どっちつかずの彼女(かれ)は行く   作:d.c.2隊長

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あらすじにも書きましたがこの作品は作者のもう1つの艦これ作品とは世界観は一切関係ありません。その為、轟沈や死亡といったネガティブな要素も沢山出るかと思います。ご注意を。


プロローグ

 見た目は普通の女の子。しかし、いざ“艤装”と呼ばれる、第二次世界大戦時に存在した軍艦の武装を人間が装備出来るサイズまでミニチュア化した物を装備すれば、人間大の軍艦と呼べる戦闘力を発揮する存在……“艦娘(かんむす)”。

 

 姿形は異形……かと思えば美しい女性の姿をしているモノも存在する、艦娘とは対を為す人類の敵……“深海棲艦(しんかいせいかん)”。

 

 突如として世界中の海に現れた深海棲艦は、当時の人類の海路を用いたあらゆる行動を防ぎ、破壊し、喰い荒らした。今までテレビや小説等の物語でしか登場しなかったような化け物が現れたことに、世界は当然のように混乱した。しかし、一部の軍事施設は直ぐに状況を抑え、尚且つ名も知らない化け物を倒す為に動き出す。“軍が動いた”……これまたテレビの向こうでしか聞かないようなことが現実として、事実として起こった。これでもう大丈夫……そう考えた人類がどれだけ居ただろう。また平穏に過ごせると、どれだけの人類が思ったことだろう。

 

 結果から言えば、軍は化け物相手に為す術もなく敗北した。相手が人間大のサイズであったにも関わらず、軍艦が、戦闘機が、戦車が、歩兵が、何もかもが一方的に蹂躙された。人類側の攻撃は確かに当たっている。銃撃、爆撃、砲撃、雷撃……その全てが、人間サイズの小さな相手に一切通用しなかった。

 

 逆に、化け物達はそれらを蹂躙した後に海路だけでなく空路も破壊した。敵は海だ、ならば空は安全……そう考えていた人類は、絶望の縁に晒されたことだろう。“彼女達”が現れたのは、そんな時だった。

 

 自らを“艦娘”と名乗った彼女達は、人類が何をしても倒せなかった化け物をあっという間に倒してしまった。制海権を失い、制空権も失い、こちらは手も足も出せず、このまま世界は化け物に喰い荒らされていくだけ……そんなギリギリのところで現れて化け物を倒した彼女達を、当時の人類は“神の使い”などと崇めた。

 

 艦娘……それは人類の味方であり、在りし日の艦艇の魂を宿した女性達。化け物……名を深海棲艦と言い、人類と敵対し、海を……世界を蹂躙する脅威。人類と艦娘は協力し、深海棲艦と戦っていく。拠点である鎮守府が生まれ、対深海棲艦に特化するよう海軍も作り直され、艦娘と最前線で戦う“提督”も居て、深海棲艦達と海域や島を奪い合う。

 

 そんな“日常”が世界に浸透してきた頃……撃沈した艦娘、壊滅した鎮守府が数を増し始め、人類が再び絶望の影を感じだした頃に、新たな人類の……正確には艦娘の味方である“妖精さん”の姿が現れ出す。いや、人類にその姿が“見え始めた”と言うのが正しい。妖精さんとは、弾薬や鋼材といった資材と引き換えに艦娘を“改修”として強化し、“建造”として生み出すことの出来る唯一の存在である。更に艦娘の艤装にも宿っており、人類がその姿を見る前からずっと艦娘のサポートをし続けていたという。

 

 妖精さんの存在が発覚し、建造と改修が可能と知った人類は再び息を吹き返した。しかし、一部の心無い……だが軍人としては正しい提督がいたことで、ちょっとした事件が起こる。

 

 資材さえあれば艦娘は“量産”できる。艦娘は過去の軍艦が人の形をした存在。ならば軍艦という“兵器”である彼女達を資材のある限り量産し、戦わせればいい。なぜなら“代わりは幾らでもいるし、作り出せる”のだから。そして、それを有言実行したのだ。

 

 

 

 その翌日、その鎮守府の提督は艦娘によって就寝中に頭部を吹き飛ばされ、着任していた艦娘全員が鎮守府を破壊し尽くした後に自害したのだ。

 

 

 

 全く同じ事件が同じことをした鎮守府で起きた。たまたまその現場を目撃した憲兵が目撃した全てを海軍本部に送らなければ、人類は味方であった艦娘によって滅ぼされていたかもしれない。そういった事件があったことにより、海軍本部は提督を着任にさせる際には、能力よりもその人間性を重視するようになった。尚、事件の詳細は伏せられ、全ての提督及び候補生には、必ずある言葉が刻み込まれた。

 

 

 

 ― 忘れるな。艦娘は兵器ではなく、心在る人類(われわれ)の仲間なのだ ―

 

 

 

 さて、ここまで長々と語ってしまったが……実はあまり、人類側と深海棲艦達との戦いを語るつもりはない。何せ、主人公は提督ではない。艦娘でもないし、かと言って深海棲艦という訳でもない。人類の敵ではない……しかし、味方でもない。

 

 この物語の主人公は、敵でもなく味方でもないが敵にも成りうるし味方にも成りうる……どっちつかずで曖昧で中途半端な存在。そんな存在が、結局どうなってしまうのか……曖昧な未来に向かって戦い続けていく。

 

 ただ……それだけの物語。




プロローグではあまり書くことはありませんね。今後もお付き合いしていただければ幸いです。

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