きんいろモザイク ~THE GOLDEN STORY~   作:legends

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今回は少し原作のカット部分が多めです。

理由? もう一人の金髪の女の子を早く介入させたかったからだよ!


Episode4 個人的なイメージ

「陽子ちゃんって髪染めてます?」

 

波瀾万丈のホリデイの翌日、学校でいつも通り席に女子四人と男子一人が談笑し合っていると、不意に忍が陽子に質問を訊ねた。

 

「いや、これ地毛だよ。校則違反になるし……」

 

 まあ茶色に近い赤色の髪だからな。そう思うのも仕方のない事だと思うのだが。

 

 ちなみに、唯一黒髪なのが忍、綾、俺という感じになっている。

 

「私卒業したら、染めようかなって思ってるんですー」

 

「へー、どんな色にするんだよ?」

 

 俺が忍に聞いてみると、返答は予想の遥か上を行くものだった。

 

「金色です」

 

「「!!」」

 

「…………」

 

 綾と陽子は驚愕しながら絶句。質問した俺も開いた口が塞がらなくなってしまった。

 

「……えーと、忍? お前金髪にするつもりなのか?」

 

「んー、金って言うよりも金に近い茶ですね」

 

「変わんねーよ! お前超サイヤ人にでもなるつもりか!?」

 

「「健ナイス(よ)!」」

 

 ファッション雑誌の一面を指差し、憧れの表情を浮かべる忍にツッコミを入れると何故か綾と陽子がナイスと言ってくれた。二人も同じ考えをしていたのだろうか。

 

「シノ……金髪にするの?」

 

 と、そこへアリスが忍に質問を投げ掛けた。

 

「はい! アリスとお揃いですねっ」

 

「似合わないよー!」

 

「はっきり!!」

 

「流石!!」

 

「いやほんと!!」

 

 忍の金髪発言に似合わないと言うアリスの返答に、綾、陽子、俺の順番でツッコミが通った。

 

 その瞬間、忍の中からガラスの砕け散ったような音が聞こえた……気がした。

 

 あ、忍がショボーンと窓辺で途方にふけちまった。

 

「まあまあ、似合う似合わないは人それぞれよ」

 

「そうだよっ! シノ、昨日の服はすっごく似合ってたよー!」

 

 そこですか!?

 

 アリスのピントがずれている発言に内心で言う俺だが、綾と陽子も同じ事を思っていたのか、何とも言えない表情をしていた。

 

「ほ、ほんとですか~?」

 

「うん! あんなに可愛く着こなせるのはシノ以外にいないよ!」

 

「あの服は金髪が似合うって思うんですよ! だから私も金髪に……」

 

「NO金髪」

 

 基準が分からないが、笑顔のアリスのダメ出しに再び大ダメージを受ける忍であった。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

「んぅ……もう朝……?」

 

 わたし、アリス・カータレットは朝の日差しに目が覚め、ポストに入っているであろう新聞を目を擦りながら取りに出掛ける。

 

 日本に来て数週間が経ち、生活にもだいぶ慣れてきました。日本はとても暮らしやすく、周りの人もみんな優しいです。

 

 そこで、わたしの周りにいる仲良しの皆を軽く紹介するよ。

 

 ヤマトナデシコの鑑でもある大宮忍。あだ名はシノ。そのシノの姉でモデルの大宮勇。二人は姉妹だけどあんまり似ていないんだよね。

 

 小路綾ことアヤ。アヤは頭も良くてしっかり者なんだけど、時々凄くおっちょこちょい。

 

 猪熊陽子ことヨーコ。ヨーコは明るくて元気。朝ご飯を食べたのに弁当を食べるほどの大食漢。いっぱい食べるのはいい事だと……思う。

 

 そして、唯一の男友達の八坂健ことケン。ケンはシノ達と仲が良くてわたしも話しやすい。でも……皆の都合に付き合わされたり、振り回されたりする事も多くて少し苦労人。わたしも結構な頻度で助けてる気がする。

 

 そんな感じで皆と一緒に暮らしていますが、わたしは日本、大好きです!

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

「進路希望の紙、明日までですよ~」

 

 ホームルーム。烏丸先生が進路希望の紙を皆に渡しながらそう言ってきた。

 

 その際、忍が先生に質問を投げかけた。

 

「はい先生、質問です。先生はどうして教師になろうと思ってたんですか?」

 

「そうねえ……先生は気付いてたらなってた……そんな感じ?」

 

 さ、参考にならない……教師なのに。

 

「でも学生時代が一番楽しいわよ。学生で大変な事と言えば……睡魔との……戦い、ぐらいだものね……」

 

「先生、今も眠そうです!」

 

 先生がうつらうつらしながら発言し、今にも眠りそうな先生を忍がフォローする。

 

 大丈夫なのか、一つの教師として心配になってきた。

 

 そんなこんなでホームルームが終了した後、進路希望の紙に目を通す。

 

 ほうほう、見た感じだと第三希望まであるのか。まあ流石に全部書かなくても大丈夫だろう。

 

 他の皆の様子は……?

 

「進路なんて考えた事ないよー」

 

 アリスは悩んでいる。そりゃそうか。最近日本に来たばっかりで今後進む道なんて考えるには難しいからな。

 

「アイドルになって武道館でライブかなー。冗談だけど」

 

 陽子、それジョークにしてはレベル高過ぎなような気が……。

 

「うーんどうしよう……」チラッ

 

 綾は真面目だから凄く悩んでいるな。

 

 ……時折彼女の熱い視線が此方に来ているような気がするのは俺の気のせいだろうか。

 

 え? 忍? あー……私、知らないー。通訳者とか聞こえないデース。

 

「ケンは何になるつもりなの?」

 

 俺が皆の様子を眺めているとアリスがこちらに来て、尋ねてくる。

 

「俺? そうだなぁ……参考になるか分かんないけど、今のところは無難に先生かな?」

 

 親も先生だしなと伝えると、何故かアリスが目を輝かせた。

 

「先生! 凄い! ケンは真面目だからきっと叶うんじゃないかな!?」

 

「いやいや……そんな事ないって」

 

「そんな事あるよ! だって、皆を注意するのに向いてるから!」

 

 アリス……それって遠まわしにワタシのツッコミの事を言ってるんじゃないですか?

 

「そういうアリスは決まったのか?」

 

「えーと……まだ決まってないけど明日まで時間はあるからもう少し考えてみようと思ってる」

 

「そっか。ま、じっくり考えてみるのも一つの手だな」

 

「うん!」

 

 アリスは純粋で真面目だなーなんて心で思った。恥ずかしいから直接言う訳ないじゃん。

 

「ねえねえ、アリスと健……随分と意気投合してるな」

 

「……そうね。これって有り得るかもね」

 

「ずるいです健君! 私を差し置いてアリスと仲良くならないで下さーい!」

 

「お前等は何言ってんだ!?」

 

 陽子と綾は何やら耳打ちでひそひそ話をしているし、忍は慌てながら俺とアリスの元へ駆けて来る。意味分かんないです……。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

「…………」

 

 翌日、学校へ来るとアリスの様子が可笑しかった。何やらアルバムを眺めながら途方に暮れているような気がしているのが窺える。

 

「アリス一体どうしたんだ?」

 

「朝から元気ないんですよね……」

 

 忍が溜息を吐きながらアリスを心配そうに眺めている。

 

「いやいや忍、お前アリスがホームステイしているんだから一番理由を知ってるんじゃないか?」

 

「いえ、アリスが見ているのはイギリスのアルバムよ。あれにヒントがあるんじゃないかしら」

 

 そこへ綾が介入し、アリスが元気のない原因を推測する。

 

「答えは……時差ボケね!」

 

「いや……無理ないかそれ?」

 

 どう考えてもズれた発言をする綾に俺はとりあえずツッコんどく。

 

「フツーに考えてホームシックだろ」

 

 腰に手を添えて答える陽子の意見がごもっとであった。

 

「そうだったのですか、アリス!」

 

「昨日マムと電話で話してたら懐かしくなっちゃって」

 

「マム!? 何だか美味しそうな響きっ!」

 

「忍……それはお母さんの事だろ」

 

 通訳者ェ……。

 

「ポピーは元気にしてるかなあ……」

 

「誰!?」

 

「多分犬の名前ね」

 

「わ、わんわん!」

 

「声真似!?」

 

 飼ってる犬の真似までするとは……忍の過保護には困ったものだ。まあ、故郷から離れて寂しくなっているアリスを励ますつもりでやったんだろうけど。

 

「ごめんね心配かけて……。もう大丈夫、元気出たよ! それに日本には皆がいるし毎日楽しいよ」

 

「アリス……なんていい子!」

 

 忍、お前はアリスのお母さんかっての。

 

「そうだ。私達は独りじゃない」

 

「力を合わせて~」

 

「そうだよね!」

 

「「「頑張れアリス!」」」

 

 陽子、忍、アリスが円陣を組み、三人一緒におー! と掛け声をかける。

 

「何なのあれ……」

 

「ある意味、微笑ましい気がしなくもない」

 

「えっ」

 

「えっ」

 

 綾と上手く話が噛み合わなかったのか、口どもる。本心から言った事なのに……。

 

「ま、まあいいか。それよりもアリス、アルバム見ていいか?」

 

「いいよー」

 

 アリスから許可を貰い、赤いアルバムを手に取り開く。すると、幼い頃のアリスと美人な女性の姿が写っていた。

 

「この人アリスのお母さん?」

 

 俺の背後から顔を出しながら覗き込む陽子がアリスに声を掛ける。

 

「そうだよー」

 

「すげー綺麗ー」

 

 その気持ちは分かる。お母さん滅茶苦茶若く見えるし。すると陽子が何かに気付いたのか写真を凝視している。

 

「……アリスは父ちゃん似かなー」

 

「え? そんな事初めて言われたよー」

 

「何でそう思ったんだ?」

 

「察しろよ!?」

 

「あばすっ!?」

 

 陽子にスパーンと頭を叩かれ気持ちのいい音が鳴る。俺にとってはかなり痛い上、察しろと言われたけど一切分かりません。

 

 何だってんだ、もう。

 

「あれ? この子は誰ですか?」

 

 すると不意に忍が写真に写っている幼い頃のアリスと一緒にいる金髪の少女を指差す。

 

「イギリスに居る友達だよ」

 

 へえ。そりゃそうか。アリスの故郷にも友達がいない訳ではないよな。

 

「……友達!? アリスの!?」

 

「そうだよ」

 

「フレンド!?」

 

「イ、イエス」

 

「……アリスにイギリスの友達が居たなんて、何かちょっと切ないです」

 

「何で!?」

 

 質問責めする忍に対し、アリスが簡単に答えると、しゅんとしてしまう忍。いや流石に居るだろうよ……ぼっちな訳じゃないんだし。

 

「名前をカレンって言って、パパが日本人のハーフなの。カレンのパパはわたしの日本語の先生なんだよ」

 

「へえー」

 

 …………ん? カレン? 何処かで聞いたような聞いたことないような……。

 

「もし会ったら、シノも仲良くなれると思うよ」

 

「……アリスの友達の金髪少女、私も友達になれたら……両手に花じゃないですか!」

 

「あー、いつものしのだ」

 

 落ち込んでいた忍だったが、アリスの言葉によりパアッと明るい様子になる。金髪少女どんだけ好きなんだよ。

 

 一通り写真を眺めた俺達はアルバムをアリスに返した。

 

「写真ありがとな。見せてくれて」

 

「今度皆のアルバムも見せてね」

 

 アリスが皆に訊ねてくる。そんなのお安い御用だと答えようとしたが―――。

 

「嫌よ!!」

 

「!?」

 

 綾がくわっと目を飛び出さんとするばかりに声を張り上げる。俺は今の声に驚いて固まってしまう。

 

「ちょ……お前どんだけKY……」

 

「ごめんなさいっ! でもだって裸が写っているんだものっ!」

 

「赤ちゃんの時の写真だろ!?」

 

 我に返った綾はあわあわと弁明しようと慌てふためき、それに陽子がツッコむ。何だ。そんな事で気にしてたのか綾は。

 

「……健、今変な事考えてなかった?」

 

「え? イヤアソンナコトナイヨ」

 

「何故片言……?」

 

 今の心を読まれたの? 女ってのは感が鋭いですねー(棒)

 

 とりあえず、アリスの機嫌は直ったってことでいいのかな? そう思った俺は安心する事にしたのだった。

 




次回、前書きで書いたもう一人の金髪の女の子が登場。

そして、まさかの展開が!?

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