幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee-   作:橘 雪華

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Act.3 お説教

「ミナちゃん、おなかすいたー!」

「おやつ…」

 

ぱたぱたと駆け足で部屋に駆け込む二人。

その後を、脇腹を押さえながら追いかけるわたし。

さっき回復魔法かけてもらってたでしょって? ラムちゃんのぐにぐにで中断されて、そのまま忘れられてたからまだ痛むの! いたたた…

 

「こら、はしたないですよ。お客さんが来ているんですから」

「お客さん…?」

 

二人を叱るように言うミナさんの言葉を聞いて、部屋の中を見回す。

そこには、つい最近みた顔……ネプギア達がいた。

 

「あーっ! さっきの奴ら! まさか攻め込んできたの!?」

「(びくびく)」

 

二人もそれに気付いて、大声を上げる。

いや、攻め込んでなんて来ないから…

 

「何を失礼な事を言ってるんですか!」

「あの、実はさっき…」

 

二人を叱ろうとするミナさんに、ネプギアが事情を説明する。

するとミナさんは申し訳なさそうに謝り始めた。

 

「この子達がそんな事を…大変申し訳ありません!」

「わわ、いいですよ。そんな思いっきり頭下げなくても…」

「いえ、この子達の保護者として、教育者として! しっかりと謝らせて頂きます!」

 

深々と頭を下げるミナさんと、それを見ておろおろするネプギア。

あの人、おろおろしてばっかりじゃない?

 

「ほら、あなた達もごめんなさいは!?」

「えー! なんでこんなやつらに謝らなきゃいけないの! わたしやだー!」

「わたしも、いや…」

 

そんな言い争いをする三人を差し置いて、わたしはネプギアの近くに行く。

 

「あの、さっきはいきなり攻撃したりして、ごめんなさい。…怪我、平気ですか…?」

「あ、うん。コンパさんに治療してもらったから大丈夫だよ。私の事よりグリモちゃんこそ大丈夫? 咄嗟だったとはいえ結構深く切っちゃったけど…」

「わたしの方も、治療してもらったから…大丈夫です」

 

途中で治療忘れられたけど。切られた時よりはマシだから大丈夫だよね、うん。

 

「そっかぁ、よかった…」

 

わたしの傷が大したことないことを知ってホッとするネプギア。

いきなり襲われた側なのに、こっちの心配するなんて…変な人。

 

「見なさい、グリモも謝ってますよ。ほら、二人も!」

「ふーんだ。わたし達おそわれただけだもーん」

「ヨーヨーぶつけられた…痛かった…」

 

後ろではまだ言い争いが続いていた。

っていうかラムちゃん、悪い嘘は後でろくな目に遭わないよ…

 

「………。ごめんなさいは?」

「だからやだって「ご・め・ん・な・さ・い・は?」ごめんなさい」

「なさい(ぴしっ)」

 

背筋がぞくっとする程のナニカを感じたかと思ったら、二人が突然素直に謝りだした。

…ほらね? ろくな目に遭わない。

 

「今一瞬、黒いオーラが…」

「…ここの教祖も只者じゃないみたいね」

 

そんな光景を見てそう呟く…えっと、アイエフ?とコンパ?

教祖なんてやるからには、そうじゃないと務まらないんじゃないかなぁ、と心の中で呟いた。

 

「それより、あの…できたらその子達にも協力してほしいんですけど…」

 

と、ネプギアがミナさんにそんな事を言っていた。

何のことか気になったわたしは、ネプギアの仲間の人たちに聞いてみることに。

 

「あの、何の話ですか…?」

「ん? あぁ、私達は女神達を助けるために必要な、ゲイムキャラって奴らから力を貸してもらう旅をしていてね」

「それで! 女神候補生のあの二人をアタシの嫁にしたいなって!」

「違うですよ、二人の力を借りたいって思ってたんです」

「まぁ、あの様子からしてあんまり期待はできないけどね」

「あぁ、なるほど…それは確かに無理かもしれません」

 

三人の話を聞いて、納得。

多分、それを聞いても二人はネプギア達を嫌ってるし、やるなら自分達でやる、アンタ達と一緒はいやだ、とか言うだろうなぁ。

 

「あなたの方で二人を説得したりはできないの?」

「わたしはなるべく二人の意思を尊重したいので。……それに、説得ならできることはしましたし……」

 

途中から小声でそう呟きながら、やんわりと否定する。

 

「それは……保護者としては、素直に頷けません。何分、まだ幼い子達ですから、国の外に出すのはまだ早いかと」

 

ミナさんの方もあまり気が進まない様子でそう答えていた。

ただ、別に二人をこの国に縛り付けたい訳ではないようで、「もっとも、この子達自身が女神としてそう望むのなら話は別ですが…」と続ける。

でも、当然二人の反応は…

 

「やだ! こんなやつらと一緒なんて」

「ラムちゃんがいやなら、わたしもいや…」

 

うん、そうなるよね…

 

「望み薄、ね。ま、こっちの要件は伝えたんだし、そろそろお暇しましょうか」

 

ここでの用事はもう済んだみたいで、アイエフがそう言って扉の方に歩き出す。

 

「すみません、何もお力になれず…」

 

そんなネプギア達に申し訳なさそうに頭を下げると、最近のルウィーの状況を伝えて見送るミナさん。

…と、立ち去るネプギア達の背中にあかんべーをする双子…

そして、バタン、と扉が閉まると、

 

「…ふーたーりーとーもー?」

「ひゃぁ!?」

「ひぅ…!(びくっ)」

 

ギラリ、と目を光らせながら、こっそり逃げ出そうとしていた二人を捕獲するミナさん。

うぅん、ああなったミナさんはやっぱり怖い。

こうして、しばらく二人がガミガミとお説教されて…

 

「…いい? 今後はこのようなことがないように!」

「…うぅ」

「…ふん」

「わかりましたか!?」

「「はいっ」」

 

どうしてわたし達が、みたいな表情だった二人も、再度ミナさんがギラリと目を光らせながらそう言うとぴしっとしながら返事をする。

そんな二人を見てミナさんは「それじゃあ、おやつはいつもの所に置いてあるから」と言うと、二人とも逃げ出すように部屋を出ていく。

その様子をみて、ミナさんが溜め息をつきながらこっちにやってきた。

 

「まったく、あの子達は……二人を止めることはできなかったの?」

「無理ですよ…元気すぎなあの二人を止めるなんて。それに…」

 

そう言って、わたしは自分もネプギア達に危害を加えた事を話した。

 

「そう…でもどうして?」

「…どうしてでしょうね。わたしにもよくわからないです」

 

冷静に考えれば、わたしなんかが女神に、しかも一対一で挑むなんて無謀にも程がある。

…どうして候補生が一人だけついていけたのか。

…どうしてあなただけが帰ってきてるのか。

そんな風に思っていたら、あんなことをしてしまった、という感じ、かな。

 

「だから、悪いのはあの二人だけじゃないんです。そこのところは…」

「…本当に二人が大切なのね」

 

くす、と笑うミナさん。

 

「それは、まぁ…命の恩人みたいなものですし」

「本当にそれだけ?」

「な、何が言いたいんですか」

 

なんだかからかわれてるような気がしてきた。

…わたしの周りはどうしてこう、わたしの事を弄りたがるんだろう。

 

「なんでもないわ。ほら、グリモもおやつ食べに行って良いんですよ」

「む……そうします」

 

なんかすっきりしない気分にさせられたけど…いっか。

そうしてわたしもおやつを食べに向かった。

 

ちなみに今日のおやつはプリンでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あれ? ロムちゃんは?」

 

おやつを食べ終えてロムちゃんラムちゃんの部屋に来ると、そこにはラムちゃんしかいなかった。

 

「ロムちゃんなら、さっきおトイレに行くって行っちゃったよ」

「そっか」

 

入れ違いになったのかな、とか思いながら座る。

ラムちゃんは一人でゲームをしているみたい。多分最近出たっていうポシェモン? とかいうやつだろう。

 

「………」

 

することがない、暇だ。

いつもならロムちゃんと何かしらするんだけどいないし、となると…

じぃ、っとゲームをするラムちゃんを見つめる。

…………

 

「…てい」

 

がばっ

 

「わぁあ! な、なによ!?」

 

あんまりにも暇だったのでラムちゃんの背後からのしかかってみた。

たまにイタズラされるし、さっきだってぐにぐにされたし、たまにはいいよね。

 

「することないからこーしてラムちゃんがゲームしてるの見てるー…」

「見るのはいいけど離れてよっ」

「やだー…」

 

だるーんと背中に身をあずけながら、ラムちゃんのほっぺをつつく。

ぷにぷに。

 

「ひゃふ! ひゃめなひゃいよー!」

「ラムちゃんのほっぺやわらかいから無理ー…」

「にゃによひょれー!?」

 

抵抗されながらも突っつき続ける。

ぷにぷに。うーん柔らかい。

 

「むぐぐ…このー!」

「わひゃっ」

 

と、ラムちゃんがゲーム機を置いて反撃してきた。

 

「グリモちゃんのほっぺだってやわらかいもんね! ぷにぷにー」

 

そう言って今度はラムちゃんがわたしのほっぺを触ってきた。

 

「それそれ、倍返しなんだから!」

「みゃぅぅ…いひゃひゃ! ひっぱるのひゃめー…!」

 

…まぁ、そんなくだらないことをしてしばらくして。

 

「うぅ…ほっぺがひりひりする…」

「やわらかで楽しすぎてやりすぎちゃった…ご、ごめんね?」

「むぅ、まぁ平気だけども…」

 

赤くなったほっぺをさすりながら答える。

というか…

 

「…ロムちゃん、遅くない?」

「え? あ、そういえば…もー、何してるのよー」

 

ロムちゃんが戻ってこないことに気づく。

流石にトイレでもこんなにかからないと思うけど…

 

「まさかまたヘンな人に連れてかれてないよね…」

「教会の中にそんな人いないわよ」

「でも…」

「もー! グリモちゃん心配性! このー!」

「いひゃいいひゃい!」

 

ぷんすかと怒るラムちゃんにほっぺを引っ張られる。

…ほんとになんでもなければいいけど…


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