IFストーリー〜もしも過去に残っていたら〜 作:幼馴染み最強伝説
今回はいよいよ1章の最終話となりました!ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます!
それはそうと、忘れた頃にもう一度。
特に締め切り予定をしてなかったらfateに関するアンケートですが、2と3の接戦となっております。
ですので、もし宜しいのであれば、両方書くスタイルでも行ってみようかなと思っています。前回と状況が変わり、fateの二次創作も一旦終わってますから。
またアンケートの方、よろしくお願いします。
「ふぅ……いよいよか……」
俺はIS学園の制服に手を通し、洗面台にある鏡を使って、髪の毛を整える。
日課となっていたこの支度も、今日で最後だ。
三月一日。
俺達三年生はIS学園における学生生活最後の日を迎えることとなった。
「あ、藤本くん、おはよ~!」
「ん、おはよう。……っと、俺が最後?」
「うん。皆思うところがあるみたい。私もこうやって三年間使ってきたものを見てると、いろんな事を思い出すんだ」
そう言って、彼女は机を懐かしむように撫でる。
実は俺達三年生はクラスのメンバーが変わったりはしたが、三年間同じ教室を使用している。そして、クラスがずっと同じだった子は三年間同じ教室だったという事になる。そして彼女も、俺も三年間ずっと同じ教室で、俺の嫁達も全員同じ教室だった。
俺も彼女達ほどではないが、思うところはある。特に生徒会室なんかは色々なものが詰まっている。
「ええ。本当に懐かしいわね。こうしていると、貴方が来た日の事を思い出すわ」
腕組みをしたミハエが、俺の隣に立って言う。
「覚えているかしら?私が貴方と会った時のこと」
「ああ。いきなり銃ぶっ放してきたな」
「そうね。あの時は私は貴方のことが心底気に入らなかったもの。……けれど、思い返してみれば、あの時から貴方の魅力に惹かれていたのかもしれないわね」
「なら、なんでその後も襲ってきたんだ?」
「あら、世間ではそういうのをツンデレというのでしょう?」
微笑を浮かべて言うミハエだが、それは違うと思う。ツンドラの間違いではなかろうか。あの時のミハエにデレ要素は全くなかった。というか、何処でデレていたのか教えてほしい。
「とはいっても、今の私は貴方無しでは生きてはいけないから、ツンデレでは無くなってしまったわね」
そしてこのデレデレ具合はデレを通り越してドロである。
「私はね。本当に貴方に出会えてよかったと心からそう思うわ。もちろん、他の人もそう。今の私があるのは皆のおかげ。その中で最も貴方に影響を受けたわ。強くて、かっこいい、根っからのお人好し。私の、いえ、私達の白馬の王子様。貴方がここに来てくれて、本当に良かった」
ミハエがそういうと、クラスメイトたちはうんうんと頷いた。聞き耳を立てていたらしい。
白馬の王子様なんてガラじゃないし、そこまで言われるほどでもないけれど、この状況で今更否定する気はない。最後くらいは彼女達の意見に乗ってみよう。
「ああ。俺も皆と一緒だ。皆との出会いがあったから、今の俺がある。皆に愛してもらえて本当に良かったと思ってる……と、これ以上は卒業式まで。フライングすると、他のクラスの子に怒られるからな」
それに俺自身が皆に向けて言いたいこともある。ここでそれを全て言ってしまうのはなんか嫌だ。
「まーくんは相変わらずお預けするのが好きだね~。別に言っちゃっても良いと思うのに」
「お前はお前で何か言いたそうだな、束」
勢い良く飛びついてきた束によって、少しふらつくが、すぐに体勢を整える。
「私?それはもういっぱいあるよ?でも、まーくんが言わないから我慢する~」
力強く抱きしめてくる束の頭をよしよしと撫でるとにへらと笑う。こいつにも散々手間をかけさせられたが、お蔭で暇だと思う日はなかった。良くも悪くもな。
「束の口から『我慢』という言葉が出るとはな。明日は隕石でも降るか」
「酷いよ、ちーちゃん。私だってまーくんの為なら我慢するもーん!」
「はっ、どの口が言うか」
束の抗議を鼻で笑う千冬。いや、全くもってその通りだ。こいつは基本的に我慢できた試しがない。それこそ見返りがあれば問題ないが、見返り抜きでは一体どんなことをしでかしていたかわかったもんじゃない。
「だが、まあ。何も言わずにしでかしてから言うよりは遥かにマシになったがな」
「そうそう。タバねんは常識知らずだからナー。もう『我がルールだ!』とか言っちゃうし」
「何処の英雄王だ。人類最古のジャイアニズムじゃないぞ」
「にゃははは、どっちかっていうと人類最新っぽいねぃ」
なんてやり取りをするのはヒカルノと静。
なんやかんやで静も隠れアニオタではなく、オープンになったなぁ。ここに来た時はまだ隠してたっていうのに。後、ヒカルノは人の事を言えない。常識知らずは度合いが違うだけで同じである。
「お前らも今日だけは大人しくしててくれよ。最後の最後まではっちゃけるのは楽しくはあるが、来てる家族の方が目も当てられないような光景はマズいからな」
特に束のお父さんは厳格そうな人だからな。いつものテンションだと、卒業式で卒倒して救急車に運ばれる事案が発生する。それはマズい。
「そろそろ時間だな。皆、準備はいいか?」
『もちろん!』
全く、元気がいいことだ。だが、これでこそIS学園でもある。俺が心の底からいたいと望んだ場所。いよいよ巣立ちの時だ。二年半の短い年月だったが、楽しかったのなら、それでいいんだから。
『それでは卒業生の入場です』
俺達の担任ーー浅井先生の言葉とともに俺を先頭とした三年生が、拍手の中、入場していく。
本来なら、俺が先頭なのはおかしいのではないかと思ったのだが、それを発言する前に「とりあえず、藤本くんは先頭ね。異論抗議反論等は一切受け付けませーん」と言われた。
IS学園の記念すべき第一回の卒業式の先頭が男というのは些か違和感があるだろうが、それを違和感としないところが実に彼女達らしい。そして親御さんが文句を言わないのは、ひとえに彼女達の熱意が親に伝わっているからだろうか。
外部では俺は世界一危険な人間として認識されている手前、辞めさせたい親もいただろう。
だというのに、誰一人辞めなかったのは、彼女達が俺を心の底から信じてくれているからだ。どこまでも、純粋に。
だから、俺はそれに答えるだけだ。
一年生、二年生と並んで座っている生徒達と対面するように俺達は用意されたパイプ椅子に座る。
全員が座り終えると同時に拍手は止み、静寂に包まれる。
『只今から、第一回IS学園卒業式を行います。卒業生、起立』
その声の後に、俺達は席を立つ。
『卒業証書、授与』
浅井先生がそう言うと、おきまりの卒業式のメロディーが流れ始め、一組の学年一番の子が名前を呼ばれる。
まだこの時点で涙を流している子はいない。というか、暗い雰囲気はあまりない。皆、とても晴れやかな表情をしている。
そうして、滞りなく進んでいき、俺が最後に名前を呼ばれる。
俺だけが転入生というのもあるが、これは俺自身の希望だ。
俺は彼女達の最後でいい。いつも言っていたことだ。俺には人を率いる才能はない。
けれど、せめて誰かが立ち止まりそうになった時、その背中を優しく押してやれるくらいはできるから。
そうやって、俺は彼女達の歩き出す力になってやりたい。
俺が学園長ーー轡木さんの前に立つと、轡木さんはニコリと頬を緩ませる。
「結局、私の願いは叶いましたね」
「そうですね。俺も、まさかあなたの言う通りの結果になるとは思いませんでした」
あの時は帰るつもりだったから。こんな結果になるなんて露ほども考えていなかった。
「あなたが来てから、本当にこの学園での日々は楽しいものでした。一生ものの思い出ですよ」
「何言ってるんですか。あなたはこれからもこの学園を見ていくんですから、俺達よりも楽しい奴らに会いますよ」
「ほほっ、それは期待したいものですね」
卒業証書を受け取り、俺は一礼した後、席へと戻っていく。
この場でああやって、学園長と話をしていても咎められないことには驚いたが、お蔭で言いたいことは言えた。
そして俺たちが立ったまま、学園長の話が始まる。
こういうのは長ったらしいのが定番で、俺は今までそれをだるいと思ってずっと聞き流してきた。
だが、今回は違った。
轡木さんが話す事の全てに耳を傾けた。
俺が来る前の学園のこと、俺が来てから学園が破茶滅茶ながらも楽しくあったこと、テロリストに襲撃され、逆に叩き潰したこと、挙げ句の果てにその中心核までも壊滅させたこと。
そのいずれにも俺は関係していて、俺がいたから今のこの学園がある。
嬉しそうにそう話す轡木さんに俺は恥ずかして顔が真っ赤になりそうになったが、それをぐっとこらえて、表情を引き締める。
無闇矢鱈と褒められるのにもなれたものだ。初めはそれはもうあまりの恥ずかしさに顔を真っ赤にしたものだが、今では普通に返せるようになっているのだから。
学園長の話が終わり、来賓紹介に映る。
その隣に座っている生徒会メンバーの真耶、楯無、クラリッサ、ナタル、アーリィは皆一様に真剣な表情だ。ナタルやアーリィまでと考えると思わず笑いそうになるが、あいつらも時と場合くらいは選ぶらしい。
『送辞。生徒会長、山田真耶』
「はい」
すっと立ち上がり、真耶は壇上へと上がっていく。
てっきり今日はコンタクトかと思っていたのだが、眼鏡のままなんだな。
「送辞。桜のつぼみも開き、春を感じさせる今日の良き日。私達在校生は、卒業生を見送らなければなりません」
そこで一度区切り、真耶は大きく深呼吸をした後に、想いを馳せるように話を始める。
「私がこの学園に初めて訪れたのは、夏休みの時のことでした。勉強だけが取り柄の私に先生が進学先として勧めてくれたのがここで、その日は見学に来ていました。そして、そこで藤本将輝先輩と出会いました。初めは「なんで男の人がいるんだろう?」と疑問に思いましたが、その時、運悪くテロリストが襲ってきて、私は先輩に助けられました。そして、テロリストを倒していく前生徒会の方々の背中を見て、思ったんです。「私も変わらないと」と。そう思ったからこそ、今の私はーーいえ、私達はあります。先輩がいなければ、私達はここまで強くなれませんでした。ご一緒出来たのは二年間の間でしたが、苦しい時や悩める時、いつもあなたはいつも私達の心の支えでした。先輩の作ってくれたこの素晴らしい学園を、これからは私達がもっと良くしていきます。卒業生の皆さんに見られても、誇れるような素晴らしい学園にしていきます。ですから……ですから、今まで、本当に……本当にありがとうございます」
涙声になりながらも、決して泣くことはなく言い切った真耶に、俺を含め、聞いていた全ての人間が惜しみない拍手を送り、その拍手の中、真耶は自分の両頬を軽く叩いて、表情を引き締めた。
そういえば、あれも俺の癖なんだっけな。それを見て真耶が「私も真似していいですか?」なんて言い出して。そしたら皆するようになって……ああ、本当に何もかも懐かしい。
真耶の気持ちは十分に伝わったよ。
じゃあ、俺も。俺の全てを伝えよう。
『答辞。卒業生代表。藤本将輝』
「はい」
パイプ椅子を立ち、壇上に立つ。
思えば、最初はここに立つのが嫌で嫌でしょうがなかった。
異性が苦手で、あがり症だった俺からしてみれば地獄だった。
だが、今はそうじゃない。今はここに立てていることを、こうして皆に想いを伝える場を持てたことを、とても嬉しく思っているし、そうなると生徒会副会長になったのも実に悪くない。
「皆大好き、元生徒会副会長の藤本将輝だ。本当に残念に思うが、今日は二年半通ったこの学園に別れを告げる時が来た。本当はもっとこの学園にいたかったが……ま、何も卒業で皆と別れるわけじゃない。たとえ離れ離れになっても心は繋がっているからな」
さてと、前口上はこのくらいだろうか。後は俺の想いを伝えるだけだ。
「俺は堅苦しいのとか苦手だからな。言いたいことだけ言う。ーー皆と過ごせて、本当にさいっこうの学園生活だった!現会長はああ言ったが、寧ろ逆だ!今の俺があるのは皆のお蔭だ!皆がいなきゃ、俺はあんな無茶なことできなかったし、こんなに楽しい学園生活は送れなかった。だからーー」
すうっと大きく息を吸った。
マイクはいらない。音割れするし、なにより俺の想いは俺の口から直接伝えたい!
「俺は!お前らの事が!大好きだぁぁぁぁぁぁ!今までありがとぉぉぉぉぉ!」
『私達も副会長の事が大好きで〜す!』
まるで俺がそういうのをわかっていたかのように、殆ど時間を開けずにそう返ってきた。
おまけにちらほらと愛の告白なんかも聞こえてくる。どこまでもお前達はIS学園の生徒だよ、ちくしょう!
「は、はははっ!本当にさいっこうだぜ、お前達は!安心しろ!皆の愛は受け入れることはできなくても、きっちり受け止めてやる!面と向かってフラれる覚悟のあるやつは後で来い!全身全霊で受け止めてからフってやるからな!」
実に俺らしくない一言はやはり、俺も卒業式だからテンションがぶっ壊れている証拠だろうか。それにこんなことを言えば、後々大変になるのはわかっているというのに、何故かいってしまった。
「んん。少しはしゃぎ過ぎたが、言いたいことは言った。後、ごめんなさい卒業生のご家族の方。こんなのが卒業生代表で。さっきの今では言葉に重みなんてないと思いますが、それでもお礼を言わせてください。今日出席してくださった皆様、本当にありがとうございございました」
一応、最後に謝罪を述べて、壇上から降りると、数秒遅れで拍手喝采に包まれた。
ブーイングされなくて良かっというべきか、流石に親御さんには怒られると思ったがなんとか大丈夫だったらしい。
こうして、滞りなく卒業式は進み、第一回IS学園卒業式は綺麗に幕を閉じたのだった。
「ふぅ……自分で言っておいてなんだが、疲れたな」
「あんなことを言うからだ。それで?何人に告白された?」
「ほぼ全員。ついでにツーショットも撮らされたよ」
卒業式が終わってから二時間が経過した頃。
俺は校門で一つ息を吐いた。
あの発言の影響もあってか、終わった直後に告白ラッシュ。
それを見事に断り、そしてご所望通り、告白してきた子達とはツーショットを撮る事となった。
「モテモテだな、副会長。感想は?」
「嬉しいよ。こんなにも人から愛されて。俺は幸せだ。幸せすぎて、後が全部不幸になるんじゃないかってくらいにな」
いまだかつてここまで充実していたと思える時はなかった。
人生において一番の幸せと言える。
「さてと、まーくん。言いたいことは卒業式でもう言ったよね?」
「そうだな。だから言いたいことがあるならもう言っていいぞ」
「わかった。じゃあね……コホン」
一つ咳払いをした後、束は割と真剣な口調になる。
「今日まで本当にありがと。まーくんのお蔭で今日までずっと幸せだったよ。だから、これからも私にずっと幸せをください。その代わり、私もまーくんに幸せをあげるから、ね?」
「おう、任せとけ。溺れるくらい幸せにしてやる」
って、ん?何か今のプロポーズっぽくなかったか?
「よしっ!改めてまーくんからOKもらっちゃった〜!私一番乗りぃ〜!」
「あぁ〜!ズルいですよ、篠ノ之博士!私もします!将輝さん、私も幸せにしてください!」
「おっ、これはあたしも便乗するしかないな!将輝!私と一緒に幸せになろうぜ〜!」
「む。なんだ、このプロポーズ祭りは、私もプロポーズするか。コホン。等価交換だ。私の人生を全てやるから、将輝の人生も全部くれ」
「あ、あれ?私で遅れちゃいました⁉︎先輩!私も幸せにしてくれますか?出来れば世界一幸せにしてください!」
「あら。少し目を離すとこうなってしまうのね。やはり貴方は末恐ろしいわ。ねえ、あなた。私も幸せにしてくれるのでしょう?そのためなら私はなんでもするわよ?」
ずずいっと詰め寄られながら、俺は一斉にプロポーズされるという事態に発展していた。うーん、これはいかに。もちろん、拒否することなどありえない。全員俺が受けることをわかっているからこそ、その表情には笑顔が見えている。
「やれやれ。困ったものだな、全く」
「違いない。改めてみると異様な光けーー」
同意するように頷くと、俺の唇は千冬によって塞がれていた。
その時間およそ十秒。
「ふう。私はあまり言葉を重ねるのが得意ではないからな。今のものが誓いのキスだ」
頬を赤く染めながらも勝ち誇った笑みを浮かべる千冬。
それでまたもや新たな波が来そうになる前に俺は先手を打った。
「落ち着け。キスがしたいなら後にしろ、その前に写真を撮るぞ。クラリッサ達が待ってる」
『はーい』
やや、渋々と言った感じに全員が頷く。
「お待ちしておりました、将輝殿。では、早速彼方に。私が撮りますので」
「いや、その必要はない……あ、すみませーん!先生、写真撮ってもらえますか?」
俺が声をかけたのは号泣していた浅井先生だ。
今はもう立ち直っているが、卒業式では凄まじい号泣度合いだった。
「任せなさい。最後くらいはちゃんと尊敬できる先生として働きますよ」
「お願いします……さ、クラリッサも」
「で、ですが……」
「はいはーい、クラちゃんは融通が利かなさ過ぎ。フジさんが誘ってくれてるんだから、ちゃんと入らないと」
「当分会えなくなるわけだしサ。記念写真くらいは皆で映らないと後々後悔することになるのサ♪」
「むぅ……今日はお前達の言い分が正しいな。では、そうさせてもらおう」
確かに今日はナタルやアーリィの方が正しかった。これも卒業式効果だろうか?
「はーい、では写真を撮りますよ〜」
俺を中心として、新旧生徒会メンバーとミハエが並ぶ。
思えば、初めて皆で写真を撮ったのは俺の誕生日の時だったな。
それから随分と人が増えたが、これはこれで悪くない。
「行きますよ〜、はい、チーズ」
パシャッというカメラ音と共に写真が撮られる。
今回は以前のようなことはなく、皆揃って笑顔での写真となり、素晴らしい記念写真となった。
そして舞台はーー五年後のIS学園へと移り変わる。
というわけで、第1章終了。
次回からはfateのクロスや第2章『黄金世代編(仮)』へと突入します。
派生したストーリーにもかかわらず、ここまで来られたのは皆様という読者の方々がいてくださったおかげです。
これからも末長くよろしくお願いします!