幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee- 作:橘 雪華
内容は少し前にコラボしてくださったシモツキ様の『超次元ゲイムネプテューヌ Origins Interlude』より、「創滅の迷宮・蒼の魔導書編」のディール版エピローグです。
なので、先にあちらのコラボ話を読んでおくといいかもです。
自分の手以外で動き回るディールちゃんというのも中々新鮮で良かったですよ。(見てただけ)
他の人の意見はともかくわたしは割と好きですよ、コラボレーション!(見てただけ)
ま、まぁそんな感じで、丸投げもあれかなと思ってこっち側のエピローグだけでもーというお話でーす。
あ、嫌な人はスルーしちゃっても重大な支障にはならないと思うのでどうぞー。
深い、深い、深い…
意識の底からゆっくり、ゆっくりと、浮上していく。覚醒していく。
「……………ん…」
……それっぽく格好つけたけど、要は意識が眠りから覚醒していってる、そういうこと。
ぼんやりとした意識のまま、うっすら目を開く。
視界に入ったのは、机の上に置かれた読みかけの本と、魔導書グリモワール。
辺りには本棚と、たくさんの本。
ここは……そう、確かプラネテューヌの教会にある図書室。
確か、ただぼーっとしてるだけなのもって思って、イストワールさんに教えて貰って、本を読んでいた。
はず、だけど…
「……わたし、うたた寝してた…?」
徐々に覚醒していく意識の中、記憶を整理していく。
ええと……そうだ。ずっと捕まっていて力が摩耗してる四人の女神様がそれぞれ自分の国に療養に戻って…戦力になる女神候補生は暫くここに留まるんだったっけ。
…だったら、
「やっほ、起きたの?」
「…エスト」
まだ寝ぼけ気味の頭で色々と整理していると、そこに現れたのはラムちゃん……に似せた姿をした、エスト。
さすがに寝起きのわたしでも、それくらいは間違えない。
「う、ん……寝てた、みたい?」
「そりゃそんな寝ぼけた顔してたら言われなくても解るって。それより…」
「…?」
ぐぐっ…と両腕を伸ばして身体を解していると、エストが難しい表情をしていた。
何かあったのかな。
「どうかした?」
「いや…ディー、本当に寝てたのよね?」
「? うん、多分…」
いまいち意図の読めない質問に頷いて答えると、エストは「そう…」とだけ言ってまた難しい顔をする。
……つまり、どういうこと?
「……あ、あぁ、どういう意味かってことよね。っていっても私もよくは分かってないんだけど」
「…何かあったの?」
「あったような、ないような…とにかく、
ふわふわしたような、自分自身もよくわからないといった様子で言いながら腕を組むエスト。
ここでエストの言う
「……ん?」
と、ここでエストが何かに気付いたように、机の上に置いておいたグリモワールを手に取った。
「……力の残滓…魔法、それにシェアエネルギーを使った痕跡? …ディール、どこかに抜け出して戦いでもした?」
「…………」
と、エストがグリモワールの変化を調べている間、わたしは別のことを考えていた。
ついさっきまでのようで、どこか遠い……そんな、彼女と過ごした長いようで短かった出来事の記憶。
(あれは…夢だったの?)
エストの言葉も半分以上頭に入って来ず、そればかり考えていた。
夢…夢オチ? それにしたって…
「……ねーディールぅ? なんかわたしの本、あなたの魔力を過剰に受けて傷んだ痕跡があるんだけどー?」
「…!」
グリモワールが少し傷んでる事に気付いたらしいエストがにこにこと静かに怒ってる。
けど、それを聞いたわたしは思わず驚きを顔に出しそうになっていた。
(グリモワールが傷んでたって…まさか?)
そうだ、確かわたしは、彼女とまだ出会ったばかりの時……まだ警戒心しかなく突っぱねてしまった挙句、戦うことになってしまった時。その戦いで、不利になった時に、確かにやった。
グリモワールに対して
(…その痕があるなら、もしかして…!)
「ちょっとディール! 聞いてるの!? …って、何してるのよ」
エストのお説教も聞き流しながら、わたしは自分の携帯を取り出す。
携帯を操作して、画像を読み込み開くと……あった。
「……ふふっ」
ああ、やっぱり。
夢じゃ、なかったんですね…イリゼさん。
「何よ、急に笑ったりして気持ち悪い……」
「き、気持ち悪いって…「それ、誰?」突然罵倒した挙句割って入らないで!?」
思わず笑ってしまったわたしも悪いけど、急に罵りながらずずいっと画面を覗き込むように割り込んでくるエスト。
無神経っていうかマイペースっていうか…魔書は人の心がわからないって事…?
いや、わたし女神だけれど。
「んんー…? 見たことないやつね。こんな知り合いいたの?」
「ん、まぁ、ちょっとね」
「……はっ。ディール、あなたまさか…」
「え?」
「まさか私の知らないところで女を作って…」
「何でそうなるの!? 違うからね! バカじゃないの! バカじゃないの!?」
写真を見て何を思ったか、一歩引きながらそんな事を言い出す。
…どうせからかってるんだろうけど。
「必死に否定する辺りが怪しいわね! やっぱり「ふんッ!」ぐぎゅぅっ」
とはいえちょっと調子に乗り始めたから、これ以上騒ぎ出す前に右手に魔力を込めてボディ目掛けて思い切り掌底を打ち込んでやる。
するとエストは潰された生き物のような声をあげてその場に崩れ落ちた。
「……い、いたいけな幼女に向かって腹パンとか…どうなのよ…」
「ふん。幼女の皮を被った魔導書のくせに」
「鬼ぃ…ぐふっ」
最後にそう言い残して、エストは動かなくなった。
人じゃないって簡単に露見しないために痛覚はあるらしいけど……まぁ、本体が
どうせ暫くしたらひょっこり復活してるでしょ。
「……それにしても…」
気を取り直して、考えてみる。
あれが夢じゃないとすると、どうやってわたしはあそこに招かれたのか。
…いや、それ自体はもうわかってる。単なる偶然と、わたしが正史の物語に加えられた存在……ぶっちゃけていえば二次創作で付け加えられたから。
そうではなくて、あそこに招かれた要因になるものだ。
イリゼさんの場合、あのグリモワールに似たようで別の、異質な感じの本が原因っぽかったけれど……本?
「……あなたが原因?」
なにげなくグリモワールを両手で持ち上げて呟く。
……意識? がそこで伸びているから、返事が帰って来ることはないんだけど。
…とにかく、ただでさえ不思議なんだから、まだ知らないような謎があっても不思議じゃない、よね。
確定ではないけど、もしかしたらまたこの不思議な本に導かれて、あんな出会いがあるかもしれない。
次元を超えた絆を紡ぐ魔導書……ごめんなさい、適当言いました…
「………」
そこでふと、イリゼさんの次元の事を考えて、視線を机に落とす。
イリゼさんのいた次元にも、わたしの知っている人達はいたという。
4人の女神様に、アイエフさん達に……女神候補生。
そもそも今わたし達が直面している事件が起こらないかもしれないし、起こるかもしれない。
そういった物と、あっちのロムちゃんの事……それと、自分への言い訳として、最後まで本当の名前は明かさなかったけれど…
「……ううん。きっと、大丈夫」
色々考えたけど、ふるふると頭を振って考えるのをやめる。
だって、もし何かあったとしても、きっとイリゼさんなら放っておかないはず。
だから、大丈夫。
………でも…
一つだけ、願うことがあるとするなら……
「……どうか、
両手を握り、この祈りが次元を超えて、届きますように──
「あっ、いた! ディールちゃん!」
「ひぇうっ!」
なんていい感じに締めようとしてたはずなのに、今は気まずい感じで会いにくい相手の声が聞こえて、変な声をあげてしまう。
声のした方を見てみれば…そこにいたのはやっぱり、ラムちゃん。
「何変な声あげてるのー……って、エスト? なんで伸びてんの?」
「は、は…? 何でだろうね…」
ラムちゃんは全然気にもしてない様子だけど、わたしはまだなんとなく気まずいまま……
「はい、ディールちゃんかくほー」
「えっ?」
どうにか逃げ出そうかな、なんて考える間もなく、がしっとラムちゃんに捕まえられて、
「これから皆で遊ぶの! ほら、れんこー!」
「わ、ちょ、ふゃああぁぁぁ…!!」
そうしてわたしはラムちゃんにほぼ無理やりに連れ出されるのでした。
…あっちでもラムちゃん達に振り回されてたりして、ね。
なんで外伝の方にあげないの? というのも、パクげふんげふんリスペクトみたいなものでして、えぇ。
彼女との経験は完全な外伝の話ではなく、あくまで本編のディールが経験した事、って感じなのです。ただ本編にコラボでの話をガンガン出したりはしないはずです。多分。
シモツキ様側がそういうスタンスだったので便乗しただけですね!はい!
馴れ合い? 上等! 楽しくやりたいので別に良いですー。
というわけで、コラボ話のエピローグだけでした。
あ、あちらの主人声ことイリゼちゃんが活躍する『超次元ゲイムネプテューヌOrigins』シリーズもよろしくね!
お世辞とかじゃなく面白いのでオススメですよ!