幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee-   作:橘 雪華

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Act.4 黒の地方、黒い工場、黒いボス

あれから数日が経って、

わたし達は女神達のシェア獲得の為…マジェコン撲滅の為に、各地のワレモノモンスター(犯罪組織の持つディスクから生み出されたモンスターのこと)やマジェコンを販売するマジェコンヌ構成員の相手をしていた。

女神が直接活動する事によって、国の人達に間近で女神の力や、その活動を見てもらえる…それがシェア獲得やマジェコン撲滅に繋がるとかなんとか…

 

それ自体は良い事なのだけど、一度シェアをほぼ独占されただけあって、潰しても潰しても出てくるわ出てくるわ。

シェア獲得に貢献は出来ているものの、いたちごっこ感が否めない状況だった。

ラムちゃん達も飽きたとか言いだしたし…

 

そんな感じでだんだん女神パーティーの士気が下がりつつあったところで、イストワールさんからの呼び出しがあった。

 

「さて、皆さん揃いましたでしょうか」

 

「はい!」「はーいっ!」「えぇ」

「いるわよっ」「(こくこく)」

「……はい」

 

「女神候補四人と女神一人…あともう一人もちゃんと揃ってるわね」

 

呼び出されたそれぞれが返事をして、エストが確認するように言う。

なんかわたしだけオマケ扱いみたいなのが引っかかるけど…まぁいい。わたしだってもうそこまで子供じゃない。

 

「現在、皆さんには各地の構成員やモンスターの対応をお願いしていますが…」

「それよ! いつまで続ければいいのよ! わたしもう飽きたー!」

「まぁ確かに、マジェコン回収も一つずつじゃキリがない感じがするわよね」

「…いっその事、元を絶てれば良いんですけれど。生産工場を潰すとか…」

「確かにそうかもしれないけど、そんな所簡単には…」

「あら、案外もう見つかってるってオチだったりするのよ? それ」

『え?』

 

キリのないマジェコン回収にうんざりしながらそんな事を言ってみたりしていると、エストの言葉に揃って声を上げる。

 

「はい。アイエフさん達諜報部の方々から、新型マジェコンの製造工場を発見したとの連絡がありました」

「おー! さっすがアイちゃんだね!」

「なら、そこをどうにかすれば…」

「マジェコンの流通を一気に…だね!」

「すごい…!(きらきら)」

 

生産元が見つかったとなれば、やるべき事は決まったも同然。

集められたメンバーのやる気が戻ってきたように感じられた。

 

「なんかやる気出てきたね! で、その工場どこ? どこにあるの?」

「ラステイションよ。詳細位置は追って伝えるから、さっそく行ってきてくれる?」

「……すっかり指揮側だね、エスト」

 

まぁ矢面に立ってたわたしと二人だったころがおかしかったのかな、なんて思いつつ。

言われた通り工場に向かうことに。

その製造工場はラステイションから北東に行った場所の、山の中に隠されるようにして存在していた。

 

「ここがマジェコン製造工場……すごい、見たことない機械でいっぱい…!」

「なんでちょっと嬉しそうなのよアンタは…」

 

入口の見張りを軽く叩きのめして工場に侵入したネプギアちゃんの開口一言目がそれだった。

わたしの杖の時もだけど、機械とか何かの改造好きなのかな…

 

「で、とりあえず片っ端から壊せばいいんだよね? マジェコン作ってる工場なら遠慮はいらないだろうし!」

「だったら、わたしとロムちゃんの魔法で一気に爆発させちゃえば!」

「…工場ごと生き埋めになりたいならそれで良いんじゃない? …ネプテューヌさんのもオススメはできないと思います。変に目立つ事をしたら、新型とやらを持って逃げられてまた構成員を捕まえる作業に逆戻り…なんてことになりかねないので」

「それはちょっと嫌かなー…はーい」

 

物騒な事を言う二人に適当な言葉をかけて止める。

そもそも流石に大量殺人なんかしたら、シェアが上がるどころか下がるだろうし。

 

「…なら、どうするの?」

「んー…今まで捕まえた構成員の様子とかから考えて、大体の人はマジェコンヌ自体にはそこまで忠誠心はないみたいだったし……取るべきだとすれば、頭を仕留めること…かな」

「頭…工場長のこと?」

「うん…構成員の心がバラバラなら、頭を失ってしまえば脆いもの、だよ」

「…ディールちゃん、かしこい(きらきら)」

「まぁそういうとこが見た目不相応なんだけど…」

 

色々言われてるけどとりあえずこれが最善のはず。

…まぁ、アイエフさんとかがいればわたしが考えなくてもこの結論に至っただろうけどね。

 

「それじゃ、見つからないよーに偉そうなのを探そう!」

 

方針が決まった所で、わたし達は見つからないようにと行動を開始した。

 

潜入任務(スニーキングミッション)って訳ね。やってやるわ」

「なんか隠れんぼみたいね!」

「ラムちゃんっ(しーっ)」

 

それなりの人数で見つからないように…って言うのは中々大変かな、と思っていたけれど、割とすんなり奥まで進むことができた。

というのも、働く人はいても見回りはそんなにいなかったからだ。

 

「だ、大丈夫かな。何かの罠だったり…」

「んー…単に場所が場所だから見つかんないと思って作業の方に人を割いてるとかー?」

「…どちらにせよ、さっさと終わらせちゃおう」

 

雰囲気的にはネプテューヌさんの線が濃厚っぽいけれど。…最近マジェコンをばら撒いてる構成員を捕まえたりしたから、生産重視してるとか?

…っとと。

 

「あれがここの頭…かな」

 

作業員に指示を飛ばしているらしき人物を見つけ、皆に知らせつつ様子を伺う。

なんかどこかで見たような顔だけど…

 

「…あれ? あの人って」

 

ネプギアちゃん達も同じことを思ったのか、そんな反応を見せた。

ネプテューヌさんだけはよく分かってない様子だったけど。

 

「オラオラァ! オメェら、バリバリ働け!」

「…あの人、どっかで見たことあるような…」

「…誰?(しらない)」

「アタシは覚えてるわ。確か下っ端よね、アイツ」

 

ラムちゃんとロムちゃんはすっかり忘れてる様子だけど、ユニちゃんとネプギアちゃんは覚えてるみたいで、どことなく「まだあいつか」みたいな雰囲気。

…まぁ、わたしもうろ覚えだから、ラムちゃん達の事言えないんだけど。

 

「あ、見つかった? そうと決まればー!」

「ちょっ、お姉ちゃん!?」

 

標的を見つけたは良いもののここからどうするか、と考えていたら、ネプテューヌさんが何を思ったか下っ端の方へと飛び出して行った。

 

…あの人さっき自分で見つからないようにって言ったの忘れたのかな…

 

「そこの見るからに下っ端って感じの人! 悪行はそこまでだよっ!」

「だからアタシは下っ端じゃネェって…げぇっ、女神!?」

「…えっと、消滅させるんじゃなくて捕まえてくださいね? ネプテューヌさん」

「しかも女神候補生までいやがる!? 警備はなにしてやがったんだ!」

 

わたし達の登場に驚きながら愚痴る下っ端。

あれを警備と呼んでいるなら、即クビにすべきだと思うけど。

 

「チィ! おいお前ら! さっさとずらかるぞ! ってなンだぁ!?」

「それ、それ! っと…ふふん、こんなとこね!」

「ディールちゃん、これでいい…?」

「うん。二人ともバッチリ」

 

戦う前に逃げようとするだろうなとは思っていた。

だからこそ事前対策として、移動中にラムちゃんとロムちゃんに氷魔法で逃げ場を凍らせて封じて、と頼んでおいたのだ。

ふふ、我ながら流石だね。

 

「ついでに教えてあげるけど、ここ以外の連中もすぐ捕まるわよ。ラステイションの軍がすぐこそに来てるから」

「ユニちゃんが入る前に呼んでた人だよね、流石はユニちゃんだよ」

「ふ、ふん! これくらい当然の事よ!」

 

ネプギアちゃんに褒められてぷいっとしながらもどこか嬉しそうなユニちゃん。

ただわたしは知っている。ここに来る前に一度寄ったラステイションで、ノワールさんに指示されてやった事だということは。……わざわざ言わないけど。

 

「…観念してください、下っ端さん!」

「くっ…まだだ、まだ終わっちゃいネェ!」

 

と、下っ端が懐をごそごそと漁り出した。

下っ端と言えど追い詰められたら何してくるかわからないし、気をつけないと。

 

「これは…ええい、こうなったらどうにでもなりやがれ!」

 

少しして何か見つけたのか、ばしん、と何かを地面に投げつける下っ端。

あれは…カード?

 

「あれ…トランプ?」

「何よ、とうとう自棄でも起こしたワケ──」

 

ネプギアちゃんとユニちゃんが警戒気味に、けれど投げられたものを見て拍子抜けしたように言いかけた時、

地面に投げつけられたカードが何か禍々しい光を放ち出した。

 

「ちょ、何? なんかヤバそうなんだけど!」

「ロムちゃん、ラムちゃん…気をつけて、何か来る…」

「う、うん…」

 

それぞれが自身の武器を構えて臨戦体勢を取ると、カードの光が一層強くなり、そして──

 

「ウオオオオオオッ!」

『なっ!?』

 

カードのあった場所に何かが現れる。

それは真っ黒な風貌で斧のような、槍のような…所謂斧槍(ふそう)を手に持った巨体。

 

──ジャッジ・ザ・ハードと呼ばれていた者、そのものだった。

 

「な、え…ジャッジ・ザ・ハード様!?」

「そんな、あの時、確かに倒したはずじゃ…!」

「ハハハハハハ! 何だか良く分からんがなんだっていい! 暴れさせろォォォ!」

 

その場にいる全員がなにが起こったのか…下っ端やジャッジ・ザ・ハード本人すら分かっていないけど、

呼び出された相手は既に暴れる気満々と言った様子で斧槍を振り回し始めている。

 

「あぁーっ! アタシの工場がっ!?」

 

それによって破壊される工場に下っ端が悲鳴を上げるけど、そんなことはどうだっていい。

ネプギアちゃん達が倒したはずのこいつが復活したというなら…また倒さないと。

 

「お姉ちゃん、皆!」

「わかってるよネプギア、倒すんでしょ?」

「言われなくたって、ここはラステイションの領域よ。放っておく訳ないわ!」

 

ネプギアちゃん達もやる気のようで、それぞれ武器を構え出す。

わたしも…ネプギアちゃんに貰った特製の杖を構えて、グリモワールをふわりと浮かばせる。

 

「…サポート、よろしくね」

『はいはい、わかってるわ』

 

浮かんだグリモワールにそう語りかければ、エストの声が返ってくる。

初戦が四天王の一角って言うのは少し不安だけど…きっと大丈夫。

 

「さぁ女神! オレと戦えェ!」

 

先に動いたのはジャッジ・ザ・ハード。

叫びながら手にした斧槍を勢いよく振り下ろしてきて、わたし達は散らばるように飛び退いて避ける。

 

「まずはアタシがやるわ!」

 

得物が銃と言うのもあってか、ファーストアタックはユニちゃん。

ライフルを連射して弾丸を浴びせるように放つ…けど。

 

「そんな豆鉄砲、効かぬわぁ!」

 

相手は対したダメージでもないという風に斧槍で薙ぎ、弾丸をまとめて散らす。

 

「だったらこれで、どうっ!」

「ぬぐっ…」

 

それを見たユニちゃんは普通の弾丸では効かないと判断したようで、ズドン、とさっきとは違って反動の強そうな一撃を撃ち放つ。

すると少し効いたのか、ジャッジ・ザ・ハードが小さく怯んだ。

 

「ふふん。どうよ、アタシ特製の徹甲弾は!」

「小賢しい真似を…ぐぅああっ!」

「あなたの敵は…こちらにもいます!」

「一人の敵に気を取られすぎだねっ!」

 

ドヤ顔のユニちゃんに、多少とはいえダメージを与えられられた相手は反撃しようとして…ネプギアちゃんとネプテューヌさんの二人の一撃にさらに怯む。

…そんな中、わたしはまだ準備状態のままでいた。

 

「…エスト、まだ…!?」

『もう少し待って! これ同調させるのに結構時間かかるんだから!』

 

というのも、これから試す事の為にエストからの支援が不可欠な状態なせいで、未だに攻め込めずにいるの。

事前に準備しておけって思うかもだけど、これは長続きしない…つまり、バトル中に発動してそのバトル中のみの効果って感じなわけで。

…早くして、エスト…!

 

「こっちからも行っくよー!」

「うん…!」

 

ネプギアちゃん達が攻撃するのを見て、ラムちゃんとロムちゃんも魔法陣を展開し、負けじと魔法を放つ準備を始める。

 

「こっちだって一人じゃネェよ! 行きやがれ!」

 

…が、こちらがジャッジ・ザ・ハードに気を取られてる間に用意したのか、下っ端が機械モンスター数匹をラムちゃん達に向けて放った。

 

「わ、わっ!?」

「ラムちゃん!!」

「ぐおおおおおッ!」

「うわっ! こいつ、邪魔!」

 

ラムちゃん達はまだ動けず、ネプギアちゃん達もジャッジ・ザ・ハードに妨害されて助けに来れない。

どうにか…どうにかしないと…早く、早く、早く…!!

 

『…よし、行けるわよ!』

「っ!!」

 

その時、エストの準備が終わったらしく、わたしの身体を巡る魔力に力が流し込まれていく。

と同時に、わたしは地面を蹴るようにして駆ける。

 

魔法の準備中の二人に向かってくるモンスターから二人を守るように間に飛び込んで、左手に持っていた杖の先を右手で掴む。

 

「…煌めきの……十字架…!!」

 

エストによって流し込まれた力がわたしの身体を動かすのを後押しするようにして、わたしは杖を()()()()

交差するように放たれた斬撃が、モンスターを切り裂いた。

 

「…え?」

「ディールちゃんっ!?」

 

モンスターの消滅を見届けながらカチン、と刃を納めると、背後から驚いたような声。

まぁ、実戦で使うのは初めてだし…そもそも作ってもらったばっかりだし、ね。

 

そう、この杖はネプギアちゃんに作って貰ったもの。ただの杖じゃない。

パッと見はただの魔法杖だけど、杖の先端も握れるようになっていて…簡単に言うと仕込み杖というもの。

 

今までは使わないでいたけど…エストからのアシストの準備が整って、初めて使ったというわけ。

…まぁ、エストの魔法で動きや技をアシストしてもらっているから、全部が全部わたしの力じゃないんだけど。

 

……魔法って、便利な言葉だよね。

 

「かっこいい…(きらきら)」

「褒めてくれるのは嬉しいけど、後で! 二人は魔法に集中して…!」

「わ、わかったわ! ロムちゃん、やろう!」

「…!(こくこく)」

 

キラキラとした視線を送ってくる二人に注意しながら、警戒する。

刀…と言っても、まだ使い慣れてない武器だから、わたしは守備担当。それはネプギアちゃんには伝えてある。

 

「ええい…!」

「いっけー!」

 

と、ラムちゃん達が大きな氷塊をジャッジ・ザ・ハードに向けて放った。

ネプギアちゃん達に気を取られていた所だったのか、氷塊は見事に命中。敵をよろめかせた。

 

「お姉ちゃん!」

「任せて! クリティカルエーッジ!」

 

その隙を逃さず、ネプギアちゃん達姉妹が斬撃を叩き込んでいく。

なんてことはない、女神候補生四人で倒せたなら、+1女神と元女神なら対した事は無い。

 

「ぐぅっ! 図に、乗るなァァァァ!」

 

とは言え相手もやられっぱなしじゃない。

激昂したように叫ぶと、斧槍を振り上げる。

 

大技っぽい…? ネプギアちゃんとネプテューヌさんは…この距離じゃ間に合わない…後回し!

 

「ユニちゃん、こっちきて!」

「えっ? 何「早く!!」わ、わかったわよっ!」

 

すぐ後ろにいるロムちゃん、ラムちゃんは良いとして、ネプギアちゃん達よりはまだ距離の近かったユニちゃんを呼び寄せながら、杖を構え魔法を準備。

 

「…護るっ!」

 

杖に魔力を流しこみ、杖先を地面に突き立てる。

するとわたし達の前に鋼が地面から現れて、壁のような形を取った。

 

「消し飛べェェェッ!!」

 

丁度のタイミングというか、まにあったというか。

そんな叫び声が聞こえたかと思えば、ものすごい衝撃が鋼の壁を揺らす。

魔力を流し込み続けているから、壁への衝撃でびりびりと痺れる。

けど…このくらい、防げない訳はない…!

 

「っ……、……解除(キャンセル)

「「ネプギア(ちゃん)!!」」

 

衝撃が止むと同時に鋼の壁を消滅させると、ユニちゃんとロムちゃんがネプギアちゃんの名前を叫ぶ。

 

「っ…し、凌ぎきれた…?」

「ネプギア、無事?」

「う、うん! お姉ちゃんも…」

 

どうやらネプギアちゃん達は女神化しつつの防御で凌いだみたい。

…よかった。

 

「ネプギアちゃん、ネプテューヌさん、回復するので一旦下がってください!」

「う、うん!」

「ロムちゃん、回復準備! ラムちゃんはあいつの足止め、お願い…!」

「わかった…!(まかせて)」

「任せなさい!」

 

とは言えダメージはあるだろうから二人に下がるように言いつつ、ロムちゃんと一緒に回復準備。

ラムちゃんには氷魔法でジャッジ・ザ・ハードを足止めするように頼んだ。

 

「こっち来るんじゃないわ、よっ!」

「チィ、鬱陶しい!」

「クソっ…お前ら、行ってきやがれ!」

 

ジャッジ・ザ・ハードはラムちゃんが止めてくれるけど、敵は一人じゃない。

下っ端が機械モンスターを数体、こちらに向けて放ってきた。

 

「ユニちゃんっ!」

「言われなくても、狙い撃つわ!」

 

下がってきたネプギアちゃん達をロムちゃんと二人で治療しながらユニちゃんを呼ぶと、わかってると言うようにライフルでモンスターを撃ち落としていく。

ユニちゃんの援護射撃のお陰で治療に集中できて、二人の回復はすぐにおわった。

 

「ありがとう、ディールちゃん」

「いえ…守りに行けずにすみません」

「いいのよ。私とネプギアはあなた達後衛よりも丈夫なんだから、良い判断だったわ」

「そう、でしょうか」

 

それでもやっぱり、誰も傷つけない方がいいと思うわたしは、甘いのかな。

…そもそもの話、敵対している相手を傷付けている時点で、そんなこと言えないか…

 

「…ディールちゃん?」

「あ…はい?」

「もう十分よ、ありがとう」

「あっ、は、はいっ」

 

ぼんやりしてたらしく、過剰回復(オーバーヒール)しちゃっていたみたい。

敵前なのに、ダメだな、わたし。

 

「ところで、一つ頼みたいことがあるんだけれど」

「…?」

 

若干落ち込んでいると、ネプテューヌさんがそんな事を言ってくる。

頼みたいこと…?

 

………

 

「…うん、もうバッチリ。ありがとう、ロムちゃん!」

「う、うん。どういたしまして…えへへ(てれてれ)」

「うん! あと、ユニちゃんとラムちゃんも守ってくれてありがとう!」

「べ、別にネプギアの為じゃないけどね!」

「そーよ。わたしはディールちゃんに言われてやってただけだもんね」

 

と、ネプテューヌさんから話を聞いてる間に、ネプギアちゃんの治療も終わった様子。

…なんかいつの間にか司令塔みたいになってるけど…ここまで来たらやるしかない…かな。

 

「オラァ! 全戦力投入だ!」

 

チマチマとした数じゃ無理だと思ったらしく、今度は一気に大量のモンスターを喚び出す下っ端。

流石にこれはユニちゃん一人だと捌き切れないかも…? 一人なら、だけど。

 

「数増えたけど、ユニちゃんはそのままモンスターを倒し続けてっ。ネプギアちゃんとロムちゃんもいっしょにお願い!」

「わかったよ! ユニちゃん、一緒にやろう!」

「ふ、ふん。あれくらいアタシ一人でも十分だけど…やってやるわ!」

「て、てつだう。がんばって…!」

 

意気込む二人と、杖を振るって二人に強化魔法をかけるロムちゃん。

取り巻きはこれできっと大丈夫。あとは…

 

「ラムちゃん、もう一度氷で足止め!」

「もう一回ね、わかった!」

「今度はわたしも…! やあっ!!」

 

続けてラムちゃんと一緒に氷魔法で、ジャッジ・ザ・ハードの足元を凍らせて動きを封じる。

 

「こんな氷なぞォ!」

「うわわ…! に、逃げられちゃう!」

「ぐっ…ラムちゃん、堪えて…! ……ネプテューヌさん!!」

 

もがいて氷の拘束から脱出しようとするジャッジ・ザ・ハードをどうにか二人で抑え込みながら、わたしはネプテューヌさんの名前を呼ぶ。

 

「…はぁっ!」

 

それに答えるようにして、ネプテューヌさんは刀を構えて飛翔する。

 

「せやぁぁッ!」

「ぐっ、うぉぉ…ッ!」

 

動けないジャッジ・ザ・ハードへと向かっていったネプテューヌさんはそのまま連続攻撃を放ち、氷の拘束を砕きながら打ち上げ…

 

「ひゃっ!」

「いたっ…!」

 

拘束の氷が砕かれた反動で抑え込んでいたわたしとラムちゃんが尻餅をついたけど、まぁそれは置いといて、

 

「これで、決める! ネプテューンブレイクッ!!」

 

打ち上げられたジャッジ・ザ・ハードに向けて、ネプテューヌさんの必殺の一撃が叩き込まれた。

 

「ぐぉおあぁぁああッ! 二度までも、女神なんぞにィィィ!!」

「…貴方は、ゲイムギョウ界に必要ないわ」

 

そしてびしっと決めるネプテューヌさん。

強烈な一撃を叩き込まれたジャッジ・ザ・ハードは断末魔と共に消滅した。

 

「やった…! お姉ちゃん!」

「さて、アンタも降参したら?」

「ぐっ…」

 

ふぅ、と息を吐いていると、ネプギアちゃんがネプテューヌさんの活躍に喜んでいた。

どうやらあっちも決着がつきそうな感じ。

 

「まだだ…ここはアタシがマジック・ザ・ハード様から直々に任された工場。はいそうですかっておめおめ引き下がれれるかよ!」

「それにしては、もうそちらの手数は少ないように見えるけど?」

「…くっ」

 

珍しくすぐ逃げ出そうとせずに抵抗を続ける下っ端だけど、それも時間の問題。

このまま行けば、下っ端も捕まえられるかも…

 

…そう思っていた時だった。

 

「……下がれ、リンダ。お前の決意はしかと見届けた」

「っ!」

 

何者かの声が響き、全員が身構える。

そして声の主が姿を見せると、あっ、とネプギアちゃんが声を上げた。

 

「あ、あなたは…」

「……ブレイブ・ザ・ハード」

 

現れたのは、ユニちゃんの言葉通りだとするならば、さっき撃破したジャッジ・ザ・ハードと同じ、わたし達の敵。

 

マジェコンヌ四天王の内の一人だった。

 

 




〜パロディ解説〜
・悪行はそこまでだよっ!
スマホゲーム「シャドウバース」から、ビショップクラスのフォロワーカード「鉄槌の教祖」をプレイ(場に出すこと)した時の台詞。悪行はそこまでじゃあ!
ただプレイしただけではただのおじさんですが、進化させると体力3以下の相手フォロワーを1体消滅(破壊ではないため墓場にも行かない除去法)させるため、猛威を奮っていたカードのひとつでした。貴様の弱点! ビシッと見えたぞ!

・煌めきの十字架
わかる人にはわかったかもしれない「四女神オンライン」より、ロムのスキル「朝貌」を使用した際の口上。抜刀と同時に瞬間的に十字に斬り付けながら間合いを詰める。
最初の頃からディールの戦闘スタイルは飛剣と刀にする予定だったので、四女神オンラインのロムから逆輸入という形に。…よくよく考えるとデビルメイクライのバージル感あるような…

・狙い撃つわ!
「機動戦士ガンダム00」より、「ロックオン・ストラトス」の決め台詞。ネプテューヌ原作でも使用されていたもの。
なお作者の使用していたユニは大体いつもデスペラードやワンポイントを使っていたので、個人的には「狙い撃つ」より「乱れ撃つ」イメージの方が強かったりします…

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