きんいろモザイク ~THE GOLDEN STORY~   作:legends

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お久しぶりです。具体的にいえば500億年ぶりですね()



Episode11 テストのお時間

「秋ですね~」

 

「んだな」

 

 忍が外の景色を見てそう切り出す。

 

 確かに木の葉が紅色に染まったのを見て、秋だという事が実感させられる。

 

「秋といえば―――」

 

 陽子がそう言ったのと同時に、俺を含んだ各々が言い出した。

 

「芸術の秋」

 

「食欲ー」

 

「紅葉~」

 

「読書の秋?」

 

「スポーツ!」

 

 忍、陽子、アリス、俺、カレンの順に言った。

 

「アヤヤは?」

 

 またも“ヤ”が一つ多く言ったカレンが、参考書を片手に持つ綾にも意見を求める。

 

「勉強の秋」

 

「えー、もっと楽しい事考えよーぜ! 綾はマジメだなー」

 

 陽子が不平の声を上げる。が、俺は先程までから彼女が参考書を持っている事から、この先“ある出来事”が待ち受けているのを知っていた。

 

「皆、来週からテストだけど大丈夫なの?」

 

『え……?』

 

 そう、綾の言う通り、来週からテストがあるのだった。俺除いた四人は呆けた表情をする。

 

「しまった。すっかり忘れてたよー」

 

 陽子がやだなーと言いながら頭を抱える。

 

「私はテスト大好きデスよー」

 

「ええっ何で!? 仲間だとばかりっ」

 

「確かにな。カレンってそんなテスト好きだったっけ」

 

 陽子が驚き、俺も明るく笑う彼女の言葉に疑問を覚える。

 

「テスト期間大ースキデス!」

 

「どんなとこが好きなんだ?」

 

 俺が聞くと。

 

「静まり返った教室、ペンを走らせる音……そして、お昼寝に最適♪」

 

「「問題解けよ!」」

 

 陽子と俺の上げた声がハモった。問題を全て解き終わったとかならまだ分かるんだけどなぁ。

 

「私もテスト好きです」

 

「えっ」

 

 忍の意外な一言に俺はそんな間抜けな声を出してしまう。

 

「テスト前にはシノが問題出してくれるんだよー」

 

 ねー、とアリスは言うが、肝心の忍の点数は……。

 

「忍、それやるのもアリだけど、自分の方は大丈夫なのか?」

 

「大丈夫です」(キリッ

 

「嘘おっしゃい。しのにはそんな余裕無いはずよっ。それにこないだも赤点だったでしょ!」

 

「なっ、何故それを!?」

 

 あー確かにそうだったな。敢えて言わなかったけど、綾の言った通り以前行ったテストで見事に赤点を叩き出していた。

 

「どうやら私の座右の銘を教える時が来たようですね!」

 

 忍はそう言うが、忍に座右の銘なんてあったっけ?

 

「ケセラセラ『なるようになる』ですよ!」

 

「なってないから言ってるのよー!」

 

 綾が声を上げる。うん、それは真面目な奴に対して使うのが多いだけで、抜けている忍が言うのは間違っていると思われる。

 

 よく見れば、綾が忍のテストを眺めながらそう言ってた。具体的な点数は言えないけど一桁台だったという事を言っておこう。

 

 

 そんなこんなで勉強を始めようとする俺達。

 

「勉強してると意識が飛ぶのですが~」

 

「それって知らない内に寝てるのよ」

 

 うつらうつらとする忍に、寝ちゃダメよと注意をする綾。

 

 忍の言葉ってダメな奴の典型的な台詞なんですがそれは。

 

「でも今からやっても……」

 

 アリスの言う通り、来週からテスト。大抵準備期間が必要になってくるものだろう。

 

「一度でいいからアリスみたいに90点台取ってみたいです」

 

「(シノ……!)分かったよ、わたしも協力する!」

 

 お? 涙ぐみながらアリスが忍の勉強に協力してくれるようだ。いやまあ壊滅的な成績だから、見てくれない方がある意味問題だが。

 

「わたしの答案……カンニングしていいよ! 隣の席だから!」

 

「「だめだめ! 勉強しなさい!!」」

 

 今度は陽子と綾の声がハモった。うん、カンニングはいけない(確信)。

 

 余談だが、忍が日誌を烏丸先生に出しに行った際、彼女が将来通訳者になれるかと問いたら、「せ……先生は信じていますよ!」と泣きながら言っていたらしい。これには流石に前途多難であると思ったのは別の話。

 

 

 

 

 

✩✩✩

 

 

 

 

 

「テスト範囲どこ?」

 

「そっからかよ!?」

 

 カレンが肝心のテスト範囲が分からず言ってきたので、流石に俺は声を上げてしまう。おかしい、テスト範囲は()うに配られたはずなのに……。

 

 これには綾もそこから!? という表情だった。

 

「シノおかえりー」

 

 近くでアリスの声が。どうやら忍が帰ってきた、が……?

 

「何だ、あの顔」

 

 今まで見た事もない、忍の顔に思わず声が漏れてしまう。

 

「えっ、しのがどうした……の……?」

 

 綾も忍の違和感に気付いたのだろう。呆然とし始めている。

 

「どうかしたの?」

 

 とぼとぼと歩く忍に、アリスは声をかける。

 

アリス……私に英語を教えてください

 

 何と、勉強ご教授の宣言。

 

「しのが突然やる気に……!」

 

「シノ~~~!」

 

 陽子もカレンも忍がおかしくなった(?)事に気付いたのだろう。

 

「ていうか、本当に何だあの顔! 寧ろ……誰だよ!?」

 

 俺も更に言う。今までかつてない程のきりりとした表情の忍。何かを決意したかのような……そんな顔だった。

 

 

 

 

 

✩✩✩

 

 

 

 

 

 そして―――テスト当日。

 

 え、描写が少ないって? 強いて言うなら自分の勉強とカレンの勉強を見てあげた事ぐらいだったから特にめぼしいものはない。

 

 それはさて置き、皆と待ち合わせの時間。俺とカレンは一緒に登校し、その後に綾と陽子とも合流した。そして肝心の者はというと―――。

 

「おはよう皆」

 

 この声はアリスだ。

 

「おはよー。しの、アリス!」

 

 陽子がその挨拶を返し、皆が声の方向を見やると。

 

「って……大丈夫か忍は!?」

 

 忍は単語カードと睨み合いながらブツブツと呟いていた。それも顔に影を浮かべながら。

 

「きっと勉強の成果を出す時が来たのよ!」

 

「頑張ってシノ!」

 

 綾もアリスも忍の真剣(ガチ)目な雰囲気を感じ取ったらしい。

 

 そして、忍は一つ、呟く。

 

「…………ジュテーム

 

「それはフランス語!」

 

 やる科目は英語なのに、フランス語を言っていた。余談だが確か意味は、「愛している」だったような覚え。

 

 それはともかく、間違っている知識も入っているんじゃないかこれは!? 綾も陽子もあわわと驚愕と怯えが含んだ表情だった。言ってしまえばこれは期待できない、みたいな。

 

 忍は皆と登校しながらも単語帳と睨めっこしており、学校に着いて席に着くまでほとんど勉強していた。

 

「シノ、頑張ろうね!」

 

はい! 私もやるだけの事はやりました。今なら何だってできる気がする……アリスのお陰です!

 

 何だアレ。あんな綺麗な忍見た事がない。いつも以上にキリリとしていてまるで本来の忍とは思えない程の変わりよう。

 

 アリスも同様の気持ちなのか焦っているような表情だった。

 

「あっ、あそこに金髪のお姫様が!!」

 

「えっ!?」

 

 アリスがそう言うと、忍は目を輝かせながら反射の如く振り返る。

 

「あれ……覚えた単語……忘れ……」

 

「うわあああっ、ごっごめんシノ~~~!」

 

 アリスの言葉で絶望した表情を浮かべる忍。アリスも必死こいて謝るが、どうやら根の方まで変わり映えしていない事に安心した自分がいる。

 

「陽子はあまり勉強している感じではなかったけど? 大丈夫なの?」

 

 隣の席の綾が後ろの席にいる陽子にそう言っていた。

 

「家ではしたよー。でも私の頭でも限界があるというか」

 

 それって陽子が今の忍みたいまでやれてないだけなんじゃ……。

 

「そこで考えた! 前の席の綾を見て答えを透視する! 名案名案~!」

 

「!? そんな事ができるの!?」

 

「気合だよ気合~!」

 

「いや無理でしょ」

 

 陽子はガッツポーズで気合だとか名案だとか言うが、そんな超能力紛いな事は普通できないと思い、俺はツッコんだ。

 

「むっ。そういう健はどうなんだよ?」

 

「俺? まあボチボチかな」

 

「ボチボチとか言っときながら全科目平均点以上出すのよね健は……」

 

 癪に障ったのか陽子に訊ねられ、俺は答えるが綾に呆れられた。

 

「はぁ!? 羨ましい! 私にその頭分けろ~!」

 

「なあぁ!? 止めろ―――!」

 

 無理なものは無理と言おうとしたが、その前に陽子が俺に掴みかかってくる。女子の中でもかなり力が強いからなコイツは!

 

 全く、テスト前に変な汗掻いてしまった。

 

 

 

 

 

✩✩✩

 

 

 

 

 

「始め!」

 

 そんなこんなでテスト開始。……何やら此方に視線を向けている訳ではないのだが、隣から圧が感じるのは如何なのだろうか。

 

 もうテスト中だから隣見るのはカンニング行為とみなされるので厳禁だが、やはり陽子が綾の答えを透視しているのだろうか。

 

 あれだと綾がやり辛そうな気がするが……ひとまずは自分のやる事に集中しよう。

 

尚、この後で「いい点取れなかったら綾のせいだから……!」「こっ、こっちの台詞よ!」とか言っていたのは割愛。

 

 ある程度割と難なく記入した後、ふとこう思ってしまった。

 

 ―――カレン、鉛筆転がして答え書いてないよな、と。

 

 

 

 

 

✩✩✩

 

 

 

 

 

 その後も二教科目と続いていき、三教科目。遂に英語。

 

 ―――この文法は……仮定法過去だな多分。Ifと過去系でwould/could/mightが含まれて……るな。確定。んでこっちが……ん? ふと担当の烏丸先生を見ると、小さい旗を振っていた。応援のつもりかな? 何とも励ましとなる。皆はテストに集中しているが。

 

 テストに集中といえば、この科目は忍が最も勉強し、奮起のきっかけになったもの。勉強の成果が試される。

 

 彼女はそこそこ前の席なので、解答は見えない。なので一瞬だけ見ると、必死に手を動かしていた。忍も頑張ってるんだな。

 

 さ、俺ももうひと頑張りしますか。えっと、この文の意訳は―――っと。

 

 

 

 

 

✩✩✩

 

 

 

 

 

「はい、そこまで。手を止めてください」

 

 終了のチャイムが鳴ると同時に、先生が言う。

 

 クラス全員のテスト用紙を回収し、先生が教室から出て行くと、陽子が「ん―――」と体を伸ばす。

 

「終わったぁぁ~。テスト後の解放感好き!」

 

「同感。やりきった感というか」

 

「まだ明日もあるのよ」

 

 俺と陽子が余韻に浸っていると、綾に釘を刺された。

 

「分かってるって」

 

「もうテストやりたくない……健、明日私の分も頼んだ」

 

「無茶言うな!?」

 

 陽子に無茶苦茶な事を言われた。分身の術でも使えってか?

 

「シノ、お疲れ~」

 

 と、そこへアリスが忍の様子を窺いに行く。

 

 皆も釣られて見ると、そこには真っ白になっている忍の姿があった。

 

「シノが―――抜け殻に……!」

 

 満身創痍っていうか、完全に燃え尽きたというか……そんな姿になっていた。

 

「一気に老け込んだな!」

 

「!?」

 

「こら! 気にしてるのよ!」

 

 陽子の失礼な言葉にハッとなる忍。綾も注意するが地味にフォローになっていない気が。

 

 ともあれ、残った科目分は明日だな。乗り切るために頑張るか。

 

 

 

 

✩✩✩

 

 

 

 

 

 そして、テストの結果発表にて。

 

 忍は何と、英語で96点の点数を叩き出したのだった。後から聞いた話だが俺は愚か、綾よりも良い点数だったという。

 

「本当に良い点取った!」

 

「シノすごい!」

 

「OH~!」

 

 他の皆も忍の点数を褒めていた。

 

「ありがとうございますアリス! こんな点数始めて……!」

 

「シノの努力の成果だよ!」

 

 当の本人も感激しており、アリスも同じ気持ちだろうなと思う。

 

「うぅ……」

 

 テストを配り終えた烏丸先生も泣いていたが。

 

「あれっ! 先生!? 泣かないでくださいー!」

 

「いや、多分先生も嬉し泣きだと思うぞ」

 

 今までの点数がアレだったから、その分反動がきたのだろう。

 

「そ、そうなんですか~?」

 

「ああ。きっとそうだ」

 

 ただ、毎回こうだといいがな。

 

 

 次いで、数学はというと。

 

「シノはどうだっ……た……」

 

 英語に打ち込み過ぎた結果、一桁台だったらしいが。

 

 アリスが点数の後ろに0を付け加えた。

 

「これでお揃い!」

 

「アリス……」

 

 じーんと感涙する忍。確かに英語は良くても他の点数が悪くちゃ、な。

 

「あぁ……いつものしのだわ……」

 

 綾もこういうところを見るといつもの忍だと実感させられたらしい。

 

 

 

 

 

✩✩✩

 

 

 

 

 

「そうーいや、健はテストの結果どうだったの?」

 

 テスト全教科返還後、陽子がそう聞いてきた。

 

「俺? 一応全教科八十点越えたかな」

 

「はぁっ!? なにそれ!?」

 

 いや、そんなに驚かれても……。

 

「健カンニングでもしたのか!?」

 

「してねーよ!? 冗談にしても酷ぇよ!」

 

 いやそもそもカンニングしたらノーカンになるだろうし、厳しい罰則がある。どうやったらカンニングして切り抜けられんの……。

 

「でも、確かに健君は普段から点数いいですよね。アリスや綾ちゃんと同じです」

 

 そう話していると、忍も輪に加わってきた。

 

「そうか? アリスや綾が頭いいのは知ってるが、二人と肩並べられる程か?」

 

「はい。きっと二人も健君が頭いいの知っていると思いますよ」

 

 そうなのか。そこまで頭いいと思ってなかったが、忍がそう言うって事はそうなんだろう。

 

「健も結構謙遜してるよなー」

 

「謙遜……してるつもりはないと思うんだがな」

 

 自分でも無意識にそうしてるとか? でも思い当たる節はないな。

 

「ところで健君はなんでそんなに頭いいんですか?」

 

「唐突だな」

 

 本当に唐突な忍の問い。

 

「んー……思い当たるとすれば、定期的に予習復習してるから、かな」

 

「でた、勉強バカ」

 

「言い方ァ!」

 

 そこまで勉強バカではない。

 

「でも、それを続けられるのは凄いですね」

 

「割と基礎的なものだと思うが……そうだ、忍もそれやっとけば点数もっと上がるんじゃないか?」

 

「続けられる自信が……」

 

「あと英語とかでもやっとけば海外旅行とかに役立つと思う。お前が中学生の時みたいにまたホームステイする時いいかもな」

 

 冗談交じりにそう言ったら陽子がははっと笑う。

 

「健、流石にそれは安直すぎだろー」

 

「それもそうだよな―――」

 

「私、予習復習やりますっ!」

 

「「えぇ……(困惑)」」

 

 もうアリスがいるからホームステイしないと思ってたが、忍、ちょろすぎない?

 

「何なに、何の話?」

 

 そこへ、とてとてとアリスも加わってきた。

 

 おおよその事を伝えると、アリスは悲しそうな表情を浮かべた。

 

「シノ……違う人の家にホームステイするの? 私がいるのに?」

 

 あれ、これどっかで見た事があるぞ。そう、ヤンデレみたいな。

 

「健君が言ってくれたんですよ~。ホームステイする時に、勉強の予習復習が役立つって!」

 

「違う! いや意味合いは違わないのかもしれないけど、とにかく違う!」

 

 忍が両手を組みながら笑顔で言うが、俺は自分で言っててよく分からない支離滅裂な言葉でツッコんだ。

 

「ケン、ちょっといい?」

 

「アッハイ」

 

 威圧のあるアリスの物言いに、俺は従わざるを得なかった。

 

 

 このあと滅茶苦茶怒られた。

 




主人公、不憫な結果に……w

高校のテストって一日に三教科とか、四教科のところなのでしょうか。 自分がまさにそうでしたが、他の地域だと変わってくるんですかね?

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