俺の名は塩野瞬二!!   作:床太郎

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なんかすごく長くなりました。
2話分くらいに……。


VS亜門

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ます。

 

静かだ。

なんの音も聞こえない。

どうやらここは裏路地のようだ。

俺はこの暗い夜空に光る星々を見つめながら考える。

 

あれからどれくらいこうしていただろう……。

あの後、俺はなんの宛もなくただただ街を徘徊しやがて力尽きて倒れたのだ。

 

あの日から一体どれだけたったんだろう……。

まあいくら寝ていたとしてもせいぜい二日か三日くらいだ。

 

 

助けられなかった。

俺はこの世界に来て親を亡くす悲しみを知った。

だからこそ、こんな悲しみを他の人たちにはしてほしくなかった。

ましてやまだ子供であるヒナミならなおさらだ。

そんな決心をしたのに、助けられなかった。

なぜ、助けられなかったのか。

 

……力が無かったから……

 

なぜ、こんなところで倒れているのか。

 

……助けられなかったという事実を受け入れられず逃避しているから……

 

 

…………。

 

 

ほんとにこんな自分が嫌になってくる。

どれだけ生きてこようと結局、俺は自分の行動に責任が持てない。

怖くなればこうして誰もいない場所に逃げ込むんだ……。

 

でも俺は彼女を見て変わろうと思ったんだ。

 

彼女はあんな過酷な人生を送っても強い意思を持ってい

た。

そんな彼女は俺から見てとても眩しかった。

 

どんな人生でも諦めず、進んでいった彼女。

どんなことにも逃げて比較的に楽な方へと過ごしてきた俺。

 

だからこそ俺も彼女のように……。

 

 

そこまで考えて俺は立ち上がる。

向かうは自分の家だ。

 

俺にはまだやることが残っている。

助けられなかった、ならせめてあれだけでも……。

 

 

 

 

 

 

 

 

日は沈みあたりはもう暗くなっている。

そんな夜道を街灯の明かりが照らす。

 

そんな中、俺と真戸さんは見回りをしていた。

 

「真戸さん」

 

そろそろ局に戻って書類を確認しなければいけない時間だ。

 

そう思って俺は隣にいる、真戸さんに話かける。

 

真戸さんは俺が尊敬する上司の一人で今は真戸さんの下で働きながら指導してもらっている。

喰種に対する復讐心が人一倍強く、とても熱い人だ。

少なくとも俺はそう思っている。

でもそんな真戸さんを本局の人たちはよく思ってないらしくなにかと野次を飛ばしてきたりする。

そんなやつらを俺が文句のひとつでも言ってやろうとしたときもそれを手で制し、いつも通りにあの不適な笑みを浮かべて何事もなかったように無視していた。

どんなに馬鹿に去れようが自分の道を信じ行動する。

それは凄いことだと思う。

 

「どうしたんだい亜門くん?」

 

そんなことを考えていると横からそんな言葉を投げ掛けてくる。

 

そうだ、俺から話を振っておいてなにも言っていなかった……。

内心で謝罪しつつさっき言おうとしたことを口にする。

 

「ちょっと目を通さなければいけない書類があるのでそろそろ帰りましょう」

 

「もうそんな時間か……。私は今日寄るところがあるから先に帰っていてくれないか?」

 

「それって……」

 

「ああ。そろそろあのエサ(・・)に引っかかることだろうと思ってねぇ」

 

「それなら俺も!!」

 

「あの喰種くらいなら私一人でなんとかなる。そんなやつに二人がかりなんて、時間の無駄だと思わないかい?」

 

「……わかりました」

 

真戸さんの言葉があまりにも正論だったので言い返せず、了承してしまった。

 

まあ真戸さんならば大丈夫だろう。

そう思っていると前の方からこちらに向かって歩いてくる人影が見えた。

 

誰だ?

そう思って目を凝らすとそこには、

右手には銃。

肩から下げてあるバック。

そして顔全体を覆う仮面のようなマスク。

 

「ッ!? なぜお前がここに!?」

 

プレゼンス……。

やつはそう呼ばれている。

つい先日深手をおって逃走した筈だ。

なのにやつに外傷はほとんど見られない。

 

「ククク……わざわざ殺されに来たとは……。もしかしてこの前の復讐でもしに来たのか? なんだ結局貴様も同じじゃないか」

 

そう真戸さんが言葉を紡ぐ。

 

「そうじゃない。別に俺はあんたを殺しに来たわけじゃない」

 

「なら何をしに来た。負け犬の分際で!!」

 

明らかな挑発。

だがそれでもやつは一瞬、ピクッと反応した。

でもすぐに正気に戻ったのか、ちょうど真戸さんのクインケに指を差してこう言った。

 

「それを……返してもらいに来た」

 

そういうやいなや、こっちに一直線に走ってくる。

それと同時に銃声が響く。

 

「真戸さんはエサのほうにいってください。こいつは俺が……!」

 

俺はやつと真戸さんの間に立ち、自分のクインケで銃弾を防ぎながらそう言った。

プレゼンスは力押しのタイプに弱いそれは先日の戦いで得た情報だ。

 

真戸さんも俺の意思を受け取ったのか、こちらを一瞥して走り出した。

 

「……待て!!」

 

「ここからは通さん!」

 

「ちっ」

 

真戸さんの足音がだんだん小さくなっていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人通りの少ない夜の公園。

そこは街灯に照らされてなんともいえない不安感を覚える、そんな雰囲気をかもし出している。

 

そこには相対する二つの人影があった。

双方どちらも動かずただまっすぐにお互い、相手を見つめる。

 

……しまった。

 

瞬時は内心で舌打ちしながら状況を整理する。

 

もうそんな日だったなんて……。

さっきのエサという言葉、おそらく笛口さんの腕のことだろう。

その腕を使って笛口ヒナミを誘き出す魂胆だ。

原作ではそうだった。

 

真戸上等捜査官。

あいつは上等捜査官であって上等捜査官ではない。

普通に昇進していれば、准特等か特等あたりの強さだ。

 

原作ではなんとか倒せていたけど、それは偶然がいくつも重なってやっと勝てたんだ。

 

もし俺がいることで原作が変わってしまっていたら、勝てる確率は格段に下がる。

 

その前にはやく行かなければならない。

今、目の前にいる亜門鋼太郎を倒して。

 

 

「仮面をつけた悪鬼……。貴様らに一度聞いてみたかった」

 

沈黙を保っていた亜門が唐突に話し出した。

 

「罪のない人々を平気で殺め、己の欲望のまま喰らう。貴様らの手で親を失った子も大勢いる。残された者の気持ち、悲しみ、孤独、空虚。お前達はそれを想像したことがあるか?」

 

一泊おいて苦痛の表情を浮かべながら話を続ける。

 

「ほんの数日前、私の仲間が喰種に殺された。彼はなぜ殺された? 捜査官だからか? ふざけるな!! 彼の一体どこに殺される理由があった!! この世界は間違っている。歪めているのは貴様ら喰種だ!!」

 

そんな亜門の心の叫びがこの公園に響きわたる。

 

ああ。そうだ。

俺もお前の立場だったならそう思い、喰種に怒りをぶちまけていただろう。

でも俺は()ったんだ。

この世界を。

当事者でも被害者でもない、第三者として。

 

なら伝えるべきことがあるだろう……。

言わなきゃいけないことがあるだろう……。

 

俺はそんな衝動に後押しされながら、言葉を紡ぐ。

俺が読んだこの世界を。

俺が見たこの世界を……。

 

「こんな話を聞いたことがある」

 

「もしも仮に元々は人間だったのに、何故か喰種になってしまった。そんな少年がいたとしよう。そんな彼は思うんだ。"すべてが最悪だ"って。まあ確かについ最近まで普通に食べれた食べ物がどうしようもなく不味くて食べられなくなる。それも嘔吐するほど……。好物のハンバーグだってだ。それにだんだんと迫ってくる空腹感。何だかいいようのない恐怖にかられるんだ。当然だろう。……そんなある日、少年は一人の喰種の少女に出会うんだ。少年はもうなりふり構っていられず、その少女に助けを懇願する。『この身体になってすべてが最悪なんです。どうか助けてください』って……」

 

「すると少女はこう言ったんだ。『ねぇ……教えてよ元人間。ケーキって一体どんな味? 吐くほど不味いからよくわかんないけど、人間はよく美味しそうに食べるじゃん。……なんの危険もなく食事にありつけるってどんな感じ? ……誰にも狙われない生活はどうだった? 喰種捜査官とかに怯える必要のない日々は? ねぇ……教えろよ!! すべてが最悪? ふざけんな! だったら私は産まれたときから最悪ってわけ?』ってさ」

 

「それを聞いて俺はハッとなった。だってそうだろ? 普通は人間を襲う化け物がいてそんな悪者を倒し、人々をヒーローが救う……。そんなヒーローに憧れ、なってみたいと思う。だからこそヒーロー物は大衆に好まれる。一方的に化け物を悪として……。だけど、もしそんな化け物があの少女のような気持ちだったら、もうそれは英雄譚なんかじゃない。だって一概にどちらが悪とは言い切れないのだから……」

 

「……所詮は作り話だ」

 

「だけど!! そんな喰種がいないとも限らないだろ?」

 

沈黙。

そうそう理解できることじゃないか。

やっぱりこういうことは俺なんかより主人公(カネキくん)の方がいい。

 

なら、

 

「喰種の戯れ言などに耳を傾ける必要など無かったな!」

 

押し通るまでだ。

 

そう思って俺は家から持ってきた鞄の中からあるものを取り出す。

 

袋で何重にも覆っているそれを無理矢理破る。

 

「なんだそれは。……ッ!?」

 

息を呑む音が聞こえる。

まあ当然だろう。

そう思って俺の手に持っている、赤い塊を見る。

 

……人の肉だ。

 

あいつを倒すには赫子が必要だ。

赫子は体内のRc細胞を赫包が取り込むことによって出せる。

でも普段、普通の食事をしている俺はRc細胞がそこまであるとはいえない。

だから俺は山奥から自殺した人の死体をとってきて保管しておいたのだ。

 

俺はそれに躊躇いなくかぶりついた。

 

瞬間、口の中に広がる刺激。

食欲に溺れそうだ。

 

でもそんな感情に浸っている場合じゃない。

一刻もはやく行かなければ。

 

背中に意識を集中させる。

俺の背中にある手術痕は四つ(・・)

 

赫子を出したときの拒否反応なんてどうでもいい。

今すぐ使える力が欲しい。

 

 

 

 

 

ここは暗い暗いどこかの部屋。

そこには唯一光があるディスプレイの画面をずっと眺める白衣の男がいた。

 

嘉納教授。

彼はそう呼ばれている。

画面には一人の青年の顔写真とさまざまなプロフィールがかかれている。

 

塩野瞬時。

私の実験の初めての成功者だ。

彼に特異な体質があるとわかってから、私は彼にいろんな事を試した。

私がCCGからぬけるときに盗んできた、まだ改良されていなかった凶悪な喰種の赫包。

それをすべて彼に埋め込んだ。

 

SSレート羽赫『大鷲』

SSレート鱗赫『化け狐』

Sレート甲赫『鬼武者』

 

"化け狐"

この中でもやつは更に上をいく。

やつは類い希なる美貌の持ち主で気に入った男を誘い込み、喰種や捜査官であってもすべて喰らっていった。

CCGで大々的に駆逐部隊が組まれたほどだ。

多数の犠牲を出してやっと討伐したときのやつの赫子の数は九つだったそうだ。

まるで狐の妖怪"九尾"のように……。

 

「もし彼がそれらすべての赫子を使いこなせたなら……私が造り上げた中で間違いなく最強の化け物(・・・)だ」

 

 

 

 

 

 

向かい合う二つの人影。

一人は金棒のような武器を、もう一人は腰のあたりから狐の尻尾のような物が二つ出ている。

 

お互い同時に駆け出す。

一気に交わりそして、

 

金棒が折れ、宙を舞った。

 

 

 

 

 




いや、言いたいことはわかってますよ?

主人公チートやん……。
で、でもいいじゃない!!チートだっていいじゃない!!

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