どっちつかずの彼女(かれ)は行く   作:d.c.2隊長

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最終投稿からおよそ1ヶ月……大変長らくお待たせしました。ようやく更新でございます。

今回はおよそ14000文字……そして相も変わらず難産でした。

今回ついに……←


死ぬか、生きるか

 (私は……私は何をしている)

 

 大本営近海の海上に力無く佇むのは、武蔵。周囲には同じように力無く佇む者、膝を着いて顔すら上げられぬ者、座り込んで静かに泣いてる者……武蔵自身を含めた“敗者達”が居た。そんな彼女達の前方……半ば廃墟と化した大本営の建物、その前にある陸地で、化け物同士の戦いが繰り広げられている。

 

 片や海軍では最早その存在を知らぬ者は居ないと言える、つい先程まで死んだとされていた存在……軍刀棲姫。片やその軍刀棲姫と良く似た姿をしている、武蔵達もその名を知らぬ新種の姫級深海棲艦。その新種の姫は只の一撃で武蔵達を戦闘不能にした……心も、身体も。

 

 (私に……何が出来る)

 

 あまりにも大きな差に、武蔵は折れた心で誰にでもなく問う。軍刀棲姫が現れ、死んでいった仲間の仇を討つべく動いて、新種の姫が建物から出てきて、一撃で心を折られた。本来ならば、防衛戦力である自分達があの新種の姫と、生きていた軍刀棲姫と戦い、大本営を守らなければならない。その為の防衛戦力、その為の艦娘だった筈なのだ。

 

 だが、現状を見ればどうだ。化け物達は武蔵達を歯牙にも掛けない。軍刀棲姫はまだしも、新種の姫は軍刀棲姫と戦い始めてから一瞬足りとも武蔵達に目を向けなかった。それはつまり、意識するような存在足り得ない……危険等とは微塵も思っていないということに他ならない。

 

 (悔しい……)

 

 渡部 善蔵の所業は知っている。それを承知で約50年付き従ってきた。彼の苦悩を知っている。だから付き従ってきた。自らの生まれた理由を知っている。だから守る為に、いつか戦いを終わらせる為に力をつけてきた。それが来る筈のない未来であると教えられていても。だから自分が、自分達が動かなければならないのだ。新種の姫も、軍刀棲姫も、自分達が倒さなければならない。それが存在理由だから、それが己の愛した人の願いだから。

 

 (なぜ私は……こんなにも弱い! なぜ敵であるお前達ばかり……そんなにも強い!!)

 

 同じように佇んでいた雲龍だけが気付いた。50年人前で泣いたことなどない武蔵が流す涙に、その姿から発されている嫉妬に。那智が沈み、不知火が去り、大淀が光の中に消えた時から、真の意味で共にあった雲龍だけが。

 

 彼女は武蔵にそっと寄り添い、抱き締めつつ目の前の戦いを見る。雲龍の目では、化け物同士の戦いを追うことは出来ない。正しく人外の戦い。まさか人の身で無いにも関わらずそんな感想を抱くとは思ってもみなかったが、そうとしか評価出来ない。だが、どちらに分があるか……と聞かれれば、答えることは出来る。

 

 (今のままだと……軍刀棲姫が負けるかもね)

 

 何度も軍刀棲姫の斬撃が当たっていることは響く音、姫の苛立ちの声で理解出来た。だが、姫が未だ健在ならば、それは攻撃が効いていない、或いは殆どダメージになっていないということになる。その現状が続いている以上、軍刀棲姫には他に打つ手がないのだと予想出来た。

 

 軍刀棲姫が負けるところを、雲龍は想像出来ない。同時に、新種の姫が沈む姿も想像出来ない。しかし、必ずどちらかの未来が訪れる。その場合……雲龍が見る限り、軍刀棲姫の敗北が濃厚。そうなれば海軍は終わるだろう。例え全戦力……文字通りの全ての戦力をかき集めて集中攻撃したとしても、あの新種の姫には傷一つ付けられずに終わるだろうから。

 

 (あまりに自分勝手で、とても直接口には出来ないけれど……勝って、軍刀棲姫。最早私達には……祈ることしか出来ないの)

 

 「……大きく迂回しながら陸地に上がり、救助活動をするわよ。もうここで私達が出来ることなんて……何も無いんだから」

 

 だから、雲龍は祈った。今この場……否、この世界で唯一、新種の姫と同等に戦える軍刀棲姫の勝利を。例えその後に自分達が沈められるかもしれないとしても、そう祈ることしか出来ないのだから。そうして雲龍は残存戦力を纏め、この場を去って破壊された大本営での救助活動を行うことを味方に告げる。それくらいしか、もう自分達には出来ないと悔しげに顔を歪ませながら。

 

 だが、その行動を起こすことは出来なかった。何故なら、動き出そうとしたその瞬間に……建物が吹き飛んだから。

 

 

 

 

 

 

 「がああああアアアア嗚呼嗚呼っっっ!!」

 

 (うるせえ……)

 

 あれから妖精ズにも軍刀にも反応が無い。何かしら小声で喋っているが、変化は訪れない……まあ正直な話、この身体のスペックが良すぎるせいか妖精ズの会話は全部聞こえてる訳だが。

 

 肉体だとか精神だとか魂だとかが必要らしいが、俺には思い浮かばない。だが、その辺に転がっている死体やそいつらの精神、魂では駄目なことは分かった。俺には分からない何かしらの基準があるんだろうが……正直なところ、限界は近い。

 

 「死ねえ!!」

 

 「死なんさ」

 

 異形の拳が振るわれ、避ける。本体の拳が振るわれ、避ける。異形の腕が開きそうになる……みーちゃん軍刀を叩き付けて無理やり閉じさせる。異形の頭が口を開いて噛み付いてくる、避ける。そんなことの繰り返しだが、微妙に速度が上がってきている。俺を捉えるにはまだ足りないが、その内服装の端にでも引っ掛けられるかもしれない。

 

 「ハエみたいにチョロチョロと鬱陶しいんですよおおおおっ!!」

 

 「っ!?」

 

 異形が4本ある内の2本で手を組み、振り上げて俺目掛けて降り下ろす。アームハンマーだったか? そんなものを喰らったら只では済まないので、バックステップで避ける……だが、それは失敗だったらしい。

 

 とんでもない馬鹿力で地面を叩き付けたそれは、まるで隕石でも落ちてきたかのような轟音を響かせ、コンクリの地面を砕き、割と大きなクレーターを作り出した……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「あっはぁ!!」

 

 「し、ま」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、無防備な俺に向かって嬉しそうな顔をした猫吊るし自身の左ストレートが飛んでくる。

 

 瞬間、時間が止まったかのような感覚がする。それも3ヶ月前のあの戦いの時の一段進化した方の感覚が。それは猫吊るしの動きすらも止まっているかのように見える。だが、俺に出来ることは、猫吊るしの攻撃の軌道上にみーちゃん軍刀を置いて盾にすること位だ。俺のこの感覚はあくまでも感覚に過ぎず、本当に時間を止めている訳ではないのだから。

 

 (痛いだろうな……だが、耐えてくれ、俺の身体)

 

 そして感覚が消え、猫吊るしの左ストレートがみーちゃん軍刀に当たり、衝撃が俺の身体を突き抜ける。直撃を防ぐことには成功したが、その衝撃は声を出すことも出来ない程に重く、空中に居た俺を塵のように軽々と吹き飛ばす。

 

 「っは……!!」

 

 息が詰まる。その後に走る激痛に思わず呻く。拠点で暮らし始めてから痛みを耐える訓練として何度か自分の体を傷付けてきたが、これは間違いなく今までの中でも最大級の痛みだ。そもそも軍刀の上からとは言えまともに一撃を受けたのなんて初めてじゃないだろうか……日向の一撃を受け止めたことがあるし、二度目か?

 

 軽く頭を振り、周りを確認する。どうやら建物まで殴り飛ばされ、残った外の壁をぶち抜いて中の壁で止まったらしい。

 

 「痛っ……馬鹿力め……」

 

 全身から痛みを感じるが、特に酷いのはみーちゃん軍刀を持っている左手だろう。一言で言うなら、グシャグシャだった。間接が2つ3つ増えてるし、骨は突き出てるし。指なんて軍刀を握ってるんじゃなくて絡んでると言った方が正しい。

 

 だが、立つことは出来る。幸いにも下半身は擦り傷だらけでヒリヒリとしているものの、折れたり千切れたりということはない。万全ではないが、動く分には支障はないだろう。そうして立ち上がり、猫吊るしがいるであろう前方へと視線を向け……。

 

 

 

 飛んできた砲弾の下を“感覚”の中で潜り抜け、外に出ると同時に残った建物の残骸が吹き飛んだ。

 

 

 

 「ふ……ふふ……随分と無様な姿になりました、ねえ!!」

 

 (休む暇もないな……)

 

 また砲撃が放たれるが、着弾するその頃には俺はその場所には居ない。飛んでくる破片が鬱陶しいが、感覚の中でも難なく動ける俺なら避けることなんて雑作もない。

 

 そのまま砲撃に当たらないように走り回りつつ考える。状況は悪くなる一方と言っていい。左腕からこうして血を流してしまっているということは、いずれ意識を失ってしまう可能性が高い。治る様子もないし、いよいよもってヤバいか。

 

 「イブキさん、もう少し耐えて下さいー」

 

 「分かってる……だが、厳しいな」

 

 「何か……何か適した素材は……」

 

 「早く見つけないとイブキさんがー」

 

 妖精ズにも焦りが見え始めた。どうやら本当に俺には余裕がないらしい。そんなことを思いつつ、俺は再び飛んできた砲弾を避ける。馬鹿げた威力の砲撃のせいで周りはクレーターだらけ、半壊だった建物も全壊している。爆風や爆発に当たらないように避ける為に毎回全力で跳ばなきゃならんし、その度にグシャグシャになった左腕から血が飛び散る。正直痛みも感じなくなってる。

 

 どうする……こうしてる間にも夕立達が危険に晒されているかもしれないってのに。というか、もし俺が不知火の頼みを聞かずに拠点に向かっていれば、猫吊るしはあんな姿にならなかったんじゃ……いや、そんなことを考えても無駄か。たらればやもしもの話なんて今更のことだ。それに猫吊るしが居るんじゃ、総司令のあの爺さんに連合艦隊を止めてもらっても無意味……。

 

 「……そうだ。あの地下に居た老人はどうだ?」

 

 ふと思い付いたことを口にしてみる。今の姿の猫吊るしが生まれた場所である地下に居た爺さん。アイツは妖精ズの言う条件に当てはまらないのだろうか? 確か、肉体と精神と魂だったか。年配の軍人であることから経験は豊富だろうし、猫吊るしが生まれた瞬間の怒り、年を感じさせない怒号、精神と魂も問題なさそうな物だが……老い先短いだろう老人を素材として提案する辺り、俺も中々外道な奴だと自嘲する。

 

 「……肉体は、どうでしょうか」

 

 「少なくとも、精神と魂は問題なさそうですー」

 

 「そこに気付くとは……やはり天才かー」

 

 「「私達の面目丸潰れですねー」」

 

 「自分で言っててダメージ大きいですー」

 

 良く分からないが問題はなさそうだ。そうと決まればさっきの地下に向かいたいが……猫吊るしが素直に向かわせてくれるとは思えない。無視すれば何とかなるかもしれないが……その場合、艦娘達が狙われるかもしれない。正直な話、夕立達以外の艦娘なんてどうでもいいんだが……今の今まで艦娘達に被害がいかないようにしてる辺り、俺も元とは言え“艦これ”が好きだったんだなぁと思う……その記憶も、本当に俺のモノかどうか怪しくなってきてるんだがな。

 

 それはさておき、どうするか……さっきは無視して向かうと艦娘達が危ないと思ったが、そうでもないか? あの猫吊るしは元々の性格かテンションがおかしいのかはともかく、1人の敵に執着する気質がある。艦娘達をそっちのけで俺という敵ばかり狙っているのがいい証拠だ。それなら、俺が逃げれば追いかけてくるんじゃないか? それにアイツも元は妖精、魂やら精神やらを素材として扱えることは出来た、つまり扱えることを知っている。なら、こっちの思惑を読んで阻止する為に向かってくるハズ。

 

 (プランは決まった。後は時間とか天とかが味方してくれるかどうか、かね……某大総統に(あやか)ってる俺が“天”とか言うと敗北フラグっぽいが)

 

 「おや? 逃げるんですか? 逃げちゃうんですか!? あっはははは!! いいですよ、そうやって無様にみっともなく逃げる方が貴女に相応しいんですよお!!」

 

 砲弾を見切る為に視線はアイツに固定し、バックステップやサイドステップをして瓦礫やら何やらに当たらないように動き、距離を取っていく。ぶっちゃけ爆風や爆炎にさえ気を付ければ砲撃の方が避けやすい。動く度に妖精ズが逐一足下や跳んだ方角に何があるか報告してくれるので一瞬見るだけで事足りる。そして報告してくれるのはそれらだけではなく、あの地下への入口の場所もだ。

 

 「ほらほら! 逃げろ逃げ……? あの場所は……っ!? まさか!?」

 

 猫吊るしからそんな声が聞こえ、俺達の思惑に気付かれたことを悟る。流石妖精、頭は回るな……だがもう遅い。既に俺は地下への入口の場所へと辿り着いているんだからな。だが、俺はそこを見て顔を顰める。何故なら、地下への入口は既に吹き飛んでいて、代わりに瓦礫の山があるだけだからだ。入る為には退ける必要があるが、そんな時間はない。退けている間に砲撃されて御陀仏だ……いや、妖精ズなら入れる隙間くらいあるか?

 

 「皆、行けるか?」

 

 「妖精アイならスキャン(りょく)ー♪ ……問題ないですー」

 

 「それじゃあ、頼む」

 

 「イブキさんも時間稼ぎ、お願いしますですー」

 

 「任せろ」

 

 「私は残って艤装の制御ですー」

 

 俺の側からふーちゃんとしーちゃんの2人が離れる。地下に向かってくれたんだろう……残ったみーちゃんは、俺の艤装の制御をしてくれるらしい。独りぼっちではないことに、少し安心する。

 

 さて、またまた猫吊るし相手に時間稼ぎをしなけりゃならん訳だが……左腕が使い物にならん以上、難易度は段違い。一瞬の油断や隙が命取りとなるのは変わらないが。

 

 「このっ」

 

 「させんよ」

 

 「ちぃっ!!」

 

 俺ではなく入口に砲口が向けられるが、撃たれる前に近付いて右手のしーちゃん軍刀を砲身に差し込む……直前に僅かにずらされ、砲身には入らなかった。が、そのお陰か発射されることは防いだ。

 

 「どこまでも悪足掻きを!! もう一度殴り飛ばしてあげますよおおおおっ!!」

 

 「2度も同じ手は喰わんさ」

 

 「ぶげっ!? ふがっ!?」

 

 猫吊るしがまた異形の手を組んで地面に叩き付けることで一瞬俺の足場を奪おうとするが、そのモーションは何をしようとするのかが直ぐに分かる。だからこうして、俺は振り下ろされる前に猫吊るしの顔に右膝を叩き込み、それでも振り下ろされる腕を組んだことで出来た懐の僅かな空間に体を通すことで避ける。この異形が巨大だからこそ出来た回避方法だ。尚、膝蹴りの後に跳び箱を跳ぶように猫吊るしの顔に右手を押し付ける形で穴を潜っている。しーちゃん軍刀を握っていたから痛いだろう。

 

 だが、グシャグシャの左腕は掠ってしまっていた。幸いにもそれだけで済んだが、やはりこの腕は百害あって一理なし……だな。そう考えた俺は異形の2つの頭の間を通り抜けて背後へと回り込み、右手のしーちゃん軍刀を口にくわえ、左手のみーちゃん軍刀に絡み付いた指を解いて右手にみーちゃん軍刀を握り……。

 

 「待って下さいイブキさん!! そんなことをしたら!!」

 

 

 

 みーちゃんの制止の声を聞かずに、歯を食い縛って左腕の肩から先を切り落とした。

 

 

 

 

 

 

 「夕立いいいい!!」

 

 場所は夕立と日向が戦っていた出入口。そこで、時雨が悲鳴にも似た叫び声を上げた。

 

 土煙の中に消えた夕立に向かって駆け寄ろうとする時雨だったが、直ぐに足を止める。同時に、彼女の少し前方……止まらなければ当たっていたであろう位置に、日向の副砲が撃ち込まれた。

 

 「やれやれ……ようやく一息つけるかと思ったところに援軍とは、な。我ながらツイてない」

 

 「っ……よくも、夕立を……!」

 

 冷や汗を掻きつつ苦笑いを浮かべる日向の姿に、時雨は憎しみに表情を歪ませる。そんな彼女の表情と言葉に、日向は焦りを覚えた。

 

 今の日向は既に満身創痍であり、逆に時雨はさほど疲れてはいない。夕立と違って時雨はハッキリと艦娘だと分かるし、駆逐艦であることも理解出来る……が、散々常識を破壊されてきた日向からすれば、そんな目に見える情報は気休め程度にしかなりはしない……特にこの場所では。何よりも……。

 

 (()()()になると厳しい……なんてモノではないな)

 

 

 

 「時雨……勝手に負けたことにしないで欲しいっぽい」

 

 

 

 「夕立! 良かった……無事だったんだ……」

 

 土煙が晴れ、中から現れたのは夕立。チ級の仮面を着けていた頭の右側から流れた血が右目を塞いではいるし服もボロボロになってあちこち汚れてしまってはいるものの、ダメージは小破以上中破未満と言ったところ。日向は砲撃の手応えからそれが分かっていたからこそ、2対1と考えたのだ。

 

 「やはり倒れんか……」

 

 「普通の艦娘だったらやられてた。でも、私は普通の艦娘なんかじゃないっぽい」

 

 夕立の言うように、彼女が普通の艦娘であれば戦艦である日向の砲撃等受けては人溜まりもないだろう。しかし……彼女は艦娘、白露型駆逐艦“夕立”ではない。

 

 「私は“夕立海二”。深海棲艦から艦娘になって、艦娘からその2つの力を混ぜ合わせて生まれた……イブキさんに限り無く近い存在。普通の艦娘に、普通の深海棲艦になんか……」

 

 ー 負けないっぽい ー

 

 「っ!」

 

 その言葉を合図に、夕立は日向へと向かって走り出す。日向は一瞬驚くものの、砲口を向けたままだったこともあり、直ぐに砲撃を放って迎撃する。確かに普通の深海棲艦、それも駆逐艦に与えるダメージに比べれば遥かに効き目は薄い。だが、ダメージを与えられない訳ではない。つまり、日向にも充分に勝機はある。

 

 しかし、伊達に夕立はイブキとの戦闘訓練を積んではいない。右側の視界を封じられているとは言え、基本性能の上昇と経験が加わった夕立は、イブキ程ではないにしろ砲撃によって飛んでくる砲弾を見切られる。最小限とはいかないが、体を逸らしたり横っ飛びで避けることは出来た。

 

 それを見ても、最早日向は驚くことはない。相手は第二の軍刀棲姫とすら呼ばれた存在だ、そんな常識はずれの行動等予測の範囲内、というか呆れる程スタイリッシュな動きで戦闘をしていたのだ、今更なことだと言って良いだろう。そして日向は、そんなスタイリッシュかつ常識はずれな動きをする相手を想定して訓練を続けてきた。

 

 「っ、ち、いっ!?」

 

 夕立が横っ飛びしたその先に、日向は副砲を放っていた。夕立は咄嗟にいーちゃん軍刀を前に出して盾にして受け止める……が、そのせいで再び日向との距離が離れた。たった1回くらいなら偶然と呼ぶことも出来るだろうが、戦う内に日向の力を認めていた夕立はそのたった1回で確信する……日向は、自分に砲撃を当てられるのだと。

 

 「夕立! 手を」

 

 「いらない! コイツは、私だけでやる!!」

 

 「っ……」

 

 手を貸すよ、時雨がその一言を言い切る前に、夕立は拒否した。戦略面で言うなら、2人掛かりで倒そうとするのが正解だろう。彼女達は船であり、戦争をしていたのだ、別に正々堂々だ正道邪道だと言うつもりなんてない。それでも、夕立は拒否した。

 

 言ってしまえば、それは夕立の我が儘であり、意地だ。実力が限り無く近い者同士の戦い、その決着は自らの手で着けたかった。そしてそれは、日向も同じこと。どうせなら、横槍や邪魔が入らずに夕立との決着を着けたいと思っている。時雨はそんな空気を感じとり、それ以上口出しすることを止めた。

 

 「……ふっ!」

 

 短い日向の声の後、彼女の主砲が火を噴く。それを横っ飛びで再び避ける夕立だったが、そのまま行けばまた副砲が飛んでくる。だから彼女は横っ飛びの距離を先程より短くし、逆方向へと切り返してまた跳ぶ。主砲、副砲の連撃を見事避けてみせた夕立だったが、今度は違う副砲から砲撃され……そしてこれをも避けた。横っ飛びの着地から直ぐに走ることによって。

 

 そのまま夕立は、日向を中心に半時計回りに走って少しずつ近付く。イブキと違って夕立は真っ正面から砲弾を捌いて近付く、なんてことは不可能。だが、捌くことは無理でも砲弾を見てから避けることは距離があれば可能だ。ならば遠回りとなっても確実に近付く方が良い。そう考えた夕立はそれを実行に移し……。

 

 「甘いぞ!」

 

 「ぎゃ、う!?」

 

 そしてまた直撃した。しかも今度は主砲……そのダメージは先程よりも大きい。いくら今の夕立が戦艦並の耐久性を誇ると言っても、戦艦の砲撃を受け続ければ倒れることは必至。これ以上の被弾は出来ない……故に、夕立は砲撃を避けられる距離を維持し、いーちゃん軍刀を構えて防御の姿勢を取る。

 

 対する日向は、夕立を狙いつつも動かない。2人の距離は大雑把に見ても50メートルかそこら。その距離ですら、夕立は砲撃を避けてみせた。もう少し距離を詰めてもまだ避けられることは日向とて理解している。ならば今撃ったところで無駄弾にしかならないし、補給も出来ない上に帰りのことも考えれば弾薬の消費は出来るだけ控えたい。

 

 そう、この戦いで終わりではない。夕立を倒しても時雨がいるし、他にもまだまだ居る。その上帰投の途中で深海棲艦に襲われる可能性もある。だから日向も慎重になっているのだ。

 

 「……? なんだ? 翔鶴。こちらは今手が離せんぞ」

 

 (翔鶴?)

 

 そんな緊縛した状況の中で、日向に地上に居る翔鶴から通信が入る。無論、だからと言って敵である夕立から意識を逸らすことはしない。勿論、隙を見せれば直ぐ様近付いて斬るだろう。しかし、それは出来なかった。何故なら……。

 

 

 「……なに!? 帰投だと!?」

 

 「は?」

 

 「えっ!?」

 

 夕立と時雨も、日向自身すら、通信の内容に驚愕の声を上げたのだから。

 

 

 

 

 

 

 『どういうことだ翔鶴!!』

 

 「どうもなにも、言った通りですよ。我々連合艦隊は作戦を中止し、()()()大本営へと帰投します」

 

 通信越しに聞こえる日向の憤りが伝わる声に対し、翔鶴はさらりとそう言う。それはつまり、現在縦穴の中に居る日向、並びに翔鶴を除く元帥第一艦隊の面々を置いて帰るということだ。

 

 「因みにですが、私の独断ではありませんよ? 作戦を中止せざるを得ない理由があり、帰投しなければならない理由があってのことです」

 

 『……何が起きた?』

 

 「先程、大本営の防衛に就いていた武蔵から連絡がありました。大本営に新種の姫と思われる姫級と……沈んだハズの軍刀棲姫が現れたそうです」

 

 『っ!? イブキが!?』

 

 『イブキさんがどうしたの!?』

 

 通信から日向以外の声が聞こえたきたことに訝しげに眉を潜める翔鶴だったが、気にしている暇はないと思考から切り捨てる。因みにこの時、夕立は限界以上の速度を出して日向に接近して密着。その後直ぐに余計なことを口走らせないように時雨も近付いて夕立の口を塞いでいる。日向は一瞬攻撃しようかとも考えたものの、今は翔鶴の言葉に集中したいのか無視することにした。知りたいことは一緒だと気付いたから。

 

 「現在、新種の姫と軍刀棲姫が交戦中。新種の姫は……“新姫”と仮称しましょう。新姫はこれまでの深海棲艦とは比べ物にならない程に強く、防衛戦力は全く太刀打ち出来なかったそうです。また、その砲撃の威力も凄まじく、大本営の建物も殆ど消し飛んでいるとか」

 

 武蔵から聞いたことをそのまま平然と説明している翔鶴だが、実際のところかなり動揺している。彼女は自分を第一艦隊に任命した善蔵が猫吊るしであることに気付いており、本物の善蔵は大本営のどこか、或いは近くに監禁されていることまで気付いた。だからこそ、自身の敬愛……崇拝する善蔵が巻き込まれて消し飛んでいないか気が気でなかったのだ。

 

 故に、翔鶴は帰投することを決めた。私情が多分に混じっていることは否定出来ないが、かと言ってそれだけが理由ではない。何しろ海軍とは今や世界的に見ても必要不可欠な存在であり、その総本山とも言える大本営の陥落は決して無視できない出来事でもある。何しろ世間では海軍総司令である善蔵はその名を知らぬ者はいない英雄……そんな英雄が居る場所が落ちた挙げ句に艦娘達も太刀打ち出来なかったとなれば、世界は恐怖に包まれてしまうだろう。この世界は、そういう世界なのだから。

 

 「……正直に言って、先に帰した戦力すら出来ることは殆どないでしょう。今から帰投する私達なんて論外です。ですが、こんな時間ばかり掛かる不毛な作戦なんかよりも大本営の方が大事なのは分かるでしょう?」

 

 『()()()()()……? ()()()……? 翔鶴、貴様ァッ!!』

 

 「それでは、さようなら日向さん。()()()()()生きていたら、また会いましょう」

 

 あまりにもあんまりな言葉に、日向の怒りは頂点に達する。只でさえ翔鶴に対して良い感情を抱いていなかった日向から漏れた声には、激しい憤怒が込められていた。だが、今の日向には翔鶴に対して言葉を発することしか出来ない。何故なら艦隊は翔鶴を先頭に既に帰投し始めており、翔鶴は自分の言いたいことを言い切って直ぐに通信を切ってしまっているのだから。

 

 ちらりと、翔鶴は自分についてくる艦隊を見やる。武蔵からの通信の内容は全体に通達してはいるが、やはり中途半端なまま作戦を中断したことと作戦行動の内容的に不完全燃焼な艦娘も多いため、不平不満を募らせている事が各々の表情から伺える。長門達に至っては不平不満どころか怒りすら抱いているようだ……それもそうだと翔鶴は思う。何せ帰投する旨を最初に伝えることになったのは、近くに居た長門達と大和達。特に日向の艦隊である大和達からは殺意すら抱かれた。しかも彼女達は日向を置いては行けないと死を覚悟して海域に残ることを選んだ。“お仲間共々”とは、大和達共々ということなのだ。

 

 そして長門は、躊躇いなく仲間を置いていく翔鶴に対して激しい怒りを抱いている。かつて雷を置いていくことになってしまったこともあり、長門達……渡部 義道の鎮守府では“仲間を置いていく”、“仲間を見捨てる”ことはタブーになっている。元よりそういった行為はやってはいけないことではあるが、その鎮守府内では殊更その意識が強い。だからこそ、長門達には翔鶴の行為は理解はしても納得出来ない。何せ、日向達は最大戦力でもあるのだから。

 

 ……だが、納得出来なくとも長門は翔鶴に着いていかざるを得ない。命令には従わないといけない。それが軍なのだから。そう自分に言い聞かせ、長門は他の艦娘達と共に翔鶴の背を追う。その時だった。

 

 

 

 

 「忘れ()よ」

 

 

 

 翔鶴達の前に空から何かが落下し、4つの水柱が上がる。突然の出来事と聞こえてきた声に全員が思わず足を止め、水柱を注視する。そしてそれが収まった後に現れたモノを見て、翔鶴が唖然とした表情を浮かべて呟いた。

 

 「……そんな……どうやって……」

 

 水柱が起きた場所に浮いているのは、気絶している神通、高雄、霧島、陸奥。拠点を消し飛ばす爆弾として送り込んだハズの彼女達が生きてこの場に居ることに信じられないとばかりに呟き……背後を振り返る。

 

 艦隊より後方に、ソレは居た。長く美しい黒髪を潮風に靡かせ、額から角を生やし、背後に巨大な異形を浮かべている女性。数多存在する深海棲艦の中で最高峰の力を持つ姫級と呼ばれる存在……戦艦棲姫山城。

 

 「……ですが、たった1隻で追い掛けてくるのは不用意ですね。まさかこの数を1人で相手出来るつもりですか?」

 

 「まさか。イブキ姉様や夕立じゃあるまいし、流石の姫の私でも分が悪いわ。だけど……時間稼ぎはとっくに終わっているの」

 

 「時間、稼ぎ?」

 

 艦隊の半数を先に帰還させたとは言え、まだ70近い艦娘が残っている。突然現れた姫に対して全ての艦娘が主砲を向け、油断なく見据える姿は壮観と言っていいだろう。ましてや山城はたった1人でこの場に居るのだ、集中砲火を受ければ流石に一溜まりもない。にもかかわらず、山城には余裕が見え、翔鶴はなぜそんな余裕な態度が出来るのか分からずに疑問を浮かべる。しかし、その疑問は……翔鶴達にとって最悪の形で解けた。

 

 

 

 「ゼェ! ハァ! 夕立! ゼェ……助ケニ、来タ!! ハァ……ウック……アレ、夕立ハ?」

 

 

 

 「なっ……あっ……!?」

 

 そんな息も絶え絶えながら元気な声と共に、海の中から連合艦隊の右方向から大量の黒い影と、1つの白い子供の姿が現れる。その姿は3ヶ月前の深海棲艦の侵攻を思い出させるかのようで、実際に一部の艦娘は思い出したのか震えている。

 

 それは、拠点から出ていた山城の部下達。そして、その部下達を通して援軍要請をし、応えた唯一の姫……北方棲姫と、南方棲戦姫の部下達。その総数、およそ500。ほぼ全ての部下を連れてきていた。

 

 「ほっぽちゃん、今は攻撃しないでね……正直助かったわ、南方棲戦姫」

 

 「ラジャー!」

 

 『アンタカラノ要請ガ来テスグニ港湾ノ形見ガ勝手ニ飛ビ出シテ行ッタカラ、ソノ護衛ニ付ケタダケヨ』

 

 ビシッと敬礼する北方棲姫に笑いかけた後、通信越しに聞こえる南方棲戦姫の溜め息混じりの声に、山城はくすくすと笑う。1度は断っておきながら結局は何かしらの理由を付けてこうして戦力を送ってくれるあたり、彼女は深海棲艦の中でも珍しく面倒見が良く、情にも厚いのだろう。尤も、北方棲姫が飛び出して行ったというのも嘘ではないのだろうが。それにしても500はやり過ぎだろう。ぜはぜはと苦しそうにしているので全速力で救援に来てくれたのが分かり、山城は2人の姫に深く感謝した。

 

 笑えないのは、艦娘達だ。彼女達に余裕があったのは、目に見えた戦力が無かったから。そうして空気が緩くなっている時に突然の帰投命令、しかも大本営が危ないと言う。焦燥感は感じていただろうが、それは自分達の命が掛かっていることでは無かった為、大半は上手く切り替えが出来ていなかった。だが、ここに来て最大級の危機が突然やってきた。戦力も、士気も、戦況も、何もかもが一瞬で反転したのだ。

 

 (どうしましょうか……最終手段は味方諸とも吹き飛ぶつもりで回天を起爆することですが……目の前の姫を人質に……いえ、あまりにも危険過ぎますね。強行突破……速度に難あり。誰かを囮に……数の差で瞬殺されますね……何か……何か他に……)

 

 翔鶴は必死に頭を回す。だが、考えれど考えれど出てくるのは全て無駄な足掻きにしか過ぎない。最終手段に回天……と考えはしても、これは後の海軍にとってダメージが大きすぎるので実質不可。もしくは死んでからの強制起爆だ。どうする、と無表情の裏で深く悩む翔鶴を、山城はにやりと口元を歪めて見る。そして、その悩みを嘲笑うようにこう提案した。

 

 「こちらの要求を飲むなら 、帰してあげてもいいわ」

 

 「……要求、ですか」

 

 「ええ……ああ、安心して? 別に艦娘の首を置いていけとか、提督の首を置いていけとかみたいな理不尽なことは言わないから。特別な物を要求する訳でもないしね」

 

 「……聞くだけ聞きましょう」

 

 「簡単なことよ……“二度とこの場所に近付くな”っていう、とても簡単な要求。他の深海棲艦は知らないけれど、この拠点に住む私達はもう海軍と争いたくないの。誰にも邪魔されずに、静かに暮らしたいのよ。勿論、私達は貴女達が侵攻してこない限り敵対行動はしないわ」

 

 山城の要求に翔鶴達がざわめく。だが、何人かの艦娘……イブキ、もしくはその仲間達と出会った経験のある艦娘は納得したように頷く。しかし、それ以外の大多数の艦娘はそんな要求が飲める訳がないと思っていた。何しろ相手は不倶戴天の敵、そのトップ。争いたくない等と言われてもハイそうですか、とはならない。無論、それは山城も承知している。

 

 「そんな要求、この場で言われても飲める訳がないでしょう。私達だけで決めることなんて出来はしないんですから」

 

 「別に口約束でも構わないわ。だって、貴女達は飲むことでしか生き残れないのだから……それに、貴女達にとっては良いこと尽くしじゃないの? 何しろ、連合艦隊でもどうにも出来なかった私達を相手しなくて済むんだから」

 

 ギリィッと、翔鶴は奥歯を噛み締める。それは他の艦娘達も同じ……それも仕方の無いことだろう。総勢132名……最多最大最強と言って過言ではない連合艦隊で挑み、ロクに戦うことも出来ず、不運が重なってこうして追い詰められている。しかも相手には艦隊を薙ぎ払える炎を放つ兵器を持っており、爆弾を搭載した艦娘を爆発させることなく無力化出来る。おまけに第二の軍刀棲姫も居る。改めて状況と相手を認識させられた艦隊に、絶望が広がっていく。

 

 「私は深海棲艦の中でも温厚な方だけれど……それが海軍にも向けられるかは話が別。さあ、聞かせてもらいましょうか……連合艦隊指揮艦さん。貴女の答えを」

 

 

 

 ー 死ぬか、生きるか ー

 

 

 

 全ての視線が向けられた翔鶴は答えられない。だが……数分後に答えを出す。唯一の武器である弓を手放し、背を向けてその海域から去るという形で。そしてそれと同時に、残されていた日向達も投降するのだった。

 

 

 

 

 

 

 「これでいいのか? ……不知火」

 

 「はい。ありがとうございます……武蔵」

 

 翔鶴との通信を終えた武蔵は、隣に居る2隻の深海棲艦……軽巡ツ級を背後に従える駆逐棲姫不知火へと視線を向ける。彼女達が争うこともなくこうして会話している理由は、少し前に遡る。

 

 とは言うものの、別段劇的な何かがあった訳ではない。不知火が駆逐棲姫と成った時点でツ級は本能的に配下となった。その後、当初の目的である建物内の通信施設に向かおうとする……が、猫吊るしの砲撃で建物が完全に吹き飛び、目的の達成が絶望的になる。どうしたものかと考えた不知火は、建物から外へと投げ出された時に見えた防衛戦力のことを思い出し、健在であることを祈って海へと向かう。この時不知火、自分の姿が深海棲艦のモノであり、背後にツ級が控えていることを忘れている。

 

 そんなうっかりをしながらも海に出た不知火とツ級は割と直ぐに武蔵達防衛戦力を発見。元とは言え昔馴染みを見つけた不知火は一直線に向かい、対話を試みる……だが、圧倒的実力差から絶望して意気消沈していた防衛戦力艦娘達の視点で見ると、只でさえ化け物同士の戦いで精も根も尽き果てている所に姫級と未確認の深海棲艦の登場だ、絶望に絶望を足してもまだ足りない程の絶望を感じたことだろう。実際、武蔵と雲龍以外は戦意すら保てなかった。

 

 『待って下さい武蔵、雲龍! 私です! 元、ではありますが……元帥第一艦隊所属、不知火です!!』

 

 『何? 不知火……いや、どう見ても駆逐棲姫……? 以前に見た駆逐棲姫とは確かに姿が……それに確かに不知火の面影も……だが、しかし……』

 

 『……それを私達が信じると思っているの? 証拠か何かがあるのなら、話は別だけれど』

 

 『あ、そうでした……今の私は深海棲艦、でしたね……信じられないのも無理はないです……私が不知火である証拠も……ああ、でしたら』

 

 この後不知火が武蔵のとある秘密を暴露しようとした時点で武蔵が大慌てで不知火の口を塞ぎつつ不知火であることを肯定。元スパイ、暗殺を得意としていたのは伊達ではないのだ。その後、不知火は自分の目的を伝え、武蔵はもしものこと、今後のことを考えて承諾し、雲龍達もそれに従った。善蔵ではなく自分の言葉で翔鶴が止まるかどうかという懸念はあったものの、それも杞憂に終わった。不知火としては約束を守ることが出来たので万々歳だろう。

 

 「こちらのやるべきことはやりました。後は……イブキさんに任せるしかないですね……っ!?」

 

 「なっ……!?」

 

 やるべきことはやった……そう口にして不知火と武蔵がイブキと猫吊るしへと視線を向けたのと同時に見たのは……イブキが自ら左腕を切り落とした所だった。




という訳で、ついにイブキがドギツイダメージを負わせられました。無双はできても決して無敵ではないんですよね……イブキ対猫吊るしは、大総統対ブ男リン(グリード)のイメージです。ダメージを与えたのは2人目ですかね? 最初は天龍です。そしてまだまだ続くんじゃよ。

詰め込み過ぎた、後半空気読まなかった部分がありますが……いい加減拠点側の決着も着けないといけなかったのでこのような形になりました。夕立と日向も死ぬまでやる為、強引に終わらせることに。このあたりも私の力不足ですので、次回作を書くことがあれば改善していきたいです。尚、本作は50話辺りで終わる予定でしたが通りすぎちゃったという……(´ω`)



今回のおさらい

色々決着。そしてまだまだ続くんじゃ

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)

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