからいいの」

 

天才は総じて変人……か。その法則で行くと、俺達も微妙に変人の類で、それでいて千冬姉達も変人なんじゃ……。

 

「一夏。言っておくけど、あたし達はともかく、師父達は変じーー」

 

「誰が変人だと、凰」

 

鈴の言葉を遮ったのは、いつの間にか、その背後に立っていた千冬姉だった。

 

全く気配を感じさせなかったのに、気づいた途端、ものすごいプレッシャーを放っていた。

 

怒ってはいない。

 

怒ってはいないはずなのに、冷や汗が出てきた。

 

「い、いやですね、千冬さん。あたしは決して千冬さん達の事を変人だとは思ってませんよ!」

 

「ほう。『変人だとは』か?では、なんだと思っているんだ?」

 

「へ?あ、あー……」

 

「つけもしない嘘をつこうとするな、馬鹿者。それとも、そんなに私と闘いたいか?」

 

「む、無理です!あたしはまだ死にたくありません!」

 

「安心しろ。私も鬼ではない。今日から教え子になる者を殺したりはせん。ああ、殺したりはな」

 

千冬姉……それって殺さないだけで、それに近い状態にはなるって事じゃーー。

 

「織斑先生。あまり生徒で遊ぶのは感心しないな」

 

と、そんな千冬姉を呆れた声で諌めたのが師匠だった。

 

この人もこの人で気配が……いや、あれだな。単にこの人女子に囲まれすぎて、埋もれてるというか。本当に人間にモテるんだよな、この人。妙に惹かれるというか、多分人誑しなんだ。しかも天然の。

 

「ま……藤本先生こそ、あまり女子生徒をぞろぞろ引き連れるのは感心しないぞ」

 

「わざとじゃないんだ。こう、気づいたら……後、素が出てるよ、織斑先生」

 

師匠に指摘されて、千冬姉も押し黙った。なんだかんだで、千冬姉が公私共に頭が上がらない人間だもんなぁ。惚れた弱みっていうやつなのかもしれない。

 

「凰も。あまり変な事は口走らないように。今回は大目に見るが、度が過ぎると俺も見過ごせないから」

 

「は、はい。すみませんでした」

 

素早く頭をさげる鈴。基本頭を下げない主義の鈴も、相手がこの人達だと命惜しさにすぐ下げる。素直に謝れるのは良いことだ。と師匠は言ってたけど、理由はそれでいいのかな?

 

吸い寄せられるように千冬姉は師匠の方に行ったし、結果的に平穏が訪れた。毎度、口をすべらせる事に定評がある鈴だから、これが酷く懐かしい。

 

「全く……久々に会って早々、私達の肝を冷やしてくれるな、鈴」

 

「わ、悪かったと思ってるわよ。ただ、師父と一緒にいる時間が多くなってから、どうも考えるよりも先に口に出てる事が多くなってる気がするわ」

 

「あの……鈴さん?それは、なんといいますか……」

 

「……セシリア。言葉を濁す必要はない。情けは人の為ならず、日本の諺」

 

「鈴ちゃんは~、束さんに似てきたね~」

 

「なっ!?」

 

「本音はもう少し言葉を濁そうな……」

 

本音のストレートな発言に、鈴はガガーン、という効果音が聞こえそうなぐらいショックを受けていた。まぁ、確かに束さんに似てきたって言われるとショックだよな。あの人、尊敬できるところは色々あるけど、その分、ああはなりたくないなって思わされる部分も山ほどあるわけだし。

 

「ま、まあ、なんだ。二年も共に生活してきたのだ。少しぐらいは似てもおかしくはあるまい」

 

「……それを姉妹のあんたが言っても説得力ないわよ、箒」

 

より一層肩を落とす鈴に、箒は押し黙った。励まそうとしたのに逆効果だった事が自身にもダメージを与えるという結果になった事で、傷を負った人間が増えてしまった。

 

「……なんか思ってたよりも複雑そうだな。お前らって」

 

俺達のやり取りに、複雑そうな表情で龍二が言った。

 

さっきまで借りてきた猫のように静かだったのに、余程思うところがあったのかもしれない。

 

「そうか?」

 

「ああ……本当になんなんだろうな、この世界って」

 

「?」

 

龍二が急に詩人めいた事を言い出した。

 

そんなにおかしなやり取りだっただろうか。おかしいと思わない俺がおかしいのか?

 

「そういえば、一夏。あんたクラス代表なんだって?」

 

「ん?ああ」

 

気を持ち直したのか、鈴が思い出したように言う。

 

「あたしも龍二に代わってもらってクラス代表なの」

 

「そうなのか?」

 

「ああ。お前達みたいなのと張り合えねえよ。適材適所っつーわけ」

 

「理由はどっちでもいいわ。あたしが代表で、あんたも代表。この意味、わかるわよね?」

 

「……えーと」

 

「クラス対抗戦ですわよ、一夏さん。クラス代表同士が試合をしますの」

 

「でねー。優勝したクラスにはー、豪華景品があるんだよー!」

 

……そういえばそうだっけ。

 

クラス代表戦の時は、後のことなんて全く考えてなかったし、あの後も師匠が束さんや鈴が来るって言ってたから、完全にそっちのけだった。

 

「決勝がどうなるかはともかく、優勝するのは私か一夏かーー」

 

「ーー私もいる。四組のクラス代表は私」

 

「この三人ね。それまであんた達と手合わせするのは控えるから。期待しておきなさいよね」

 

「ああ。鈴がどれぐらい強くなったのか、期待してるぜ」

 

束さんは無茶苦茶な人だが、師匠曰く『ぶっ飛んでるが誰よりも理論的』な育成方法らしいので、それをこなしてきた鈴が弱いはずがない。きっと、あの頃よりも随分強くなってるんだろう。

 

言葉通り、期待せざるを得ない。

 

本当にここに来られて良かった。

 

憧れていた人達が通っていたところに来られて、友人や新たな強者とも出会えて、こうして互いに切磋琢磨し、あの頂を目指す。

 

俺にとって、このIS学園は、間違いなく最高の学園だ。

 

 


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