幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee-   作:橘 雪華

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Act.2 撤退とつかの間の休息

魔剣ゲハバーン。

 

それは、女神を糧に力を増す魔剣。

わたしが、現在(いま)のようになってしまった、元凶。

 

「魔剣って、ディールちゃんが話してた…?」

「な、なんでそんなもの、あいつが持ってるのよ!」

 

知らない、知らない! わたしが知りたい! どうして!?

 

「くす、くすくすくす……あぁ、素敵ね? とっても素敵よ、その表情(かお)

「っ…!!」

 

くすくすと煽るように笑うクロム(仮称)。

悔しい気持ちもあったけど、それよりもあの剣に対する恐怖心が上回っていた。

 

身体の震えが止まらない。

だめ…やだ、こわい…っ

 

「っ…凄い震え…」

「ネプギア、あれが本当に話で聞いたやつなら、これってヤバいんじゃ…?」

「う、うん…ディールちゃんもパニックに起こしてるし、ここは一旦、引いた方が良いかも…」

 

杖を落とし、膝をついて震えていると、不意に感じる浮遊感。

少し我に返って後ろを見ると、いつの間にか女神化したラムちゃんがわたしを抱き上げるように飛んでいた。

気付けば、ラムちゃん以外も全員女神化している。

 

「ふふふっ、鬼ごっこ? いいわ、やりましょう! ふふふふっ!」

「っ! 来るわよ、ネプギア!」

「皆! 飛んで! …M.P.B.Lで、足止めを…!」

 

クロムが不気味に笑いながら向かってくると、ネプギアの合図で全員が逃げるように飛翔する。

中でもネプギアは手に持った武器を使って、逃げながらクロムの方に射撃する。

 

「ディールっ! 何時までボサっとしてるの! 早く連絡!」

「っ…! わ、わかっ、わかり、ました…っ!」

 

怒鳴るようなユニちゃんの声にびくりと身体を震わせながら、急いで手に持っているグリモワールへと呼びかける。

 

「エスト、エスト! 緊急離脱、お願い…!」

『見てたからわかってる! イストワール早くっ!』

『今やっています!』

 

すると全員に聞こえるようにか、エストとイストワールさんの声が響く。

後はどうにか凌ぐだけ…

 

「くっ…素早い…!」

「あはははっ! 楽しいわ、楽しいわ! ほら、追いついてしまうのだわっ!」

 

ネプギアのビーム射撃をすらりすらりと避け、クロムはまずユニちゃんに向かって斬りかかった。

 

「ってなんでアタシ?! ぅ危なっ!」

「なんとなく初めって気がしたの」

「何その意味不明な理由! ふざけ、ないでッ!」

 

なんとかそれを避けつつ、至近距離で…ライフル? を撃って迎え撃つユニちゃん。

そしてすぐさま全員で距離を離すように飛ぶ。

 

……わたしは、何の役にも、立てていない。

 

………っていうか生身で高速飛行、結構辛…ぅえっ…

 

「もー! ついこの間もこんなことあったと思うんだけどー!」

「ふぇぇぇ…! 助けてお姉ちゃぁん…っ!」

 

逃げながら文句を零すラムちゃんと涙目なロムちゃん。

…そんな中、わたしを抱えたままのラムちゃんを狙うようにして、奴は跳躍した。

 

「ラムちゃん、上ッ!!」

「──え」

 

咄嗟に叫んで注意するけど、少し遅かったようで、

上から襲撃してきたクロムの魔剣が、ラムちゃん目掛けて──

 

『っ、間に合え…転送!!』

 

振り下ろされる…! そう思った瞬間、視界が光に包まれて、

 

気が付けば、五人全員が出発前にいた教会の部屋へと戻ってきていた。

 

「「「「「はぁぁぁ~…っ」」」」」

 

そして全員揃って安堵の溜め息を吐いた。

危な、かった……

 

「天丼って読者に飽きられると思うけど」

「そんなの言ってる場合じゃなかったんだから仕方ない、でしょ……っ」

 

安心し、ラムちゃんに下ろされた所で、再びあの魔剣を目にした恐怖が戻ってきて、

自分の身体を抱くようにして、ガタガタと震える。

 

「揺れの原因が分からなかったのはともかく、まさか件の魔剣がこの次元にも存在し、しかも敵の手に渡っているとは…」

「どうしましょう、いーすんさん…」

 

イストワールさん達の会話も話半分に、震えながら自分に言い聞かせる。

落ち着いて、落ち着いて…もう安全だから…でもなんで…

 

「ディールちゃん…大丈、夫?」

「っ…あ、あ、うん…大分、落ち着いては来た、かも」

「無理は、ダメだよ?」

「うん…」

「…わかってるなら、いいの(ぎゅー)」

 

わたしの事を落ち着かせる為なのか、心配そうにそう言ってぎゅっと抱きしめてくるロムちゃん。

急なことに、え? と小さく声を漏らしてきょとんとロムちゃんを見つめてしまう。

するとロムちゃんは、どこか無理をしてるように見てる笑顔で、言った。

 

「ディールちゃん、前にね。お船で戦う時、わたしに勇気を分けてくれたから…今度は、わたしが…(ふんす)」

「ロムちゃん…」

 

えへへ、とそう言って微笑むロムちゃんは、微かに震えていて…

 

「……ありがとう」

 

そして、ごめんね。

後半は聞こえないくらい小さく呟くように言って、

ロムちゃんに無理をさせてしまった自分を情けなく思った。

 

………そういえば、ラムちゃんは…?

ふと気になって、その姿を探してみると…エストの近くに姿を見つけた。

 

「エストっ! どうにかならないの? 無敵の魔法とかで何とかしなさいよっ!」

「…………」

 

なんかエストを頼ってる? みたいだけど…

エスト、なんか考え事に集中してるみたいで聞いてなさそう…?

 

「……何か気になることでも?」

「ん、まぁ……あれが負の…ネガティブエネルギーの塊だってのはわかってるけど、どうやって剣を入手したのか、って。それっぽく見せているだけか、或いはこの次元の…」

 

イストワールさんに声を掛けられると考えていたことを話し始めるエスト。

でも途中で何か気になったのか、また黙り込んでしまう。

 

「なんでわたしだけ無視するのよー!」

「お、落ち着いてラムちゃん…」

 

イストワールさんの言葉には反応して自分は無視されたのが気に障ったラムちゃんがうがーと怒っている。

ま、まぁ…色々考えてるんだろうし…うん…多分?

 

「ええと、それで、今後に関してはどう、するんですか? 流石に相手側も何もしてこないなんてことはないでしょうし…」

「そーねぇ、どうせならあの揺れで犯罪神の一部が復活してて、その辺のネズミに乗り移ってゲイムギョウ界に逃げ込んできたー、とかだったら明確に次の目的が決まってただろうけど」

「…なにその妙に具体的な例は」

 

…まぁそれはともかく、なにかしらしてくる可能性はあっても現状は何もしてないから動けないのは事実で…

……とかなんとか考えている時だった。

バァンッ、と部屋のドアを勢いよく開けながら、誰かが颯爽と飛び込んできた。

 

「ネプ子さんふっかーつ!」

 

小柄な紫髪の、どこかネプギアに似たような似てないような感じのあれは…ええ、と、ネプテューヌさんか。

 

「お、お姉ちゃん!? 休んでないとダメなんじゃ…」

「おーネプギアー。私はもう大丈夫だよ! ちょっと寝たらばっちり回復したし!」

 

心配そうにするネプギアにハイテンションの塊みたいなノリで返すネプテューヌさん。

ブランさんとか戻る時すっごく怠そうだったのに…すごい回復力。

 

「…あんたのとこの女神はすごい回復速度ね」

「ネプテューヌさんはそういう方ですから…」

 

どことなくジト目なエストと、苦笑いのイストワールさん。

わたしの知ってるネプテューヌさんもあんなだったし…まぁ、そうそう変わりはしないよね。

 

「ま、とりあえず戦力的に考えて、さっさと残り三国の女神が持ちなおせるようにシェアをどうにかした方がいいんじゃない?」

「…そう、ですね。既に他の教祖とは協議の末、新法の公布を行う事を取り決め、それぞれ自国に戻っていただいていますし」

 

新法…うう、細かい所までは流石に覚えてない…というかまだ理解できてなかった気がするし…

…と、とにかくなにか新しい法律なんだろう。

と思っていると、同じことが気になったらしいネプテューヌさんがイストワールに質問を投げかけた。

 

「しんぽう…? いーすん、それって?」

「犯罪神の信仰を規制する法律です。具体的には、マジェコンの販売及び所持の禁止。加えて違法ダウンロードの取り締まりです。アップロード者には厳罰を以て対処します」

「ちょ、待って、いっぺんに言われても…えーっと、つまり、その法律が出来たら、どうなるの?」

 

詰め詰めの内容に困惑するネプテューヌさん。

わたしは…なんとなく理解できた、かな。

 

「…ええ、と…要するに、マジェコンヌのシェアが上がる要因を一気に潰すようなもの、なので…マジェコンヌシェアを減らす事ができるんじゃないか、と。…反発もあるでしょうけれど、妥当だとは思います」

「お、おー…ディールちゃんって頭良い感じの子だったり?」

「そ、そうでしょうか…」

 

頭が良いって、褒めてるんだろうけど、

そう見える分、可愛げが減ったりしてるんだろうなぁ…

 

「…あ、あれ、なんか落ち込んじゃった…」

「ちょっとあんたー! ディールちゃんの事いじめるんじゃないわよー!」

「ねぷっ!? い、いじめたつもりはないよー!」

 

あ、ラムちゃんがネプテューヌさんに食って掛かり始めた。

このままだと話が止まっちゃうから、ひとまず落ち着かせよう。

 

「ら、ラムちゃん? わたしはいじめられてないから、落ちついて?」

「むーっ…」

 

そう言うとラムちゃんはまだちょっと不満そうにしてたけど、とりあえず大人しくなってくれた。

 

「…たいへん、だね?」

「そう思うなら止めるの手伝ってよロムちゃん…」

 

なんかロムちゃんってほわーっとした小動物な感じだけど割と計算して動いてるような…? …ま、まさかね。

…自分がどうだったかは…そもそもそんな明確に昔の事覚えてるわけじゃないから…

 

はい、閑話休題。仕切り直し。

 

「えっと…何の話してたんだっけ?」

「お、お姉ちゃん…新法の事についてだよ?」

「あー、そうだった! ディールちゃんの説明で何となくわかったけど、ならどうして最初からその法律をこーふしなかったの?」

 

ネプギアにフォローしてもらいつつ、ネプテューヌさんが疑問に思ったらしい事を言う。

確かにそういわれるとそうだけど…

 

「…あ、もしかしてお姉ちゃん達がいなかったから、とかですか?」

「その通りですよユニさん。女神が不在の状態で犯罪神の撲滅を謳っても、人々は耳を貸さなかったでしょうから。ですが皆さんが復活した今なら、確実に効果があるはずです」

 

守護女神だし、やっぱり国を立て直す要ってことだよね。

やっと反撃に移れるってことかな…

でも、わたしのせいでこじれちゃって…

 

…今はやめよう、この件は絶対にわたしがどうにかしないといけないんだから。

 

「じゃ、わたし達はとりあえずお姉ちゃんがかんぜんふっかつできるように頑張ればいいのね!」

「がんばるっ(きりっ)」

「それも重要ですが、動き回ることのできる皆さんには他に頼みたいことがあります」

 

ロムちゃんとラムちゃんが気合を入れていると、イストワールさんの口からそんな言葉が。

頼みたい事って何だろう。

 

「頼みたいこと、ですか?」

「はい。と言うのも…」

「法律で禁止しても、元を絶たなければ確実な効果は出ない……つまり、マジェコンを生産している工場とかの制圧よ」

 

そこへやってきたのはアイエフさんとコンパさん。

…そういえば諜報がどうとか言ってたっけ。

 

「現在、プラネテューヌや各国の総力を以て犯罪組織の息のかかった工場等を特定しています。場所がわかり次第、皆さんにはその場所を押さえに向かってもらいます」

「それがわかるまでアタシ達は待機ってことですか」

「休む事も大事、ですよ? 無理は絶対ダメですっ」

 

暫くは待機という事に少し不満そうなユニちゃんに、めっ、とコンパさん。

今動ける唯一の戦力だからこそ、コンディション管理も…って事だよね。

 

そんなこんなでお休みを貰ったわたし達。

…それはいいんだけど…

 

「………」

「え、えっと…」

 

何故かわたしは、ネプギアと二人きりの状況にいた。

ユニちゃんはなんかどっかに行っちゃって、ロムちゃんとラムちゃんの二人はネプテューヌさんと一緒になっておやつを食べに行って。

わたしは特にお腹も空いてなかったし、教会からでないなら安全かなと思ってついていかなかったんだけど…少し後悔。

 

「あ、あのー…?」

 

別にこの次元のネプギアは何も悪くないんだけど、どうにもこの人は苦手。

多分、大体元の次元の経験のせいだろうけど。

それに…初対面で斬りかかった上返り討ちにされたりしたし…

 

「ディールちゃんっ!」

「は、はいっ!」

 

なんて一人で色々考えていると、自分を呼ぶ声にびくりと驚いて返事をする。

ネプギアが何かわたしに声をかけてたみたいだ。ぜんっぜん聞こえてなかった…

 

「…ディールちゃんって、私の事嫌いだったりする?」

「は? 別にネプギアさんの事が嫌いとかそういう事はありませんけど…」

 

苦手ではあるけど、とは敢えて言わずにおく。

 

「だって、ほら、なんか私だけさん付けで敬語だし…」

「それは…なんででしょうね?」

「他人事!? やっぱり嫌いなんだ…」

 

ツッコミを入れながら、うぅー、と指と指をつんつんしながらいじけだすネプギア。

……めんどくさい…

 

「…え、と……ネプギア、ちゃん? …これで、いい?」

「…(ぱぁぁっ)」

 

実際のところわたしが苦手意識を抱いてるだけで、このネプギアに非は無い訳だから、お望み通りに敬称と敬語を外してみる。

そうしたらさっきまでのくらーい表情から一転して、明るい表情になった。

…チョロい?

 

「ま、まぁ…この方がいいなら、がんばるけど…」

「うん! ありがとう、ディールちゃん!」

 

テンションの上がり下がりに若干引きつつも、本人が良いならいっか…と流す。

…もしかしたら自分から壁を作って苦手意識が強くなっていた、なんてことも有り得たかもだし、丁度良かったのかな。

なんて思っていると、急にネプギアが「あ、そうだ」と何かを思い出したような声を上げた。

 

「ディールちゃんって、私と戦った時とか、氷の剣というか、刀? 使ってたけど、あれはどうして?」

「どうして…って?」

「えっと、違ってたらごめんね? ディールちゃん、接近戦よりも、普通に魔法使った方が強いと思って…」

 

質問の意図がわからずに首を傾げると、ネプギア…ちゃんはそう言ってきた。

ぐぬぬ、人が気にしてることを的確に…

 

「……簡単な事だよ。二人を守るため」

「ロムちゃんとラムちゃん?」

 

二人の名前を挙げられて、こくりと頷く。

二人とも魔法使いだし、守るためにはわたしが前に出ないと…

 

「そっか。ディールちゃんは優しいね」

「…い、いきなり何?」

「あ、うん。ディールちゃん、剣というか刀を使うなら、こういうのはどうかなって……」

 

微笑まし気に見つめられてむっと感じるものがあって少し睨みつけてみるものの、ネプギアちゃんはスルーしながら何かの画面を見せてきた。

…別に悲しくなんかないけど。

 

「…これは?」

「あのね、ディールちゃんの戦い方を見てて思いついたものなんだけど……」

 

そうして画面に表示されるものの説明を始めるネプギアちゃん。

……ふぅん。

 

「…それで、これが?」

「えっと…実はもう試作品ができてて、どうかなって」

「えっ、試作品…? もうあるの?」

「半分くらい趣味みたいなものだからね、こういうの」

 

えへへ、と笑いながら言うネプギアちゃんを見て、そういえば何かを作ったり弄ったりするのが得意だったっけ、と思い出していた。

 

……そう。このネプギアは、わたしの知ってるネプギアとは違うんだから。

同一視したらダメだよね。…うんっ。

 

「…じゃあ、今度試させて」

「…! うんっ、わかった!」

 

まだ少し苦手意識は抜けないけど…これからどうにかしていこう。

ネプギアちゃんの笑顔を見ながら、わたしはそう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

「………」

「……(じー)」

「………………」

「……(じぃぃぃ)」

 

ラムちゃんと、ネプテューヌ……さんと、おやつをいっしょに食べてる途中。お手洗いに行ってきます、と言って抜け出してきて。

わたしは、物陰からとある人…ひと? をじっとかんさつしていた。

 

その相手は…エストちゃん。

前からずっと気になっていることがあって、ひとりで抜け出してようすを見に来た。

 

「……ああ、もう! なに!?」

「ひゃっ…(びくっ)」

 

そのままじぃーーっと見続けていたら、エストちゃんはわたしに気づいてたみたいで、

少し怒った様子でこっちを見返してきて、びっくりした。

 

「用があるなら言いなさいよね」

「…えっと(おどおど)」

 

むーっと、怒ってる時のラムちゃんみたいな顔でこっちを見つめてくるエストちゃん。

ちょっとこわかったけれど、気になることを聞くためにがんばって勇気を出す。

 

「…エストちゃんって、どうしてラムちゃんそっくりなの?(はてな)」

「あぁ…その事? まぁ、あんただったら気になる部分か…」

 

わたしのしつもんに、エストちゃんはなっとくしたような顔をする。

…姿も声もラムちゃんそっくりだったら、気になるもん。

 

「あー、んー…なんて言えばいいのか…」

「…?」

 

するとエストちゃんはだんだん困ったように視線をそらし初めて、わたしは思わず首を傾げる。

少しすると、エストちゃんは言いにくそうにしながら話し始めた。

 

「…ディーの記憶の大部分にこの姿があって印象深くなってたせいか、人の姿を取ろうってなった時に、無意識的に?」

「ディールちゃんのきおく…」

 

そういえば、覗いたって言ってた。

ディールちゃんのきおく……わたしじゃない、わたしのきおく。

 

……ラムちゃんが、いなくなる、きおく。

 

「アイツの記憶の中のあの子(ラム)も、アンタの妹と一緒で、姉想いな子だったわ」

「……そっか」

 

さすがは、ラムちゃん。

でも、ディールちゃんのラムちゃんは…

 

「…ディーがあなた達を守りたいってのも、自分達のような目に遭うことがないように、自分にはなかった未来を守りたいって事なのかもね」

「………」

 

みらいを、守る。

…でも…

 

「…ディールちゃんの守りたいみらいに、ディールちゃんはいるのかな」

「………どうかしら、ね」

 

呟くように言った言葉に、エストちゃんはどこか遠い目をしてそう答えた。

…………

 

「…本当は、あなたと同じ性格のはずなのに、ね」

「…やっぱり、無理、してるんだ」

「そりゃそうよ。無理にでも仮面を着けていないと、きっととっくに壊れていたわ」

 

ディールちゃん…

 

初めて会った時から、見た目はわたしとラムちゃん位なのに、どこか大人っぽく振舞ってるみたいで、

何だか無理してるように見えて…でも、そういう風に見える子なのかなって思ってたけど…

最近になって…記憶が戻ってからかな。前よりも無理してる感じが、強くなった。

 

……なんとか、できないかな。…ううん、してあげたい。

 

「…柄にもなく喋りすぎたか。ほら、あんたも私と話してる暇があったら、妹の相手でもしてあげなさいな」

「あっ…」

 

そう言って、エストちゃんはお話を切り上げてどこかに行ってしまった。

ひとり残されて、考える。

 

……ううん、こういうことは…ラムちゃんといっしょに考えよう。

 

「…よし(ぐっ)」

 

そう決めて、わたしはラムちゃん達のところへと戻った。

エストちゃんとのお話で時間をかけちゃって、戻るの遅いってちょっぴり怒られちゃったけど。

でも、エストちゃんとお話ししたのは、きっと間違ってないと思う。

 

……エストちゃんに話を聞いて、ラムちゃんといっしょにどうにかしないと…このままだとディールちゃんがどこか遠い所に行ってしまいそうで、怖くって…

 

だから、きっと。間違ってはいない。

 




~パロディ解説~
・無敵の魔法でなんとかしなさいよっ!
「ジョジョの奇妙な冒険 Part4 ダイヤモンドは砕けない」から主人公「東方仗助」の台詞より「無敵の『スタープラチナ』でなんとかしてくださいよォ──────ッ!!」
なおエストは別に本体の本を馬鹿にしてもプッツンしたりはしません。でも、本を雑に扱う人にはするかもしれませんね。

・どうせならあの揺れで犯罪神の一部が~
超次元ゲイムネプテューヌmk2及びRe2本来のシナリオのこと。
ワレチューに犯罪神が乗り移る必要がなくなった、ということは……

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