きんいろモザイク ~THE GOLDEN STORY~   作:legends

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長らくお待たせして申し訳ありませんでした!m(_)m 今回から2巻の内容に移ります。

それではどうぞ!


Episode8 休日の過ごし方? 前編

「オハヨウゴジャイマス~♪」

 

 カレンと一緒に登校して早々アリスと会い、間違ったのかわざとなのか分からないが、そんな挨拶をした。

 

「カレンったらそれわざと言ってるでしょ」

 

 アリスがカレンにツッこむ。あ、結局わざとなんだ。

 

「カレンちゃん、オハヨーゴジャイマス」

 

「ゴジャイマース」

 

「って流行ってる!?」

 

 何かカレンのいるクラスで誤った挨拶広まってたっぽい。そんでもってアリス驚愕。

 

「私が流行らせたデス!」

 

「こういうのはクセになっちゃうんだよー」

 

 ドヤ顔を浮かべるカレンに対し、もーっと言いながら反論するアリス。

 

 まあアリスの気持ちは分かったりする。流行りモノって伝染る(うつ)ものでもあるから。

 

「おはよー、皆ー」

 

 おっ烏丸先生だ。俺も挨拶を交わそうと思った時だった。

 

「あっ、先生オハヨウゴジャイマス!」

 

「「あっ」」

 

「?」

 

 早速伝染ってしまったのか、アリスが先生に間違った挨拶をして、俺とカレンは間の抜けた声を出してしまう。ちなみに先生は唐突の事で訳ワカメ状態。

 

 その後、恥ずかしい思いをしてしまったアリスは間違いを正すために、忍達に挨拶を交わした。

 

「皆様お早う御座います!」

 

「おっはよ~!」

 

「おはよ……どうしたの? 何か堅苦しいわね」

 

 陽子と綾に改まった挨拶をし、綾が不信感を抱く。まぁその気持ちは分かる。

 

「おはようございます、アリス」

 

「美しい日本語ー!」

 

「??」

 

 忍らしい、大和撫子と言わんばかりの綺麗な日本語に、思わずアリスが抱きつく。ちなみに忍は訳(以下略)。

 

「カレン、健、何あれ」

 

「アリスはゴジャイマス否定派なんデスヨ~」

 

「……だ、そうだ」

 

「はぁ?」

 

 流石にこの状況には、陽子には付いていけなかったようだ。

 

「そういえば、今度お姉ちゃんがハワイに行くんですよ。モデルの撮影で」

 

 忍がふと、そんな事を言ってきた。

 

「勇さんがか? 流石はモデルなだけあるな」

 

「いよいよグラビアデビューか!」

 

「いや違うだろ。お前どんだけグラビアに拘ってるんだよ……」

 

 陽子はこうやって勇さんにグラビアを求めてたりする。ファッションモデルなのに……。

 

「あれ? ハワイじゃなくてグアムじゃなかった?」

 

「え? グアム? ハワイ?」

 

「どっちも有名なリゾートね。勘違いする気持ち、ちょっと分かる。サイパンとか……」

 

 アリスと忍が戸惑ってる中、綾が補足説明をする。

 

「そうそうタコスとかー」

 

「それは食べ物だ忍!」

 

 これ完全に知ったかぶってる。うん、きっとそうだ。

 

 そんな他愛ない会話で時間を過ごしつつ、ホームルームが始まった。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

「いいなー、海。行きたい」

 

 授業後。横隣の陽子がふと、そんな事を呟いた。

 

「その気持ちは分かる。確かに海いいよな、泳げるし」

 

「おお! やっぱ健もそう思う!? 綾だったら嫌って言いそうだったけど」

 

「あー……多分焼けるとかで嫌って言うかもな」

 

 話の内容は先程の勇さんがハワイに行くって話の続き。それに陽子が触発されたらしい。

 

 ちなみに、話に綾が出てきたが、その当の本人は授業中に分からないところがあったらしく、烏丸先生に質問に行っている。

 

「健、陽子ー!」

 

「八坂くーん、猪熊さーん!」

 

「「わっ! 何なに!?」」

 

 と思ってたら、突然バーンと綾と烏丸先生が飛び込んできた。マジで何事!?

 

「な、何があったんすか」

 

「実はね、烏丸先生がギャグを言ったんだけど、私先生にツッコミ出来ないから、ツッコミ得意な健と陽子なら何とか……」

 

「おい! 俺をツッコミ要員とか何かと勘違いしてねえか!?」

 

「そうだそうだ! ツッコミは健一人で十分だし!」

 

「何言ってんだ陽子ッ!?」

 

 どうやら先生がツッコミ待ちのようで、それを綾に頼んだが、それが出来ないから俺と陽子に頼んだらしい。

 

が、それに対して陽子が自分が守備範囲外だと言わんばかりに俺を貶したような言い方をした。

 

 実に不憫……。

 

「やっぱり八坂くんなら私のツッコミを受け入れてくれる……! トーテムボール!」

 

「何故にトーテムボールってどこに関係が……ハッ!?」

 

 しまった、さっきまでのノリがまだ続いてたからか、烏丸先生のギャグにすら反応してしまった。

 

「流石八坂くんだわ! どう? 先生の一発ギャグは」

 

「いや突然過ぎて何がなんだか……。何かあったんですか?」

 

 困惑と同時に、流石に疑問に思い、先生に訊ねる。

 

 先生曰く、最近では教師にも「笑い」が必要になってきて、面白い先生は好かれやすいとの事。

 

 それに便乗して、先生が一発ギャグをかまして、それが綾に聞かれてしまったという。それが一連の流れである。

 

「うーん、確かに先生の気持ちは分からなくもないですが、さっきのだとスべるかもですよ」

 

 いきなりバッと言われても、他の人には何のこっちゃと反応返しされて白けるのではと思い、俺は言った。

 

 仮に、俺が他の人の立場に立っても、多分そう思うだろう。

 

「まあ、そうなの?」

 

「はい。けど一発ギャグとは別に、他の方法で笑いを取るって事もできますから、それをやってみたらいいんじゃないですか?」

 

 とりあえず指を立ててそう先生に教える。笑いを取る方法なんていくらでもあるからな。冗談を言ったりとか。

 

「なるほど~。それは確かにいいですね。八坂くん、私が何をしたらいいか教えてくれる?」

 

「いや、流石にそこは先生が考えて下さいよ。笑いの取り方も色々ありますし」

 

 先生が生徒に教えられたいとはこれ如何に。

 

「健、そりゃないだろ、からすちゃんに教えてやれよ」

 

「そうよ。健だからきっといい案を出すと思ったのに」

 

「この上ない理不尽を見た気がする」

 

 二人に酷い言い草をされた。人には限度ってものがあるんだよ。

 

 こうして、俺は先生に助言をしてひと仕事はしたものの、休み時間なのに休みが取れず逆に疲れてしまう羽目になったのだった。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

「来週から夏休みです! 皆で遊びに行きたいですねー」

 

 昼休み、忍がそんな提案をしてきた。

 

「はいはーい! 海行こうよ海!」

 

「え~っ、私は山がいいデス!」

 

 しかし、陽子とカレンの意見が分かれてしまった。

 

「山手線ゲーム『夏に行きたい所』! 海!」

 

「山!」

 

「海!」

 

「山デス!」

 

「それ以前に何で山手線ゲーム!?」

 

 反抗するにしても唐突すぎるぞ。

 

「あー……それはさっきしのと、アリスがしてたからよ。……暑苦しかったけどね」

 

「なるほど、つまりその影響って訳か。……いつものだな」

 

 綾が助言してくれて納得した。後、忍とアリスは相変わらず仲が宜しいでござんすね。

 

「や~~~ま~~~」

 

「ガンコか!」

 

 おっとそうしている間に二人が取っ組み合いになってた。

 

「二人共ケンカは止めなさい! ……そうだわ。ここは間を取って家って事でどうかしら!」

 

「どことどこの間なんだ!?」

 

 インドア派にも程があるぞ。

 

「ならばこうしまショウ。トランプで勝った人の言うコト聞くデス!」

 

「望むところ!」

 

 カレンが懐からサッとトランプの束を取り出して、陽子に勝負を挑んできた。確かに平和的な勝負だがカレンよ、それずっと仕舞ってたの?

 

 ―――ちなみに結果はカレンの惨敗。おい当事者弱いぞ。

 

「……山がいいデス……山がいいんデス」

 

「負けを認めろよ! もー、仕方ないなぁ。じゃあ、山でいいよ」

 

 が、カレンが呪詛みたいに泣きながら言ってたのが利いたのか、溜め息を吐きながらも陽子が泣くカレンに折れてそう言った。

 

「フジヤマ~!」

 

「それはちょっと!?」

 

 カレンの規模はデカかった。

 

「ま、別に何処でもいいけどな」

 

 皆と遊びに行けるなら、俺は何処でも良かった。実際、皆と遊ぶのは楽しいものあるし。

 

「じゃあ、家でいいわよね?」

 

「綾はインドアから離れて!?」

 

「なんで私に協力してくれないんだよ! 山手線ゲーム!」

 

「入り込む余地なかったから―――ってそっちかよ!?」

 

「ケンもフジヤマ行きマショウ!」

 

「いきなりは行けないから!?」

 

 皆を尊重して言ったつもりだったのに、どうしてこうなった。

 

「はぁ、はぁ……」

 

 やばい、ツッコミし過ぎて息切れと汗掻いちまった。

 

「ケン大丈夫? 汗拭いてあげるよ」

 

「おおありがとなアリス」

 

 アリスがハンカチを手に俺の汗を拭いてくれる。ありがたい、好感度アップですよ。

 

「ケンがツッコミしずらいなと思ったから」

 

「台無しだよ!?」

 

 ゲージダウンでした。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 時は少し過ぎて、夏休み。そんな訳でやってきました、山。勿論富士山じゃないけど。

 

「あ……暑い……」

 

「この暑い中、何で山なんかに」

 

 陽子と綾が何これと言わんばかりに、しんどそうに歩いていた。

 

 気持ちは分からなくもない。雲ひとつない晴天で強い日差しに当たりながら、山の中をひたすら歩く。

 

 これには確かに薄着でも辛いものがある。熱中症とか脱水症状とかにも気を付けないとな。

 

「とりあえず日陰に行こうか……ってうおおおい忍!?」

 

 ミーンミーンと騒ぐセミとジリジリと真夏の日差しに参っている中、忍が長袖で純白のお嬢様のような服な上、フードを被っていて如何にも暑そうな格好でびっくり仰天。

 

「しの暑くないの!?」

 

「どう見ても山に行く服装じゃないぞ!」

 

 綾と陽子も同じ事を思っていた。確かに驚く格好だが……何かのコスプレか?

 

「森の妖精……ですよ?」

 

「何言ってんだ! 頭やられたか!?」

 

 息もはあはあと荒げてるし、結構な量の汗も滲ませている。無茶しやがって……。

 

「またの名を森ガールです!」

 

「それって森ガールなのか?」

 

「どうして山ガールじゃないの?」

 

 綾の物言いに俺も頷く。忍が森に拘っている理由でもあるのかな。

 

「森の方が可愛いからです」

 

 超単純だった。

 

「シノ可愛いよ! 妖精にしか見えないよ!」

 

「えへへ、そーですか? はー、はー」

 

「こんな苦しそうな妖精嫌だ」

 

「確かに」

 

 さっきから息が荒い忍に陽子はそんな事を呟き、俺も頷くが、アリスは忍の格好を素直に褒めていた。

 

 純粋なアリスには痺れる憧れる。

 

「女の子はオシャレの為ならちょっとの我慢はいとわないのですよ! お姉ちゃんが言ってました!」

 

 ……何でだろう、勇さんなら今頃家でアイス食いながらゴロゴロしてそうなイメージを持ったんだが……きっと気のせいだろう、うん。

 

「別にその格好はいいけど、倒れるなよ」

 

「はい!」

 

 とりあえず、念には念を。俺は忍に注意を伝えといた。

 

「暑いけど登りきったら達成感ありそう!」

 

「そうだな」

 

「そうね」

 

「頑張ろー!」

 

「おー!」

 

 そんなこんなで俺達が意気込んでいた時、向こうの方から声が響いた。

 

「おーい! そっちじゃないデスヨ、こっちデス!」

 

「カレン?」

 

「ここで渓流釣りが楽しめマス! 釣りの準備も用意してマス~。パパが!」

 

「こっちが目的だったの!?」

 

 実に用意周到なカレンに綾が驚く。あれだけ山に拘っていたのはこの為か。それなら納得。

 

 てっきり今ちょうど登山道と渓流の方向を道を示す札があって、俺達は登山道の方を行こうとしてたのだが。

 

 ちなみに彼女の近くには送り迎えしたとされるカレンのお父さんがいらっしゃった。

 

「だからカレンはあんな朝早くから出てたんだな」

 

「そうデース!」

 

 何を隠そう、山登りの今日、朝早くからカレンが「ケンー! 山登りの準備してくるデース!」とか言って、家を飛び出したもんだから何かと思ってたけど、この事だったんだな。

 

 だから昨日電話してたのか。その相手はカレンの父さんだった訳で。頼んで貰った訳で。

 

 俺がその事を言ってくれれば良かったのにと半ば呆れている中、俺の姿を見つけたカレンのお父さんが近づいてきて、話しかけてきた。

 

「やあ健くん。久しぶりだね、元気にしてたかい」

 

「あ、此方こそお久しぶりですカレンのお父さん。俺は大丈夫です」

 

 俺は少し緊張しながらも受け答える。こうして直接話すのは俺が小学生以来かな。

 

「いやあ、急なお願いをして済まないね。君の家に居候させて貰って」

 

「あ、いえ。親が何も言ってこなかったのでびっくりしましたけど、気にしてないです」

 

 話しているうちにあの時の事を思い出す。転校してきたカレンと会って、小さい頃と今とは違うなと思って、その後忍とのリアル鬼ごっこ……は余計か。

 

 そして、家に帰ると姉弟にはカレンが居候すると伝えなかった親のびっくりサプライズ(?)などと、色々あった。

 

「そうか。何にせよ、君はカレンを救ってくれたんだ。その恩だと思ってくれるかな」

 

「救ったって、そんな大袈裟な……」

 

 俺は苦笑いを浮かべるが、この人はきっとカレンを大事な娘だと思っているはずだ。しかも小さかった彼女を見失ったって事もあったんだから、そりゃ心配もするだろう。

 

 しかし、腑に落ちないところもある。

 

「だけど、何で俺のところにカレンを居候させようと?」

 

 そう、大事な一人娘を俺―――八坂家に居候させた理由だ。居候せずとも、親子で一緒に暮らしてもいいとも思うんだが……。

 

「なあに、君と君の父さんと縁もあるから、大丈夫だと思ったんだよ」

 

「どういう事ですかそれ……」

 

「ははは。それもあるが、一番の理由はカレンが言い出した事を尊重しただけだよ。友達のアリスちゃんと君に会いたいってね」

 

「ッ……」

 

 その言葉を意味を理解して俺は恥ずかしくなってしまう。

 

「カレンは日本に来て日が浅い。だから誰かが側にいてくれたらって思い、君が適任だと思ったんだ。……急なお願いをしたけどね」

 

 そうか。もし俺が小さい頃、カレンを慰めてなかったら、今頃こうしてカレンとの生活ができなかった。

 

 ただ、俺の家に居候させたカレンのお父さんの理由も何となく分かった気がする。

 

「しばらくの間、カレンを宜しく頼むよ」

 

「は、はい。俺が務まるかどうか分かりませんが、俺にできる事なら」

 

「堅いよ。もっと柔らかくてもいいんだよ。リラックスリラックス」

 

「あっはは……」

 

 思いのほかカレンのお父さんがフレンドリーだった。

 

 何にしろ、こうして直々に任せられたんだ。上手くやっていこう。

 

「おーい健ー! 何してるんだよー! こっちきなよー!」

 

 話をしていたら、向こうにいた陽子に呼ばれた。

 

「ほら、君も行っといで。呼んでるよ」

 

「はい」

 

 俺は軽くカレンのお父さんに礼をして、呼ばれた方向に走っていった。

 

 




後半の方少しシリアス混じってます。
とりあえず入れとかないといけない内容を入れた結果、前編、後編と別れる事になりました……申し訳ありません。

次回もすぐ投稿できるよう頑張ります。

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