カウントダウン~A HAPPY NEW DAYS~   作:幻想の投影物

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全く無いので、全くの別視点からのB★RSを書いてみました。
一人称と三人称を使い分けるタイプですので、混乱するかもしれません。


新たな人類

 目が覚めると、辺りは騒音で包まれていた。

 激しい機銃の音、誰かの悲鳴。そして、聞いたことのない生物と機械が合わさったような無理やり感のある咆哮。自分が寝ていた部屋には、おそらく血液であろう赤い液体が……いや、肉片と思しきものも付着している。一応、とある(原宿)な動画で手術の動画を見ていたので、こう言うのは一応我慢できた。だが、それ以上に一つの疑問が思い浮かぶ。

 

「どこだ、ここ」

 

 まったくもって判らない。最後に自分が寝たところは布団であり、このような立派なベッドではない。それどころか、目に見える内装がどこかヨーロッパ染みている辺り、完全に自分の知る場所ではないということが理解できる。

 とりあえずは現状判断をしよう。そう思い、ほとんどを血で覆い尽された窓の外を血糊の隙間から見てみると、見下ろした先の広場には血の池地獄が広がっている。そして変な犬みたいな形の機械が人々を喰い尽しており、引きちぎり、口の中に人肉を入れてはせっせと何処かに戻って行く、という行動を繰り返しているようだった。

 

「織田信長の鉄砲戦法みたいだな……」

 

 いやいや、人死にが目の前で起きているというのに、矮小な現代日本人である自分が何故、此処まで冷静になれるのだろうか? 疑問は尽きぬばかりであるが……あ、蜂みたいな緑と紫の機械も来た。このままじゃ見つかるかも。

 

「やっべ」

 

 とりあえず、そのまま隙間から見ていると見つかってしまい、他の人間と同じように殺されてしまうかもしれないので、慌てて自分の指を切り、内側から血を塗りたくって窓の隙間を無くす。何故か判らないが、そうしないと生き残れないように思ったからだ。指がひりひりするのは仕方ないとして、患部には布を当てておく。

 血糊を十全に塗りたくり、日光がこの部屋に入らない事を確認して後ろを振り向くと、倒れている人影があるようだった。すぐに近づいて揺さぶってみたが、返事は無い。

 

「……大丈夫……じゃないな。…英語で通じるかな?」

 

 とりあえず、大丈夫か? とかそれらしい事を小声で言って再度揺さぶるが、全く反応が無い。まさかと思って脈をとってみたが、既に脈は動いていなかった。

 これは不味い。死体が近くに在ると、何時か腐って腐臭を撒き散らす。まあ、いくら死体を見ても冷静とはいえ、自分がその死体をどうこうするなどと言う気もなく、放っておくしかないのであるが。……しっかし、某「運命/番外」のエネミーとよく似ている気がするな、あの化け物たちは。こっちの方は妙に前時代のメカメカさがある様にも思えるが。妙に角ばってるし。

 だが、ずっとこの部屋にいるということも――――何だ? 外から轟音が。

 

「……いや、ここでヘタに外から見えるようになったら……死ぬな」

 

 そんな確信がある。おそらく、先ほどの轟音がまた大量の人を殺しているのだろうが、奴がこちらに気づきさえしなければ自分が生き残ることも出来るだろう。あくまで希望的観測だが、宝くじで勝った十枚全部がそれなりに当たってた幸運嘗めんな。…って、オレは誰に言ってるんだよ。

 しかし、やはり……このように恐怖に打ち震えながらずっと起きているのも中々に辛い。どうせ特技なんだ。早く寝てしまって、死ぬなら寝ている間に殺されてしまおう。苦痛は大嫌いだ。此処がどこか知らないが、変にドツボに嵌っていた現代日本の生活から抜け出し、変な場所にトリップしたという経験は超常現象の一角として捉えてもいい筈。ならば、地獄や天国もあると仮定して、こう言ったトリップ話を土産に地獄で他の罪人と語らうのも―――

 

「って、なんで地獄行きって決めてんだ。…はぁ、やっぱネガティブだなぁ」

 

 考えても始まらない。とにかく今は寝よう。

 幸いに設備もそれなりに在る。あそこの冷蔵庫の中身は……お、ご都合にもかなりの食料が。まぁ、この死体さんそれなりに金持ちっぽいし、ここで兵糧しようとしたのかもな。っとと、とにかく今は寝る。棒実況さんの絶叫でこの悲鳴にも慣れてきたしな。それじゃ、おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 あれから一度寝たのだが、思いのほか長い間ずっと眠っていたらしく、奇跡的に動いていた機械を確認すると、十年ほど経っていた。いや、ほんとこっちに来た時もそうだが、一体オレに何が起こっているんだか。十年寝ぼけるなんてそんなバカな。

 起きてからちょっと探索してみると、この部屋はホテルか何かだと思っていたが違った。実は、自分が最初に目覚めた場所含め連なる一つ一つの部屋がそれなりな富豪の使用人の部屋で、死んでたあの人は使用人のうちの一人だということも分かった。だから、こうして完全に外にいた他の人の悲鳴が消えた今、この屋敷の食料は全部オレが喰っても大丈夫みたい。腐っていないことを祈るのみ。

 なんか火事場泥棒みたいな気もするが、こうしてサバイバル? なことになったんだ。ありがたく使わせて貰うとしよう。

 

「とはいっても、これからどうするか」

 

 今になって思い出したが、あの人類を虐殺していた機械は「アーマメント」と呼ばれる宇宙人どものメカだった。つまり、この世界は元の世界でも有名だった「ブラック★ロックシューター The GAME」が基盤となっている世界であり、今の年号は2049年。つまり、人類最後の切り札「ホワイト」かもしれなかった少女が目覚める、という原作の二年前だ。

 ……いやはや、非常に困った。銃など撃ったことは無いし、自分に在るのは情報のみ。だからと言ってオレが誰かのアーマメントに喰い尽されて(ネブレイドされて)しまえば、エイリアン側に全ての原作知識が行きわたってしまうことになる。つまり、人類の絶滅が目茶苦茶早まる。「あの子」でさえも起動前に殺されるだろう。

 

「やっべぇな」

 

 だが、それ以前にこうして自分の行動の思考と、未来を模索する思考を分割して考えることが出来る辺り、この世界に来たオレは何かおかしい。人の死を見て動じなかったのも、おそらくこの違和感が原因だろう。……なんか、オレが実は「君は私が作ったクローンとかアンドロイドだ」とか言われても今ならふぅん、で納得できるわ。こりゃ。

 だからと言って、ずっとここにいるわけにもいかないし、結成されているであろう人類最後の12人が集まった「PSS」へと下手に近づくわけにもいかない。行きたいのは山々だが……部隊員や本部がどこにあるか分からない以上、うろうろと外に出て探すとアーマメントに見つかって殺される可能性が高い。それに、もしオレが行っても歴史が変わらなかったら……

 

「“純粋な”人類は残り13人になる、ってか。縁起も悪くなるしなぁ…」

 

 何かその前に死んでた人もいたけど、十二の時点でも結構縁起が悪い。しかも最終的に「お嬢さん」が加わって13人目。…うわぁ、今思ったらPSSって物凄く迷信的に駄目だなぁ。ちょっと製作者は狙ってたのか? と言いたいが、今は自分自身がそのデス・オア・デッドの世界に来ているのだ。事実、何処にいても13人目と言う縁起の悪さは変わりない。何か、この事で変な死に方されると凄く申し訳ない。そこには立ち会えないだろうけど。

 

「……うん、まあ探索するか。その前に祈っておこう」

 

 あの廃墟探索ゲームでも、主人公はこんなさびしさがあったのだろうか。壊れやすい心は生憎持ち合わせていないが、やっぱり心もとないという感情は群れて生きる人類の性だろう。ゲーマーやってて、異世界来訪。歓喜するべきか、泣くべきか……いや、絶望すべきだよなぁ、普通。

 

 

 

 この世界に来て早一ヶ月。粗方人類を殺り終えたのか知らんが、ちらほら見かける程度に残っていたアーマメントもここらでは全く見かけないようになってきた。それはそれで寂しさが増した自分は、少しおかしいのかもしれない。殺される相手がいなくなって残念がるなんて。

 

「やっぱ、合流したいよなぁ」

 

 食料も武器もそこらの家からかき集めた。おかげでリアカー引きながら歩く(たまにある自動車を燃料尽きるまでのったりもした)という生活になったが、意外とネットを巡りに巡った雑学でこう言った非常時に役に立つものをたくさん覚えていたのがサバイバルを促進している。だからと言って豪勢な生活何ぞ出来はしないが。

 そういえば、身体能力もそれなり以上に上がっている様子。身のこなしはエイリアン並みには行かないが、それでも人類の金メダリスト方々並みには自由に体が動かせるという謎仕様。見た目は別にマッチョと言う訳でもない。一体何があるって言うんだ、オレの体。

 そうそう、一応生きた人にも遭遇したが、オレが三日も滞在するとその人は満腹のままに息を引き取った。言葉も通じない(此方だけ何故か理解できる)という不思議な三日間だったが、その人は安心して逝ったんだと思う。年齢は高齢のおばあちゃんだったので、おそらくは衰弱か寿命、もしくは他に人がいたという安心感で気も魂も抜けてしまったのか。そう思うと、自分が殺したみたいで気分が重くなる。逆にそれほどの感情しか抱けなかった自分に吐き気がするが。

 

「♪~……うん?」

 

 あ、アーマメントだ。犬みたいな真っ白…ということは、エイリアンの中でもかなりの実力派、「ザハ」直轄の手下だろう。見つかるとまずいので、リアカーもろとも静かに隠れる。

 しかし、ここら辺に残っているなんて思わなかった。それにつけて、ザハの個体はかなり強力だ。レベルで表記すると上位の個体になるだろう。普通のアーマメントでさえ人間の素手じゃ歯が立たないのに、ザハタイプなんて死亡フラグの塊だ。…というか、よくこんな窮地にフラグなんて言葉使えるな、オレ。

 

「だけど、どうするか……」

 

 向こう側には結構くたびれた年季の在る「ジェネレーター」…平たく言うと、適当なアーマメントを生み出す機械がある。長い間にメンテもされていないのか、もうあのイーター型を生み出す程度にしか稼働出来ていないあたり、ここでもし生き残っている人のためにも、潰しておく必要があるだろう。だが、どうするか? アレを破壊するにはロックキャノン位の威力が必要だし、いくらボロボロだと言っても、突貫すると普通の人間が鉄に殴りかかるようなものだ。放置したいところだが、あのおばあちゃんの様な例を考えると……あ。

 

「あそこのタンク、使えそうだな」

 

 あのイーターは放っておくことになるが、ジェネレーターが立地する近くの建物の上にある貯水タンクは、落とせば中々の威力がありそうだ。それほど高い位置に在るという訳でもないし、アレを落としてしまえば破壊できるかもしれない。

 

「よし、思い立ったが吉日。やらなきゃ今日は凶の日だ」

 

 あれ? なんかこの台詞定型文として使えそうだな。中二全開だが。

 

 

 

 

 建物になんなく上った青年は、イーターに気付かれることなくタンクの傍まで来た。建物自体が傾いており、タンクを支えている金属部分も喰われたり、腐食した跡があるので彼が全力で押せば、確かにそれはジェネレーターの上に落ちるだろう。

 だが、それをすると青年の身が危なかった。イーターは彼に気付くだろうし、流石にタンクを押した後では疲れて追いつかれる可能性もある。そうなってしまえば知識がエイリアンたちにバレ、人類共々バッドエンドルートに入るのだが……。伊達にこの男、変に強靭な精神を手に入れていなかった。

 

「よぉぉぃいいしょぉぉぉぉおおおおッ!!」

 

 周りを気にすることなく、大声を上げながらタンクを思いっきり押し落とす。支えていた支柱部分が痛快な音と共に弾け飛び、質量と重力によってかなりのダメージが期待できそうなタンクは三秒とかからずジェネレーターのアンテナのような頭頂部と激突。そして、青年の目論見どおりにジェネレーターは破壊され、タンク共々その破片を散らすこととなった。機能停止と共にカタカタと折りたたまれて行く姿はかなりシュールである。

 しかし、異変に気付いたザハの白いイーターが骨を見つけた犬のように青年の元へ走りだす。建物の側面を器用に上ると、青年の顔めがけて大口を開ける。覗かれた、どこまでも暗闇でどこまでも作りものでしかないイーターがネジ狼のように回転しながら青年をミンチにすべく迫ったが、彼は半身をずらして紙一重で避けた。来ることが分かっているなら、あとは軌道を見れれば彼はこの程度の攻撃はいなすことが出来るのだ。

 そして、地面に着地したイーターを挑発するように手を鳴らす。

 

「ほら、こっちだ大食い野郎。ザハ直属とはいっても、所詮は最下級のアーマメントだろうが」

≪―――――ッ≫

 

 本来、アーマメントに感情は無い。だが、自分で考えるだけのAIは有しているため、彼の言葉に反応するとこもあったのだろう。再び大口を開け、回転しながら彼をミンチにしてやろうと飛びかかった。

 だが、それがこのイーターの最大で、最後の失敗になる。

 彼が同じく半身で避けた瞬間、彼が近くに在った鉄の棒をひっつかみ、飛んでくるイーターをフルスイングしたのである。故に、妙にメダリスト並みの筋力が籠った一撃は、飛んでくるイーターの頭部と胴体部を真っ二つにへし折り、撃ち返された先にあった壁でイーターの体をミンチにした。

 爆発して完全にその身を散らしたイーターを見届けると、彼はいい汗をかいたなどとほざいて棒を捨てる。そして、すぐさま自分の荷物を乗せたリアカーの場所まで戻って行った。

 

「っしゃぁぁぁああっ! 倒せたっ! ラッキー!!」

 

 あのイーター、良く見れば古傷がそこら中に在った。だからこそ、彼は年食って脆くなった装甲であれば自分でも勝てると考え、真正面からホームランしたのである。もしアレが十全な状態であれば、反撃をくらうくらいの覚悟はしていたが、やはり所詮はメンテされていない機械。彼の考えた通りに破壊するに至ったのだ。

 

「こりゃ幸先が良い。できればナナとか、あの辺以外の“グレイ”と会ってみたいもんだ。……生き残ってるかはともかく」

「そうだな。私もそれで“ホワイト”が見つかれば最高だ」

「いやいや、ホワイトは流石に死亡フラグ……えっ」

 

 

 

 

「どうかしたか?」

 

 いや、待って。聞いたことある横の声。

 いやぁ、もしかしてと思いますけど。……いや、覚悟を決めるか。オレの隣に「いつの間にか現れた」。なんて、そんな気配もなくする強者はこの世界で言うと……くそっ、御託を並べるのも面倒だ。えーい、ままよ!!

 

「……総督殿ォ!?」

「ほう、知っているのか」

「あ、ヤベ」

 

 精神面は人間の死で驚かない程成長していたが、うっかりする癖は残っているらしい。

 いや、しかし……詰んだな。

 

「先は見事。よくぞストックの体でそこまで戦えるものだ。知略を活かし、己の限界を知ったままに突貫する様子は実に愉快だった」

「……いや、愉快って総督殿……言っても無駄か」

 

 えー、何処にいるかもしれない人類のみなさん。オレの隣にはシング・ラブことWRS。人類の敵の親玉が現れました。…えぇ~? この世界に来て出会った生きた人間って、二人目がまさかの? 納得できるかっ!?

 しかし、そんな激動を表に出してしまえば詰まらんの一言で殺されそうだ。此処は一つ、この変な胆力で乗り切る道を模索してみよう。駄目だったら、この地でまた斃れる…いや、駄目だな。何か知らんが、無性にこの世界の人類に貢献したい気分になって来た。というわけで、死ぬのはやっぱ止め。

 

「ストック。何を考えているかは知らんが、今はお前をネブレイドする気はない」

「…え?」

「先ほど言ったではないか。“グレイ”を探す、と。あのまま月に引きこもっているのも退屈だ。しばらくはお前の旅に同行し、グレイを見つけては喰らうという事にしようかと思ったのだ。説明はこれで満足か?」

「………また、享楽好きな」

「楽しまねばこの世は生きていけまい」

 

 そう言うことで、この親玉さんはオレと同行する気になったらしい。幸い食料は冷蔵可能に改造したリアカーの中身一杯一杯でまだ数年は持つし、原作始まるまで喰われないということなら、話し相手がいる分楽かもしれない。

 ……人類を生かしたいと思ってるのに、こんなことを考えるなんてどんだけ歪だよ、オレは。

 

「お前が何故、私の総督と言う呼び方を知っているのかも気になる。…だが、ネブレイドで終わらせるには風情が無いだろう。故に、勝手について行くぞ」

「ああそうかい、来るなら来い。オレはもう知らん」

「ふふふ………」

 

 しっかし、こうなると呼び合うことも大切だな。

 

「まぁ、話し相手に慣れるんだったら名前くらい言っとくか」

「ほう? ストックの名を覚えるのもまた良いかもしれないな」

「ああ、俺の名は―――」

 

 さて、WRS。エイリアンの親玉。そっちがオレをどう言う呼び方で定着するかは分からないが、そっちも俺が好きに呼ばせて貰うぞ。旅が終わって何が起きるか全くの未知だが……まぁ、感謝はさせてくれ。人類絶滅の事以外では、という言葉が入るが。

 とにもかくにも、漫画の方かゲーム原作どっちが基準になっちまってる世界かは知らないが、ロシアや北極方面はいかないようにしよう。最悪ステラが目覚めなかった場合、ナナが死ぬのはヤバいどころの話じゃないしな。

 

「何を考えている?」

 

 ん? あぁ……

 

「ちょっと、旅の予定を」

 

 嘘は言っていない。そう言って笑う青年であった。




はい。旅の同行者はラスボスということで。
……いや、たまに他のエイリアンも出しますよ? ちなみに、作者たちの総計をとったら、エイリアンで好きなキャラは、ナフェ:3 ザハ:2 カーリー:1でした。

では、お疲れ様です。

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