幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee- 作:橘 雪華
どうも。教会での立場が未だによくわからないグリモです。
ブランさん達女神が囚われの身になったと知ってから強くなると決意したわたしは、今日も教会の中庭で魔法学の本片手に特訓中。
右手に杖、左手にあの白い本を持って意識を集中…
「……やぁっ!」
力を込めて杖を振るうと、杖から三発の魔力の弾丸が放たれる。
それは目の前に設置してある的(用意してもらった)目掛けて飛んで行き、見事に三発とも直撃した。
魔法を始めてわかった事が二つ程。
まず、どうもわたしは体質的に魔法との相性が良いらしく、簡単な魔法はすぐに使えるようになった事。
もう一つは、この本。
グリモワールという名前のこの白い本はどうやら魔導書と呼ばれる物らしく、魔法の媒体として使う事が出来るらしい。
それに、こうして片手に持っているだけでもブーストが掛かるみたいで、こうして普段から持ち歩くようにした。
まぁともかく、いくら魔法との相性良いからって調子に乗らないようにしないとね。
「ロム様、ロム様!」
そんな感じで日課の特訓をしていると、教会職員の誰かがロムちゃんを探してるみたいで、ロムちゃんの名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
またラムちゃんとイタズラでもして追われてるのかな、それとも何か落し物でもしたのかな。
なんて考えながらも特訓を続けていると、その声がわたしに向けられていることに気付いた。
「あ、あの…わたし、ロムちゃんじゃないです…」
「えっ? ……あ、あああっ! も、申し訳ありませんでした!!」
戸惑いながらそう言うと、職員さんは慌てながら謝って、わたわたとしながら去っていった。
…と、まぁ、こんな感じで。最近よくロムちゃんと間違われるようになって、少し困っていた。
流石にこれ以上間違われるのはどうかなと思って来たので、ロムちゃんとラムちゃんと話し合う事に。
ロムちゃんの方は良くわかってない様子だったけど、ラムちゃんはこの話をすると「あぁ~」と何か納得したような顔をしていた。
「確かに、グリモちゃんとロムちゃんってパっと見たら見間違えちゃうかも。髪とか見た目とかそっくりだし、服もわたし達と一緒のを着てるから余計にねー」
「そうなの…?」
「うん。同じ服着たら他の人には絶対わかんないくらいには!」
まぁわたしは分かるけどね! とドヤ顔なラムちゃんはスルーしつつ、わたしはうぅんと腕を組んで考え込む。
別に影武者になるつもりもないんだから、どうにかしてロムちゃんと見分けがつくようにしたいところだけど…
「いっそ、ラムちゃんみたいに髪を伸ばしちゃうとか…」
「時間かかるし、そしたら今度はわたしと見分けつきにくくなっちゃうじゃない!」
それもそっか…うーん。
と、二人してうんうん唸っていると、ロムちゃんがつんつんとつっついてきた。
「あのね、それなら…髪型を変えてみるとか、どうかな…?」
「髪型…? 伸ばさないままで?」
「うん。…どうかな?」
髪型か…それなら確かに時間もかからないし…
と、今度は「そうだ!」とラムちゃんが何かを思いついたように声を上げた。
「メガネかけてみるとかどう? 確かだてめがねっていうオシャレ用のメガネがあるって本で読んだことあったし、そういうので!」
「ふむ…」
伊達メガネ…なるほど、その二つならいいかもしれない。
「…うん。じゃあ二人の案を使わせてもらうね。今度買「よっし! それじゃー、さっそく行くわよ!」…って、え?」
買ってくる、と言いかけたところで、その言葉はラムちゃんの元気いっぱいの声にかき消される。
「行くって…今から?」
「何言ってるの、当たり前じゃない! ねーロムちゃん」
「(こくこく)」
なんか当然でしょ? みたいな返しをされたけど…
…うぅん、まぁ、いっか。
「それじゃ、グリモをおしゃれにしよう作戦、かいしー!」
「かいしー…♪」
「あの、なんか目的変わってない?」
結局の所わたしで遊ぶ気満々な二人を見て、今更止められそうもないなぁと思いながらわたしも二人の後に続いて部屋を出るのでした。
「それで、どうするの?」
ミナさんに外出の許可を貰って街まで来た二人を追いかけながら聞いてみる。
アクセサリーのお店なんて詳しくないから二人任せにするしかない。
「そうねー……あ! いいこと思いついた! ロムちゃん…」
「? ……それ、いいかも」
「うん?」
すると突然内緒話をする二人。
さっそく仲間はずれに…
「てことでグリモちゃん、ちょっとそこの公園で待ってて!」
「い、いや、なにがてことでなのかわかんないんだけど…」
「いいから! ほらっ!」
そしてよくわからないうちに押し出されて、振り返れば既に二人の姿はなくなっていた。
ちょ、ちょっとー…
「はぁ…」
勝手に動いたら怒られそうだし、仕方ない…言われた通り待ってようか…
とぼとぼと公園に設置されたベンチに座って、空を眺める。
今日は雲一つ無い快晴で、雪国にしては過ごしやすい気候。
つまりなにが言いたいのかというと…
「…ふわぁぁ…」
とても眠くなるということ。
あぁ、ダメだ、座ったら一気に眠く…
……………
…………
………
……
「………ちゃ…! …き…!」
ユサユサ
「グリ………! …」
ユサユサユサ
…うぅん…ゆらさないでぇ…
「こう……………ロム………!」
「……」
ユサユサユサ……コチョコチョ
ん、んふ、ふっ…
コチョコチョコチョコチョ…
ふ、ふふっ、く…
「ふっふあははははっ!」
「やっと起きた! なかなか起きないのが悪いんだからねー…コチョコチョ♪」
「それー…♪(こちょこちょ)」
「あっ、あはははっ! はひっ、や、やめっ、あははははは!!」
目覚めは、最悪でした。
「はぁ、ふぅ、ひぃ…」
息を整えながら、服を整える。
どうやらベンチで眠ってしまっていたらしく、戻ってきたラムちゃんとロムちゃんが起こそうとしたけど起きなくて、その結果くすぐられた…ということらしい。
「もー、こんな所で寝るなんて、変なやつにユーカイされたらどうするの!」
「反省して…(ぷんぷん)」
「ご、ごめんなさい…」
そしてあんまりにも無防備すぎるとのことで、二人に怒られてしまった。
でも、眠気には勝てなかったんだもん…
「そ、それで、なにしにいってたの?」
気を取り直して、二人がどこにいってたのかを聞いてみることに。
すると二人は顔を見合わせてにやにやすると、手に持っていた紙袋を差し出してきた。
「…もしかして」
「うん! わたし達からグリモちゃんにプレゼント!」
「なかよしの、あかし…」
二人から紙袋を受け取って、それを見つめる。
プレゼント…
「…もしかして、迷惑だった…?」
「そんなことない、すごく嬉しい…」
「まっ、とうぜんよね! ほら、早速開けてみてよ!」
ラムちゃんに急かされて、受け取った袋を開けてみる。
まぁ、中身はきっと教会で話してたあれだろうと思いながらも、その予想は的中した。
ロムちゃんから受け取った方からは水色のフレームのメガネ、ラムちゃんからの方は氷の結晶の飾りがついたヘアゴムが、それぞれ入っていた。
「これ、二人が選んだの?」
「そうよ、グリモちゃんに似合いそうなのをねっ!」
「頑張って、探した…(えへん)」
「そっか…」
にこっと笑顔でそう言ってくれる二人。
そんな二人の笑顔と、受け取ったプレゼントを見ていると、胸の辺りがぽかぽかとあたたかくなる。
「ほらほら、早速つけてきてよ!」
「え? あ…う、うんっ!」
ラムちゃんにそう言われて、わたしは二人から受け取ったアクセサリーを持って公園のトイレに。
身長のせいですこし見づらかったけど、トイレにある鏡を見ながら髪を纏めていく。
髪型をどうするか、なんてのは決めていなかったけど、ほぼ無意識に右側に髪を纏めていき、ラムちゃんから貰ったゴムて髪を結く。
「……こんなところかな」
それから少し微調整やらをしつつ、なんとかできた。
鏡に映るのは、右側に髪を纏めたサイドポニーテールの姿になったわたし。
次に、ロムちゃんから貰ったメガネをかけてみる。
伊達メガネ、ということで度は入ってないけど、レンズ越しの視界はなんだか不思議な感じがした。
「よしっ」
これでバッチリだろうと思って、そのままの姿で二人の元へと戻る。
すると、二人ともわたしの姿をみるなり「おおー」と瞳を輝かせた。
「うんうん、これでロムちゃんとの見分けもつきやすくなったし、それにバッチリ似合ってるわね!」
「グリモちゃん、かわいい…♪」
「そ、そう、かな」
素直に褒められてちょっと照れくさい。
とにかく、ラムちゃんがそういうならこれで間違えられることもなくなりそうだ。
あ、でも、これって二人の…
「でも、お金…」
そう言いかけると、ラムちゃんがムスッとした顔で言葉を遮った。
「もー、ロムちゃんも言ってたでしょ? これはわたし達からグリモちゃんへの、仲良しのプレゼントなんだから! だからいいの!」
「(こくこく)」
そういったラムちゃんに同意するように頷くロムちゃん。
…本人達がそう言ってくれるなら、いいのかな。
っと、ラムちゃん達のお小遣いの心配も大事だけど、もっと大事なことを忘れてた。
「ロムちゃん、ラムちゃん。ありがとうっ」
えへへ、と笑いながら、二人にお礼する。
その時一瞬二人の顔が赤くなったような気がしたけど…気にするほどのことでもないかな。
「あ、そうだ。もう一つ…」
「ラムちゃん、まだなにかあったの…?」
そこでラムちゃんがまた自分のポーチをごそごそと漁り始めた。
ロムちゃんもなにかわからないみたいで、不思議そうにラムちゃんを見つめている。
「じゃーん! 三人おそろいのペン!」
そしてラムちゃんが取り出したのは、真っ白な色で一部分にそれぞれ水色、ピンク、青色が入った三本のペンだった。
「いつの間に…?」
「えへへ、ロムちゃんにも内緒でね。はいっ」
これはロムちゃんも知らなかったみたいで、驚きながら水色のペンを受け取っていた。
そしてわたしにも青色のペンが渡される。
「せっかくだから、三人でおそろいのものが欲しくって」
「嬉しいには嬉しいけど…ほんとにお小遣い大丈夫?」
「お、お手伝い頑張るからへーきよ!」
心配になって聞きながらも、渡されたペンを見つめる。
…おそろい、か。
「おそろい…ラムちゃんとグリモちゃんとおそろい…♪」
ロムちゃんも嬉しそうにペンを見つめている。
これは、大事にしておかないと。
「さってと! それじゃ、帰ろっ!」
そんなわたし達に満足したのか、にっと笑みを見せて走り出すラムちゃん。
「ちょっ、待ってよラムちゃん! ロムちゃん、行くよー!」
「あ、うん…っ!」
慌ててロムちゃんと一緒にその後をおいかける。
…二人と前より仲良くなれた、そんな気がした一日でした。
「よーしっ、教会まで誰が一番早くつくかきょーそーね!」
「そんなのラムちゃん先に走り出したんだからずるいよ!」
「ずるっこ…!」
「へへーんだ! わたししーらない!」
「こーらぁー! 待てー!!」
〜アイテム解説〜
・アクアグラス&スノークリスタル
水色フレームのメガネと雪の結晶の髪ゴム飾りのセット。
変装といえばメガネ、というわけではないが、これ一つでも大分印象は変わるだろう。伊達メガネなので誰がかけても心配はない。