IFストーリー〜もしも過去に残っていたら〜 作:幼馴染み最強伝説
束を地面に埋めた後、俺は水着に着替えて海へと向かう。
その途中で女子生徒達数名と出くわしたのだが、皆とても発育良好で目のやり場に困る。その為、俺は少し遠くを見るようにして、海へと向かった。
影のあるところばかりを通っては来たのだが、日差しの下に出てみると七月の太陽が俺の肌を攻撃してくる。サンダルを履いているお蔭でここぞとばかりに熱された砂に足を焼かれる事はないのだが、何も着ていない上半身は見事に紫外線による攻撃を受けている。これが吸血鬼か柱の男なら即死コースだ。
「あ、副会長だ!」
「本当だ!私の水着大丈夫かなぁ〜」
「ムキムキじゃないけど、無駄がないって感じだね〜」
「どういう秘密があるのかなぁ〜?」
砂浜を歩く俺を見た女子生徒達が各々の感想を述べる。回答をするなら、水着は大丈夫だし、脂肪がつきにくいからムキムキにはなれないし、秘密はISのお蔭だ。教える気はないがな。
早速泳ごうと波打ち際まで来た時に気がついたのだが、サンダルどうしよう。
適当に置いておいたら無くなりそうだし、かと言って履いたまま入るわけにもいかない。脱げて流されたら洒落にならん。
「そんなところで悩んで、どうかしたのかしら?凄く挙動不審に見えるのだけれど」
どうしたものかと悩んでいると背後から声をかけられた。しかし、発言的には自殺志願者や或いは変質者に声をかけている警察官のような台詞だ。そんなことをいうのは一人しかいない。
「泳ぎたいんだが、サンダルをどうしようかと思ってな。何か良い案があったら教えてくれないか?」
「何処か目立ちそうな所に置いておけば良いじゃない。何なら私が預かっておいてあげても良いわ」
「なら預かっておいてもらうよ。ありがとな、ミハエ」
そう言ってミハエの方に振り向いた時、一瞬目を奪われた。
彼女が着ているのはワンピース型の水着。
こういうのはあれだが、彼女のスタイルを考慮すると一番似合う水着だと言えるのだが、配色がまたベストで深い青色をした水着は彼女の綺麗な金色の髪と合わさって、更にその美しさを引き出している。
普段も十分綺麗ではあるが、毒舌とリスクの高さから警戒心を高めるという意味合いでしかまじまじと見た事はなかったが、今は水着である為、リスクは低く、まだ大して毒舌を吐いていない為、普通に美少女といった感じだ。
「あまり……見つめないで欲しいのだけれど……」
そしてこの稀に見せるしおらしさ。普段無表情なミハエがやや恥ずかしそうにしているというのはかなり好感が持てる。それは俺だけではなく、世の男性全てに言えるだろう。普段から謙虚な態度であれば、俺ももう少し気が許せるのだが、軍人としての性なのだろうな。強気に出てしまうのは。まあミハエの場合は生まれつきかもしれないが。
「………貴方、今失礼な事を考えたわね」
頬を赤く染めて、恥ずかしそうにしていた姿から一転、ミハエはギロリと俺を睨んでくる。射殺さんばかりの視線に俺は思わず、視線を逸らした。それはそうとミハエも俺の心が読めるようになってしまったのだろうか、少なくとも以前は疑問系だったのに、今は確信してそう口にしている気がする。もしミハエが俺の心を読めるというなら、それはものすごく危ない。一瞬でもおかしな事を考えたら鉄の弾がどんどん飛んでくる………バイオレンスだな。
「それで?舐め回すように見たのだから、感想の一つくらいは言えるでしょう?」
舐め回すようには見てねえよ。確かにまじまじとは見たけど。しかし、感想か。ミハエの事だからかなりハイレベルなのを求めてそうな気がするが………うーん。あんまりそれっぽい事を言おうとしてもキザっぽいし、普通でいいか。
「その水着凄く似合ってるよ。何時もより綺麗に見える」
「何か含んだような物言いだけれど………まあいいわ。褒め言葉だと受け取っておきましょう」
ごめんね。素直に褒められなくて。意識して言おうとすると、含んだような物言いになっちゃうんだ。まあミハエも銃さえ無くなれば普通に美少女なんだが………どうして俺の周りには原作ヒロインズの言動が普通に見えるくらい特異な奴ばかりなんだろう。基本的に暴力はないが、その分精神ダメージが尋常じゃないからマイナスだ。そろそろ胃薬が必要かもしれない。
「それよりも貴方泳がないの?それとも焼かれたいの?」
そう言えば背中が痛くなってきたところだな。痛覚の殆どないこの身体が痛みを感じているという事は普通ならものすごく熱いって事だな。
「ミハエは大丈夫か?こんな日差しの中で日傘もささずに」
「サンオイルを塗っているから、ある程度は大丈夫よ………それに貴方に感想を聞いたらすぐに戻るつもりだったもの」
「それは悪かった」
「………聞こえたの?」
「いや、何も」
これだけ近くにいて聞こえない方がおかしい。それに耳はかなり良い方だから「え?何だって?」とはならない。ていうか、あいつら超至近距離でも聞き逃すとかマジありえないだろ。普通に聞こえるっての。
「それじゃあ一泳ぎしますかね」
「あ、待ちなさい!」
ミハエの制止を振り切って、海に飛び込む。後が怖いが……まあいいか。
それにしても超ハイスペックでの泳ぎは凄い楽しいな。今ならオリンピックに出ても余裕で金メダルが取れる上に歴代最速のタイムも叩きだせるかもしれない。
ふははははは!まさか泳ぐのがこれ程楽しいとは思わなかった!流石にジェットスキー並みに速いとまでは言わないが、少なくとも水飛沫を上げるレベルでは速い………ん?
少し先で何かがものすごい飛沫をあげながら、海を出たり入ったりして………ってあれ、ヒカルノじゃね?
「うははははは!楽しいぜぃ!」
あいつ一体何と戦って………はぁ⁉︎
目を凝らさないでもわかる。四メートル程の巨体に凶暴な牙と獰猛な瞳。
………どこからどう見ても鮫なんですけど。
何でこんな浅瀬に鮫が………と思ったら、かなり沖の方に来ていた。あまり離れないようにぐるぐると回るように泳いでいたと思っていたが、特に目印のない海ではそう上手くいかないらしい。
それはそうと何故ヒカルノの奴は鮫とバトっているのか、そして剰え、真っ向勝負にもかかわらず、ヒカルノは無傷で押されているのが鮫なのか…………深く考えないようにしよう。あいつはきっと海の精霊か何かを味方につけているに違いない。
俺は自身の白昼夢に別れを告げて、一旦岸へと帰ると其処には機能性重視の白い水着に着替えている千冬がいた。いくら機能性重視とはいえ、やはり露出度の高い水着だけあって、直視する事が出来ない。ミハエの水着はそうでもなかったから直視出来た。
「やっと帰ったか、将輝」
「探してたのか?」
「ああ。競争する約束をしただろう?ウォーミングアップを済ませたまでは良かったが、将輝が何処に行ったかさっぱりでな。リーリスに聞けば「尋常じゃない速さで水平線の彼方に泳いでいった」と言っていたからな。追いかけた所で追いつけないのはわかっているし、こうして待っていた」
「どれくらいだ?」
「五分くらいだな。もう一度ウォーミングアップをする必要はないぞ」
「なら今すぐ勝負するか?」
「無論、そのつもりだ。負けた方が勝った方に最近出来た@クルーズにあるプレミアムパフェを奢るというのはどうだ?」
「プレミアムパフェ……だと……⁉︎」
最近買い物によく利用するショッピングモールに@クルーズという店が出来た。其処は使っている材料がどれも名だたる一級品ばかりで安いものでも千五百円はする。その中で最も高いのがプレミアムパフェ。パフェの癖に何と値段は八千円という鬼畜仕様。しかし、その味は絶品らしく、値段が高いにもかかわらず、開店から三時間以内には売り切れるのだとか。是非とも食したいのだが、なかなか手が出せずにいた。其処にこんな美味しい話が転がってくるのは嬉しい限りだ。負ければ八千円が飛んでいくが、勝てばただで食える!
「乗ったぜ、その賭け。でも大丈夫なのか?金の方は?」
「問題ない。意外と代表候補生というのは儲かるんだ」
「そ、そうか……」
一瞬だけゲスい笑みを浮かべた千冬に思わず引いてしまった。因みに俺はどうやって稼いでいるのかというと束の実験手伝ったり、最近ではぼっち総理大臣の暇潰しの相手をする事で稼いでいるので案外金はある。IS学園にいる以上、アルバイトなんて出来ないからな。
「どうやって勝敗を決めようか」
「ふむ。ちょうどすぐそこに大きな岩がある。彼処に先に着いた方が勝ちというのでどうだ?」
すぐそこに………あれ?おかしいな、俺にはあれがどう考えても『すぐそこ』じゃなくて一キロは離れているように見えるんだが。
「……遠くね?」
「そうか?割と近場だと思うのだが……」
確かに俺達のスペックを考えたら一キロ泳ぐのは造作もないけど、かといってすぐそこって言うのもおかしい気がする。クッ……やはりこいつも思考は人外仕様なのか。常人仕様のままの俺では到底理解出来ない。
「もう少し近場にするか?」
「いや、彼処で良い。近場だと勝負がつかない可能性もあるだろうし」
ずっと引き分けのまま、勝負が決まらないって事もあるかもしれない。スペックこそ俺の方が上だか、泳ぎは千冬の方が上手いだろうし。長引くと俺の方が不利になる可能性も充分考えられるから、一発で決めておきたいところだ。
「ところで審判はーーー」
「是非とも私がやらせてもらおう」
パレオのついた赤い水着を着た静が仁王立ちでそう答えた。やっぱり似合っているな。こう静の闘争本能を表しているみたいだ。現に今も審判役を務めるだけとは思えない程に静の瞳には熱い闘志が宿っていた。
「お前達の勝負、しかとこの目に焼き付けさせてもらうぞ」
「だから、そんなんじゃないから。頼むからレベル上げないでくれ」
「十分ハイレベルだと思うぞ?何せ、人類最強の男と女が闘うのだからな」
何故に静は俺達の遊びをまるでライバル同士の決闘の如く、ハイレベルな物に仕立てあげようとするのか。
そう思いつつ、俺と千冬は適当にスタート地点を選んで、開始の時を待つ。
「それでは………始め!」
静の合図の元に俺と千冬は猛スピードでゴール地点へと向かう。我ながらこんな超スピードで泳いで身体は大丈夫なのかと思うが、存外これが大したことが無い。大して疲労もないしな。
おそらく半分くらいの距離を泳いだと思うが、やや千冬にリードされている。流石は未来のブリュンヒルデだ。しかし、俺はプレミアムパフェが食べたい。何としてでもこの勝負は負けられないのだ!
ただでさえ、超スピードなのに更に加速する事で千冬と並ぶ。多分、傍目から見れば俺達って人間に見えないよな。
そしてラストスパートをかけようとした時、並走していた千冬がピタリと止まった。スピードが落ちたのではなく、完全に止まったのだ。流石に何かあったのかと思い、俺も止まる。
「どうした千冬?」
「み、見るな……」
振り向いた俺の瞳に映ったのは自身の身体を抱くようにしている千冬。顔は真っ赤になっていて、俺の視線から逸らすように背中を向ける。その時に俺は気付いた。
「水着……流されたのか?」
「…………うん」
おおう、何時もなら堂々とした様子で返事を返してくる千冬の稀に見せるこれ。はっきり言って超萌える。何時もは大人びてるのにふとしたきっかけで年相応の少女らしくなるのは男心を酷く揺さぶるよな。それはさておいて、水着が流されるとか随分とベタな展開だな。いや、流されるというか、超スピードで泳いでいた所為で脱げたって言った方が正しいのかもしれない。俺は紐をきつく締めていたお蔭で脱げるなんて事はなかったが。
さて、どの辺りに流されたのか。脱げてすぐに止まったとはいえ、速度的にはすぐ近くという訳にもいかんしな………ん?何か見慣れたウサ耳がこっちに向かって…………
「ちーちゃんの水着、獲ったどー!」
ドッパーン!という音を立てて、海中から浮上したのはその右手に千冬の水着を持ち、勝ち誇ったかのような表情で叫ぶ束。水着はなんやかんやで俺が選んだ着ぐる水着をチョイス。ウサ耳がフード部分についているのに何故カチューシャを外さないのかは疑問だ。
「束か。すまないな、私の水着を拾ってくれて」
そう言って束から水着を受け取ろうとする千冬だが、束はひょいっとその手を避ける。
「……どういうつもりだ、束?」
「だってぇ〜、ちーちゃんが賭けと称して、まーくんとデートしようとしてたしぃ〜。さらっと抜け駆けしようとしてたみたいだからぁ〜、どうしよっかなぁ〜って思って」
ものすごくウザい口調と表情で話す束。何時もなら千冬の鉄拳制裁が入っているところなのだが、当の本人は居心地が悪そうにそっぽを向いた。珍しく束が千冬を追い詰めている、なかなか見れない光景だ。
「ねぇ、ちーちゃん。私は別にまーくんとちーちゃんがいちゃいちゃしても文句は言わないよ。ただ私も混ぜて欲しいなぁ〜ってだけで」
「…………それを世間一般でデートとは「んー?何か言った、ちーちゃん?」いや、何でもない」
「それに別に良いんじゃない?合法的にまーくんに裸見せられるし」
「流石にそれは………まだ心の準備が…」
「逆に考えるんだよ、ちーちゃん。恥ずかしがってる方が男心を刺激すると」
んん?話がどんどん逸れてないか?デートやら抜け駆けがどうとか言ってたのに、よくわからない話に発展してるぞ。しかも、千冬も感銘を受けたかのような顔をするんじゃない。事実だけど!
「いい加減、千冬に水着返せ」
「あ痛」
パシンと束の頭を叩いて、その手から水着を奪って、千冬に返す。
「勝負はどうする?やり直すか?」
「いやいい。また流されると今度は探さないといけないからな」
千冬の言う通り、またしても水着は流されるかもしれないし、束が拾ったお蔭で大丈夫だったが、次は何処に流されるかわかったもんじゃない。
「じゃあ普通にビーチバレーでもして遊ぶか」
他の女子生徒がやってるのに混ぜて貰えばいいしな。ただ問題は普通のビーチバレーが出来るかどうかだが。
この後、俺、千冬、束、静は女子生徒にボールを借りてビーチバレーをするのだが、案の定、ビーチバレーと言う名の戦争とかし、鮫とバトルを繰り広げていたヒカルノが鮫を手なづけて連れて帰って来た事で一時ビーチでパニックが起きた。