IFストーリー〜もしも過去に残っていたら〜   作:幼馴染み最強伝説

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つよきす

 

臨海学校という名の色んな意味で重大なイベントが起きた校外授業から一週間が経過した頃。

 

俺は思っていたよりもずっと早くに既に限界の文字が見えかかっていた。

 

一週間前の一件からやたらと束以外の面子も積極的になり、其処にミハエも加わった。朝起きて寝るまでの間、俺は彼女達からの誘惑に晒され続ける事になっているんだ。

 

胸を当てるなんてザラ。隙を見ればキスしようとしてくるし、最悪我慢出来ないとかいって押し倒そうとしてくる。誘惑するだけで自分から襲ってこないんじゃなかったのか。と聞いたら誘惑の内だと返ってきた。最早俺に言い返す言葉は残されていない。だって許しちゃってるから。

 

最初こそ、案外何とかなるんじゃね?とか思ってたけど、無理無理。絶賛思春期真っ只中の高校生にそれは無理があった。もういっそ、襲った方が色々と解決するのではないかと何度も考えたが、その度に一人立ち出来るまでだと自分に言い聞かせてきたが、そろそろ限界である。もし、今束以外の人間にギャップを駆使して誘惑されたら絶対襲う。謝る暇もなく。束は……子兎モードなら話は別かな。

 

いや、よく頑張ったよ俺。それこそエロゲの主人公に匹敵するだけの数多の誘惑から生き延びてきたんだから。でも、もうゴールしても良いよね?色んな意味で。

 

今までの事を思い出して、野獣化しかけたその時。部屋の扉がノックされた。ノック?という事は千冬か楯無かミハエの三人という事になる。誰が来ても理性崩壊待った無しだな、これは。

 

そう思って扉を開けるが、いたのは三人はおろか俺の理性に攻撃を加え続けてくるメンバーではなく、小動物のような愛らしさと癒しを与えてくれて、幼い見た目に反してとある部分は千冬達よりも成長している我が後輩、山田真耶だった。

 

「……真耶?」

 

「お忙しいところすみません。あのお時間よろしいですか?」

 

「別に大丈夫だけど………どうした?」

 

「その……」

 

真耶は言い淀んでもじもじとするのだが、相変わらず可愛い。まるで飼い主に怒られている犬のようだ。いや、俺は怒ってないけどね。そんな感じってだけの話で。

 

意思を固めたのか、真耶は大きな深呼吸をした後、割と大きな声で他の生徒に聞かれると面倒な事になる言葉を言い放った。

 

「わ、私も………生徒会に入れてください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成る程な………俺の役に立ちたいと?」

 

「はい。将輝先輩には色々助けてもらっています。楯無さんはそれを自分に出来る形で返しているのに、私だけ普通に学生生活を送るのは心苦しいです。そ、それに私も先輩と一緒にいたいですし……」

 

「相変わらず真耶は隠し事出来ないタイプだよな。まあ、それがチャームポイントの一つでもある訳だけど」

 

墓穴を掘って、一人わたわたとしている様は見ていて面白い。それに他の人なら馬鹿だろと思うが、真耶だとドジだなぁくらいで終わる。

 

しかし、どうしたものか。俺個人としては真耶を是非とも生徒会に受け入れたいわけだが、生徒会副会長としては容認しかねる。理由は色々ある訳だが、最たる理由は寮の廊下でさっき真耶が割と大声で言ってしまった事が要因だ。あれのせいでさっき他の女子生徒達が部屋から出てきて自分達も生徒会に入れて欲しいと言ってきた。何故彼女達がそんなことを言うのかというと未だに『副会長と恋人になるには生徒会に所属するか代表候補生になるしかない』というデタラメな噂が関係しているだろう。一旦収める事は出来たのだが、お蔭で真耶を生徒会に入れる事が少し難しくなった。もしここで俺が簡単に真耶の頼みを受け入れてしまうと他の女子生徒のものを無碍にすることは出来なくなる。そんな事をすれば生徒会は組織性を失ってしまう。そもそも組織性なんてあるのか疑問だが………うーん。弱ったなぁ…………

 

「じゃあさじゃあさ。生徒会に所属するための権利をかけて、生徒達に試合をさせるっていうのはどう?優勝者を入れるなら文句は言われないし、経験を積ませるのにも打ってつけだよ?」

 

「確かに良い提案だが、さも始めからいたかのように会話に割り込んでくるんじゃない」

 

「えへへ〜、それが束さんクオリティ。褒めて褒めて〜」

 

「褒める要素が一つも見当たらん」

 

だがまあ、束の案が良いというのは本音だ。生徒会入会権をかけてIS戦をさせる。そうなると大半の生徒はその為に努力してくれる。ISに乗っての訓練時間はかなり限られてくるが、其処はなんとかして俺達の方で回すしかない。後、専用機持ちには何かしらハンデを背負ってもらわないといけないな。操縦時間で勝敗を分けるといっても過言ではないIS戦において、普通の子と専用機持ちでは歴然過ぎる。出来れば専用機持ちではないもの達の訓練時間を少しでも多くしたいところだ

 

「束。一つ仕事を頼みたいんだが」

 

「良いよ〜。任せておきなさい!」

 

まだ何も言ってないんですけど…………。頼むから俺の思考と会話をするのは如何にかしてくれ。

 

「良いのか?かなり重労働だぞ?」

 

「そだね〜。ヒカリんに手伝ってもらったとしてもちょろっとキツいかも……」

 

「…………つまり何が言いたい?」

 

「仕事が終わったらまーくんの腕枕を所望する!」

 

えらく真っ当な答えが返ってきたな。また無茶苦茶なことを言い出すかと思ったが。

 

「お前に頼む労働に比べたら安いもんだ。何ならお前が寝るまでの間、頭を撫でてやって「マジで⁉︎」早っ‼︎つか、近っ‼︎」

 

予想外に嬉しい事?が起きた時の束はものすごくリアクションが大きい。というか、人との(物理的な)距離の近さが凄い。

 

「絶対だかんね!後、ヒカリんにもしてあげてね!」

 

「お、おう……任せとけ」

 

「やったー!そうと決まればさっさと終わらせるぞー!」

 

爆発するかのように現れ、そして消える時は嵐のように去る。それが篠ノ之束だ。何処ぞの恥知らずの何とかではない。割と好きだけどね、あの能力。

 

「あ、相変わらず忙しない人ですね………篠ノ之先輩って」

 

「じっとしておけないタイプなんだろうな。動かないと死ぬ病気にかかってるとか」

 

「えっ⁉︎そ、そうなんですか‼︎」

 

「いや、そんな病気ないから」

 

その理屈で行くと束は寝ている間も一秒たりとも止まっている時間が無いことになる。いくら何でもそれはあり得ない………はず。

 

「そうですよね。流石にそんな訳ないですよね。びっくりしました」

 

「俺は真耶が真に受けたことに対してびっくりだ」

 

天然キャラは今も昔も変わらずか。天然といえば千冬も少し天然っぽいところがあったな。流石に真耶程ではないが、千冬の場合は恥ずかしがり度が凄まじいからついからかって照れ隠しに一撃もらってしまう。まあ、ガードしてるんだけどね。当たると痛い音がするし。

 

「それはそうと篠ノ之先輩には何を頼まれたんですか?私にはわからないんですけど……」

 

「何、夏休みまでにはわかるさ。夏休みはある意味充電期間みたいなもんだからな」

 

束とその辺りはわかっている筈だ。夏休みまでになんとか間に合わせないと意味がない。とはいえ、束とて生き物。機械でない以上、限界はある。一応定期的に様子を見に行くのに越したことはないな。

 

さて、夏休み明けが楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーというわけだ。一応千冬からも許可を貰っておきたい」

 

「一応も何もその手の決定権は将輝にあるんだ。許可を得る必要はない。それにそろそろ私達が卒業した時の事を考えて楯無以外の一年生を最低でも一人欲しかったところだ。反対する理由が見当たらない」

 

翌日の放課後。昨日決めた事を念の為に千冬にも言ってはみたが、やはりと言うべきか、反対されなかった。確かにこの生徒会。正式に生徒会に所属しているのは全員二年生。これでは引き継ぎの時に色々と面倒な事になるし、楯無にかかる負担も大きい。

 

「てか、それならまーやん指名しとけば良かったんじゃないかにゃぁ?ある意味生徒会に所属するための条件を満たしてる訳だし」

 

「だな。もし他の生徒になった場合、将輝の事を隠し通すのはかなり困難だぞ」

 

「そうしたかったのは山々だが、そういう訳にもいかなくなった」

 

あれが無ければ学年主席で入試で教官を倒した真耶を指名するのに大した障害はなかった。言い方は少し悪いが、真耶は自分で自分の首を絞める形となったわけだ。まあ、録画されていた入試での試合を見た感じ真耶と楯無が頭一つ抜けているというのは変わらないが、この約二ヶ月の内にやりようはある。

 

「副会長〜、私も参加して良いですか?」

 

「お前もう生徒会に所属してるし、俺の秘書じゃん。だから駄目」

 

「ですよね〜。私、副会長の秘書ですもんね〜♪」

 

言わせたかっただけかよ。ていうか、そんなあからさまに秘書って部分を強調するのはやめていただきたい。自分でそうしたとはいえ、何かむず痒さを感じる。

 

「ですから、頑張っている秘書に一つご褒美が欲しいです」

 

「具体的には?」

 

「チューして下さい」

 

「嫌だ」

 

「えー!何でですか!私以外の皆さんとは既にしてるのにー!私だけ不公平です!うえーん!」

 

何だ、うえーんて。もっとマトモに嘘泣き出来なかったのか。棒読みにも程がある。おまけに顔を伏せた割にチラチラとこっち見てきてるし。

 

「あのな、楯無。誤解があるみたいだから言っておくが、別に全員俺からしたわけじゃない。不意打ち、力技、泣き落とし、とか一通り向こうからしてきただけだ。なあ、実行者諸君?」

 

「「「さ、さあ?何のことだか……」」」

 

ほほう。シラを切るつもりかね。よろしい、ならば「……ですね」ん?

 

「私からなら良いんですね?」

 

「いや、別にそういうわけじゃ……」

 

「じゃあ副会長はじっとしておいて下さい。私が、勝手に、副会長の唇を奪いますから」

 

な、なんかよくわからないが妙な気迫だ。しかし、そう宣言されて俺が逃げないとでも思うて「ガシッ」ガシッ?何だ今の音………ていうか、床から機械の手みたいなものが生えて俺の足を掴んでるんですけど⁉︎

 

「ヒカルノ、何だこれ⁉︎」

 

「いやぁ〜、こんな時の為に将輝の普段の行動から推測を立てて、仕込んでおいた甲斐があったというものにゃ〜」

 

なんつー無駄な事を。ていうか、これ握る力強くね⁉︎結構ミシミシ言ってるんだけど⁉︎これあれだよね、捕まえる事だけ考えて俺の足の事考えてないよね⁉︎

 

「そういうわけだ。将輝、諦めろ」

 

「どういうわけだ、静。そして羽交い締めするのは何故だ⁉︎」

 

「こうでもしないと将輝は絶対に逃げるからな」

 

考えが読まれてる⁉︎ええい、こうなったら………予想の斜め上を行ってやる。

 

既に目と鼻の先まで迫っている楯無の顔を俺の方から引き寄せた。ちと動かし辛かったが、人間の限界を引き出せる俺ならまあなんとかなる。

 

「ッ〜〜⁉︎」

 

さっきの今でまさか俺の方から仕掛けるとは思ってなかったようで楯無はジタバタしているが、今は知らん。ここまで来たら後は野となれ山となれだ。限界まで行ってやる。

 

三十秒後。楯無の反応が弱々しくなってきたところで顔を離す。

 

「きゅ〜」

 

あ、倒れた。これはちとやり過ぎたかな。

 

「おい将輝、どういうことだ。何で私達の時は嫌がったのに楯無だけ自分からするんだ?」

 

「そうだそうだ!私達にもしろー!」

 

「二人に同意するわけではないが、一応理由を聞いておこうか?」

 

「いや、お前達の予想の斜め上を行こうとしたら、こうなった」

 

「「「私達にもしろ」」」

うむ。どうやら選択肢を間違えたらしい。今すぐにでもここを逃げ出したいが、それも無理だ。

 

それはそうと俺の足を掴んでるこれ。いい加減に外してくれないと本格的にマズイんですけど。だって痛いもん。

 

俺の心の訴えは当然というべきか届く事はなく、ギャルゲーみたいな展開になったのだが、それが終わった時、俺の足の骨に罅が入っていた。

 

 

 


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