幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee-   作:橘 雪華

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Act.5 足取りを追って

「……ん…」

 

…なんだろう。

なんか…ちょっと身体がだるい、ような…

 

「ちょっと、なにぼーっとしてるのよ?」

「…え? あ、何でもないわよっ」

「そう?」

 

……気のせい、かな。

ぶんぶんと首を振って気を取り直しつつ、グリモの本を落とさないように持ち直す。

 

「…で、聞きそびれてたんだけど…何か一人増えてない?」

「…私の事かしら」

 

ついでに、わたしはいつの間にか一緒にいた知らない奴のことについて聞いてみる事に。

 

「そういえばいつの間にやら合流してたわね、アンタ」

「あ、二人にはまだ紹介してなかったね。この人は…」

「…私はケイブ。治安維持組織…リーンボックス特命課の一員よ」

「む、なんかカッコいい」

 

赤い髪をツインテールにしてる女の人……ケイブがわたしとユニに自己紹介をしてくる。

それにしてもとくめーかってなんかかっこいい、意味は良くわからないけど。

 

「ケイブさんは今のリーンボックスを何とかする為に動いてて、私達もそれに協力することにしたんだ」

「あぁ。なんていうか、お人好しのアンタらしいわね」

「えへへー、そうかなー」

「…え、褒めてたの?今の」

 

ユニの言葉に照れるネプギアを見ながら、そう呟く。

ユニもちょっと「何こいつ」みたいな顔してるし…

 

それで、今ネプギア達と一緒にどこに向かっているかと言うと、

リーンボックスの教会、らしい。

なんでも…

 

「アイエフさんが気になることがあるみたいで、二人に教祖さんと会って欲しいんだって」

 

とかなんとかで。

でも、なんでわざわざ教祖なんかに会わせたがるんだろ。挨拶ならユニが済ませてた気がするけど。

 

「…まぁ、杞憂なら良いんだけどね、気になったことがあったのよ」

「気になったことって、教祖に?」

「えぇ。最初会った時からなんとなく怪しいとは思ってたんだけど…」

「あいちゃんはすぐ人を疑うんですからー」

「職業柄、仕方ない物なのよ」

「ふーん…」

 

アイエフの言葉に、ユニが腕を組んで何かを考え込む。

ユニはもう会ってる訳だし、なにか思うところでもあるのかしら。

 

「でもまー、そもそもその…はんざいしんすーはいなんちゃら? とかいうののどーこーしてる時点で悪い奴なんじゃないの?」

「犯罪神崇拝の規制解除の事ー?」

「そう、それ」

 

わたしがうろ覚えに言うと、REDが補足するように言う。

 

犯罪神崇拝の規制解除。

さっき歩いてる時にネプギア達に聞かせて貰った、この国で今起きている事がそれなんだって。

なんでも、教祖が犯罪神を信仰することを許しちゃってるとかなんとか。

教祖としてどうなの、最悪じゃない?

 

「教祖がそんな事言っちゃったら、女神を信仰してくれる人がいなくなっちゃうじゃない」

「うん…私達も合間合間にシェア集めしようとしてるんだけど、全然集まらなくって…」

「確かにこの状況で、まだ女神を信じようって人間はほとんどいないでしょうね…」

 

むー、この国って今、女神がいないからなのかな。こんな事になっちゃってるのは。

 

「だから、そのチカって教祖が悪者なんでしょ? タンジュンじゃない!」

「確かにそうだったら単純な話だけれど…チカの言動がおかしくなったのはここ数日の事。悪と断定するにはまだ早いと思うわ」

「むぐ…」

 

ケイブって奴に少し怖い顔で言い返されて、ちょっと怯んじゃったけど、

そこでわたしはあることを思い出していた。

…これだ!

 

「分かったわ…つまりそのチカは、ニセモノなのよ!」

「偽者?」

 

びしっ、とキメながら、そう言い放つ。

 

「そう! いきなりそんな変な事し出したって事はつまり、悪い奴がすり替わってるのよ! それならツジツマがあうわ!」

 

そういうお話の本読んだことあるし、間違いないわ!

 

「…その可能性は低いんじゃない? 偽者だったら流石にケイブが気付くでしょ」

「…いいえ、多分気付かないわ」

「え?」

 

わたしのスイリに反論したアイエフの言葉を、ケイブ本人が否定する。

というかわたしもえ?ってなったんだけど。そこは気付くべきじゃないの…?

 

「私は人の機敏には疎いから…外見が同じであれば簡単に騙される自身があるわ」

「そこに自信を持つのもどうかと思うんですけど…」

 

この人、大丈夫なのかしら…

……ま、まぁ、ともかく!

 

「調べてみる価値はありそうだねっ!」

「ふふん、それじゃあこのめいたんてーラムちゃんに任せておきなさい! そいつの正体ばっちり暴いてあげるから!」

「…なんか台詞取られた気がするわね…」

 

偽物だってわかってるなら、見破るのなんなよゆうだもんね。

…絶対偽物とも限らない? 知ってるし!

 

「んー…じゃあとりあえずユニ、アンタ助手役ね!」

「はぁ? なんでアタシが…」

「ふふん、このラムちゃんの助手になれる事をこーえいに思うことね!」

「聞いてないし…」

 

本当ならロムちゃんとかグリモちゃんの役目だけど、今はいないし…

それに何となく、こういうの得意そうだし。

 

「…はぁ、ったく、しょうがないわね」

「……(じぃー)」

「な、何よネプギア」

「あ、ううん。なんだかユニちゃんとラムちゃん、仲いいなって思って」

「ツンデレ同士で気が合ったんじゃないかなー。何にせよかわいいよね! 流石あたしのヨメ!」

「誰がツンデレよ誰が! あと勝手にヨメにするな!」

「…つんでれってなに?」

「…アンタは別に知らなくていいことよ…」

 

…? よくわかんないけど、ユニのやつげっそりしちゃってるし。まぁいっか。

 

「じゃ、偽教祖のとこにれっつごー!」

「まだ偽者って決まったわけじゃないですけどー…」

 

なんか言われた気がするけど気にしない。

とにかく行ってみればわかることよ

 

 

 

────────

 

 

 

「こんにちはー。チカさん、いらっしゃいますか?」

「…………はい、私はここにいますよ?」

 

で、リーンボックス教会。

先頭を歩くネプギアが教会に入りながらそう言うと、奥の方からちょっと挙動不審な緑髪の女の人が出てきた。

なんかもう、雰囲気からしてアヤシイ…

 

「よかった、やっと会えたわ。頼まれてたモンスター退治して以来ずっと会えなかったから、逃げられたのかと思った」

「っ…そ、そんな。逃げるなんてやましい方のすることでしょう?」

「そういえば、ゲイムキャラの情報くれるって約束だったよね。いいやぁ、すっかり忘れてたよー」

「あーっと……そ、その件は、現在こちらも調査中でして……ん?」

 

と、ネプギアの仲間達とやり取りをしていたチカが、わたし達に気付いたようにこっちを見た。

 

「…………」

「じーっ……」

「あっ! テメ……じゃない。ラステイションの女神候補生と、あなたは…ルウィーの女神候補生、ですね。な、なんでここにいらっしゃるのかしら?」

 

…んんー?

 

「はい。昨日ぶりですね。それにしても…」

「わたし、あんたと会うの初めてだけど。ふふん、それだけわたしの事が有名ってことかしら!」

「え、ええ、それはもう…きょ、教祖として、女神候補生の顔くらいは存じておりますのよ」

「にしてはわたしの事見てから間があった気がするけどねー!」

「うぐっ。そ、それは…ほ、ほら、ルウィーの女神候補生と言えば、二人との事でしたので…ほほほ… 」

 

笑いながら、それっぽい事を言ってくる。

本人はまだ騙せてると思ってるみたいだけど…

 

「……ボロ出すの、早すぎない?」

「……だよね。きょどーふしんだし」

「……なんで私、気付けなかったのかしら…」

 

なんかアイエフが凹んでるけど、それよりも。

 

「って言うか、わたしこいつ知ってる」

「あら。アンタも? アタシも心当たりがあるのよ」

 

そう言ったユニと顔を見合わせる。

 

わたし、いいこと思いついちゃった。ふふん…

 

「…あっ、そーいえばわたし、あんたに会ったことあるわ! 思い出したー!」

「アタシも、昨日会う前にも会ったことがありましたね」

「ええっ? そ、そうだったかしら? 最近どうも物忘れが激しくて…」

 

……今一瞬言葉にしそうになったけど、それは本物にも失礼だからぐっと堪えよう。

 

「そうね。大分前の事だもんね。ラステイションでアタシにぶっ飛ばされたことなんて、都合よく忘れてるわよねー」

「わたしもわたしも。前に思いっきりぶっ飛ばしてあげたよね! それともほんとに忘れちゃったー?」

「だ、誰が忘れるかよ! テメエらみたいな、生意気なクソ小娘とクソガキなんぞにやられた屈辱……あ」

 

怒りながらそこまで言って、しまったという顔になるチカ……ううん、偽物。

やっぱりこいつ、あの時ロムちゃんをユーカイした奴だ!

 

「もしかして…下っ端さん、ですか?」

「すごい。二人とも、どうしてわかったの?」

 

びっくりした様子のコンパとネプギア。

そんなネプギアがわたし達にそう聞いてきたけど…どうしてって…

 

「どうして分かんなかったのか、逆に聞きたいわよ。どう聞いても声が下っ端じゃない、コイツ」

「ロムちゃんをユーカイした奴だもん。だから声聞いただけでわかったわ!」

「子供にまで分かるような事が分からなかった…諜報部失格だわ…」

 

そう言ってアイエフがため息を吐く。

なんか落ち込みながらさらっと子供扱いされた気がするんだけど。

まぁともかく、やっぱり偽物だったわね! さすがわたし。

 

「ク、クソッ! この完璧な変装がバレるなんて……けっ! 今まで簡単に騙されやがって、頭の中までめでてぇ連中だぜ!」

「本当に偽者とすり替わっていたのね…本物のチカはどこ? 答えなさい!」

「答えてやる義理はネェよ! いいさ、目的の殆どは果たしたんだ。ここはトンズラこかせてもらうぜぇ!」

 

変装がバレた下っ端は吐き捨てるようにそう言って、一目散に逃げ出していった。

逃げ足早いわね、あいつ。

 

「あ、また逃げた!」

「追いかけましょう。何としてもチカの居場所を聞き出さないと」

「はい! 待ちなさーい!」

 

逃げ出した下っ端を追ってネプギア、ケイブ、REDも教会から出ていく。

 

「っと、あなた達はどうする?」

 

残ったアイエフとコンパもその後を追おうとして、足を止めてわたし達にそう聞いてきた。

どうするって言われても、そんなの…

 

「偽物追いかけるのはそっちだけでじゅーぶんでしょ? 人数多いんだから」

「そうね…あんまり大所帯で追いかけるのは返って邪魔になりそうだし、アタシ達は別行動ってことで」

「そ。了解したわ」

 

わたし達の言い分に納得したみたいで、特に何も言われずに了解される。

あいつ、そこそこ強いんだし、大丈夫でしょ。

 

「あ、それなら、連絡手段があるといいと思いますです」

「それもそうね。それじゃこれ、ネプギアの持ってるNギアの連絡先」

「えっ? あっ」

 

コンパの言葉に頷いたアイエフが、さらっと手早くメモになにかを書いてユニに手渡す。

あんなにケータイ持ってるのにネプギアの連絡先を教えるんだ…

 

「何かあったらそこに連絡して頂戴ね。さ、コンパ、行くわよ」

「はいー。二人とも、ばいばいですー」

 

そして最後にそれだけ伝えて、二人もネプギア達の後を追って出ていった。

 

「いそがしそーなやつらねー。…んぅ?」

 

出ていった奴らにそんな事を感じながら、ふとユニの様子が変なことに気がついた。

 

「ネプギアの、連絡先……え、えへ…」

 

なんか貰ったメモ見ながらニヤニヤしてる。

正直、ちょっと気持ち悪い。

 

「………」

「…はっ。れ、連絡取るために仕方なくよ!? 仕方なく!」

「…誰に言い訳してるのよ?」

 

じとーっと見つめていると、ユニちゃんはこほんと咳払いをして。

 

「と、とりあえず。アタシ達はアタシ達で、アンタの妹と友達を探すわよ! ほらっ!」

「あ、うん」

 

ぷいっと顔を逸らしながらさっさと出ていくユニに続いて、わたしも教会を出る。

………。

 

「…ねぇ。どうしてあんたは、ロムちゃん達を探すの手伝ってくれるの?」

 

気がつけば、前を歩くユニに向かってわたしはそんな事を聞いていた。

 

「何よ突然」

「ちょっと気になっただけ」

「ふーん…」

 

ハッキリ手伝うとか言ってたりはしてないけど、リーンボックスに来てから何かとめんどー見てくれてるし。

ちょっと気になっていた。

 

「まぁ、子供のアンタ一人を放って置くのはなんかあれだし「子供ってゆーな」見た目通りじゃない…。それに、今また女神が減ったら犯罪組織が勢い付くだけだし、そんなのは女神として見過ごせないでしょ?」

「候補生じゃん」

「うるさいわね! アンタもでしょーが!」

「なによー!!」

 

そんな風にまたいがみ合ってた時だった。

 

「やっぱり! あの時見た子にそっくりだ!」

「ちょっ、やめとけって…迷惑だろ」

 

近くにいた名前も知らない人が、わたしの事を指さしてそう言った。

そっくり? それって、もしかして…

 

「だって、気になるだろ。あんな森の方で子供が追いかけっこしてたなんて」

「だからそれはお前の幻覚だって「ちょっと!」わっ!」

「今の話、ホントなの!? わたしに似た子を見たって!!」

 

本当にそうだっていう確信はないけれど、思わずその人に食いつくように聞いていた。

 

「あ、ああ。結構前になるけど、南の森にある方で……よく見たら色違うな…」

「ったくお前はなぁ…ごめんねお嬢ちゃん。あんまりこいつのいう事は気にしないで「ありがとっ!!」っておい!?」

「ちょ、ちょっと!? 勝手に一人で行くんじゃないわよ! こらー!」

 

見かけた場所に、わたしと色が違う…

そこまで聞いていても立ってもいられなくなって、お礼を言いながら右手に本を抱え直し、走り出す。

 

…ロムちゃん、グリモちゃん……!!

 

 

「…なんか妙にセリフ遮られたよ、俺」

「うーん、でもなぁ。よくよく考えたらあんなところで追いかけっこっておかしいような…」

「俺にはよくわからないけど、とりあえず…可愛かったな、あの子」

「…お前ロリコンだったの…?」

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

「邪魔よっ!」

 

飛び出してきたモンスターを左手で持った杖に氷を纏わせて、殴り飛ばしながら進む。

そうと決まったわけじゃ無くても、手掛かりになるかもしれない。それだけを考えて、森の中を突き進む。

 

どこか…どこかに、きっと…!!

 

「キシャアア!」

「きゃっ!」

 

そんな風に焦って周りを見てなかったせいで、横から飛び出してきたモンスターへの反応が遅れて突き飛ばされて、尻餅をつく。

 

「シャアアアアッ!」

 

モンスターが尻餅をついたわたし目掛けて攻撃してくる。

に、逃げ…ダメ、間に合わない…っ

 

「っ…!」

…わたし、こんなところで、終わるの…?

周りを見なかったせいで、こんな奴なんかに…

 

振り下ろされる一撃を見て、思わず目を瞑る。

 

「グギャアアアッ!」

 

その時、突然ダァン! とすごい音が聞こえたかと思うと、モンスターの悲鳴が聞こえてきた。

恐る恐る目を開けると…わたしの目の前にいたモンスターは倒れていて、

近くを見回すと…ユニが銃を構えて立っていた。

 

「この…バカ!!」

 

そしてユニは銃をしまいながらわたしに近づいてきて、そういいながら頭をぽこんと叩いてきた。

 

「~っ…な、なにするのよ!」

「こっちのセリフよ! 一人で勝手に突っ走って、何してるのよ、アンタは!」

 

頭を抑えながら睨みつけると、ユニはカンカンに怒っていた。

 

「だ、だって…」

「だっても何も無いわよ! 再会する前にアンタが死んだら元も子もないのよ!」

「…ぅー…」

 

何も言い返せなくて、下を向いて黙り込む。

実際、ユニがいなかったら……そう思うと、身体が震えてきた。

 

「ったく、女神だって不死身じゃないんだから。まずは自分の身くらい自分で守れるようにしなさいよ」

「……」

 

その時のわたしは、ユニの言葉にただ頷くだけしかできなかった。

 

 

 

……………

 

………

 

 

 

 

「でも、森で見たって言ってもね。結構広いし、どうしたものか…」

 

お説教の後、ユニと二人でモンスターをやっつけながら、森を探索する。

けど、ユニが言った通り森と言ってもそれなりの広さがあるわけで、ここで手がかりを探すとなるとどれくらいかかるかわからない。

それでも…

 

「…あれ?」

 

そう考えていた時、ふと地面で何かが光っているのに気がついた。

 

「ん? どうかした?」

「なにかが光ってる…」

「光ってるって……別に何もないけど…ってちょっと!」

 

どうしてかそれがすごく気になって、気がついたらユニの呼びかけも無視してそれの側まで近づいていた。

何だろう、これ……と光る物に手を伸ばした時だった。

 

「わっ!」

「な、なに!?」

 

突然それの光が強くなり、思わず目を瞑る。

すると、頭の中に何かが浮かんできて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───私を呼ぶのは、誰…?」

 

「あなたが…私の───」

 

 

 

 

「あなた、記憶が…」

 

「……そうですか、なら……こうしましょ。今からわたしがあなたとわたしの名前を考えてあげる!」

 

「んー、そうねー…女神の姿もあるし、そっちも考えて…」

 

「…決めた! 今日からあなたとわたしは───」

 

 

 

 

「…ぐ……ここまで、かな…」

 

「……ごめん、ね……さいごまで……」

 

「…あなただけ、でも…逃げて、…ディー、ル…」

 

 

 

 

 

 

 

「どうして、私達がこんな目に遭わなくちゃいけないの…?」

 

「何もしていないのに…大人しくしていただけだというのに…」

 

 

 

「………許さない……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……と…ちょっと! ラム!」

「…あ、え?」

「え? じゃないわよ、急にぼーっとして」

 

はっと気がつくと、目の前でユニがまた怒り顔になってわたしを見つめていた。

それより、今のは……それに、ブルーハートって…

 

「で、何か見つけたの? なんか握りしめてるけど」

「え? あ…」

 

言われて初めて、いつの間にか何かを手に持っているのに気づいて、それを見る。

 

「…これって!」

 

わたしの手にあったのは……前にグリモにプレゼントした、ヘアゴムだった。

この飾りも見たことあるし、間違いない。つまり…

 

「…それって確か、グリモだっけ? が髪結ぶのに使ってた奴よね」

「うん…。グリモちゃん、髪解くとロムちゃんと間違われちゃうから、いつも結いてたの」

「ふぅーん…」

 

とにかく、ここにグリモちゃんがいたのは間違いないみたい。

グリモちゃんがいたのなら、ロムちゃんもきっと無事なはず…

 

「見つかったのはそれだけ、かしらね」

「ううん、これだけでもいい。今は無事だってことさえわかれば」

「…そう」

 

…けど、さっきのは一体なんだったんだろう…

 

そんな疑問を抱きながらふと、頭がくらくらするような感覚。

なんだろう、なにかが、おかし、い……?

 

「なら、一度戻りま……ちょっ、ラム!?」

 

………、

 

……あれ?

 

「…ユニ…?」

 

気がつくと、わたしはユニに支えられた状態だった。

 

「ど、どうしたのよ、急に」

「…わかんない、でも、なんかくらくらする」

「ちょっと、本当に大丈夫なの…?」

 

心配そうにするユニだけど、わたし自身自分に何が起きてるのかがわからなくて。

 

ぼうっとした状態でユニに支えられるようにして、リーンボックスのメガミホテルまで戻ってきた。

 

「とりあえず、暫く大人しくしてなさいよ」

「…うん」

 

そう言いながらわたしをベッドに寝かせるユニ。

わたし自身も身体がだるくて、大人しく言う事を聞く事に。

 

ちなみにいつの間にかネプギア達もいた。なんでも、チカっていう人はどうにか助けられたみたい。

 

「ラムちゃん、大丈夫かな…」

「とりあえずは、ね。けど、急に体調を崩すなんて…」

 

それはわたし自身がよくわかってない。

今までこんなことなかったのに…

 

横になって少し楽にはなったけど、あんまり眠くもないから近くにいるネプギア達の話を聞きながら、そう思う。

 

「……」

「あいちゃん、どうかしたですか?」

「…ネプギア、ちょっとイストワール様と連絡取ってくれる?」

「え? それは勿論良いですけど…どうしてですか?」

「ちょっとね、嫌な予感がするのよ」

 

横になりながら、体勢を変えてネプギア達の方を見る。

なんか、不穏な空気ね…

 

「そういうのって、嫌なものほど当たるよねー」

「ちょっと、そういう事言わないでよね!」

「あぅー、ごめんー」

「……あ、繋がりました。もしもし、いーすんさーん?」

 

REDがユニに怒られてる間に、ネプギアがNギアとかいう機械を弄って机に置いていた。

あれ、電話も出来るのね。

 

『ネプギアさんですか! 丁度良い時に、大変です!』

「わ、わ、いーすんさん? どうしたんですか?」

 

電話の相手のいーすんとかいう奴は、声だけでもわかるくらい慌てた様子で。

 

そいつの言い放った言葉で、わたしは言葉を失った。

 

 

『ルウィーが、犯罪組織に…占拠されました…!』

「………ぇ?」




…あ、えっと…ロム、です。

今回の章、短いよね…元々、1章か3章、どっちかと一緒にしようとしてたけど、いろいろあって分けたから、短いんだって。

 

…んと、じゃあ、次回予告…するね?

 

 

 

突如として知らされた、ルウィー陥落の知らせ。

 

それはラムだけではなく、誰もが衝撃を受ける事件であった。

 

同時に、そんなルウィーでラムが離れ離れになってしまった二人の目撃情報もあって…

 

 

陥落した自身の国を取り戻すため、大切な二人と再開するため、弱った身体で国へと戻る、ラム。

 

ゲイムギョウ界のため、なにより同じ候補生のラムを助けるために、ルウィーへと向かう、ネプギア。

 

 

そんな二人を待ち受けていた者は――

 

 

次回、超次元ゲイムネプテューヌmk2 蒼と紅の魔法姉妹 -Grimoire Sisters- 第3章

 

-蒼色のコラプション-

 

 

 

ふぇぇ…ラムちゃん、早く会いたい…



ロム「…実はラムちゃんが主人公?」
グリモ「まってロムちゃん、そういうこと言わないで、わたしにクリティカルヒットするから」

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