きんいろモザイク ~THE GOLDEN STORY~ 作:legends
きんモザ小説投稿するの半年以上過ぎてる……ペース上げないと。
今回も日常回です。
「さてお昼だー。弁当食べよ」
午前の授業が終わり、お昼休みの時間。俺は母さんが朝早く作ってくれた弁当を
弁当は母さんが作ってくれるが、基本朝食と夕食は俺が作っている。何せ、両親は共に朝早くから仕事に出かけているし、負担をかけすぎる訳にもいかないからだ。
そう思い、俺は二人の代わりに朝夜の飯を作ると
「いいなー健」
すると後ろの席にいる陽子からそんな声が上がった。
「え? 陽子も、弁当あんじゃないの?」
まるで自分の弁当がないみたいな言い方だが、普段から陽子も弁当を持ってきていたはずだ。
すると彼女はしゅんとしながら言い放つ。
「そうなんだけど、早弁したのでお弁当がありません」
「だから何やってんだ」
空の弁当箱を見せる陽子。前にも似たような事あったような。
全く、コイツはよく早弁してるよな。今に始まった事じゃないけど。
「だから健、その唐揚げ一個ちょーだい?」
俺が弁当箱を開けたのを見計らったのか、弁当の中にある唐揚げを見て俺に懇願してきた。
「……ったく、しょーがねーな──―ほれっ」
しょうがなく思った俺は
「ありがとー!」
「これに懲りたらあまり早弁すんじゃねーぞ?」
「無理かも」
「せめて努力しろよ!?」
無理と即答されて俺はツッコみの声を上げる。善処ぐらいはして欲しい……。
「健、私の唐揚げを上げるわ」
すると今度は隣の綾が消費した唐揚げを譲ると言ってきた。
「えっ? いやいいよ。綾の食べる量が減るだろ?」
それを申し訳なく思った俺は手を振っていらないと示す。
「唐揚げ一個ぐらい、私は大丈夫よ」
だが、綾は遠慮はいらないとばかりに話す。
「それに早弁した陽子が悪いのに、わざわざ健が上げる必要はないわよ」
「まあ確かに」
俺が言うと同時に陽子が能天気そうにえへへーと笑う。
「だから……べっ、別に上げたくてそう言ってる訳じゃないからね!」
何故か顔を赤くしている綾が注意喚起を促してきた。
「お、おう」
俺が答えに迷っている中、綾が俺の弁当箱に入れようと唐揚げが刺さったフォークを差し出してくる。
しかし綾はハッと何かに気付いたのか、弁当箱に入れずに俺の前に差し出してきて──―。
「あ……あーあー」
「え!? 何っ!?」
まるで赤ちゃん言葉の如く言う綾の意図が読めなかった。
後から聞いた話だが、陽子曰く「近くにバカップルがいて、『あーん』してたからそれに綾が憧れてたんじゃない?」との事。
カップルにしてた事と同じ事をしようとしたのだが……そう思うと何だか恥ずかしいな。
「お昼、おっ昼~♪」
そんな中、カレンがおじゃまするデスーと言いながら俺達の教室にやって来た。
……色んなパンやお菓子を抱き抱えて。
「カレンっていつも来るの遅いよね。何してんのー?」
陽子が訊ねる。確かに、カレンの弁当も母さんが作ってたはず。
「お弁当食べてカラ来てるノデ!」
俺が母さんには頭が上がらないと改めて思ってると、クラスの子達と弁当食べてから来てると言って、様々な菓子パン等を机の上に置いた。
「じゃあそのパンやお菓子は?」
今度は俺が訊ねる。
「お地蔵サンに果物やお菓子とか上げるデスよね~?」
「お
綾の言う通り、お地蔵さんには故人の霊を慰めるために食べ物等のお供えをするのが一般的に知られている。
「あれと同じようなものデス」
「つまり全部もらいものか!!」
陽子が声を荒げる。確か前にも『クラスの皆から菓子パンをもらったデスー!』って家でも聞いた気がする。
カレンの言う話だと、クラスの女子達からお菓子をもらったり、中には手作りの物もあるという。それには流石にお礼を言って受け取ったらしい。
さっきの理論だと、クラスの皆はカレンの事を崇めてるつもりにも聞こえるが……気のせいだろうか。
「かわいい動物に餌を与える感覚なのかしら」
「ちょっとは遠慮しなよー」
「エ~~~」
綾と陽子が言うと、カレンは不平を表す。
「そうだな。もらい過ぎな気もするから少しは遠慮した方がいい」
「デモ、ミンナトテモ優シイ、私嬉シイ、ミンナハッピー!」
「わざとらしい片言!」
普段から少し片言気味だが、これはいかにもカレンがわざとらしく言った片言だ。
「カレン……何か日本に来て太った……?」
そこへ、俺達の様子を見たアリスがカレンに向かって言う。
俺は元々の彼女の体型を知らないし女子の体重を聞くのは禁句だが、前のカレンを知ってるアリスなら、きっと分かるのだろう。
「エ!! そ……そんなバカナ!?」
太ったと言われてガーンとショックを受けるカレン。
「毎日それだけ食べれば太るよ~」
そりゃあ、あれだけお菓子とかパンを普段からもらって食べるのは、流石にな。
「カレン、これを」
と、そこへ忍が何かを持ってカレンに渡す。それは、首からぶら下げるボードらしきもの。
カレンが実際にぶら下げると、何か文字で書かれているのが分かった。
【食べ物を与えないでください☆】……と。
「犬かよ!!」
俺ははっきりそう言った。
☆☆☆
カレンの体重を量りに、保健室にやってきたわたし達。
あ、でも今はケンはいないよ。何かお腹を痛めたみたいで……心労、かな? なら尚更保健室に来る必要があるんじゃないかな、とも思うけど。
「まずは今の体重を知る事が重要よ! 私から量るわね」
どこか自信がありそうなアヤが、意気揚々と体重計の上に乗る。
「…………あら?」
アヤが体重計の上で呆然とする。どうしたんだろ?
「えっと……この体重計壊れてる?」
「え? そんな事ないと思うけど……」
アヤの言葉にヨーコがきょとんとした表情を浮かべる。確かに体重計はちゃんと量れてたし問題ないと思うけど……。
「じゃあ服のせいね……」
アヤが「そうよ絶対そうだわ」と何かまずいものを見たかのように言いながら制服を脱ごうとする。
「現実を見ろ! そして脱ぐな!」
……どうやら増えてたみたい。
アヤががっかりと
「あ、変わってない」
日本の玩具であった"やじろべえ"みたいに両手を広げているカレンがそう言った。
「本当にー?」
わたしは嘘を言ってるんじゃないかと疑いの声を上げる。
「もーっアリスが太ったなんて言うカラー」
ほーっと安堵の息を吐くカレン。
「何キロ?」
「えぇ~教えるのデスカ?」
綾がカレンの体重が気になったのか訊ねてくる。
「はずかしーデス」
「耳うちでも可!」
やはり女性同士でも体重を明かすのは恥ずかしかったのだろう。カレンは顔をかぁーっと赤くしながらアヤに耳うちで言う。
「わああぁぁああああ(私よりもカレンの方が軽い)!!」
「アヤどこへ!?」
アヤが泣きながらどこかへ逃げるようにして保健室を出て行った。
それにしてもなんで泣いてたんだろう?
「これで今まで通りみんなから食べ物もらってもOKデスね~」
自身の体重に安心して喜ぶカレンだけど、それをわたしは良くないよと言う。
「遠慮は日本の心だよー。カレンも見習って!」
わたしが日本に来てよく見る光景、それはある人から何かを受け取って欲しい時、「そんなっ、お構いなく―――」といったような遠慮がちに受け取る瞬間。これがイギリスや他の外国ではあまり見かけない、遠慮するという行いが日本人なりの礼儀。わたしはそれに憧れを抱いており、同時に見習っている。
カレンにもその気持ち、少しでもいいから分かって欲しかったのでそう言った。
「お菓子ばっかりは身体に良くないし、明日のお弁当はわたしが作ってあげ―――」
そこまでわたしが言った瞬間、シノがわあーっと喜びの声を上げる。
「アリスのお弁当ですか? 私も食べてみたいですー!」
「!」
そんな事を言われたらわたし……わたし……!
「任せて! 全力で作るよ! シノの為に!!」
急に明日が楽しみになってきちゃった。
「アリスー、私はー?」
カレンがそう言ってたけど、よく考えればケンのマムが毎日作ってくれるって言ってたっけ。それではまるでケンのマムが弁当を作るのをわたしのせいで
ちなみに、わたしの体重は増えてはいなかったが、減ってもいなかった。
つまり変わらなかったという事。
☆☆☆
「ダイエットしなきゃ!」
保健室を出てから開口一番にわたしは言う。
「え~っ? そこまで太ってないデスよ」
「体型維持のためだよっ」
カレンがそんな事を言ってるけど、人間というのはいつ太ってもおかしくない。誰かに「太った?」って言われた時にはかなりショックを受けるかも知れない。
そのために体型を維持する必要があった。
「私ダイエットってした事ないデス」
「うーん、誰か参考になる人いないかなー」
対象になる人を探しながら職員室に向かう。ちょっとした用事ができたのだ。
「「失礼しますー」」
二人して一声かけながら職員室に入ると、椅子に腰掛けて足を腰の高さまで上げているカラスマ先生がいた。
よく見ると耐えているのかプルプル震えている。
「先生……」
「キャ―――――ッ!?」
わたしが声をかけると、ドキッとした先生が悲鳴を上げた。
……対象になる人、すぐに見つかったね。
どうやら先生もダイエットをしているらしく、お腹を凹ませるためにさっきの事をしていたらしい。
わたし達は先生にもダイエットのコツを聞いてみる事に。
「ダイエットに無理は禁物なのよ~」
「そうなんデスか?」
「ええ。気付いた時に身体を
「なるほど、確かにそれなら簡単そうデス」
カレンが納得する。確かにいきなり無理をしちゃうと却って危険になるって聞くからね。
「でも先生はお尻が大きいデスネ」
チョットだけーってカレンが言うけど流石に今のは失礼だと思う。先生も今の一言でショックを受けていた。
ここはわたしがフォローしないと。
「もーっ、カレンったら失礼でしょ! そこは安産体型って言うんだよ。今度からそう言うべき!」
女性に対してお尻が大きいという表現は好ましくないから、日本に来てわたしが適切な表現として学んだ言葉。これなら流石に大丈夫だと思う。
すると先生は泣きながら言った。
「そっ、それもどうかと!!」
あれ? 違ってたみたい。
☆☆☆
「陽子はよく食べるけど体型は変わらないわね」
アリス達が保健室から帰ってきた後、綾が言う。
ちなみにさっきまでの俺はというと、急に腹を下したのだ。解せぬ。
「ほぼ毎日走ってるからね!」
そうだ。前にも言っていたが、陽子は日々の習慣としてランニングをしていると聞いている。
それを続ける根性があるというのは流石だと思う。
「食べてもその分動けばいいんだよ」
「じゃあ私もヨーコと一緒に走るデス!」
陽子の言葉にカレンが食いつく。
食べても運動すればいい。その例えは単純だけど結構効果があったりするから不思議だ。
「どのくらい走るのデスカ?」
「えーっと、ランニングで十キロ程度だけど」
「じゃあ私は十センチ程度……」
「それじゃ無意味だ!」
カレンの諦め発言に俺がツッコむ。十センチって……下手すると一歩ですらないぞ。
「でも、女の子はちょっと太ってるくらいがいいんですよー、前にお姉ちゃんが言ってました」
そこへ、忍が笑顔で言う。
彼女が何やら勇さんから言われた言葉があるらしい。
『私はお姉ちゃんみたくなりたいです!』
『えー? 忍はそのままでいいわよ。丸くてぼんやりした所とか。十分可愛いじゃない』
──―と。確かにそれを聞くと、勇さんが体型を気にしていないというのが分かるが……。
「『あんたが痩せたらやつれたカピバラみたいよ』ってー」
「それってつまりカピバラって事じゃ……!?」
酷いですカピバラなんて、と笑う忍に対して綾が戦慄する。
勇さん……忍に対してカピバラみたいに思ってたのか……。
「こう見ると健って、割と見た目がっちりしてるわよね」
ん? 綾がそう言ってくるけど、周りからの見た目ってあまり気にした事がない。
「だよなぁ。そこは流石は男子って所かな」
陽子も同意する。
「そうか? あんまり気にした事なかったが……」
そもそも男女で身体の造りが違うからそう見えるだけかもしれない。
「デモ腕、硬いデス」
すると、カレンが腕を触ってきた。
「ホントだー」
アリスももう片方の腕を触ってくる。
「んーまあ陽子程じゃないけどそれなりに鍛えてるからな。無理しないで筋トレしてるってのもあるかも」
身体がなまってると思ったら軽い筋トレなどをしているから、今の身体があるのかもな。
「なんだよ健、鍛えてるなら私にも言ってくれればいいのに」
陽子が笑いながら俺の肩を叩いてくる。
「いやでも、俺毎日ランニングできるぐらいの体力は流石にないぞ」
家の事もあるし、毎日十キロ走れるかと言われれば流石にキツいものがある。
「いやいや、健は男なんだから私の倍走ってもらわないとー」
「それはいくら何でも無茶ぶりだ!」
合計二十キロ……男の俺でも死ぬんじゃないか? その翌日筋肉痛じゃ済まなそう。
「「頑張れケン!」」
「なんで走る事になってんの!?」
カレンとアリスにこれからやると言わんばかりの物言いにツッコんでしまった。
やっぱこれ死ぬかも。
☆☆☆
「今日のお弁当はアリスが作ってくれましたー」
次の日のお昼休み。忍が弁当を開けながら言う。
何でも、アリスが昨日忍のために弁当を作ると言っていたらしく、忍のお母さんと同じ時間の朝五時に起きたという。
……五時起きと聞いた時にカップラーメンでいいかなとぼやいていたが、そこは割愛。
「おっ、何だキャラ弁か?」
陽子が言う。朝早くから起きて登校時刻ギリギリまで粘っていたとの話だから、確かに何の弁当を作ったのか気になるな。
中身を見ると、変わった弁当になっていた。
ハンバーグや卵焼きなどといった至ってシンプルなおかずはまだいい。
問題はご飯の部分。まるで漢字の"米"の如く海苔で表現されていた。
「青い部分が表現できなかったけど、一応イギリスの……」
あ、そっか。アリスの言葉で分かった。青い部分やイギリスの単語で彼女が何を表現したかったのかが理解できた。
「米」
「米?」
「米!」
だが忍、綾、陽子はパッと見で判断し、たった一文字の単語を言う。
『米の上に米!!』
そして三人は揃って言い放った。
「え、いや、あの……」
アリスは戸惑いながら言い淀む。
「いや、これ"米"じゃなくてイギリスの国旗をイメージしたものだと思うな」
流石に見兼ねた俺は助け舟を出す事にした。
「イギリスの国旗……あっ」
俺の言葉にいち早く綾が気付いたようで、思い浮かべた表情を出す。
「イギリスの国旗ってどんなんだったっけ?」
「さあ……?」
「お前らマジで言ってんの?」
陽子と忍がまるでバカ丸出しの事をおっしゃり、ツッコんだ。
特に忍、お前イギリス行ったんじゃなかったのかと疑ってしまう程。
「とにかく、そうだろアリス? これは"米"じゃなくて、イギリスの国旗をモチーフに海苔を詰めて作ったって事で──―」
俺がそこまで言うと、アリスが涙ぐんでいた。
「なっ、えっ!? あれ、俺てっきりそうだと思ったんだが、違った!?」
まさかこれも違うのかと思い、慌ててしまう。
「うぅん、違わないよ。ケンが当ててくれて嬉しかっただけだよ」
アリスが指で涙を
「そうだったんですか!? ごめんなさいアリス! 私勘違いしてしまって」
忍が慌てて謝る。
「別にいいよ。一応イギリスの国旗のつもりだけど、表現が難しかったし」
「イギリスの国旗難しいよなー。確か赤、白、青使ってるんだったっけ? あれを精密に作るとなると難しい気がする」
「やっぱりそうだよねー」
てへへとアリスが笑う。まあ彼女の言葉が無かったら、俺も米としか分からなくなったかもしれないからあまり強くは言えんが。
「なー綾ー、イギリスの国旗ってどんなのだっけ?」
「陽子は社会の教科書を見直しなさいっ」
約一名、未だに分かってなかった者がいたらしい。
今年の夏、きんモザの劇場版が公開されますね!
……けど、CMや公式HPを見る限り皆が持ってる筒は、あれは卒業証書だよね、多分。そう思うと悲しくなる……。
さらに自分が住んでる地域でちゃんと放映されるのかが疑問。そこがまた憎らしい。
しかしこちらの小説ではアニメ、及び原作漫画全巻に沿って投稿します。そこはご安心を。