幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee-   作:橘 雪華

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Act.10 一時の平和とある提案

あれから無事に封印を終わらせたネプギア達と合流し、ルウィーへと戻る頃には日が傾き始めていた。

 

「それにしても、ホワイトディスクが分裂した、ですか…」

「念の為先にがすとさんに連絡を取って聞いたら、錬金術の副作用とかなんとかって言ってたけど…」

「まーとりあえず封印もできてゲイムキャラの力も借りれるし、終わりよければ全てよしってやつだね!」

「う、うーん…」

 

教会への道を歩きながらゲイムキャラ──ホワイトディスクについての話をネプギア達に聞かされて、なんか釈然としないなぁ、なんて思っていた。

結果オーライとして捉えていいのか、っていうか錬金術ってすごい…

 

「もー! そんな話は良いから早く帰るって言ってるでしょ! わたしはいっぱい動いたからお腹すいたの!!」

「それだけ元気ならもうしばらく平気でしょ…?」

「グリモちゃんのいじわる!」

 

どうにもラムちゃん的にはわたしかロムちゃんがネプギア達…主にネプギアと話してるのが気に入らないらしく、ネプギアと話しているとこうやって茶々を入れてくる。

流石にもう一々相手する気もなくなってきて、ぶーぶー言うラムちゃんを適当にあしらっておく。

ネプギア達はそんなわたし達を見て苦笑いを浮かべていた。

 

そんな調子で教会に戻ってくると、出迎えてくれたのはミナさんだけだった。

 

「ミーナちゃーん! ごはんー!」

「ら、ラムちゃんってば…」

「ロム、ラム、グリモ! それに、皆さんも。…よく御無事で」

 

ミナさんはわたし達の姿を見ると、安心したようにほっと息を吐いていた。

…というか、ミナさんだけ? 他の人は?

 

「あの、ミナさん。がすとさん達は?」

「彼女達でしたら、先程のネプギアさんからの連絡の後…」

 

ミナさん曰く、

がすとは「がすとの仕事は終わったですの。今後も何かあればがすとのアトリエをごひいきに~ですの~」と言って自分のアトリエに戻り、

日本一は「ここはもう平和になったんだね! ならアタシはアタシを呼ぶ声に答えないといけないから!」とかなんとか言ってどこかに行き、

ブロッコリーは「ブロッコリーも行くにゅ。ネプギア達が戻ってきたらよろしく伝えておいてくれにゅ~」と言って去っていったとか

 

ちなみにフィナンシェさんは晩御飯の準備中だそうで。

 

「皆さん、行っちゃったんですかぁ~…」

「まぁ、彼女達もそれぞれやることがあるんでしょ、縁があればまた会えるわよ」

「ともあれ…本当にありがとうございました。皆さんのおかげで、ルウィーは救われました」

 

と、ミナさんがネプギア達に頭を下げる。

本当なら女神のラムちゃん達も一緒にお礼を言うべきなんだろうけど…まぁ、無理だよね…

 

「将来の嫁の治める国だもん、当然だよ」

「………」

「う…なんかトゲトゲしい嫁視線が…」

 

誰が嫁か誰が。

っていうかこんなのに二人は渡せないよ…!

 

「…なんかひどい扱いを受けた気がするー!」

「えーっと…き、気にしないでください。私達も目的のついででしたし、それにゲイムキャラの力も借りれましたから」

「そう言っていただけると…もう次の土地へ旅立たれるのですか?」

 

ぎゃあぎゃあと騒ぐ赤いのをスルーしながら、話しは進んで行く。

 

「そうね、この国ですることはないし。…時間的に宿で一泊くらいはしていくと思うけど」

「そうですか…本当なら宿代わりに教会を使ってもらっても良いんですが…」

「ああ、いいわよ。そっちの子が黙って無さそうだから、気にしないでも」

「…申し訳ありません」

 

と、ミナさんとアイエフが話している横で、ロムちゃんがネプギアの元へと駆け寄っていた。

 

「ネプギアちゃん、行っちゃうの…?」

「…む」

 

と、当然それを見逃すはずのないラムちゃんがむすぅっと不満顔に。

ある意味大変そうだなぁ、ラムちゃん…

 

「うん…でも、きっとすぐ会えるよ。だから、そんな顔しないで」

「……うん」

 

そう言われると、ネプギアに向かってぱぁっと笑顔を向けるロムちゃん。

あー、そんな顔したら…

 

「むむむ…!」

 

まぁこうなるよね。

うーん、いまいち話しに入れないし、すること無くてずっと前髪弄ってたし、ここはラムちゃんにちょっかいでもかけてみよっと。

ぷくぅ、とふくれっ面のラムちゃんの背後に回って…

 

「…てい」

「ぷひゅぅ……な、何するのよグリモちゃん!」

 

そこからほっぺを突っつくと、ほっぺをしぼませながらそんな変な音を出して、くるんとこっちを向くラムちゃん。

 

「く、ふふっ…ぷひゅぅ、だって…ふふふっ…」

「ふふふじゃなーい! グーリーモーちゃーんー!」

「わぁ、逃げろ逃げろっ」

 

むがー、と怒った様子のラムちゃんが捕まえようとしてきて、それを避けつつ逃げる。

ふふん、無防備にほっぺふくらましてる方が悪いんだもんねーだ!

 

「…あの子達は……こほん。ええと、何も協力できずに申し訳ありませんでした。せめて、貴女達の旅の無事を祈らせて頂きますね」

「あ、あはは…はい、ありがとうございましたっ!」

 

それからネプギア達が教会を去った後、わたしとラムちゃんはミナさんに捕まってお説教を受けるのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はふぅ…」

 

時は流れてその日の夜。

夕飯も食べ終わり、お風呂から上がったわたしはパジャマ姿で自室に向かっていた。

 

お風呂って、いいよね。一人でゆっくり浸かれると尚更。

今日は覚えてる部分だけでも結構大掛かりな戦いだったし、その分疲れてたせいか余計にそう感じた。

いや、別に二人と入るのが嫌とかそういうのじゃないよ? ただあの二人と入ると大体いつも…いや、なんでもない。

 

そういえばわたし、あんな思いっきり壁に叩きつけられたりしたのに怪我とかなかったな…骨とか折れてそうだと思ったんだけど。

 

「女神の力のせい、かな…」

 

思い当たる事なんてそれしかないし…多分変身して記憶がない部分で回復魔法とか使ってたんだろう。たぶん。

 

まぁ、ここにきてやっと記憶の一つが戻ったんだし、前向きに頑張ればいい、かな。

そんな感じで今日の出来事なんかを振り返りながら、自室のドアを開ける。

 

「おそーい!」

「……」

 

…閉じる。

 

…あぁ、やっぱり普段慣れない規模の戦いがあったから疲れてるんだ、だから部屋を間違ったり──

 

「ちょっとちょっと! なんで閉めるの!?」

 

なんて現実逃避は儚くも崩され、内側からドアを開けて飛び出てくるのはラムちゃんだ。

わたしより先にロムちゃんとお風呂に入っていたから、既にいつもの桃色パジャマ姿である。

 

「なんでわたしの部屋にいるの? ロムちゃんは?」

「…とにかく、入って!」

 

からかわれて不満げにしながら、ラムちゃんはわたしの腕を引いて部屋に入る。

そしてそのままドアを閉じた。

…ここで、ちょっとだけイタズラ心が湧いちゃったので、少しからかってみることにした。

 

「急にどうしたの? …もしかして」

「そうよ、とっても大事な話があるの…」

「やっぱり……えっと、その…」

 

真面目っぽい表情のラムちゃんに向かって、少しわざとらしくもじもじとしながら俯いて、上目遣い。

 

「や、やさしくしてね? どきどき…」

 

そして瞳を潤ませてトドメの言葉を放った。

 

「…はうっ」

 

するとラムちゃんはそんな変な声を上げながら、後ろに倒れ込んでしまった。

部屋の掃除はしっかりしてるし、なにかに頭ぶつけたりはないみたいだけど。…ならいっか、女神って丈夫そうだし。

 

これぞ必殺・萌え落とし攻撃…!

ラムちゃん相手じゃ効果薄そうだと思ってたけど案外効くんだね、面白い。

さてと、騒がしいのもおとなしくなったし…

 

「…寝ようっと」

「か、かわ……っは! や、やり過ごそうったってそうはいかないわよ!」

 

ぐぐーっと伸びをしながらベッドに向かったものの、復活したラムちゃんに呼び止められてしまった。

ちぃっ、やっぱり効果薄いのか…

 

「ねぇグリモちゃん、今舌打ちしなかった?」

「してないよ」

「心のなかで舌打「してない」あ、う、うん…そう?」

「うん、してないよ?」

「そ、そう…」

 

あぁ、なんだろうこの感じ。ラムちゃんからかうの楽しい…

…っと、お遊びはこれくらいにして、と。

 

「それで、話って?」

「そうだった! うー、どうしよーグリモちゃーん! ロムちゃんが取られるー!」

「…は、はぁ…?」

 

いまいちよくわからなくて、ベッドに座りながら首を傾げる。

 

「えっと、誰に?」

「ネプギアに!」

 

でも次の言葉であぁ、と何となくラムちゃんが何が言いたいのかを把握。

つまり、

 

「ロムちゃんが予想以上にネプギアにデレデレだから、このままだと一人でネプギアの所に行っちゃうかも…ってこと?」

「わかってるんなら一緒に止める方法考えてよー!」

 

落ち着かない様子で答えるラムちゃんは目尻に涙を浮かべ今にも泣き出しそうな勢い。

うーん、そう言われてもなぁ…

 

「そもそも、ロムちゃんがラムちゃんを見捨てるような真似はしないと思うけど…」

「それは…当たり前よっ」

「でも今疑って不安になってたよね」

「うぐ…」

 

思ったことをそのまま口にすると、ラムちゃんはしゅんとしてしまった。

ネプギアとの出会い、わたしのせいであまり良くなかったからなぁ……わたしを傷つけた相手にいつの間にかロムちゃんが懐いてて、それが気に入らないからこそなんだろうけど。

 

「うーん…ネプギアについて行くのは「やだ!」…そ、即答…? それなら、ネプギアとは別行動でついていくのは、どう?」

「?? どういう意味?」

 

「つまり、ネプギアのパーティーメンバーとしてじゃなく、あくまでもわたし達はわたし達でネプギアの行く先に向かって、その中でネプギアがどういう人かを判断したら良いんじゃないかな。その途中でクエストをこなせばシェアも取得出来るだろうし」

 

と、わたしなりに思いついた事をラムちゃんに伝えてみる。

最終的にブランさん達を助けるなら、今残ってる女神が力を合わせないと大変だろうし、早いうちにラムちゃんのネプギアへの嫌悪感をなくしてあげないと、という考えから導き出された結論がこれ。

 

「ネプギアは、この国に来るまでにラステイションに行ったって言ってたし、多分次向かうのはリーンボックスのはず。リーンボックスは今女神がいなくて犯罪組織の活動も活発らしいから、あくまでわたし達は」

「悪い奴らをやっつけながらシェアを集めに行くだけ?」

「そう。別にネプギアに協力するわけじゃなくて、自分達の為。…どうかな」

 

わたしの提案を聞き終えると、ラムちゃんは腕を組んでうぅん、と考え込み始める。

ラムちゃんはネプギアと一緒に行動するのと、ネプギアとロムちゃんを一緒に行動させるのが嫌っぽいし、良い案だと思うんだけど…

 

「んー、んんん…」

 

色々な葛藤でもあるのか、それから暫くの間唸り続けるラムちゃんを横目に、わたしは読み掛けだった本を手にのんびりとするのでした。

 

…ちなみにそれから暫くした後にやってきたロムちゃんに、「どこいってたの!!」とラムちゃんが怒ってたりもしましたとさ。




はいはーい! ルウィーが誇る女神、ラムちゃんでーす!
今回の次章予告はこのラムちゃんがしてあげるわ! カンシャしなさいよねっ!
…え? それはいいから早く予告して? もうっ、グリモちゃんせっかちよ! …まぁいいわ。
えーっと…(カンペ



ルウィーを脅かした脅威、キラーマシンの封印に成功した三人とプラネテューヌの女神候補生、ネプギアとその一行。

次なるゲイムキャラを求めて去っていったネプギア達を見送りながら、危機感を覚えたラムの提案により、三人は旅立ちを決意する。

初めて国の外へと出た三人に待ち受けるものとは……


次回、超次元ゲイムネプテューヌmk2 蒼と紅の魔法姉妹 -Grimoire Sisters- 第2章

-乖離するコネクション-


あんな奴に、ロムちゃんはぜぇったい渡さないんだから!!





〜人物解説〜
・ブルーハート
窮地においてグリモが変身した姿。ホワイトシスター(ロム)に似た容姿が特徴的。
後のグリモ曰く、発動にはグリモワールが必要となるらしい。

ブルーハートという名の女神は過去に存在していた記録が無く、彼女の謎が深まることとなった。

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