そこの主であるゼフィーリア・スカーレットとも出会うが、彼女の初登場はロックを蹴り飛ばすという中々にアレな登場なのであった。
「――まずは遠路はるばる極東の地よりよくぞ参った、歓迎するよ客人達」
「え、ええ……ありがとう」
そう言って歓迎の意を示す笑みを浮かべるゼフィーリアに、紫は曖昧な返答しか返せなかった。
しかしそれは彼女だけではない、龍人を除く他の者も同様の反応を見せており、藍と美鈴に至ってはゼフィーリアに対し怯えを含んだ表情を見せている。
とはいえそれも仕方がないだろう、理由を知っている紫は2人の事を責める事はできなかった。
では何故2人がゼフィーリアに対して怯えているのかというと……彼女の座っている玉座の傍に、ボロボロの布切れ……いや、血だるまのような状態になったロックが倒れているからだ。
ゼフィーリアの吸血鬼を差し引いても凄まじい怪力と魔術をしこたま叩き込まれたロックは、先程からピクリとも動かない。
さすがに死んではいないだろうが、猟奇的な姿を見てはその原因であるゼフィーリアを恐がるのはある意味必然であった。
彼女もそこは承知しているのか、2人の視線に気づきながらも咎めたりはしない。
「余はゼフィーリア・スカーレット、この紅魔城の主にしてそこで寝ているロック・スカーレットの妻である吸血鬼だ」
「……八雲紫よ」
「八雲? ほぅ……お前があの八雲か?」
「私の事を知っているの?」
「無論。お前は様々な妖怪に知られているよ、万物すら操る程の力を持った危険な妖怪としてな。しかし実物はなんとも可愛らしい小娘ではないか、おまけに……処女とはな」
「っ」
紫の顔が羞恥により赤く染まる。
その羞恥を怒りに変え、紫はゼフィーリアを睨みつけるが、紅潮したままの顔で睨まれても恐ろしさは半減する事に彼女は気づかない。
彼女の反応にゼフィーリアは心から可笑しそうに笑い、余計に紫に不快感を与えていった。
「……下品な女じゃな」
「そう言うな半人半霊、このような初々しい女は妖怪の中では珍しいのだぞ? からかいたくなるのは道理というものだ」
とはいえ、あまりそんな事をすれば本当に機嫌を損ねてしまうだろう。
口惜しいがここまでにしておこう、そう思ったゼフィーリアは話題を変える事にした。
「ところでお前達は、余の城に一体何の用で参ったのだ?」
「……そこで無様に倒れているロックが、私達にいきなり襲い掛かってきてね」
「何……?」
そして紫は、今までの経緯をゼフィーリアに説明する。
すると彼女は驚き、続いて呆れたようにため息をつきながら未だに倒れたままのロックに視線を向けた。
「仕方のない旦那様だ。運命というのは変えてはならぬものだというのに……」
「でもお前だって死にたいわけじゃないだろ、だったらなんでそんな風に諦めるんだ?」
「諦めているわけではない、だが運命というのは容易に変えてはならぬ世界の掟。因果を捻じ曲げる事がどれだけ罪深いか、お前はよくわかっていないな」
言って、ゼフィーリアは己の能力を龍人に向けて放つ。
龍人はそれに気づかないが……彼の運命を視て、ゼフィーリアは驚いたように目を見開かせた。
「なんと……そうかそうか」
「…………?」
「なんとも罪深い存在よな、龍人族の血を引いた子よ」
「えっ?」
「お前はあらゆる種族に介入し、それぞれの運命を捻じ曲げている。余からすれば……お前は許されざる大罪人だな」
「っ」
ゼフィーリアの言葉を聞いて、紫は一瞬で妖力を開放させた。
しかしゼフィーリアは動じず、尚も龍人を責めるように言葉を続けていく。
「お前の存在そのものが世界の歪みになっている、本来訪れるべき運命を捻じ曲げ狂わせている。しかも厄介な事に自覚まで無いとは……」
「――黙りなさい。吸血鬼」
強い敵意を込めた金の瞳で、ゼフィーリアを睨む紫。
彼女を睨むのは紫だけではない、妖忌も妹紅も、恐がっていた藍と美鈴も同様の敵意を向けていた。
それを一身に受けても尚ゼフィーリアは余裕を見せ、同時に何処か楽しそうな笑みを口元に浮かべる。
「……すまんな。別にこの子を侮辱するつもりはなかった、許せ」
「…………」
「ただこの世界の運命すら歪ませようとしているのは事実、それほどの存在なのだよこの子は」
「彼はただ優しいだけよ。人間と妖怪という事なる種族が手を取り合って生きていってほしいとただ愚直なまでに信じ歩んでいるだけ」
「その優しさが厄介なものなのだ、自分や家族ではなく世界に優しさを向けるというのは……本来ならばあってはならぬ事なのだから」
そう言ってゼフィーリアは玉座から立ち上がり、倒れているロックの首根っこを右手一本で掴み上げ、頬を叩いて無理矢理起こした。
「いつまで眠っているのだロック、客人の前で無礼であろう?」
「……だ、誰のせいだと」
「知らんな。それよりせっかくの客人なのだ、最上級のもてなしをしてやるのが道理だろう?」
「あ、ああ……」
叩かれた頬を押さえながら、ロックは自らの足で立つ。
「皆のもの、せっかくなのでこの紅魔城を案内しよう。ついてきてくれ」
「余達自らが案内するのだ、感謝するように」
「…………」
しかし紫達は動かない。
先程龍人に向けた言葉が許せないのだろう、だが……その言葉を受けた当の龍人が真っ先にゼフィーリア達についていってしまう。
「ちょっと、龍人?」
「みんなも早く来いよ、何してんだ?」
「……お主、よく侮辱されて平然としていられるな」
「だって何言ってるのかよくわからねえもん。それなのに一々気にしたってしょうがないし歓迎してくれてるのは確かなんだから、みんな気にしすぎなんだよ」
「えぇー……」
それはあまりにも気にしなさすぎではないのか、全員がそう思った。
けれど同時に、当の本人がそう思っているのならば自分達が気にしても仕方ない、そう結論した紫達は漸く足を動かしゼフィーリア達についていく事に。
その光景を見て、ゼフィーリアは誰にも気づかれないように小さく笑みを浮かべたのだった……。
「にしても……やっぱ赤いな、この城」
「赤は吸血鬼にとって切っても切れぬ色、血の色を連想させるこの色は余が一番好きな色でな。父上と母上も気に入っていた」
「でもさあ、目が痛くなってくるんだけど」
顔をしかめる龍人、彼の言う通り紅魔城は赤一色なので目に良くないのは確かだ。
彼の言葉に少しだけ不機嫌になるゼフィーリア、どうやらよほど彼女はこの城の色合いが気に入っているらしい。
「それくらい我慢しろ。しかし……余に対してよくもまあそこまでの口が叩けるものだ、余の力を感知できぬほど愚かでも未熟でもあるまいて」
「わかるさそれくらい、お前すっげえ強いよな……でも、恐い強さじゃなくて優しい強さだ。だから仲良くなりたい」
「…………甘い男よな」
出会ったばかりだというのに、既に龍人は自分に対して警戒してはいない。
そればかりか長年の友のように歩み寄ってくる、まるでこちらが何もしないと思っているかのようだ。
あまりに甘い、甘過ぎる彼の考え方に嘲笑すら送りたくなるゼフィーリアであったが……その甘さは、割と好みでもあった。
だからこそ、彼は鬼や天狗という種族とも歩み寄る事ができたのだろう、先程能力で彼の今までの軌跡を見てきたゼフィーリアはそう思った。
「……豪華な城を案内するのは構わんが、わしらが遊びに来たわけではないという事はわかっているな?」
「せっかちな男よ、もう少し人生に楽しみを見出せなければ醜く老いるだけだぞ? それにお前達がここに来たという事は、カーミラのヤツと戦うという事なのだろう? その時まではゆっくりくつろいでいればいいではないか」
「……やっぱり、戦うのか?」
「無論。ヤツは全ての生物を己の下に置き支配しようとしている、姉としてそれは止めねばならん」
「でも、姉妹なんだろ?」
家族であるのならば、命の奪い合いではなくもっと他の方法で解決できないのか。
そう問いかけようとした龍人であったが、ゼフィーリアに睨まれおもわず口を閉ざしてしまう。
「小僧、いい事を教えてやる。甘さだけでは何もできない、お前の甘さはこの時代において希少だが、同時に世界にとって“病”になると知れ」
「病……?」
「お前の運命を少しだけ視させてもらったが、お前はこれからも様々な者と出会い絆を育んでいく。だが……お前が持つ甘さは時として世界そのものを蝕む病と化す。
そうなれば苦しむのはお前だけではなく、お前が守りたいと願い助けたいと思った者達すら苦しみの中に埋めていく。優しさを履き違えてしまえば……取り返しの付かぬ事態を招く事になるぞ?」
「…………」
その言葉に龍人は、そして誰もが何も言えなくなってしまう。
それほどまでに重く、しっかりと受け止めなくてはならない言葉だと理解できたからだ。
「たとえ妹であっても、力ずくで止めなくてはならない時もある。余とてできる事ならば力ではなく言葉でカーミラを止めたい」
だが、それはもはや叶わぬ願いだ。
ゼフィーリアは当初カーミラを力ではなく言葉で止めようとした。
強き力こそ全てという考えを持つ妖怪だからこそ、その考えに縛られたままではいずれ自らの首を絞める事になるとゼフィーリアは理解していた。
いずれ人間達は自分達よりも数を増やし、やがて時代は人間達を主流としたものに変わっていくだろう。
だからこそ人間と共存し、種の平穏な未来を望んだゼフィーリアであったが……カーミラは決してそれを認める事はしなかった。
「なんとしてもカーミラは止めなければならない、もしヤツを野放しにすれば人間との共存の道は永遠に開かれなくなる。そうなれば……待っているのは破滅だけだ」
「…………」
「戦いなど虚しいだけ、命を奪い奪われ、憎しみだけが増大していく戦いなどな。しかし言葉だけでは足りぬ問題もある、甘さだけでは何も救えん」
「……わかってるよ、それくらい」
「ならば良し。偉そうに説教などしてしまってすまなかったな、このような辛気臭い話などここまでにして――招かれざる客を出迎えてやるか」
「えっ―――」
ゼフィーリアの言葉を理解できず、キョトンとしてしまう龍人の耳に――突如として轟音が響き渡ってきた。
驚きつつも全員が音の聞こえた方向へと向いた瞬間、閃光が奔りゼフィーリアの脳天を貫こうとして。
「っ」
「――遠慮のない一撃、やりおるな」
その一撃を、妖忌が桜観剣の刀身で真っ向から受け止めた。
すかさず左足のよる蹴りで奇襲を仕掛けてきた相手の腹部を蹴り飛ばした。
まともに蹴りを受けたが、相手は空中でバランスと整え何事もなかったかのように着地。
そして、紫達は突如現われた相手の正体を見て、驚きの声を上げた。
「あ、お前は……!」
「……今泉、士狼」
「人狼族か……余の城を壊すだけでは飽き足らず、余の命を容赦なく奪おうとするとはな……なかなか豪胆なヤツだ」
「……八雲紫、それに龍人……まさかこの地で再び会う事になるとは」
己の獲物、『呪狼の槍』の切っ先をゼフィーリアに向けながら、人狼族の青年――今泉士狼は小さく舌打ちを放つ。
彼等がゼフィーリアの傍に居る事に対して、ではなく……今の自分の一撃が、妖忌に止められなくても無駄に終わっていたと理解したからだ。
今も隙を見せているように見えて、実際のゼフィーリアは迂闊に踏み込めない隙の無さを士狼に見せている。
さすが吸血鬼、それも一族の中で最強と名高いゼフィーリア・スカーレットというべきか……。
「カーミラの命か? アイツめ……真正面では余に勝てぬと知って奇襲を仕掛けてくるとは、まあアイツらしいといえばらしいが」
「…………」
状況は士狼にとって圧倒的不利、まともに戦ってもこちらの敗北は必至だ。
そう判断した瞬間、士狼は自らが空けた大穴から外に向かって飛び出す。
「チィ………!」
「構わぬ、放っておけ」
「正気? 命を狙われたのに」
「確かにあの槍使いはなかなかの腕前だが……それよりも厄介なのがこちらに近づいてきている」
「えっ――――っ!!?」
ぞわりと、紫の全身が震え上がった。
感じ取った力の大きさに、紫自身の本能が一瞬で恐怖の感情を湧き上がらせたのだ。
更にこの力は紫にとってよく知る者の力であり……龍人も感じ取ったのか、表情を険しいものに変えていった。
「……凄まじい“気”がこっちに来ています。な、何なんですかこれ!?」
悲鳴に近い声を上げる美鈴、生物の気を感じ取れる彼女は紫達以上にその力を感じ取っているのかもしれない。
「ゆ、紫様……この力は?」
「ええ。――龍人、今回の問題は今までで一番厄介なものかもしれないわね」
「かもな。だけど……あいつとはいずれ戦わなきゃいけなかったんだ、何もできなかった餓鬼の頃とは違う」
言って、龍人は士狼が空けた穴から外に飛び出す。
「龍人様!?」
「猪突猛進よな。ロック、お前は城の者を奥の広間に避難させておけ」
「わかった。――ゼフィー、無理はするな」
「…………」
「ゼフィー?」
「ん? ああ、大丈夫だ。まだここでは死なないようだから」
「ゼフィー!!」
「そう怒るな」
小さく笑みを作り、ゼフィーリアも外へと出る。
続いて紫達もそれに続きながら、妖忌は紫へと問いかけた。
「紫、先程から感じるこの刺すほどの力と威圧感の正体を、知っているのか?」
「ええ。私は勿論、龍人は決して忘れる事などできないでしょうね」
「い、一体この力の持ち主は何者なんですか!?」
瞳に恐怖の色を宿しながら問いかける美鈴に、紫は……金の瞳に強い殺意を見せ、問いかけに答えた。
「この力の持ち主は、人狼族の大長であり五大妖の1人である――大神刹那よ」
「――無様だな士狼、与えられた役目も果たせずにおめおめと戻ってきたのか」
「……申し訳ありません」
頭を下げ謝罪する士狼に、刹那は絶対零度の視線を向ける。
「使えん男だ、女の首すら取れないばかりか……餓鬼まで連れてくるとはな」
「えっ……」
刹那がそう言った瞬間、士狼は背後に気配を感じ振り返る。
そこに居たのは……真っ直ぐ自分達を睨みつけている、龍人であった。
「久しぶりだな小僧、前よりも良い目をするようになった」
「…………」
刹那から視線を外さないまま、龍人は周囲の気配を探り始める。
視界に入るのは刹那と士狼、そして刹那の左右に立つ強い妖力を持った二匹の人狼。
更に自分の周りには数十匹の人狼の気配が察知できた、既に展開を始めており完全に龍人は囲まれてしまっている。
「お前の父親に付けられた傷が漸く癒えてくれてな、そんな中吸血鬼の小娘が全ての生物を支配しようとしている事を聞いてわざわざ西洋の地まで赴いたが……まさかお前に会えるとは思わなかった」
「…………」
「数百年振りに会ったんだ、積もる話でもしていかないか? 酒は飲めるようになっただろう、用意してやってもいいが……」
「……カーミラに、協力しているのか?」
静かな声で、龍人は問う。
「協力? おかしな事を言う小僧だ、このオレがあんな小娘に協力などすると思うか? オレがここに来たのはオレを差し置いて支配者を気取ろうとしている小娘を始末する為だ」
「なら、ゼフィーリアを狙う理由は無い筈だ」
「理由ならある。オレにとって吸血鬼という種族が邪魔になったから始末する、充分な理由だろ?」
「…………何百年経っても、お前は変わらないんだな」
大気が、うねりを上げ始める。
ビリビリとした空気が肌を焼き、士狼はおもわずゴクリと喉を鳴らす。
「オレと戦うのか? 前よりマシになったとはいえあの時の龍哉より劣るお前が、オレに勝てると?」
「いつまでも俺を餓鬼扱いしてんじゃねえ。俺はお前と違って……背負うものが沢山ある、負けられないし逃げる事はできねえんだ」
「ほぅ? つまりお前にとってオレは、何も背負わず逃げてばかりの臆病者って言いたいのか?」
「違うのかよ? とうちゃんに一方的にやられて、今の今まで隠れてたくせによ」
「…………挑発も、上手くなったな」
立ち上がる刹那、そして彼は己の妖力を解放する。
瞬間、息をする事すら困難になるほどの威圧感が龍人と同胞である人狼達に襲い掛かった。
士狼と刹那御付の人狼二匹は獣の本能からか、自ら刹那から離れる。
だがその中でも、龍人は真っ直ぐ刹那を睨み続けていた。
「いいぞ小僧、オレと戦う資格はありそうだ。――貴様等は邪魔をしてきそうな奴らを相手しろ」
「――龍人!!」
龍人の傍に降り立つ紫、送れて他の者も場に現われた。
「なんだこの犬っころは?」
「五大妖の大神刹那か……実物を見たのは初めてだな」
「こ、これが五大妖の妖力……次元が違う」
「か、身体が震える……」
(五大妖の大神刹那……妙だな、余が視た運命の中にこの男は……)
「ゼフィーリア・スカーレット、てめえの相手は後でしてやる。だから邪魔をするなよ?」
「ああ、いいぞ。龍人もそれを望んでいるようだからな」
「ちょ……何を言っているの!?」
「お前達も邪魔をするな……というより、邪魔をする余裕も無いだろうさ」
「なにを…………っ、ちっ!!」
素早くスキマを開き、中から光魔と闇魔を取り出しそれぞれの手で握る紫。
そして交差するように構えると同時に、士狼の槍が交差した刀身に叩き込まれた。
「……悪いが、刹那様の邪魔をさせん」
「士狼…………!」
一方、妖忌達もそれぞれの戦いを始めていた。
「半人半霊の剣士か、人間にも妖怪にもなれぬ半端者がこの狼牙様と戦うか?」
そう言うのは、刹那の右横に居た長い茶色の髪と全員に狼の毛を生やす大柄の男。
対する妖忌は既に桜観剣と白楼剣を抜き放ち、狼牙に向かって不適な笑みを見せていた。
「狐に……よくわからん妖怪の小娘か、まあ……暇潰しにはなるな。
一応名乗っておこう、我が名は剣狼。なるべく痛みを与えずに始末してやるから……抵抗するなよ?」
「随分と言ってくれる。八雲紫様と龍人様の式であるこの八雲藍をなめるな!!」
「私は小娘じゃなくて紅美鈴です、あなたなんかに負けるわけにはいかないんですよ!!」
刀を持つ筋骨隆々の肉体を持つ剣狼に、藍と美鈴は同時に立ち向かう。
一方、ゼフィーリアは参戦せずに居ようと思ったのだが、周りの人狼族がそれを許さぬとばかりに彼女に襲い掛かる。
それを冷たく見つめながら、面倒そうに一掃しようとして――巨大な氷塊が、人狼族に降り注いだ。
「んん……?」
「おい、大丈夫か?」
ゼフィーリアの前に現れる小さな少女、それは勝手に遊びに行っていたチルノであった。
戦いの気配を感じた彼女は急ぎこの場へと向かい、ちょうどゼフィーリアが襲われそうになったので氷の飛礫を叩き込んだのだ。
「妖精にしてはたいした力だな」
「当然じゃない、でもまだまだあたいは本気出してないよ?」
「大きく出たな、では……余を守ってくれるか?」
「いいよ! あたいみたいな強いやつは誰かを守る義務があるからね!!」
「ほぅ……」
面白い事を言う妖精だと、ゼフィーリアは可笑しそうに笑う。
その笑みに気づかないチルノは、両腕を巨大な氷の腕で覆い立ち上がってくる人狼族達に向け。
「――さあ私が相手をしてやるわ、かかってきなさい!!」
高らかと宣言し、人狼族を迎え撃ったのであった――。
To.Be.Continued...
楽しんでいただけたでしょうか?
暇潰しになってくだされば幸いに思います。