もし青銅が黄金だったら   作:377

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第十九話 アテナの下に!聖闘士の集う時

 白羊宮前の広場、星矢達青銅聖闘士は声も出ないような息苦しさを感じていた。

 遥か遠くに見える十二宮を模した火時計の火は、既に最後の双魚宮に達し、それすらもう小さくなり消えかかっている。

 十二時間のタイムリミットが迫っているのだ。

 あの火が消えた瞬間、アテナに突き刺さった矢はその心臓を貫く。

 そうなればアテナは二度と目を覚ますことは無いだろう。

 

 「おいっ! アイオロス達はまだか!? もう時間が無いぞ!」

 

 十二宮の彼方にある教皇の間の方を見ながら、星矢が拳を握りしめた。

 アイオロス達からは、ここまで何の音沙汰も無い。

 

 「落ち着け星矢! ここまで来ればもはや俺達にはどうにもできん。ただ彼らを信じて待つだけだ!」

 

 後ろから紫龍が声をかけた。

 だがそう言う紫龍もまた、火時計を見ては焦りを感じているのが分かる。

 それは、この場にいる誰もが同じように実感していることだった。

 

 本当にもう、彼らには何も出来ない。

 

 皆がそう分かっているからこそ、身を切るような悔しさと焦りの中でも、じっと黄金聖闘士達の帰還を待っているのだ。

 

 と、その時だった。

 

 突如足元が微かに揺れた。

 直後、遥か遠くの教皇の間から、星矢達のいる白羊宮まで届くとてつもない轟音が響いた。

 同時に巨大な小宇宙が柱となって立ち上っているのも見える。

 

 「な……何だ、今の天地をつんざくような衝撃は……まさか!」

 

 星矢だけでなく、その場の全員が同じこと――――最悪の結末を思い浮かべるのに、そう時間はかからなかった。

 

 そして二度目の爆音が轟く。

 先程より更に大きな衝撃が、十二宮を駆け抜けた。

 

 「みんな! あれを見て!」

 

 瞬が衝撃の中心を指差す。

 そこに見えたのは――――羽根。

 淡い黄金の光を放つ無数の羽根のようなものが、聖域の夜空に舞っている。

 

 「あの小宇宙は…アイオロス……」

 

 目に浮かぶのは、翼を背に立つその姿。

 残り僅かな時間の中で、何人もの黄金聖闘士を斥け傷付いた身体で、それでも諦めること無く闘うその姿が。

 

 「あと少しだ! 頑張ってくれ!」

 

 「僕達は最後まで諦めないよ!」

 

 「アイオロス!」

 

 聞こえるはずも無い。

 だが、遥か彼方で闘うその背を押すように星矢達は口々に叫んだ。

 

 そして――――

 

 『火時計の火が消えたーーーー!?』

 

 その瞬間、十二宮の彼方から放たれた光が、アテナも星矢達も覆い尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、まさしく奇跡だった。

 

 後から思い返してみても、火が消えたのと光が到達したこと、どちらが先だったのかは分からない。

 

 しかし、たった一つ明らかなことがある。

 火時計が消えたと思った瞬間、アテナに降り注いだ柔らかな光によって、胸の矢はまるで氷が溶けるように跡形もなく消え去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ア……アテナ……」

 

 胸の矢は跡形もなく消えていた。

 しかし横たわるアテナの様子に変化は無い。

 アテナは助かったのか、本当に間に合ったのかどうか、星矢達には分からなかった。

 

 だが――――

 

 「おお……アテナが…………目を覚ました!!」 

 

 目の前で、ゆっくりとアテナの目が開いていく。

 その顔には確かな生気が戻っていた。

 

 その姿を見て、星矢達は一斉に歓喜の声を爆発させた。

 心臓に達しようかという程に深く刺さっていたはずの矢があった所には、不思議なことに傷一つ残っていなかった。

 まるで、たった今まで普通に眠っていたかのように。

 

 「みんな……ありがとう。あなた達のおかげで、私は目を覚ますことが出来た……そして……」

 

 アテナは、微笑を浮かべながら周りを取り囲む星矢達を見渡し、静かに呟いた。

 そして、予めそう決めていたかのように、全く迷いの無い足取りで、真っ直ぐに十二宮へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――磨羯宮

 

 日も落ち、火時計の火も残り僅かとなった最中。

 限界まで互いの力と小宇宙をぶつけ合い、未だ激闘の只中にあるアイオリアとシュラ。

 二人共既に息も絶え絶えに、常人なら、いや聖闘士ですら立つことも困難な程の傷を負っている。

 だが、それでも血の滲む拳を構えて止めようとはしない。

 そしてもう何度目になるのだろう。

 目にも止まらぬ閃光の拳と、研ぎ澄まされ聖剣と化した手刀が交錯する。

 

 「ライトニングプラズマ!!!!」

 

 「エクスカリバー!!!!」

 

 砕けた拳と折れた手刀が激突した。

 次の瞬間、二人は目も眩むような光に包まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――宝瓶宮

 

 凄まじい凍気を発しながら二人の男を包み込んでいる巨大な氷塊を、大いなる光が通り抜けた。

 するとその氷に、一条の亀裂。

 現れた亀裂は徐々に氷全体に広がっていき、やがて氷の棺は大きな音を立てて崩れ去った。

 

 「ガッ…………なん…だ……?」

 

 氷の中から地面に倒れ込むようにして現れたのは、スコーピオンのミロ。

 凍てついた身体に活を入れ、何とか己を持ち上げる。

 

 「俺は……助かったのか……?」

 

 今、自分が置かれている状況が飲み込めずに、とりあえず辺りを見回すミロ。

 しかし何の手掛かりも無く、一体何が起きたのか皆目見当も着かなかった。

 

 「俺は一体……カミュは……?」

 

 不思議に思って記憶を辿ると、不意に彼は最後の瞬間を思い出した。

 カミュと共に巨大な氷の棺に道連れにされ閉じ込められそうになり、本気で死を覚悟した瞬間。

 思い出して、ミロは思わず身震いしていた。

 カミュが作り出したこの世で最強の氷、それは指拳一つで打ち破ることの出来た薄い氷壁とは強度がまるで違う。

 加えて、その時既に手足は凍りついていたのだ。

 巨大な氷塊から自力で脱出するのは、どう考えても不可能だった。

 なのに現実はどうだろう、今ミロは何も無い宝瓶宮に立ち尽くしている。

 不思議なことに、身体中を覆っていた凍傷も心なしか軽くなっているようだ。

 

 「一体何が起こったというのだ…」

 

 「目が覚めたか、ミロ」

 

 「カミュ!」

 

 いきなり後ろから声をかけられた。

 声の方を向くと、そこに立っていたのはカミュ。

 ミロを止めるためだけに、自分の命すら省みず、共に氷に閉ざされたはずの男だった。

 

 「あの氷塊を砕いたのは、お前か?」

 

 何事も無かったかのように立っているカミュを見て、ミロはそう問いかけた。

 自分が砕いたのではない以上、他に心当たりも考えられない。

 酷い傷を負っていたとはいえ、自分で作り出した氷ならば砕くのは容易いことなのかとも思える。

 だがカミュの答えはそうでは無かった。

 

 「いや……何故突然氷が砕けたのかは私にも分からない。なにしろ、あの時私にはそんな力は残されていなかったのだからな。それに見ろ、お前のスカーレット・ニードルの傷口が浅くなっている。痛みもかなり引いた。この傷はそう簡単に消えるものでは無いはず。何か……私達の理解を越えた何かが起こったのではないかと思う」

 

 「むう……確かにそう言われてみれば、氷の中を何かが通り抜けたような気配があった」

 

 そこまで言って、ミロはあることに気がついた。

 

 「先へ行ったアイオロス達はどうなったのだ? 教皇の間からは、何も感じられんが…」

 

 二人して怪訝な表情で顔を見合わせていた、その時だった。

 宝瓶宮、いやそれだけではない、聖域全体を包み込む程に圧倒的な、それでいて天地開闢を思わせるような雄大な小宇宙に、思わず二人は振り返った。

 するとそこには――――

 

 「アテナ!」

 

 ミロが叫んだ先にいたのは、手に黄金の杖を持ち、しっかりとした足取りで宝瓶宮の階段を上るアテナの姿。

 そしてアテナの背後には、ミロとも闘った五人の青銅聖闘士、更にはここまでの宮を守る黄金聖闘士達も付き従っていた。

 

 「な……何だと? お前はこの方が……アテナだと言うのか、ミロよ……」

 

 目の前に立っている少女がアテナだということが信じられない、とでも言うようにカミュが声を上げた。

 ずっとアテナは聖域にいると聞かされてきたのだ、無理も無い。

 ついそれを否定する言葉が口をついて出そうになるが、それもなんとか抑え込む。

 カミュは、彼女から発せられる小宇宙が自分を含めた黄金聖闘士の誰をも遥かに上回っていることに、既に気が付いていたのだ。

 小宇宙の真髄を極め、人として究極のレベルに達しているとされる黄金聖闘士。

 それを超越する力など、もはや神以外には持ち得ないというのも事実。

 

 その偉大な力は隠れようも無い。

 真の女神の所在を知ったカミュは、自然と頭を垂れ膝を着いていた。

 

 「我が師カミュ! 顔を上げて下さい」

 

 その時、アテナに対して跪くカミュに向かって飛び出したのは青銅聖闘士の一人、氷河だった。

 

 「おおっ、氷河!」

 

 聞こえてきた声に顔を上げると、傷付いた聖衣を纏う弟子の氷河が、両手を差し出して立ち上がるよう、促していた。

 驚いたように弟子を見上げるカミュ。

 

 「そうか……お前は、アテナの下で闘い抜いたのだな。よくぞそこまで成長したものだ。私は嬉しいぞ氷河……!」

 

 感極まって涙を流す師の姿に、氷河も身体を打ち震わせる。

 

 そして、立ち上がった師弟と、それを見守っていたミロにアテナが穏やかに言った。

 

 「今から私は教皇の間に向かいます。あなた達も……ついてきてくれますか?」

 

 『はっ!』

 

 ミロとカミュは静かにその言葉に頷くと、アテナに従う他の黄金聖闘士達と共に教皇の間に向かって進み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 ――教皇の間

 

 アフロディーテは覚えのある気配を感じてうっすらと目を開けた。

 

 「お前は……デスマスク?」

 

 「おっ、やっと起きたな」

 

 ボロボロの身体に鞭打って、なんとか上体を起こすと、彼のすぐ傍にデスマスクが立っていた。

 見ると、デスマスクだけでは無い。

 アルデバランやシャカ、それに老師を除く黄金聖闘士達が皆この場に集結しているではないか――――ただ二人を除いて。

 

 「サガとアイオロスは……どうなった?」

 

 「知らねえよ。でもアテナが復活してるってことは、サガの方が負けたんだろ」

 

 「ッ! そうだな……」

 

 予想以上に軽い口調でデスマスクは面倒くさそうに話すと、後は押し黙ってしまった。

 アフロディーテは仕方なく口を閉じ、サガの放った爆風によって荒れ果てた教皇の間を見渡してみると、あちこちが砕けていたり、ひびが入っていたりで、ひどい有り様だった。

 青銅だけでなく黄金聖闘士にも傷を負っている者が少なくない、彼自身もかなりのダメージを受けているのだ。

 それを見たアフロディーテは自嘲するように言った。

 

 「フッ……虚しいものだな……」

 

 「……いきなり何だ?」

 

 「あの時、私達は教皇に成り代わったサガに従うことが、平和への近道だと信じた。だが……結局はこのザマだ。今まで私達がしてきたことは一体何だったのだ?」

 

 そう言って俯くアフロディーテの耳に、デスマスクらしい軽薄そうな笑い声が響いた。

 

 「ハッハッハ、お前何言ってんだ?」

 

 「なにい……!」

 

 その言葉はアフロディーテの顔色を変えるには十分過ぎたのか、思わず怒気の籠った声を上げずにはいられなかった。

 しかし意外なことに、それを受けてもデスマスクは笑いを崩さず、どこか真剣な表情のまま言葉を続ける。

 

 「俺達が負けたのは、単にあいつらより力が下だった、それだけのことだろ? サガにしたってそうだ」

 

 「む……」

 

 「それに、俺達は負けたとはいえ死んだ訳じゃねえ。少なくとも俺は、地上を守るのがアテナだろうとサガだろうと、同じように闘い続ける覚悟はあるぜ。お前はどうなんだ?」

 

 目的が一緒ならば、つい今しがたまで敵対していた相手にも平然と従う。

 もちろんそれは彼自身が強者と認めた相手に限るが、それでもデスマスクらしい物言いにアフロディーテもふと自分の中の何かが緩んだ気がした。

 

 「相変わらずだな君は。だがその通りだ……私達にはまだ果たすべき役目がある。それを、私は忘れていたよ」

 

 言って、力無く項垂れていたアフロディーテは、再び不敵な笑みを浮かべると、デスマスクの手を借りて立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 教皇の間で聖闘士達が顔を合わせていた頃、アテナは一人その更に奥へと進んでいた。

 十三年前からずっと傍で彼女を守ってきた、そして今また再び命の危機から救ってくれた者の所へ。

 ここへ辿り着くまでに通過してきた十二宮では、彼や、共に進んだ者達と、宮を守る黄金聖闘士達との激闘の跡を、至るところに見ることが出来た。

 彼の強さを知りつつも、もしかしたら、という不安感は付きまとう。

 そんな気持ちを抱えながらも、進んでいく内にとうとう聖域の最も奥、アテナ像が見える場所まで来た。

 そしてその時、彼女の前に現れたのは、思いもかけない人物だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ……あなたは!?」

 

 大地に両手をついて跪く男に、アテナは少し上ずったような声で問いかけた。

 男はそれを聞くと、僅かに顔を上げ、アテナに対して澄んだ眼差しを向けた。

 

 「私の名はサガ。十三年前、あなたを殺そうとした男です」

 

 何度となく話を聞き思い浮かべていた、十三年前に自分を殺めようとした男。

 初めて見るその姿に、思わず彼女は目を見開いた。

 しかし、サガはそれには構わず、滔々と話を続けた。

 

 「私がずっと積み重ねてきた罪を、せめてアテナの前で一言詫びようと思い、こうして参上したのです」

 

 優しげな表情でそう語るサガの姿は、とてもかつての凶行を行った者と同一人物だとは思えない程だった。

 そして溢れ出した涙もそのままに、両の拳を握りしめる。

 

 「この闘いの咎は、全てこの私にあることは分かっています。ですが……このサガも本当は正義のために生きたかった。どうか……それだけは信じて頂きたい……」

 

 「サガ……っ!?」

 

 サガは身体を震わせながらアテナに対して頭を下げる。

 そして次の瞬間、サガは自らの胸を目掛けて拳を繰り出した。

 確実に命を奪うため、その貫手は真っ直ぐに左胸の心臓を狙う。

 だがしかし、その一撃は突如彼の横から伸びてきた手によって掴み取られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お……お前は!」

 

 「アイオロス!」

 

 黄金聖衣さえも貫こうかという程の渾身の小宇宙を込めた手刀は、手首を取られ、サガの身体のほんの少し手前で止められていた。

 サガが全力で放った突きを止めたのは、この男、サジタリアスのアイオロス。

 

 「やめろアイオロス……手を放せ」

 

 サガがその手を振り払おうとするが、アイオロスの手は強い力で腕を固定し、微動だにしなかった。

 そしてそのままサガの手刀から手を放すこと無く、アイオロスは口を開いた。

 

 「やめるのはお前の方だ。アテナに許しを乞うと言いながら、その言葉を聞く前に死を選ぶとは何事か!」

 

 手首を掴むアイオロスの手に力が入る。

 

 「お前が真に自身の罪を悔いるのなら、アテナの意思を聞きその裁きを受けよ。それによってお前が死を受けるというのなら、もう私も止めはしない」

 

 「アイオロス……」

 

 サガはアイオロスの言葉を聞いて納得したのか、神妙な面持ちで微かに頷いた。

 

 「そうだな、ならば私も改めて問おう」

 

 そして再びアテナに対して深々と頭を下げた。

 

 「アテナ。十三年前と、そして今また貴女を殺めようとした罪を償うために、どうかこのサガに死をお与え下さい」

 

 「サガ……」

 

 サガを見つめるアテナの目に強い光が灯った。

 そして右手に持った杖を向けて、厳かな声で裁きを述べる。

 

 「サガ、あなたは今まで多くの人々を傷付けました」

 

 「はっ」

 

 「あなたの犯した罪は、死を以てしても消えるものではありません」

 

 「……!」

 

 サガの顔に驚きが走った。

 死を以てしても足りないならば、如何にして償うというのだろうか。

 アテナは、凛とした声で言った。

 

 「サガ、あなたが自ら死を選ぶことは許しません。そうではなく……これから先、あなたには聖闘士として、その生涯を地上の平和のために闘い抜き全ての罪を償うことを命じます!」

 

 響き渡ったアテナの声に、あたりが静まり返る。

 

 「アテナ……」

 

 握りしめた手が震え、拳に滴る程の滂沱の涙が溢れだす。

 アテナは汲み取ってくれた――――サガの想いを。

 答えるべき言葉は、一つしかない。

 

 「このサガ、命尽きるまで聖闘士として力の限り闘うことを誓いましょう!」

 

 「ええ、こちらこそお願いします」

 

 そして立ち上がったサガに微笑むアテナの後ろから、教皇の間にいた聖闘士達が続々と集まってきた。

 黄金聖闘士達だけではない。

 青銅聖闘士や白銀聖闘士、雑兵に至るまで、聖域の全ての人間が集まったかのようだ。

 

 その中から、黄金聖闘士達が一歩前へと進み出た。

 そしてアリエスのムウが、皆を代表してアテナにその意志を宣言した。

 

 「アテナ……ここにいる者達は、黄金聖闘士から雑兵に至るまで、皆一つの考えで一致しました」

 

 「アリエスのムウ!!」

 

 「タウラスのアルデバラン!!」

 

 「キャンサーのデスマスク!!」

 

 「レオのアイオリア!!」

 

 「バルゴのシャカ!!」

 

 「スコーピオンのミロ!!」

 

 「カプリコーンのシュラ!!」

 

 「アクエリアスのカミュ!!」

 

 「ピスケスのアフロディーテ!!」

 

 アテナの傍の二人がそれに続けた。

 

 「……ジェミニのサガ!!」

 

 「サジタリアスのアイオロス!!」

 

 『我ら黄金聖闘士十二名、地上の平和を守り、アテナに忠誠を捧げることを誓います!!!』

 

 その声を受けたアテナは、その場にいる者達を一人一人見回すと、全身から雄大な小宇宙が立ち上り、右手の杖に柔らかな光が灯った。

 

 「分かりました、あなた達の意志を聞いて、私もまたこの先の聖戦を、皆と共に闘い抜く決意ができました! さあ、今こそ! 聖戦の始まりです!」

 

 こうして、十二宮の闘いは終わりを告げた。

 そして、新たなる聖戦への幕が開ける……!

 

 

 

 

 


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