IFストーリー〜もしも過去に残っていたら〜   作:幼馴染み最強伝説

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史上最強の弟子イチカ

高校生活最後の夏休み。

 

別にこれといって特別というわけではなく、強いて言うなら、お盆あたりまでは日本人以外の生徒は帰国するので、かなり静かになる上に日本人も帰郷するので、人気もあまりない。

 

俺も本来なら実家とかに帰るのだが、残念ながらこの世界においては俺に実家はないし、家はこのIS学園みたいなものなので、夏休み中も俺はずっとここにいる……と思っていた。千冬から提案されるまでは。

 

「将輝。もし良かったら、私の家に来ないか?」

 

断る理由もなかったし、なんとなくその後の一夏と箒の事も気になったので、二つ返事で承諾。

 

そして今現在、千冬と一夏の住む家に来た………と思ったのだが。

 

「なんかゴツくね?」

 

確か両親不在の筈だから、もっと質素な感じだと思っていたのだが、なんというか……見た目は普通の一軒家なのに防犯カメラが至る所にある。

 

まさかと思ってISでスキャンしてみたら、防犯カメラの他に虫型のロボットや、庭の下にはセントリーガンが埋まっていた。他にも倉庫の中にはドローンにオートマトンと侵入者はもれなく処刑と言わんばかりの設備となっていた。ここは中東か。

 

恐る恐る織斑家への第一歩を踏みしめてみる…………良し、なにもない。

 

おそらくは束が亡国企業用に防犯設備を設置したのだと思うが、予め入力されている人間には反応しないようだ。まぁ、無差別とかは洒落にならねえしな。

 

チャイムを鳴らして待つ事数分………あれ?

 

返事がない。

 

もう一度押して待ってみるものの、反応はなく、聞こえて来るのは家の中の騒ぎ声だけ。

 

居留守を決め込もうっていうなら、静かにする努力はするだろうし………まさか気づいてないのか?

 

「……仕方ない。入るぞ~」

 

そう言ってからドアに手をかけると、鍵はかかっていなかった。また不用心……いや、この防犯レベルなら不用心もなにもないか。

 

「失礼しま「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!」ん?」

 

ドアを開いて中に入った瞬間に俺の腹部に鋭い飛び蹴りが入った。

 

「「「あ゛っ」」」

 

やってしまった、という表情でこちらを見てくる一夏、箒、そして俺に飛び蹴りをかましたツインテの子。

 

ふむ、察するに一夏にぶちかまそうとしたら躱されて、勢い余って偶々入ってきた俺に当たったといったところか。

 

まぁ、この程度の蹴りじゃ痛くも痒くもないが。

 

「ん。全体重を乗せたいい蹴りだ。不意打ちだから、並の高校生なら流石に鳩尾に入ってるから辛いだろうな」

 

「え、嘘……あ、あんたは大丈夫なの?」

 

「鍛え方が違う……って言いたいところだけど、こっちは別に鍛えてないからなぁ……身体の作りが違うとでも言っておこうか。一夏くん、千冬いる?」

 

「千冬姉ですか?今は買い物に……」

 

「千冬が買い物?不吉な組み合わせだな」

 

「実はそれに姉さんも……」

 

「余計に心配になってきた……帰っていい?」

 

「帰すと思うか?却下だ」

 

と言っていたら、既に後ろには買い物袋を提げた千冬と束がいた。

 

おかしいな。普通の光景なのに、この二人が買い物袋を提げてると禍々しさがあるんだが……

 

「おい。禍々しいとはどういう事だ」

 

「そーだよ、まーくん。私達も普通のか弱い可愛い女の子なんだよ」

 

「人の心を平然と読んだ挙句、それに解答するような奴らは断じて『普通』とか『か弱い』とか当てはまるはずがない」

 

可愛いは否定しない。否定できない、IS学園という高レベルな女子の中で見た目という点で生徒会メンバーは特に突出している。もうアイドル級の可愛さである。

 

この二人も性格に難が無ければ、さぞモテた事だろうに。

 

出会った頃なんかは一匹狼とコミュ症だからな。よくもまあ、ここまで心を開いてくれたもんだ。

 

「あ、アイドル級の可愛さなど……それは言い過ぎだ……」

 

「さ、流石の束さんもちょっと嬉し恥ずかしいかも……」

 

何が凄いってこの子達。自分の都合の悪い事は聞こえていないところだ。完璧すぎるよ、君達の読心術。

 

「……箒。あの三人が何の話してるかわかる?」

 

「……無茶を言うな。姉さん達は『そこに愛があるから』というよくわからない理論で心を読んだり、思考を読んだりしているのだ。常人に理解できるはずもない」

 

「それに千冬姉や束さんが一言一句間違えずに読心術出来るのって将輝さんだけだしな。俺達じゃ無理だよ」

 

なーんか、それとなく俺がこいつらと同じ存在として扱われている気がする……一つ言っておきたいのだが、俺は断じて一言一句違えずに心を読んだりして会話なんてできない。こんな事を考えてるんだろうな、くらいの思考は読めても、それ以上は流石に無理だ。

 

「まぁ、それはともかくだ。立ち話もあれだし、上がっていいかな?」

 

「はい。どうぞ、ゆっくりしていってください」

 

「じゃあ、改めて失礼します」

 

一夏先導の元、織斑家のリビングへ。

 

千冬と束?なんか自分の世界に入ってるから放置。

 

あいつら大丈夫かな………頭が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうぞ」

 

コトリと目の前に置かれた湯飲みにお菓子。俺はリビングのソファーに座って、深く息を吐いた。

 

「悪いな、一夏くん。気を遣わせて」

 

「そんな事ないですよ。それに何時も千冬姉がお世話になってますし」

 

「それを言うなら姉さんもだ。何時も姉がご迷惑をおかけしています」

 

そう言ってぺこりと頭をさげる箒。

 

どれくらい違うのかと思ったけど、随分礼儀正しく成長してるな。それに過去に戻る前の中学で出会った頃より圧倒的に落ち着きがあるし、束との距離感もない。というか、寧ろ箒の方が姉っぽい。

 

「退屈しないから気にしなくていいよ。それに束の奇行にももう慣れた」

 

「まーくん。奇行だなんて聞き捨てならないよ。あれは科学の発展のために必要な尊い犠牲だよ」

 

「お前は悪の科学者か」

 

「少なくとも、束に正義という言葉は似合わんな」

 

「むぅ~……まーくんとちーちゃんが私を虐める……箒ちゃん慰めて~!」

 

「急に抱きつかないでください。あ、暑苦しいです、姉さん……」

 

抱きつく束に抵抗する箒だが、そこまで嫌そうでもない。うんうん、仲良しで何より。

 

「……あのさ、一夏」

 

「ん?」

 

「……この人って……あの『藤本将輝』なの?」

 

「同一人物だぞ。急にどうしたんだ?」

 

「なんていうか……テレビとかで聞いてる話とは全然違うっていうか……」

 

と、こそこそやり取りしている一夏とツインテの子。つーか、もう何処からどう見ても鈴なんだよなぁ……。

 

一夏はともかく、鈴の方は俺に聞こえないように話しているつもりなのだろうが、バリバリ聞こえていたりする。

 

「まぁ、そうだよな。俺や箒はまだ将輝さんが有名になる前から知ってたから、全然違和感ないけど、鈴は知らないもんな。千冬姉達が付き合ってるって言ったら滅茶苦茶ビックリしてたし」

 

「当たり前でしょ。千冬さんに恋人がいるのも驚きだけど、それ以前にこの国は一夫一妻じゃない。同意の上で色んな人と付き合ってるとか誰でも驚くわ」

 

やはりか。一般人の感性からしてみれば、俺は異常か………ははっ、今更ながら俺も常識人を語れなくなってきたかもしれんな………。

 

「な、なんか、あの人急に黄昏れ始めたんだけど……」

 

「きっと何か思うことがあったんだよ。凄く思慮深い人だし」

 

怪訝そうな表情で見てくる鈴と何故かやたらと俺のことをポジティブに考える一夏。いや、ただのアイデンティティークライシスだから。何も考えてないよ。

 

それはそれとして……

 

「ところで千冬。俺を呼んだ理由はなんなんだ?」

 

俺を誘った理由を聞いてみる。

 

去年や一昨年は姉弟水いらずで過ごしていたはずだが、何故今回に限って俺を誘ったのだろうか。抜け駆けがどうとかいう話ではないらしいし(本人談)、呼ばれた理由を聞いてなかった。

 

「ああ、実はな………一夏」

 

千冬に促されて、一夏が立つ。

 

「うん。えーと、将輝さん。一つお願いがあるんです」

 

「なんだい?」

 

聞き返すと、一夏は数回深呼吸をして、意を決したように言った。

 

「俺と……試合をしてくれませんか?」

 

「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって篠ノ之道場。

 

一夏からのお願いで何故か試合をすることになってしまったのだが、はっきり言って何がどうなったら俺と試合をしようという気になったのかわからない。

 

「突然すみません。こんな我儘聞いてもらって……」

 

「そこは気にしなくていいよ……それよりも気になるのは俺と試合をしたい理由かな」

 

「護りたい人がいるんです……その為に強くなりたいんです。誰よりも」

 

「へぇ……それは俺よりも?」

 

「はい」

 

決意のこもった瞳でこちらを見てくる一夏。

 

護りたい人?仲間とか友達とか家族じゃないのか……ん?ということはつまり……。

 

「一夏くん。君、好きな人とかいる?」

 

「………はい」

 

やや恥ずかしそうにそう言う一夏。

 

マジか!まさか原作が始まるよりも先に一夏に想い人が出来るとは……!

 

箒か?鈴か?それとも俺の知らない子か?流石に新旧生徒会メンバーの誰かって事はないとは思うが……良し!決めた!

 

「一夏くん。君が強くなるのは手伝うから、後でそれ誰か教えて」

 

「ええっ⁉︎……えーと、わかりました。それで良いなら」

 

我ながら野次馬根性丸出しだが、一夏に好きな人というのは一夏の事を知っていれば、誰でも聞きたくなるものだ。ていうか、千冬辺りは絶対に知ってるだろうに。是非とも教えて欲しかった。

 

「何時でも来なよ。先手……っていうか、一夏くんが攻め疲れるまで攻め手は譲るよ」

 

俺がそう言っても別に一夏は怒ることなく、竹刀を持っている両手に力を込めているだけだった。まぁ、力の差は千冬辺りから聞いてるだろうから、こんなものか。

 

しかしまあ、二刀流とは驚いた。

 

二刀流使いがいる事もそうだが、一夏はISに乗っている時、雪片のみだったから、二刀流のイメージはなかったな。中学じゃ帰宅部だったってのが影響してるのかもしれないが、今のままなら確実に二刀流使いとして成長しそうだし、なかなか面白そうだ。

 

「はぁっ!」

 

力強い声と共に踏み込んでくる一夏。

 

いい踏み込みだ。小学生時代は箒より強かったというのがわかる。

 

振り下ろされた竹刀を軽く躱すともう片方の短い竹刀を横薙ぎにふるってきたので、軽くジャンプして躱す。

 

剣道っていうよりは剣術だな。この試合にもルールは無いし、一夏も特に意識はしていないみたいだ。

 

休みなく攻めてくる一夏。その一回一回の攻撃はとても小学生とは思えない。才能故か、それともここに至るまでの努力の結果か、どちらにしても偶発的に世界最強になってしまった俺に比べれば賞賛に値する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから約三分。

 

一度も攻め手を休めなかった一夏だったが、流石に限界が来たらしい。肩で息をしていた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「本当に凄いね、君は。どれもこれも小学生とは思えない。おまけに試合中にもキッチリ成長してる。おそるべき成長力だ。別に俺がどうこうしなくても、その向上心だけで何れは俺達と同じレベルになるーーーじゃ、満足はしないんだろう?」

 

「……はい……俺が目指すのは……最強ですからっ……」

 

不意に、不敵に笑う一夏の表情が千冬と重なって見えた。

 

全く……そういう顔をされると手を抜けなくなる。教えるのは得意じゃないんだけどなぁ……やれるだけやってやるか。

 

「一夏くん。君の意志はわかった。君の最強への道のりには及ばずながら俺も協力させてもらうよ」

 

「あ、ありがとうございますっ!」

 

「じゃあ早速『最強』の一端を見せてあげるよ。目をそらさないように」

 

「は、はいっ!」

 

さてと、最近平和だった分、ちょっと運動不足だったし、一つ遊んでみようかね。

 

少し足に力を込めてジャンプ。からの天井を蹴って一夏の背後に着地。この間、およそ一秒くらい。

 

「ッ⁉︎」

 

「ざっとこんなものかな。視えた?」

 

「………全然視えませんでした」

 

だろうな。聞いておいてなんだが、視えるような速さで動いたつもりはない。

 

「なら、とりあえずは視えるようになるところから始めよう。っていっても、夏休み中ここにいられるのは一週間だけだから、あれより速さは落とすけどね。何事も慣れがある程度は必要だから」

 

「よろしくお願いしますっ!」

 

「じゃあ、お昼までまだ少し時間があるし、やろっか」

 

「はい!」

 

いい返事だ。目指す場所が場所だけにこの向上心は尊敬に値する。

 

そうして俺の『一夏人類最強化計画』が指導した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

将輝と一夏が修行に励んでいる頃。

 

千冬、束、箒、鈴の四人は篠ノ之道場を出て、篠ノ之家の方にいた。

 

本来ならそれを見ておきたかった千冬ではあるが、今日の昼食は千冬と束が作るということになっているため、気になりながらもこちらに来ていた。

 

そしてもう一つ、こちらにも気になる理由はあったからだ。

 

「箒。随分と落ち着きがないな」

 

「そ、そんな事は……」

 

「安心しろ。将輝に限って変な事はしないだろうし、ミスはない。一夏は確実に強くなる……と、それが心配なのだろう?」

 

そう言われて、箒は驚いて目を見開いた。

 

「お前の気持ちはわかる。一夏が将輝といる分だけ、一夏は強くなる。将輝の鍛え方次第だが、今の私達くらいになるのは遥か先……ということはないだろう」

 

「そう……ですか」

 

「好きな男に置いていかれるのは嫌か?」

 

「ッ⁉︎い、いえ、決してそういう不純な動機ではなくっ!」

 

そう問われて箒は顔を真っ赤にして否定する。だが、必死に否定しているその様は肯定していることと同義であった。

 

「不純なものか。好きな男の隣にいたいと願った結果が今の私達の強さだ」

 

「そうだよ、箒ちゃん。愛があれば、全てOKだから。実際いっくんだって好きな人のために強くなりたいっていうのが理由だし、箒ちゃんがいっくんと肩を並べていたいって思うのはなーんにも不純なものでもないよ」

 

千冬の言葉を後押しするように、料理の下準備を黙々とこなしていた束が言う。

 

「千冬さん……姉さん…………わかりました」

 

箒はパンと自身の表情を引き締めるように両頬を手で叩く。

 

「千冬さん。私を強くしてください。一夏と……いえ、将輝さんを超えるくらい強く」

 

「良い答えだ。目指すなら世界最強でなくてはな」

 

「あはは……箒ちゃんがまた男らしく成長しちゃった。束さん、ちょっと心配かも」

 

見るたびにたくましく成長していく箒の姿は束にとって、頼もしくはあるのだが、むしろ頼もしすぎて心配なのも現状である。

 

「で、どーすんの?りんりんは?」

 

「りんりんはやめてくださいってば。それにどうするって言われても………あたしは一夏や箒と違ってそういうことしたことないし………」

 

突然話を振られて、鈴は考え込む。

 

鈴は一夏や箒のように剣道などをしているわけではない。運動神経こそ良く、素質はあるが、何もしていない鈴では何れ置いてけぼりになるだろう。かといって、鈴が箒のように思わないのは、あの領域に到達できる気がしないからである。

 

「ふーん。強くなりたくはないって事?」

 

「そういうわけじゃ……それはまあ、強くなれるならなりたいですけど……」

 

「じゃ、なろっか」

 

何気なく言った言葉に返ってきた返事に鈴は怪訝そうに首をかしげる。

 

「……はい?」

 

「いやぁ〜、実は束さんもなんか面白そうだしそういう事してみたかったんだよね。でも、教師って面倒でしょ?だから、りんりんを私の弟子にしちゃおうってわけさ!」

 

「しちゃおうって………あの、それって単に束さんが楽しみたいだけじゃ……」

 

「でも、りんりんは強くなれるし、モーマンタイでしょ?」

 

「そういう問題じゃ………なんかもういいです」

 

諦めたように鈴は溜息を吐いた。

 

鈴は束がIS学園に通っている事もあってあまり関わった事はないのだが、一夏や箒と仲の良い友達という事もあって、束は鈴の事をそれなりに気に入っている。

 

それ故に鈴はその数少ない関わりの中でも束の性質をある程度理解しているため、否定はするものの、それが意味をなさない事はわかっていた。

 

「じゃあ、とりあえずマジカル八極拳でも極めてみる?」

 

「マジカル八極拳?なんですか、それ?」

 

「うーんとね。ワンパンで心臓潰しつつ、吹っ飛ばして飛んでいった相手がぶつかったコンクリートがひび割れするくらいの威力を誇る掌打を打てる八極拳?」

 

「そんなの人間じゃないわよ!」

 

「わわっ⁉︎」

 

思わず叫んで突っ込んだ鈴の声に驚いた束は隠し味と手にしていた特製ソースを大量にカレーの中へと投入してしまった。

 

「あ゛っ」

 

「どうした、束?」

 

「い、いや、なんでもないよ、ちーちゃん。そ、それよりもちーちゃんの方はどう?」

 

「まあ、順調だな。小学生監視の元、というのがなんとも情けないが」

 

カツを揚げながら、千冬は答える。

 

箒と鈴がここにいる理由は千冬と束の料理をサポートする事にある。まだ小学生の二人ではあるが、千冬や束よりは家事はでき、鈴に至っては中華料理屋の娘という事もあり、中華料理なら余裕で二人よりは美味しいものを作れる。もっとも、それは鈴のレベルが高いというよりも寧ろ二人のスキルが低過ぎるところにあるのが原因なのだが。

 

一応、監視員がいるため、変な行動は起こしていないため、先程までは比較的順調であった………しかし、それも一瞬の油断で水泡に帰したが。

 

「ふむ。実際してみると奥が深いな、料理というのも」

 

「そだねー。また今度お母さんに教えてもらうのもいいかもね」

 

「もし中華料理を作りたいなら鈴の両親に学べばいいですよ。鈴の所の中華は美味しいんですから」

 

「当たり前じゃない。私の所は世界一よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから十分後。

 

「なんでこうなった……」

 

軽く修行を終えて帰ってきた俺と一夏が目にしたのは惨劇とかしている台所であった。

 

台所自体には特に何もないのだが、其処は死屍累々と化しており、四人が何故か今にも死にそうだった。

 

何があったのかと聞こうにも気を失っているみたいだし、とりあえず鍋の中身を……ん?

 

「おおっ、いい匂いだ」

 

金属鍋の蓋を開けると中には程よく温められたカレーがあり、その隣には小麦色に焼けた豚カツが。なんだ、ちゃんと出来てるじゃないか。なのに何故こんな事に……

 

「どれ、一つ味見………うん、美味い」

 

揚げてから少しだけ時間が経っているので程よい熱さのカツは美味かった。誰が作ったのかわからないが、なかなか美味いぞ。

 

「ホントだ。美味しいですね」

 

俺につられて一夏も一つ頬張るとそう言った。うん、別に美味いけど常人ならぶっ倒れる副作用の入った謎の調味料が原因とかではなさそうだな。

 

「このカレーだって、めちゃくちゃ美味そうなのに」

 

おたまで掬って小皿に入れてから一口。

 

「うんうん、至って普通のカレー………じゃねえ⁉︎ごふっ!」

 

「ま、将輝さん⁉︎どうしたんですか⁉︎」

 

どうしたもこうしたもなかった。

 

俺の舌は今絶賛味覚テロを味わっている。

 

甘い辛い苦い酸っぱいしょっぱいetc……ありとあらゆる感覚の切り替わりに脳みその処理が追いついていなかった。そして舌が痺れ、ついでに思考も麻痺してきた………何入れやがったこのカレー⁉︎

 

「ふ、ふふ、た、束さん特製の秘薬さ……一滴だけなら絶妙の味わいを醸し出すけど、二滴目からは劇薬にな、る………がくり」

 

とだけ言うと束は完全に意識を失った。おい!人間辞めてるお前が意識飛ぶとかなん滴……いや、どれだけ入れたんだ⁉︎

 

ぐっ……俺も意識が……いや、それはそうとどうしても聞きたいことがある……。

 

「い、一夏くん……」

 

「は、はい⁉︎なんですか⁉︎救急車ですか?」

 

「それはタンマ。マズいから……」

 

ギャグっぽいとはいえ、弱点のようなものを世間に知られるわけにはいかないし、これで入院とかリアルに恥ずかしい。せめて箒と鈴は救急車を呼んだほうがいいかもしれないが。

 

「結局君の好きな人って……誰?」

 

死ぬわけじゃないが、今聞いておかないと忘れそうな気がするから聞くと、一夏は顔を赤くして答える。

 

「えーと、ですね。……髪は赤くて……目つきが千冬姉みたいに鋭くて、強いんです。将輝さん達と同じIS学園の生徒らしいんです」

 

年上か……一夏は年上に弱いとは聞いていたが、まさかな。

 

「な、名前は……?」

 

「確かーー紅音さん……て言ってました」

 

「嘘だろ……かはっ」

 

一夏の口から告げられた名前は性転換させられた時の俺の名前だった。

 

惚れた女……っつーか、男なんですけど。

 

心の中でそうつっこむのが精一杯で、俺はそのまま束達同様に台所に沈んだ。

 

その後、意識を覚醒させた俺たち五人はあまりのショックから、前後十分ほどの記憶がある綺麗さっぱり消え去っていた。




そんなわけで鈴初登場ですっ!原作と違って、束とも関わりはありますし、束のコミュ症は矯正されているので一夏の友達ならどんな人間かを見極めてから仲良くします。

そして一夏は将輝の、箒は千冬の、鈴は束の?弟子みたいなポジションに落ち着きました。目指すは最強、歩くは人外の覇道。我らの道を阻めるものなしとばかりに成長する予定です。もちろん、将輝達には敵いませんが。

それはそうとですね。以前おふざけで将輝がfateの世界に英霊として召喚されたらこんな感じみたいなのを書きましたところ、友人が「なんか面白そうだしアリかも。つーか、見てみたい」と言われましたので、あと数話したら書いてみようかなぁ〜なんて思ってたりします。

まぁ、原作開始までは投稿時期さえ無視していただければ秒読み段階ですので、そういうのもアリかと思った所存です。

また、見たいか見たくないかはアンケートで聞いてみたいと思いますので、宜しければ回答お願いします。

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