カウントダウン~A HAPPY NEW DAYS~ 作:幻想の投影物
マズマの体が横に飛んだ。
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
ただ一つ分かったのは、彼が攻撃された事だけ。
「あ、マズ…マ?」
愛しい彼の代わりに、老いた声だけが聞こえてきた。
「無駄な事を…共に来てもらうぞ、ホワイト」
PSSのチームが合流し、シティ・イーターのある場所から数キロ程離れた地点。これから瓦礫の街を踏破するためのバギーや戦闘車両を壁に囲まれながら、ブラヴォーチームとアルファチームは再会できたことの喜びと、撃墜数の背比べ。そして散って行った仲間の名前を挙げながら、黙祷を送っている。
そうした各々の小休憩も終わり、作戦概要の説明も簡単に済まされたときである。カーリーは、アルファチームの面々に交じって不機嫌そうな表情をしている妹、シズの姿を見つけた。
「ウゴァ!」
「あ、兄さん…」
巨体が進む度に、PSSメンバーはその道を開ける。
カーリーは小さく頭を下げながら、最愛の妹の元に辿り着いた。
「ウガガ」
「本当に協力するのかって? …ええ、まあ一応はね。例の衛生兵長が軌道エレベーターの防衛をするなら、私たちはシティ・イーターの横穴を防衛する事になるわ。モニターで見ていたけど、強化された兄さんなら逃げ出したミーが来ても問題ないと思う。そう言えば、マズマ達は何処に行ったの? アルファの着陸場所を確保してたはずだけど」
「ああ、それなら」
アルファ隊隊長のフォボスが言った。
「俺らの歩みは亀にも劣る、だとよ。愛しの可愛子ちゃんを連れてさっさとランデブーに洒落こみやがった。まぁ、戦線を切り開いてくれたおかげで障害物もなく真っ直ぐ戦えたんだがな」
「ふぅん。よっぽど入れ込んでたのねぇ……今は――」
≪諸君、聞いてくれ≫
シズの言葉を遮って、全部隊への同時通信が始まった。今は安全高度に居るドラコから発せられる通信を拾ったフォボスは、相互回線に切り替える。
「…総司令? どうしたんですかい」
「マリオン司令官、まさかとは思うがマズマ達がやられたってんじゃ」
≪そのまさかだ≫
「――――は?」
≪此処からはこの私、ジェンキンスが説明するよ。…たった今、マズマ君のバイタルサインが消えた。同時にステラ君の信号が敵拠点内部へ急速に先行したかと思えば、地球上から観測できなくなったんだ。恐らくはマズマ君がやられ、その心の隙を突かれて連れ浚われたんだろうね≫
「……オイ、冗談になってねぇぞ」
≪残念だが……全て事実だ。だが我々の切り札が完全に消えたわけではない。戦力が大きく減ったのは最悪だが、現存の勢力で敵総督を討つしかあるまい。…諸君、健闘を祈る≫
マリオンの方も航空戦力が厄介なのか、慌てたように回線が断ち切られ、デルタチームへ指示する声が聞こえてきた。その断片的な内容を聞きとる限りは、敵巨大型アーマメント・ポセイドンの出現数が一気に増加し、ナナ一人では耐えきれなくなっているらしい。
≪ねえ、あんた達聞こえる?≫
「ナフェ。どうしたんだよ」
≪あの馬鹿クローンがそろそろ本気でヤバいんだって。一応空中戦は得意だし、私も前線に出るから、これからシティ・イーター内でのオペレートはできなくなるっぽい。あの場所は敵味方問わず中枢からしか通信できないから、何とか自分で頑張って。それじゃ≫
「おいっ! ナフェ!!」
「彼」の呼びかけも言う前に切れたせいで、恐らく届いてはいない。
PSSは、なにやら一気に戦況が怪しくなってきた現状に焦りを隠せずにいられない。まだ勝機はあると確信していても、あの主戦力である二人がやられたらしい情報は、士気を下げさせるには十分だった。
それでも、抗わなければならないのが人間のすべきことなのであろう。
「くそっお前ら! 何勝手に墓場のゾンビみてぇな辛気臭ェことしてやがる! どうせゾンビになるならスリラーのゾンビで十分だろうが……さっさと進んで、この目で確認するぞ! 所詮は発信機程度の情報だろうッ!!」
「で、ですが隊長」
「ですがもよすがもあるか!? 引き金引いて、アンカーブッ刺すのがオレ達の仕事だ。腰引けた奴はさっさと空の旅に帰りやがれ!」
「…勇ましい事。鬱憤晴らしたいし、私もさっさと行こうっと。兄さん」
「ウガッ」
一代のバギーを駆ってフォボスが先陣を切って走りだす。彼は一度も振り返ろうともせず、更にフォボスの背中をシズが追って行く。こうして先に行く者が居れば追従するのが人間の群れる特徴なのか、僅かに残っているであろうマズマ達の生存を願う者。くすぶっていたが、フォボスの言葉で吹っ切れた者と次々に列を成して面々が突撃し始めた。
なんて単純な奴らだと、彼は笑って走りだすのであった。
「おらおらおらおらおら!! そこどけや鉄屑共ぉぉぉぉぉ!!」
「PSSの勝利の為に! PSS万歳!!」
「暑っ苦しいわね。兄さん、薙ぎ払うわよ」
「ウガァァァァァァァァァッ!!」
「あ、兄さんも熱血路線だったっけ」
約一名程クールダウンした者を残しながら、瓦礫となった首都圏の道を走る部隊がいた。エンジン音と車両に取り付けられた置き型の武装から放たれる破壊力は、携行する機銃などの威力を大きく凌駕しておりアーマメントであれば小型は一撃、中型以上が現れても接近した頃にはシズ達人外筆頭が塵すら残さず爆散させると言った具合である。
ステラとマズマの開いた道を背位置するかの如く信仰する彼らを例えるとするなら、むしろ此方が侵略者ではないのかと言わんばかりの進撃っぷり。しかし、それでも横側からの不意打ちや射程圏外から飛来する狙撃で部隊のバギーが横転、爆発して行く様は決して一方的な展開では無いと言う事を表していた。爆風に巻き込まれて即死するPSS隊員達や、道路に投げ出された者。そう言った者たちを一切振り返らず、フォボス率いる突入部隊は速度を緩めない。だが――――
「負傷者をビルに寄せろ! 十時の方角に敵を誘導、急げ!」
「了解!! そこのお前、補給装備は残ってるか!?」
「医療具はありませんが、弾薬なら」
「上出来だ。スナイパーはビルを上れ! 声上げて指示飛ばせ! 所詮奴らは俺達の言葉何ざ分かっちゃいないんだ!」
「ケツの青い新人はスナイパーの護衛にあたっとけよ! 体はって戦うのがPSSのレッスンワンだからなぁ!」
『Yes,sir!!』
転げ落とされた者達も、年長の生き残りが自然と指示を飛ばし合ってアーマメントの後進を撃破して行く。正に寄せ集めの部隊で、弾薬や医療具の補給も期待できないアルファ・ブラヴォーもバラバラの顔も知らない者たちばかりだが、この場に来ているからには志と思いは一つ。
地上に降りたことでアーマメントからの犠牲者も増える一方ではあるが、総力戦を仕掛けて来ているだけあって初期にマズマ達が撃破した分を含めると遥かに闘いやすい。長くPSSに身を置いた者たちが階級関係なく戦闘指南を実践して行くことで、生き残りの新兵もつられるように錬度は高められていく。
一機撃墜。回転しながら飛びかかる小型アーマメント・イーターの口を狙って投げ込んだグレネードが炸裂。誘爆は周囲の敵を巻き込みながら、視界を奪って動きを止める。そうした相手には高所に上ったスナイパーが駆動系を撃ち抜き、歩兵隊が弾丸の雨を浴びせて行く。血糊が飛び散る量よりも、圧倒的に炸裂する爆風と鉄塊が多い戦場には硝煙の匂いと共に、屍を背にした勝利の道は確実に彼らの目に映っていた。
「……アイツら、やるな」
「若い奴には負けてらんねぇぜ! おい、屋根開けろ。一発ドでかいのブチ込んでやる!」
「前方に巨大な敵影確認。赤いシルエットは…ビッグマウス型!」
「あら、手間取るでしょうし私に任せて貰うわね」
それに触発されるのは、無事にバギー他重武装車で目標ポイントを目指す混合本部隊。まるで体のいい試練の様に現れた大量のアーマメントと、巨大で小さな村なら数秒で滅ぼしてしまう火力を持つ巨大なビッグマウスという敵が展開するが、まるでサーフィンで大波に乗れたかのような陽気さで戦士たちは盛り上がる。
何か思う所があるのか、名乗りを上げたシズがカーリーの手綱を握って速度を上げると、カーリーはジェット機もかくやという速度でビッグマウスに迫り――
「消し飛びなさい!」
上のシズが、剣を振るう。
一瞬の白き閃光。そしてエネルギーが浸透した事で、動力炉に異常をきたしたアーマメント達が次々に爆発して行く。シズの振り抜いた方向から、ドミノ倒しのように爆発の連鎖を起こして行くアーマメントの壁があった所を乗り越えると、最前線を走っていたバギーは爆炎に突っ込みながらその道を踏破。ライオンがサーカスでやる炎の輪潜りの様にしてフォボスがその地点をくぐりぬけると、彼も男として乗って来た所があったのだろう。こんな狂言を言い始めた。
「おい運転手…っと、ジョッシュだったか」
「ん? どうしたフォボス――っとぉ」
「うぉぉ、いきなり左折するんじゃねぇよ! …ったく、そりゃ何でもいい。確かステレオ付いてたよな。大音量でそれ流せ」
「はっ? オマエ、正気かよ」
「とっくに狂ってら。無双ゲームのお約束は、洒落たBGMに決まってるだろうが!」
「ヒュゥ、オーケー。おい他の車両の奴ら、聞いてたか。マリオン指令の趣味がフォボスにも移っちまったらしいぜぇ~? フォボスの決めた曲全員で流すが文句はあるかぁぁぁぁぁぁ!?」
≪ねぇに決まってんだろ!≫
≪やるなら早くしてくれ。こちとらリズムがなくて寂しかったんだからよォッ≫
≪YO!YO! Heyフォボス、選曲はノリノリで頼むぜYear,ahhhhhh!!≫
「任せろDJ。突っ込むCDは――――」
「NO SCARED」
≪イィィィイィイャァァァァアアハァァァッァッ!!≫
≪流石だぜ、分かってるじゃねぇかアルファ隊長!≫
≪シング・ラブみてぇなショボくれた歌なんか必要ねぇぜっ! 時代はロックンロールだァッ!≫
「んじゃ、スイッチ――」
『ON』
ベースの特徴的な音が持続的に響き、恐れを忘れた勇者たちが笑みを備え始める。アーマメントの攻撃で車両が大破した奴らは死にながらに引き金を引いて前線を開き、取り残された生き残りは弾薬すら無い中小型のアーマメントを重武装の重さで踏み潰すッ! 全てはロックン・ロールの魂の元、暑苦しい雄たけびを上げて戦う自分を最高だと思ってのこと。
相手はいつまでも弱いまま。だからオレに勝てないんだ。そんな思いのまま、死ぬ間際まで勝利を胸に逝くマリオン程の老兵もいた。老兵は死なず、ただ若者の道を切り開くのみと腕を天へと突き出して。
「彼ら、馬鹿なの?」
「馬鹿やってる奴らに乗るのが俺の仕事だ。嗚呼チクショウッ、奴ら楽しそうにしやがって……我慢何て出来るか!? できないに決まってるだろうがよ!!」
マズマが危険だと言うのに、ステラの所在がつかめないと言うのに、「彼」もまたPSSのロックンローラーと魂を同じくする
「Let’s―――」
『PARTYyyyyyyyyyyyyy!!!』
彼の呼びかけを皮切りに、金属の侵略者たちは出てきた傍から何もできずに沈んで行く。近くにあった「木製の建物」を「武器」にした彼は大型のアーマメントが居そうな場所、小型のアーマメントが侵入してくる小さな隙間めがけて建物や瓦礫を投げて行く。彼の登場で本隊に振りかかる攻撃の嵐は一気になりを潜め、戦死者は驚くほど少なくなっていく。……いや、全てが彼の活躍では無い。この場に居る全ての漢たちがロックンローラ―であり、魂のロックンロールを奏でる者たちであるから勝利と命を手にできるのだ。
そうした中でのアドレナリン分泌と曲のリピートが始まったところで、彼らは遂に目的のシティ・イーターへと到達する。
「ブラヴォー1はアルファに続け! スナイパーは敵拠点の上によじ登って準備だ!!」
「ブラヴォー2、戦線配備完了しましたッ! ご武運を、フォボス隊長!」
「シズ、後は任せたぞ。カーリーは何とか留めてやってくれ。…あと、暇があればマズマの捜索を頼む」
「はいはい。…それに、もう馬鹿らしくてこんな種族支配する気にもなれないから、安心しときなさいよね。あ、別にこんな星の為なんかじゃないんだから」
「……お、おう」
あれは天然か? と首をかしげながら「彼」はアルファ・ブラヴォー混合チームに続いてシティ・イーター内部に侵入。すぐさまチェス盤のような趣味の悪い内装に隠れ、姿が見えなくなった。
「…ねぇ兄さん」
「ウガ?」
「ツンデレって、あれがテンプレートでいいのよね?」
「…ウォ、ウォゥ」
このタイミングで、妹の将来を心配するカーリーなのであった。
「……辛気臭ぇ所だ。エイリアン共が陰気なのも納得がいくぜ。ったくよォ」
「フォボス隊長、点呼終わりました。…突入予定部隊40名の内、18名がMIA。5名が死亡を確認されております」
「大半を入口の防衛に回したのがツケちまったか? いや、少数精鋭の方がかえって動きやすいか……チッ、いい感じにロック聞けてたのにこの静かさじゃ、滅入っちまうぜ」
「……隊長、僭越ながら一言よろしいでしょうか」
「ん? ああ」
手を挙げたのは、ここまで残って来た6名の新兵の内の一人。本当に黒い肌は旧アメリカの特徴をはっきりと残しており、瞳の力強さは並みの物では無い。その視線を受け止めて、フォボスは面白そうにドレッドヘアーを掻きあげた。
「これより進む我ら新兵に、助言を…いえ、命令を下していただきたいのです」
「命令? んなもん作戦時に言われた事じゃ駄目なのかよ」
「いえ、私たちはフォボス隊長だからこそお言葉を頂きたい。あなたの一言で、意気消沈していた我ら全員は恐れを乗り越えました。その勇気を奮い立たせるお言葉を、今一度我らだけに与えてほしいのです」
「……面白いじゃねぇか」
「ちゃんといい言葉あげろよフォボスー」
「時間無いんだし、さっさと言ってさっさと進みますよ隊長」
「わーってる。……それじゃオマエら、“殺せ”“殺されるな”。これさえ守れば帰った時に合コンでも飯のオゴリでも何でもやってやる。セーフティは離しとけや、ルーキー」
「イエス、サー!!」
『イエス・サーッッ!!』
「よぉし、これで茶番も終了だ! 突撃、開始ィィィイイイイ!!」
『おおおおおおおおおおおおおおっ!!』
PSSではチャメシ=インシデントである鼓舞と士気の底上げも終わり、それに乗っかった男たちは中枢を目指して突っ走る。弾薬と疲労には若干の心配はあるものの、それを上回るガッツとロック魂を備えた男たちはステラ奪還、打倒総督を胸に勇ましい足音を響かせるのであった。
「…………」
戦火からは少し離れた瓦礫の一角。
そこには看板などの赤色とはまた少し違った赤色が、白い紙に落ちた絵具の点のように存在していた。
「う、うぅ……ここは――」
それはピクリと指を震わせると何事かを呟いて、
「ああ、ステラ!?」
周りのビルごと瓦礫を吹き飛ばす。
赤い影は片手に背丈を越える大剣を持ちながら、自分に心を教えてくれた愛しい相手がどこに居るのかを探し始める。が、彼はそこまでやってようやく気絶する直前の事を思い出した。
彼女に対する返答を渡そうとした瞬間、そこを狙う非道な輩が横入りして――?
「ザハ……アイツ、俺の邪魔をしたのか。よくも……ステラの我儘を聞いてやれるところだったのに…許せるか!? クソォッ」
意味もなく地面を殴りつけ、アスファルトに巨大な地割れを発生させる。
しかし、イライラした手がつけられない子供を彷彿とさせた彼は一気にクールダウンし、近くにあった瓦礫を口に運んで噛み砕き始めた。一見異常に見えるその行動はエイリアン達が持つ固有の技能―――ネブレイド。
ただ情報を取り込むだけではなく、破損した肉体をも修復させる事が出来るのは体の半分がアーマメント化という現象を起こしている彼ら地球に侵攻してきたエイリアンの特権だろう。他のネブレイド種族であったなら、ただの生身でしかないのでこの様な真似は絶対にできない。
彼はザハからの不意打ちで失ったエネルギーを補給し終え、すっと立ち上がった。
「ステラ……待ってろ、すぐ行く!」
普段の気だるげな印象からは想像もつかない程、燃え盛る炎の様な激情を胸に彼は紅い軌跡を残してその場所を去った。己が選んだ道は、今度こそ間違いではないのだと。
「離せ、離せぇぇっ!」
「暴れるな。…貴様の戦闘、見せて貰ったが―――総督のクローンに相応しいポテンシャルを秘めているようだな。まだ実力は不足しているが、総督の前に立てば自ずと力も引き出されるであろう……恐れるな、激流に身をゆだねるがいい」
老成…いや、覚ったかのような大言をはたく初老のエイリアンにステラは抵抗したが、棺桶の様なアーマメント「デッドマスター」に四肢の動きを抑えられて脱出する事は叶わなかった。
そんな彼女たちが居るのは、驚くなかれ。なんと地球と言う舞台を離れ「月」へと到達しているのである。起動エレベーターを昇り切った先、バラバラに展開された拠点らしき場所は何故か空気があり、そして狂いに狂った重力が足場一つ一つに在ると言う不思議な空間。
完全に宇宙空間から安全を保証するガラスも障壁もないのに、カエルですらしばらくの生息は可能な場所は正に神秘的と言えよう。―――アーマメントという敵さえいなければ。
「マズマもあれでは動けまい。今頃雑魚アーマメント共に喰われているだろうな」
「――――ッ! 貴様ぁぁぁぁぁっ!!」
「暴れるな、と言った筈だ」
「あ、がっ……」
心臓の上に裏拳を打ち込まれ、ステラは言葉を詰まらせる。だが敵エイリアンの中でも桁違いの強さを誇るザハは薄く鼻で笑って、月よりもさらに上だと誇示せんばかりの長く白い階段をのぼりはじめた。
「さて、アーマメントよ…総督の元へ連れて行け。私はここで上ってくるゴミを掃除するとしよう」
ザハの言葉は間違いでは無いかのように、鎮座していた巨大な人型の兵器に乗り込んだ彼は中央部に在る穴の中で浮かび上がった。もしこの場に人間が居れば空中浮遊の様に見える彼に驚く者がいるかもしれないが、それより特筆すべきは彼の乗り込んだ兵器。
コクピット、と呼べる部分はなんの防壁もなく、中央の穴で浮かぶザハの指、腕、足、関節の動き全てに同調する動きはジェンキンスでさえ再現不可能なノータイムでの操縦伝達速度。それに加え、あの鍛えられたステラを一撃で悶絶させる威力をザハは己が肉体の身で成し得ることが可能なことを考慮した場合、人間はどれほどの武装を固めようとも敵わないと悟ってしまうだろう。
「さぁ……始まるぞ。総督のネブレイドが」
希望の光に紛れ、絶望の闇は着実にその影を広げていた。
すみません。熱出てたので中々キーが打てず、考えまとめるのが遅くなりました。
明日から学校ですので風邪菌移してきたいと思います。風邪は移した方が早く治るとも言いますし、そうしたらすぐにこちらの完結目指して書けますからね。
あ、それからロックは至上です。異論は認めます。