IFストーリー〜もしも過去に残っていたら〜   作:幼馴染み最強伝説

3 / 59

今回は生徒会ではなく、クラスメイトの話。

一応しておいた方が今後何かと意味がありそうだから。

後、不定期更新と書いていますが、思いつく限りはこっちを書きます。


ガンパレード・マーチ

 

いきなりだが、俺にとってこの時代のIS学園の授業は無意味なものだ。

 

あくまで現時点では、という話になるが、殆ど受ける意味がない。

 

もっともそれを理由に授業をサボるつもりはないし、それに未来では必要なしとして教科書から消されているであろう事も知れるのはありがたくはある。知識というものは知っておいて損をする事などないのだ。

 

無意味であるにもかかわらず、俺が授業を受けているのはそういう所が大きい。それに俺が未来人である事を知っているのは生徒会のメンバーのみ。授業が退屈なので受けませんなどという横暴がまかり通るのは束だけだ。ヒカルノは束と仲良くなった事でよりISについて知る努力をしているから、授業はサボっていない。

 

因みにクラスメイトとの関係も実に良好だ。副会長になった時から既に大半の生徒には(束によって)既に支持を得ていたし、俺に不信感を持っていた人物達も実力行使をしてきた際に実力差を見せつけることで俺を認めてくれた。それによって九十八パーセント(・・・・・・・・)という普通ならあり得ないレベルの支持率を叩き出し、周囲の生徒達や教師からは会長を務める事を強く勧められたが、当然断った。ただでさえ面倒事が多すぎて大変なのに、会長になって仕事が増えたら過労死する。学生で過労死とか前代未聞じゃね?

 

まあそれはさておき、先程も言ったが、俺は副会長であるにもかかわらず、支持率が九十八パーセントとかいうぶっ飛んだ支持率こそ誇っているが、百パーセントではない。そして残る二パーセントは俺の存在をそもそも認めていない。女尊男卑の風潮が浸透しつつあるこのご時世に現れた『世界で唯一ISを動かせる男子』というのはそれ自体、その風潮を停滞させる事はあれど、消し去る事は出来ない。だが、その男子がIS操縦者として一、二を争う実力者であるならば話は別だ。

 

ISが世に出て三年。様々国家でIS乗りとして優秀な人材達は全員IS学園に存在する。年齢はもちろん今年で全員十六歳になるものばかり。つまり三年前は十三歳だった者達の中でISの適正値が高く、知力体力共に秀でた者達が国家代表候補生となり、この学園に在学している為、必然的にIS学園の中で世界最強のIS乗りが決まってしまう。そして優秀な人材の中で更に抜きん出ている者が生徒会の四人だった訳だが、其処に紆余曲折を経て、男である俺が入り、剰え学園最強の人間であった筈の織斑千冬と同等か或いはそれ以上の実力を有しているのだから気にくわないと思う女子達もいて当然だ。とはいえ、俺の実力は本来の俺が有するものではないし、性能はフル制限でも第三世代故に既存のISよりも高い。それにISの操縦技術もセシリアによる指導の賜物だ。対人戦闘技術以外は他者からの恩恵を得ているばかりなのが、我ながらかなり情けないが、事情を知らない者からすれば、それは全て俺の評価へと繋がる訳で、早い話がーーー

 

「話があるなら、普通に話しかけてくれないか?ミハエ・リーリスさん」

 

「これが私の貴方に対する普通(・・)よ。貴方の定義を私に押し付けないで」

 

「何処の世界に後頭部に銃を突きつけて話しかける事を普通って呼ぶんだ。それが話だと通じるのは軍人だけだよ、そしてそれは話じゃなくて脅しの間違いだ」

 

「あら?私の家系は代々軍人と前に言った筈よ、早くも認知症かしら?」

 

「軍人だからそう言ってるんだよ。一般人に銃を突きつけるのはどうかと思うよ?」

 

「貴方や生徒会の人間を一般人と定義するなら、私達は人になりきれなかったナニカよ。世の中に貴方達のような人外が一般人として蔓延っているなら、それこそ異常事態だわ」

 

こうして会話をしている間も俺の後頭部へと押し付けられた固い感触は消えない。因みにこれはモデルガンではなく、本物。以前は押し付けられる前に脳味噌に直径三センチ程の穴を作られかけた事があった。幸い、危機察知能力は元々高いし、それに見合う性能も得ている為、全弾躱したが、それ以降は気配を消してからこうしてゼロ距離からぶち込もうとする。もっとも、ゼロ距離の時の方が撃つ瞬間に手に力が込められるのがわかるので無力化しやすいというのは秘密だ。

 

ここで彼女について軽く触れておこう。ミハエ・リーリス。金髪で翡翠の瞳の色をした英国淑女。イギリスの代表候補生で、イギリス陸軍の祖父と父を持ち、彼女自身も軍人としての訓練を受けているらしく、身体能力は並外れて高い。勤勉家でもあり、並外れたという訳ではないが知性も高い。ISが出る以前は軍人としての人生を歩もうと努力に励んでいたようで、大抵の男は彼女に痛い目を見せられたらしい(本人談)。銃の扱いやCQCの心得もあり、テロリスト騒動の際は迎撃に向かおうとして、教員に止められたとか。彼女がいれば、もっと楽だったであろう事は言うまでもない。後、彼女に関するタブーはスタイルの事(主に胸の事)。

 

女尊男卑の風潮に流されている、というよりもそれより以前から男が気に入らないといった根っからの男嫌いで、兎に角俺に突っかかってくる。その都度、色んな武器をまるで手品のように身体の至る所から出現させ(本人曰く、ISの量子変換技術は使用していない)俺の存在を抹消せんがために攻撃を仕掛けてくる。いくら気に入らないとはいえ、世界で唯一の男性IS操縦者を殺そうものなら、確実に極刑は免れないであろうし、日本とイギリスの戦争にすらなり兼ねないにもかかわらず、彼女は俺の命を狙うのを止めはしない。そして生徒会側にもそれを止められない理由がある。

 

「第一、貴方は生徒会副会長。私の貴方に対する行動を咎める事は出来ないはずよ。何故ならーーー」

 

「生徒会は寮を出てから帰るまでの間、誰からの挑戦も受けなければならない」

 

それが生徒会のメンバーに定められたルール。流石に二十四時間ではないあたり、かなり良心的だが、昼飯時に狙われた際にはとにかく大変だった。しかもこのルール。生徒会全員に適用される筈だというのに、未だ俺以外の人間は狙われていない。俺なんて同じ人間もカウントしたら五十は超えてるのに。

 

「わかっているなら、私に文句を言わないで欲しいのだけれど」

 

わかっている。わかっているがそう毎回毎回こんな感じでは文句の一つも言いたくなってくる。大抵の女子は三回目には諦めてくれたというのに、リーリスだけは諦めない。このやり取りなんて既に十五回目だ。お蔭でクラスメイト達はリーリスが俺に銃を突きつける度、教室の外に出て、楽しそうに見ている。いい加減、彼女を説得して欲しいのだが、まあ無駄だろうな。

 

「さて、無駄話はここまでよーーーーー死になさい」

 

俺の後頭部に押し付けられた銃の撃鉄が今まさに引かれようとした時、俺はその銃をリーリスから奪い取り、彼女の方に向いて立ち上がった。

 

「無駄話って。俺からすれば、これよりもさっきの方がより有意義な気がするよ」

 

「無駄よ。最終的には貴方は死ぬのだから」

 

「そうか。じゃあ、殺される可能性を全部潰す為に、君の持つ武器を全部壊しておこう」

 

「やめてっ‼︎」

 

俺は彼女から奪った銃を砕こうとした時、珍しく彼女は焦った。てっきり「出来るものならやってみなさい」くらい言われると思っていたが、しかもさっき一瞬だけ、何時もの嫌悪感のある表情じゃなくて、普通の女の子の表情だった。よほど、この銃が大事らしい。

 

「………他の物なら壊してもいい。けれど、もし貴方がそれを壊せば、私は貴方が何処へ逃げても見つけ出して………殺すわ」

 

「じゃあ返す」

 

そんな一日も安眠出来なさそうな生活はごめんだ。死んでも怨念とかして出てきそうだし。世の中、物理的に倒せない奴ほど怖いものなんてない。

 

「あのな、大事なものなら人に向けるなよ。まあ、武器なんだから仕方ないが、次俺に向けたら、それ壊さないけど没収するぞ」

 

俺はリーリスに銃を返して、席に座りなおす。これで少しはマシになっ……ってない⁉︎

 

転がるようにして、椅子から降りると先程まで頭があった場所とおそらく胸の辺りに向けて撃たれていた。さっきの今で滅茶苦茶殺す気満々なんですけど⁉︎

 

「おい!コロラド撃ちとか何考えてんだ!」

 

「殺す事しか考えてないわ」

 

「だろうな!そうじゃなくて、せめてさっきの今なんだから攻撃するの止めろよ!」

 

「そう思うだろうと予測して攻撃したのよ。予想通り、何時もの余裕が消えたわね」

 

こ、こいつ………俺の余裕を崩す為だけに何てことしやがる。というか、俺が余裕を持ってた事なんてない。何時も内心ではヒヤヒヤしている。

 

「いい加減、私と戦う気になってくれたかしら?」

 

「いや、何時も戦ってるし、俺勝ってるだろ」

 

「こんなものは戦いとは言わないわ。ただのウォーミングアップじゃない」

 

何そのウォーミングアップ。命懸け(主に俺)過ぎて怖いんですけど。

 

「そもそも貴方、一度たりとも私に攻撃をした事がないじゃない」

 

リーリスの言う通り、俺は基本的に彼女の攻撃を只管避け続ける。そして授業中まで引っ張るか、彼女の弾が全弾尽きるまで避ける。幸いにも、クラスに配備されているものは防弾加工されている(束が改造済み)から傷はつかない。でないと流石にリーリスも教室でぶっ放してはこないだろう。

 

「する必要がない。攻撃を全部避ければ、軍人である君なら実力差を理解してくれると思っていたが」

 

「ええ、そうね。けれど、マトモに戦う事もしない相手に敗北を認めるなんて、それこそあり得ないわ」

 

成る程、一理あるな。軍人としての意地的なものがあるんだろう。

 

「OK。なら今日は戦う。何処からでも来なよ」

 

「それはハンデのつもり?」

 

「さてね?好きに捉えてくれて構わない」

 

「上等よ」

 

彼女は服の中からサブマシンガンを二丁取り出すと、こちらに向けて発砲する。相変わらず無駄も躊躇もない動き。もっとも射線軸に既に俺はおらず、椅子を蹴り上げて、彼女の方に飛ばすと、彼女はそれを転がって躱しながら俺を探す。残念だけど、注意を逸らした時点で俺の勝ちだ。

 

天井スレスレまで大きく飛び上がっていた俺は彼女のすぐ目の前に着地する。彼女も流石にそれにはギョッとして身体を強張らせる。そりゃいきなり敵が目の前に来たら誰でも驚く。実力者の方が尚更な。

 

距離を取ろうにも彼女は始めのうちに教室のギリギリまで後ろに下がっているため、逃げる事は不可能。

 

「終わりだ」

 

俺は拳を振るって、彼女の顔のすぐ横に放つ。もちろん壁に穴を空ける訳にはいかないのでグーからパーに変えたが、ドンッと鈍い音がして微妙に凹んでしまったが。まあバレないだろう。

 

「ミハエ・リーリス。これで満足かい?戦場なら君の頭は潰れたトマトになってる所だ」

 

「………」

 

流石に図星なのか、彼女は俯いている。それかもしかしたら殺気でも出ていたのかもしれない。向けられる事はあれど向けた事など無いはずなのでよくわからないが。

 

「わかったら、今後は世間一般的な『普通』の態度で接してくれる事を要求するよ」

 

「………わかったわ。わかったから…………少し離れて欲しいのだけれど。貴方と私の今の状況、とてもマズイわ」

 

何が?と聞く前に取り敢えず考えてみる。図式としては壁、リーリス、俺。そして俺は彼女の顔のすぐ横に手を通し、壁にもたれている状態。身長は言わずもがな俺が高いので上から見ている………………は!これはもしや世間一般で言う『壁ドン』的なあれの状態⁉︎

 

「悪い、どくよ」

 

「貴方、狼狽えないのね。私は………とても動揺しているわ」

 

「非常時には慣れてる」

 

慣れてねえよ。今、背中の嫌な汗が止まらないもん。戦いを挑んできた相手に壁ドンするとかまじありえねえ。一夏だって、こういうガチっぽいバトルの時はそういうことはしないのに。しかも、リーリスの反応が普通過ぎて怖いんですけど。これなら銃をぶっ放されてる方が気持ち的には楽だ。

 

「あー…………ミハエ・リーリスさん?」

 

「……ミハエで良いわ。一々フルネームで呼ばれるのは気持ち悪いもの。それにーーー」

 

「?」

 

「…………認めた相手にはそう呼ばせているわ」

 

彼女はぷいっとそっぽを向いて呟くと、席に帰っていった。教室の外に出ていた者達も俺たちのやり取りが終わったのを確認して教室に帰ってきた。

 

俺はこうして俺の命を狙い続けるイギリス軍人の少女との和解?を果たした。因みにこの後でこの場にいなかった千冬達には説明を要求される事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





本当は何人かするつもりが一人だけになってしまった………。

まあ、あんまり人を出し過ぎてもあれなのでこれで良いですよね……多分。

二、三適当な話を挟んでから、時間軸を飛ばして新学期くらいを書く予定ですので、それなりに期待していて下さい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。