カウントダウン~A HAPPY NEW DAYS~   作:幻想の投影物

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わからないの。
だって恋なんてしたこと無いから


飛び立つ鳥を見た

「くそ…くそ、クソォォォォォォっ! 何だってんだ!? この僕が、あんなカーリー何かに……ストック如きが! あんな、この僕に…!」

 

 勢いよく瓦礫が巻き上げられる。

 緑色の暗色衣装はボロボロの絹になり果て、顔を覆う爪の様な生体アーマメントの部位は見る影も無くへし折れていた。カーリーの一撃がどれだけ常識から抜きん出ていたかを知らしめる犠牲者、リリオは忌々しいと吼えて睨みつけているが彼をこんな有様にした当人たちはどこ吹く風でカーリーの周りで何やら笑っている。

 

「馬鹿にしやがって…! クソがぁッ!!」

 

 まだ損傷も軽い方だったアーチェリーを引き絞り、エネルギーの矢を番える。この一帯を消滅させてしまいそうな不可思議なエネルギーが貯蔵して行く中、ようやく異常に気付いたPSSの一人がリリオの方向へ指を指していたがもう間に合わないとリリオは確信していた。

 消し飛べ、と。ただただ憎しみを宿して彼はアーチェリーの弦を離そうとして―――視界が大きくぶれた。

 

「え―――?」

 

 手は動く。首も動く。リリオが見たのは、遥かに百メートルは先にいた筈の男が何かを振りぬいた形で止まっている姿。彼が手に持った鉄の廃材についた赤い液体からは、生々しい温かさとついさっきまで流れていたような新鮮さが立ち上っている。

 それを見下ろす自分は…まさか?

 

「が、ふ」

「チェックメイトだ。ハンターさんよ」

 

 着地、と言うよりも地面に叩きつけられ、その男の横に自分の下半身(あし)が見えた。力が入らない手で腰のあたりを探ろうとして、何もないと空を切ったことに気がつく。(スカ)の感覚は自分の体がすっぱりと半分に断たれている事を自覚させ、急速にリリオの体に痛覚と言う五感を取り戻させた。

 声も出ず、ただ憎しみとこんなストック如きにやられたことでプライドが軋みを上げる。何かがひび割れて行く様な、脳内で血管が千切れて行く様な音を感じていたリリオは抵抗しなければならないと必死に動く部位で「彼」の喉笛を引きちぎろうと思い立つが、そんなリリオが次に見た光景は、自分に振り下ろされる武器と呼ぶにもおこがましい鉄柱。激しい痛みの一瞬後に、永久にリリオという自我が目覚める事は無くなった。目の前に広がる黒と一瞬の想像を絶する痛み。それがハンターとして鋭敏になった感覚を持っていた男の最期。

 

「チッ……胸糞悪ぃ。人間は残虐性から出来てるって? そうかもしれないな」

 

 元の世界にいた時にやっていた某サイバーパンクゲームの言葉を思い出し、リリオのへばりついた内臓器と血糊が滴る鉄柱を放り投げる。轟音と鉄特有の甲高い反響音を轟かせて地面に落ちるそれを見届けると、残ったリリオの下半身を蹴っ飛ばして海に隠す。こんなグロテスクな物を放置しておくのは士気にも関わるであろうし、何よりカーリー歓迎ムードへの妨げにもなる。敵将の首を打ち取って気分が高揚するのは戦国の時代だけだ。今となっては怪奇の目で見られる原因にしかならないのだから。

 

≪お疲れ。相も変わらず最前線の華役と後処理なんだね≫

「もう、この世界に住む奴らが輝く時だ。異邦者は汚れ役じゃないとな」

≪あーあ、ホント嫌な位に殊勝なことで。そんじゃ座標送るから、カーリー連れて合流ポイントにブラヴォーチームの誘導お願い。シズも参戦表明してくれるらしいよ≫

「そりゃまた珍しい。漁夫の利でも狙うと思ってたんだけどな」

≪ふふーん。だってさ? って、居ないし。とにかく作戦続行をお願いね≫

 

 ナフェからの突発的な通信が切られ、彼は溜息と共にリリオの忘れ形見でもあるアーチェリーを拾った。エイリアンでしか使えないのか、それとも彼専用の兵器であったかは分からないが、ナフェのミニ・ラビットにも劣らず特異な性能を持つアーチェリーは、リリオの真似をして弓を引く動作をしても何も反応しない。

 せめて使えたなら狙撃手に渡せたのだが。と、追加で来るだろうアーマメント群の掃討のために保存された限りある爆薬の量を思い浮かべ、彼はアーチェリーの持ち手の部分から握りつぶして二つ折りにする。まるでアルミ缶の様にぐしゃぐしゃの鉄塊に変えられていくリリオの忘れ形見は、もはやそこにエイリアンがいたと言う証拠すら残さないことの証明。

 ただの黒いいびつな鉄球になったそれを放り投げると、彼を目指してブラヴォーチームの面々とカーリーが走って来ていた。

 

「突然何処に行ったかと思えば…お見事。流石は衛生兵長ですね」

「役職と行動違うのは今更だけどな。これから合流地点に向かうぞ。カーリー、お前はシズが来たらそっちと行動を共にしていてくれ。ジェンキンス開発局長から直接指示が下りる筈だ」

「ウガ」

「ブラヴォーチームはアルファチームと合流後、二部隊に分かれて装備の補給と換装。片方は小休憩の後に敵要塞兼居住区制圧型アーマメント、シティ・イーターへの突入を開始。デルタチームは空と外の掃討に専念するらしいから撤退時は怯えることも無い。もう片方はデルタでは対応しきれない地上の小型・中型アーマメントからシティ・イーター突撃口の防衛戦線を張れ。エイリアンからはシズとカーリーが応援をよこす筈だ」

「あの可愛子ちゃんと気障男は?」

「現在先行中だ。月までの軌道エレベーターを確保した後、アルファ・ブラヴォー混合部隊はそこで防衛線を張ってステラとマズマの帰還を待つ。俺もそこで戦線に加わるから安心して突撃しろ。だが死ぬなよ。これは命令だ」

「ラジャー。それじゃあ作戦開始と行きましょうぜ、小隊長!」

『タリー・ホウ!』

 

 僅か一時間にも及ばない短時間で、PSSは約半数の人材を失い、敵は大量のアーマメントとエイリアン一体を失った。片腕を吹き飛ばされたと言うミーの動向は気になるが、深追いした所で敵は「魔女」の名を冠した相手。罠にかけられる可能性は少なくない。だからと言って、ああいう手合いは生かしておくには人類にとっては非常に害のある存在故、判断の難しい所である。

 しかし、ナフェの観測を元にミーにも引導を渡す時が来るのだと、「彼」はどこか予兆染みた焦燥感を胸に抱きながら、ブラヴォーチームを率いて突撃を始めた。目の前に広がる突入ルートには多少では済まされないアーマメント達がひしめいているが、此方は依然として優勢であると言えるだろう。戦死した者たちの覚悟を背に、自分達PSSは戦地へと飛び込む事を止めるわけにはいかないのだ。

 このまま、必ずこの世界にいる人たちを生き残らせて見せる。自分に宿った驚異的な肉体を信じ、彼は前を突き進む。その先に一体何が待ち受けているのか、自分が行った介入はどれほどに運命を歪ませたか。

 

 それすら知らず、ただ愚直に。

 

 

 

 

 戦火は収まる所を知らず、また敵のアーマメントがただの鉄塊へと変わっていく。すり抜ける剣、火を吹く砲、それらを扱う人ならぬ者たち。赤い残影と黒の軌跡を遺す人外筆頭の二人は、その留まる勢いすら感じさせぬ進撃を続けている。彼らの前に立ちふさがるエイリアンが居るとするなら、アーマメント部隊を率いて月から降りてくるザハの線が濃厚。しかしマズマは続く戦闘で多少の疲労を見せながらも、どこかこの中で自分の中でくすぶる違和感を感じ取っていた。

 

「……ホワ―――ステラ」

「何? マズマ」

「気をつけておけ、何があるか分かったものじゃない」

「…うん」

 

 どこか、何かがおかしい。アーマメント程度が障害にならないのは目に見えていて、総督は俺のことなど眼中にないのも分かる。だからこそ、俺の事はこのホワイトの案内役として見ていて決して自分の興味の対象には入っていない筈だ。

 だと言うのに、この焦りや変な感覚は一体なんだ!? 動悸が収まらない。軌道エレベーターどころか、シティ・イーターの仮拠点にすら到達していないのに焦燥が増すばかりだとは…。

 目の前を見る。少なくともストック共から見て堅牢な装甲をしているシティ・イーターは確かに壁かも知れんが、俺達にとってはそうでもない。

 

「マズマ、行くよ」

「っ、ああ……オマエに合わせるぞ」

「うん」

 

 いや…今は杞憂に過ぎないなら放っておくしかないだろう。

 この人類と共に歩む「役」を選んだからには、自分はそのために奔走する駒とならなければならない。自分の事であるのに、たった一度きりに決めた選択で過ごす時間を決定するなど狂っていると言われたこともあるが、そんな物はこの「心」とやらを知ってから全てのエイリアンに言える事だろうに。

 ともかく、今はこの可愛い弟子と共に人類側の道を作らなければなるまい。

 

「ロック―――」

「「ファイア」」

 

 砲塔を壁に向け、ステラの砲撃に合わせて威力を後押しする。爆音と煙が晴れた先には不出来な大穴が開けられていて、異星を旅する「船」と似たような懐かしい空気が流れてきた。……この匂いを感じるのも久方ぶりだな。奴らのいた場所ではコメディが繰り広げられているようで、だがリアリティに満ちた温かさがあった。しかし過去の居場所を見返して見ると、どうだ? この場所は酷いものだな。

 薄暗い、硬質なデザイン、冷たい空気。命の脈動など一切感じられない。あのジャパンの職人達が故郷の元首都にこんな物を置かれていると知ったらどう思うだろうか? あの魂が込められた様な精巧な作りをした物を初めて見た時は、何かが震えるようだった。だというのに、懐かしの仮拠点は―――

 

「俺はこんな所にいたのか……?」

「マズマ、何か言ったの?」

「…いや、何でも無い」

「……辛いのかな。私は、PSSのマズマしか分からない。でもマズマは、元は敵だったよね? だからもしかして―――」

「そんな筈は無いさ。俺は、俺は……奴らのいた場所の方が数倍マシだ、と思っている」

「そっか」

 

 一体、俺は何を言っているのか。

 今となっては敵地となった場所で足を止めて、役者には相応しくない私情を挟んだ台詞を吐く。今までナフェのように、人間の心に触れただけのエイリアンとして「己」を見失わないようにしてきたが…最近はどうにも感情がぶれているようにも思える。こんなことでは何時撃墜されるかも分かったものではないと言うのに、俺は…?

 

「クソ」

 

 こんなことではだめだ。俺はPSSの馬鹿どもを導き、ステラに総督を討たせて敵対するエイリアン共を薙ぎ払う役割。敵を裏切り、人間の為に前線で戦う兵士としての役を選んだ筈だ。やっている事には何の違和感も無いのに、ざわつく心臓の辺りが変に痛みを発する。

 奴らのいた場所でもそうだった。役を演じている時にはここが痛んでいたのに、自分でもクールだと思っている性格を崩す様な行動をしてしまった時には何故か晴れやかな気分になる。痛みも無くなる。これは一体何だって言うんだ? あの男から血液をネブレイドしてからはそれが顕著になっている気がするが、確信は無い。

 

「マズマ」

「……何でも無い。何でも無いんだ。早く行くぞ…マークで道を記しておこう」

「こっち見て、マズマ」

「…なんだ」

 

 奴に向き直ると、エイリアン共や総督にも見られない「何か」がある馬鹿弟子と目があった。青く澄み渡る空の様な瞳は、恐らく色が違ったとしても同じことを感じるだろう。何もかもが見透かされているようだ、と。

 

「戦う前に、PSSで教えてくれたよ? “戦いは迷わず、武器を握ればただ真っ直ぐになれ”って…そう言ったマズマが、今は一番不安に見える。この程度の敵なら私だけでも十分だから、ドラコに戻って休んでもいいから……無理しないで」

「無理、だって? この俺がそんなこと、有り得んさ」

「嘘」

「嘘なものか」

「分からないけど、絶対に嘘」

「……訳が分からんぞ」

 

 胸中に抱えるもやもやとした間隔はあるが、戦闘に支障をきたす程でも無い。だと言うのに、この馬鹿弟子は休めと言ってくる。心配しているつもりだろうが、生憎と自分はまだまだ―――

 

「もしかして…寂しい、の?」

「――――っ!?」

「マズマ、いつも皆と一緒にいても…何だか遠くにいる様な気がしたの。遠いところから見てるみたいな、あとちょっとで手が届かないような場所にいるって、そんな風に思えるくらいの場所。私にとっては初めて会って、初めてお話して、いろんな事を教えてくれたマズマはとても大切な人。だから、どうして寂しそうなのにそんな遠くにいるのか分からなくて」

「……寂しい、なんて。馬鹿馬鹿しいにも程がある」

「マズマはエイリアンだから? ナフェにはあの人がいて、自分には居なかったから? そんな違いが、マズマは触れられなかったからなの?」

「何の話だ」

「一緒にいてくれる人。マズマは、訓練が終わるといつも一人になろうとしてる。カーリー達が来た時も、少し話しただけですぐUEFの屋上に行ってた」

「一緒にいて、何になる? 俺は奴らと違って」

「違うから一緒に居られない? だったら、私が一緒にいる。ずっとマズマと一緒にいる!」

「~~~~ッ! お前はさっきから何を言っている!?」

 

 何を、訳の分からない。

 コイツは一体何がしたい? 俺は何を抱えている?

 分からん。これまでネブレイドした奴らは俺達と同じく理性や文化すら無い獣。だからこそここのストック共をネブレイドした時はこの感情に振り回されそうになって、何人もの情報を混ぜ合わせることで一つの情報の影響力を薄めた記憶がある。

 そこから形成した今の人格に、「あの男」の情報が影響を与えて来ていた。この世界が奴の世界で観測でき、この世界の結末はこのホワイトにエイリアン共が殺されることで終結する。だがそれは、あくまで奴らの観測した結果。奴らの創作に過ぎない。

 だからコイツは鍛え上げれば面白そうになると思った。「奴」の記憶では淡白で知らない事ばかりのこいつに知識を与えた。そうして様々な事を知ったコイツがどんな行動に出るかを観測するために。だからと言って……今は任務の途中だと言うのに、何故こんな事を言い始めるんだ…!

 

「今はストック共の道を開けて進むのが俺達の役割だろう! クソッ、なんでそんな事を言われる度に此処(・・)が痛むんだ? 人間どもはこんな痛みを抱えているとでも言うのか? どの情報にも載っていないこれは、一体何なんだ……!」

 

 PSSの奴らに対する「表現」は、情が湧いたと言う語法が正しい。そしてあの男に関して抱く感情は、憎たらしいが認めているという表現が正しい。そしてコイツには手間のかかるが傍から見て良い師弟という役職の筈だ。

 人間(ストック)はだれしもが己を演じ、社会の中で回っている。そう言う意味で俺はどんな同胞達よりも的確に人間らしかったはずだ。PSSとは友好な関係を築き、科学者どもへは実験協力者としてのパイプがある。顔の広い敵を裏切ったエイリアンで、PSSの中でも人気者のマズマ。それが俺に求められ、俺が演じるべき題目。

 

「……クソッ、クソッ! なぁステラ、お前は何だ…? お前は俺の弟子で、それだけじゃないのか? 最終兵器、コードネームBRS2035ステラ。面倒見のいいマズマから師事を受ける人類の希望の(ステラ)。それだけの筈だ…俺の見た役割は、求められた役は」

「役なんかじゃない!」

 

 

 

 初めてかもしれない。こんなに叫んだのは。

 

「違うよ。…マズマは、私の憧れる人。一緒にいると、心が温かくなる人。あなたの道を助けるために私がいて、“あの人”は人類は大人に任せていいからマズマの隣にいてやれって言ってくれた。だから私は人類の道具じゃないし、あなたの横にいるただの人間だよ。クローンとか、エイリアンとか生まれは関係ないの。マズマがつらそうにしてると私は悲しい。マズマが辛かったらそれを拭ってあげたいの」

 

 確か、PSSでも意外にロマンチストなフォボスが言ってた。

 私がマズマに抱く思いは「恋」って言うんだって。

 

「私じゃ足りないかもしれないけど、私がこの手でマズマを助けたい。一緒にいて、マズマが心から楽しいって思えるようになりたい…ううん、なるの」

 

 「恋」についてはマリオン指令が教えてくれた。

 その人が好きだって思えて、誰よりも好きだって思えて、その人と一生隣に居たいんだって、心から願う様な人に抱く感情。自分の全てを捧げて、相手の全てを受け止めるための覚悟から生まれるすてきなもの。

 

「マズマが話しかけてくれたから、私はこうして目覚める事が出来た。あなたが教えてくれたから、世界が今息を吹き返してきている事を感じられた。だけどそこにマズマが居ようとしないのは許せない。マズマだって此処にいなきゃならないから、だから」

 

 その先―――愛についてはナナが教えてくれた。

 

「一緒に居させて欲しいの。マズマの心を温めて、本当のあなたを見せてほしい」

 

 最高の好きを、ただ一人へ送る。

 

 

 

「……お前は馬鹿か。大馬鹿か。いやただの馬鹿じゃないな…阿呆だ」

「……え?」

「やっと分かったさ。このいじらしい感情が何か」

 

 馬鹿、馬鹿、馬鹿だ。本当に馬鹿としか言いようがない。

 コイツは、どうしてここまで純真なんだ?

 

「お前達の印象じゃなく、俺は心を知らなかった…らしいな。だから何かが感じられなかった。その空虚さが手に入れた。いや、与えられた空っぽの心に何も注がれず痛みを発していたのかもしれん。なんて出来の悪いストーリーだって? どこかで読んだような、チンケな筋書きがまさか自分自身に来ることでようやく理解できるとは思わなかったさ」

 

 ああ、ただ温かい。満たされている。

 初めて他人の感情を受け止めた。ステラが抱える想いを真正面から感じた。他人の心をネブレイドで内側から知るんじゃ無く、外側から無理に捻じ込まれる感覚を味わった。

 足りなかったのはこれだ。だが、埋まって初めてようやくコイツの言いたい事や周囲の人間達の変な視線の意味に気付くなんて思える筈がないだろう? 少なくとも、俺はそんな事を予測した事なんてない。

 

「しかもそれに気付くのが愛の告白だなんて、色々と足りないものが分かった途端に一番重い奴が来るとは、自分で想像どころか誰が予測できるんだ? ああそうか、傍から見れば俺はとんだ道化だったわけだな。誰が見ても恋する少女だったステラに気付かない鈍感男と言ったところか」

「……私は本気。誰もいないから、マズマだけだから言ったの」

「―――分かっている。分かっているさ」

 

 逆に、こんなもの誰が勘違いするというんだ。そんな風情のない言葉は呑み込んだ。

 

「整理のつける時間位は欲しい。…この戦いが終わったら、改めて考えるしかないな」

「駄目。今言って。こう言う戦時に戦後の事を言うと死んじゃうって、アレクセイが言ってたもの」

「ジンクスに過ぎ――」

「今、答えて欲しいの。我儘ばっかりだけど、マズマの心が今聞きたいの! もどかしさはもう感じたくない。マズマが心を受け取ってくれた今だから、感じた事をそのままに聞かせて欲しい」

 

 これは、何と言うか。思ったよりも強情な奴だったらしい。澄ました小娘かと思えば、案外溜めこむタイプとはこれまた新たな発見とでも言ったところか? いや、求められているからには答えるべき、だな……。

 

「そうだな、俺は――――」

 




前書き部分は書き手である私とステラの心境です。
いまいち好きになるってのが判らなくて、色んな作品様から胸が痛くなるような恋愛物を読み漁って恋する人の心境を自分なりに解釈した結果ですから、たぶん見てる人にとっては空虚な文章になりました。

皆さんは恋をしたことがありますか?
もしあるのなら、たぶん素敵なことなんだろうと、この話を書いてて思いました。

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