俺の名は塩野瞬二!!   作:床太郎

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ちょっと遅れてしまいました。
すいません!!


原作介入

 

 

 

この時期になると雨の日は決まって外を歩く。

それは結局無意味かも知れない。

原作知識は未来予知ではない。

いったいいつ何が起こるかわからないのだ。

だから俺は歩く。

あの親子が殺されないことを願って……。

 

 

 

運が良かった。

これはただその一言につきる。

いつものように街を巡回していたら、喰種がでたと話している人を見つけたのだ。

 

 

全速力で雨の中を駆ける。

移動しながらあらかじめ買っておいたマスクをつけ、Qバレットを取り出す。

俺は今あの悲劇の物語に、決して修正できないほどの大きな、亀裂を……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いきなりの右手の衝撃に瞬時に反応できず、たちつくす。

すぐに正気に戻り、状況を確認する。

あの瞬間、クインケを撃たれて止めの一撃を弾かれたのだ。

私は発砲音のした方向を向いた。

そこには真っ白で何の柄もない仮面のようなマスクを被って銃口をこちらに向ける白髪の男がたっていた……。

 

 

突然邪魔がはいったことに若干の不快感を覚えながら相手を観察する。

 

「なんだい?君は。もしかして喰種かい?こいつを助けに来たとでも?全くどいつもこいつもクズのくせに人間の真似事など……クク……本当に虫唾が走る」

 

私はそう吐き捨てるように言葉を発する。

 

「真戸さん!あの銃って……」

 

そう言われて私もあの白髪の男が持っている銃を見る。

 

……。

 

 

資料で見たことがある。

あれは確か塩野特等がいつも使っていた拳銃型Qバレットだ。

ということは奴は……。

 

「プレゼンス……」

 

私よりもさきに亜門くんがその言葉を発する。

 

「クク……まさかこんなに早く大物に出会えるとはねぇ……。喰種を蔵匿、隠避したものには普通の人間の犯罪者を匿うよりも重い罰がある。この意味わかるかい?」

 

そう言って相手の返答を待つ。

 

「……」

 

答えない。

なら教えてやろう。

 

「つまり君が人間か喰種、どちらであってもこの場で拘束することができるということだ。……さあ、まずはそのおかしな仮面を剥いでやるとしよう……」

 

そう言って私は腕を上下に振るい、クインケをムチのようにとばす。

喰種はすべて悪だ。

その喰種を手助けする人間などもはや人間ではない。

そう、断じてだ。

 

 

仮面めがけて曲線を描くように繰り出された、クインケを奴は雑作もないように体を屈めて避け、そのままこちらに突っ込んで来る。

と、同時にQバレットの銃声が鳴り響く。

私はバックステップの要領で2、3メートルほど後ろに下がる。

 

(あの身体能力……。やはり喰種か。)

 

そんなことを考察しながら、私がいた位置に後ろの喰種を庇うように立つ、未だに謎が多い目の前の喰種を見る。

 

笛口の反応からして、顔見知りではないはずだ。

ではなぜ、こいつはわざわざ危険をおかしてまでこんなところに現れたのだろうか?

 

「あんたは親を殺された子の気持ちが分かるか?」

 

唐突にそんなことをやつは問うてきた。

 

その声音はすべてを見透かしたような、それでいてなにか諭すような、そんな気がして無性に腹立たしい。

それに親を殺された子の気持ちが分かるかだと?

そんなものいたいほどわかるに決まっている!

いったい私がどんな思いで(あきら)を見てきたか!!

 

「喰種風情が……。貴様らのようなクズが知ったような口を聞くな!!」

 

そうだ。貴様らのようなクズがいたから(かすか)は死んだのだ。

それにあきらまでも蝕もうとする。

そんなクズどもはいてはならない存在だ!!

だから駆逐しなければ……。

 

「あんたこそただ見ただけのくせによくそんなことが言えたな」

 

「なに?」

 

「あんたの苦しみがどれだけであろうとも娘のそれにはほど遠い。実際になったものしかこの痛みはわからない!!」

 

「あんたはなにも考えずにただ無差別に復讐という名の八つ当たりをしているに過ぎない。そんなやつがこの過酷な世界で必死にいきているあの親子を殺していいはずがない!!」

 

「だから止めに来た」

 

なんだと?

私のこの行為がただの八つ当たりだと?

 

「ふざけるな!喰種風情が人間と一緒の価値観を持てると思うな!!人を食らう。喰種はそれだけで悪だ。そんな化け物を駆逐しているんだ。私達こそが正義だ!!」

 

そう言って私はクインケを大振りに、横なぎに一閃する。

だがその一撃は拳銃の単なる一発の銃弾で弾かれる。

いつもより力みすぎた一撃。

そんなものが弾かれると体勢が大きくのけぞる。

すると必然的に隙ができる。

 

……しまった!?

 

銃声が鳴り響く。

だがそれは私に当たることはなかった。

私とやつの間に黒い金棒が出現したからだ。

 

「大丈夫ですか?真戸さん!」

 

「ああ。助かったよ亜門くん」

 

「二人がかりでいきますよ。真戸さんは援護をお願いします」

 

そう言って亜門くんは奴に向かって走る。

 

(まったく……部下に助けられるとはねぇ……。)

 

内心で部下の成長を喜びながらもう一度、クインケを構えなおす。

狙うは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

長身のがたいがいい黒髪の男がこっちに向かってくる。

亜門鋼太郎だ。めっちゃ強そう……。

だが負けないぜ!!

一等捜査官ごときにはな。キリッ

 

2、3発撃って牽制するがまったく怯まず彼のクインケ、ドウジマを盾にして突っ込んで来る。

 

ッ!? 無理無理あんなん勝てねぇわ!!

しかも後ろに笛口さんいて避けれんし……。

ああいう力押しの奴が一番嫌いだわ。

 

そう悪態つきながらも振り下ろされようとしているクインケをガードすべく体質を抑えて喰種化する。

俺がこの数年で一番鍛えていたのは、この体質の切り替え速度だ。

 

今ではもう切り替えに一秒もかからない。

 

クインケを拳銃ではじく。

それでも耐えきれずに手が痺れる。どんだけ力強いねん……。

 

そうしてできたほんのわずかな隙に、ムチのようなクインケがとんで来る。

 

やばっ!?

 

だがその攻撃は俺ではなく、後ろのほうにとんでいき、

 

……ザシュッ……

 

嫌な音がなった。

 

 

まさか!?

 

 

咄嗟に後ろを振り向くと、

 

 

笛口さんの頭部が無かった(・・・)……。

 

 

 

 

 

え?

一瞬理解できなかった。

いや理解したくなかった。

せっかく間に合ったのに……。

せっかく助けられると思ったのに……。

そんな希望が一瞬で奪われた。

 

 

そんな俺に後ろから容赦のない一撃が放たれる。

俺は何の抵抗もできず、吹き飛ばされ建物のガラスに突っ込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハハッ弱ってる一番倒せそうな敵から排除する。それは戦いの基本だろう?……クク……実にいい。貴様らクズにはお似合いの死に方だ」

 

 

だが土煙が晴れたそこにはプレゼンスはもうどこにもいなかった。

 

「ちっ逃したか……。ん?どうした?亜門くん」

 

「いえ。早く死体を回収して帰りましょう。ここは冷える……」

 

「プレゼンスのことは気になるが、まあいい。帰ったらさっそくこいつでクインケでもつくるとしよう」

 

そう言ってその場をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨の中、一人足を引きずりながら歩く。

さっきの一撃で気絶しそうになったがどうにか耐え、土煙を利用してここまで逃げてきたのだ。

 

 

結局、助けられなかった。

原作知識があって、何が起こるかわかっていたはずなのに。

それでも助けられなかった。

この物語に亀裂を……なんていっておいて結果、物語はなにも変わらなかった。

 

俺は自責の念にかられながら夜の街を歩いた……。

 

 

 

 

 

 

 

時を遡ってある一人の喰種の最期(きおく)

 

下卑た笑みを浮かべてこっちを見る白髪の捜査官。

たちつくす仮面の喰種。

クインケを構えなおす黒髪の捜査官。

とんでくる夫の赫子でつくられたムチのようなクインケ。

ああ。多分これは避けられない。

一瞬にして私の首を刈り取るだろう。

死ぬのはもう怖くない。ヒナミに言いたいことはいえたから……。

ただひとつ心残りなのは目の前にいる仮面の喰種だ。

さっきまでの言動からわかる。

きっと私が死ぬと仮面の彼は自分を責めるだろう。

 

でも…どうか責めないで。

 

いままでこの過酷な世界で生きてきて心の拠り所ができたのは二十区に来てからだ。

 

それまではなにもできない私は喰種の中でも見下され、虐げられて生きてきた。

でも、今日彼の言葉はとても心に残った。

一人で人間を殺すこともできない私たち親子を肯定してくれた。怒ってくれた。それだけでもう充分よ。

 

だからそんな貴方に届くように願いを込めて最期に言いたい。

 

"ありがとう。どうか強く生きて"

 

 

 

 





次はいつ投稿できるかわかりませんがなるべく早く投稿できるようがんばります!!

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