IFストーリー〜もしも過去に残っていたら〜 作:幼馴染み最強伝説
そんな訳で臨海学校を書きたいとおもいますが、一つの話ではとうぜん終わらせられないので、わけます。
特に事件が起きるなんて事はないので、何時ものノリで書き進めていきます。
今回は短めです。
六月下旬。
肌を突き刺す日光はクーラーをつけているにもかかわらず、暑さを感じさせ、カーテンが無いこの生徒会室では紫外線攻撃から肌を守る術がない。
その為、俺達六人は仕事を生徒会室で日差しの当たっていない影に密集して職務を全うしているわけなのだが、なんというか一言で表すなら暑苦しい。
実際はクーラーをガンガンに効かせているので暑くなどないのだが、こう気分的に、な?
「そんな訳で早急に離れていただきたいのだが、皆の意見を問いたい」
『却下』
ですよねー。紫外線はお肌の的ですもんね。何が悲しくて肌年齢を増加させなきゃいけないんだって感じだ。ちなみに俺も肌は綺麗でいたい。老け顔に見られるのなんてごめんだ。
それにしてももう四時半だというのに、日差しは相変わらず強い。いいかげんカーテンを設置したいところだが、なにぶんカーテンを設置しても最長で三日しかなかった。最短で十秒。壊したのは言うまでもなく束だ。事あるごとに何の恨みがあるのか、カーテンを破壊するせいでつけられなくなってしまった。はぁ………この部屋は絶妙に日当たり良好な場所にあるからなぁ………冬はありがたかったが、夏は辛い………ん?
ふと書類を捌いている最中にある書類に目を落とした。
教員達からの相談で『七月の臨海学校』の事だ。
本来なら去年の時点で行う手筈であったのだが、ISの勉強を優先させた事と生徒達があまり乗り気ではなかった事が原因で取り止めとなったが、今回も授業の一環として三日間の臨海学校を生徒達に再度投票を行った所、ほぼ満場一致で賛成だった為、一年遅れではあるが実施するので、生徒会からの認可を得たい………って、生徒会の認可なんていらねえだろ。何時から俺達は先生達より偉くなったんだ。
「千冬、これどうする」
「臨海学校か?良いのではないか?想い出作りに」
千冬らしくない返事だ。おそらく内容は理解して返事はしているが、仕事に集中しているせいで生返事を返したという所か、大抵千冬はこの後で後悔する事になるのだが…………まあいいか。一年前………いや、この時代なら六年後か。その時にも一夏達と臨海学校に行ったっけ。あの時は色々と憂鬱だった所為で心の底から楽しめなかったが、今回は特にそういう事もないし、ちょうどいいな。
「ということで承認…と」
今までの書類同様に副会長の判を押し、書類の山に積む。この時の俺も実は千冬のように仕事に集中していた事もあって流し見をしていたのだが、後に承認するまでも、もっとしっかり読んで内容について教員達としっかり話しておくべきだったと激しく後悔する事になった。
翌日のSHR。久々に生徒会の仕事が長引いた所為で、結局寝たのは日付が変わってからだった。
お蔭で今は猛烈に眠たい。朝御飯を食べればちょっとはマシになるかと思ったが、余計に眠たくなってしまっていた。
欠伸を噛み殺しながら、受けているSHRでは昨日承認した臨海学校の事について、先生が冊子を配る。パラパラと一通り読んでみたが、やはりというべきか以前に行った臨海学校と全く同じだった。違うとすれば旅館の女将さんの名前が違うような気がしなくもないが、誤差の範囲だろう。
そういえば班や部屋の割り振りはどうなるのであろうか?班はともかく、部屋の方は多分未来の時みたいに先生と同じ部屋になると思うが、どうしてだろう。ものすごく嫌な予感がする。
俺が嫌な予感を感じていた時、まるでそれを肯定するかのような先生の声が教室に響いた。
「臨海学校の部屋割りやバスの座席は皆仲良く相談して決めましょう。因みに部屋割りを決める際には生徒会の五人は既に五人部屋として決まってますから、その五人以外で決めて下さいね」
ほうほう。俺達は既に五人部屋として決まっているのか……………って、マジで言ってるのか⁉︎
「ちょっと待った、先生!それってつまりーーー」
「はい。藤本君は織斑さん、篠ノ之さん、黒桐さん、篝火さんと同室という事です」
何だ、その『何か問題でも?』みたいな顔は!問題しかねえよ!お前思春期の男女に三日間同じ部屋で寝泊まりしろってのか⁉︎何考えてるんだ、この教員!
「先生。いくら彼がヘタレだからといっても、異性と三日間寝泊まりするというのは危険だと思います。問題が起きてからでは元も子もありません」
椅子から立ち上がったミハエは俺と同様に担任である浅井先生にツッコむ。しかし、発言が俺を擁護しているのではないところが、流石はミハエとしか言いようがない。まあ、ヘタレなのは事実だろうからなんとも言えないが、せめて謙虚とか、理性的といってほしい。
「先生もそれはわかっています。ですが、それを承認したのは紛れもなく藤本君自身ですよ?」
「はい?」
そんなアホなことがあるか。俺が同意するわけないだろ………と思ってた時期もありました。
浅井先生は出席簿に挟んでいた一枚の書類を取り出し、俺に渡してくる。それは昨日俺が目を通して、承認の判子を押したものだ。
「これに何の関係がーーー」
其処で俺の言葉は途切れた。
一通り流し読みをしていき、最後の項目を読んだ時、思わず頭の中が真っ白になった。
ーーー三日間の間、副会長は生徒会の者達と部屋を同室とする。
そしてその真横には俺の押した判子があった。書類を読んで言葉を失っていた事に疑問を感じたのか、ミハエも隣に来て、全ての項目に目を通した後、明らかに侮蔑の込められた視線を俺に向けてきた。
「………貴方、口ではああ言った癖に……最低ね」
「違う!これはちゃんと読んでなかっただけで、知ってたらこの項目だけ消してたよ!」
「それは生徒会の仕事を適当にしていた、と言っているようなものよ。忙しいのはわかるけれど、それでも手を抜いた結果が貴方に拒否権なんてないわ」
ごもっともだ。何故あの時、しっかりとこの書類に目を通していなかったのだろうか。というか、そもそも何でこんな訳の分からん項目が書類に書かれているのか。
「いやぁ……やっぱり臨海学校くらいは私達も職務から解放されたいので」
「成る程。つまり、自分達の部屋に置いて、押しかける生徒達に時間を取られるのが嫌だから、生徒会のメンバーと同じ部屋にしておけば、織斑や黒桐がいるから就寝時間に押しかけて来なくて済むし、自分達は酒でも飲んで旅行気分に浸りたいと?」
「ぶっちゃけ、そうです」
凄いぶっちゃけだ⁉︎せめて嘘つけよ!取り繕えよ!ていうか、授業の一環じゃなかったのか、臨海学校⁉︎教員が職務放棄しようとしてるぞ!いや確かに浅井先生は生徒達との距離感が近いし、おそらく就寝時間になっても生徒達が部屋に押しかけてくるだろうけど!そこはなんとか頑張れよ!あんたそれでも教師か⁉︎よくこの学園の教師になれたな!
「そういう訳で、朝のSHRは終わりです。次の授業は移動教室ですから遅れないようにしてください」
まるで逃げ去るかのように浅井先生は教室を後にした。クソ、あの職務怠慢教師め………俺が訂正しようとしたのを察知して逃げ去りやがった。まあいい、俺の方でこの項目だけを削除して、教員部屋の方に寝泊まりできるように「将輝」おや?
「どうした、千冬?」
「その書類を渡してくれ」
何故に?そう聞こうとした瞬間、俺の机の上にあった書類が何者かに強奪された。というか、犯人は束だが。
「うははは!まーくんと同じ部屋で寝泊まりとかこれはもう大人の階段登れちゃうんじゃね⁈二人でイチャラブしながらしたり、皆が寝ている隙に声を押し殺してしたり、いっそ乱交するのもありだよねぇ‼︎そんな訳でまーくん、この用紙は貰っていくね!大丈夫!臨海学校の時に返すから〜!」
マシンガンの如く、好き放題抜かした束は何時ものように窓から飛び降りて、何処かへと消えてしまった。
終わった………俺の二泊三日の睡眠がオールナイトに変わってしまった…………。
書類が無ければ、新しいものを作れば良いのだが、いかんせん作成するには教師の許可がいる。そしてその担当はあの職務怠慢教師なのだ。絶対に首を縦に振らない。つまりあれが最初で最後の希望だったのだ。
グッバイ、俺の睡眠時間。ようこそ、不眠の世界。
俺はもう項垂れるしかなかった。