妖怪の賢者と龍の子と【完結】   作:マイマイ

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――闇の者が、動きを見せる。

そして、ソレが紫達の親友である妹紅に迫っており。
しかしまだ、彼女達はその事実に気づいていなかった………。


第12話 ~友に迫る危機~

 都の中心部より離れた場所にある、一件の宿。

 そこはお世辞にも良い宿とは言えずしかも食事も出ない、泊まるだけの宿だ。

 現在、紫達はその宿で厄介になっている。

 暫く都に留まる事になったので、一番安い宿を探した結果…この宿に辿り着いたわけで。

 

「とうちゃん、ばあちゃん、ただい……臭っ!?」

「うっ……」

 

 夜となり、輝夜の屋敷から戻ってきた紫と龍人。

 自分達が寝泊りしている部屋へと戻り、居るであろう龍哉とマミゾウに声を掛けながら入口の襖を開いた瞬間、2人の表情が一気に歪む。

 だがそれも仕方が無い事だ、部屋に入った瞬間2人は噎せ返るような酒の匂いに包まれたのだから。

 顔をしかめつつ2人は部屋の様子を見て、益々顔を歪ませた。

 

「んん~……? おー、おかえり~」

「遅かったのう~」

 

 紫達を出迎える龍哉とマミゾウ、しかし2人の顔は真っ赤に染まっていた。

 どう見ても泥酔状態である、まあ所狭しと床に転がっている徳利や(かめ)を見れば誰にだってわかるが。

 龍人は酒の匂いに咳き込んでしまい、紫は醜態を晒す2人を見て溜め息を吐き出した。

 

「……飲み過ぎよ、2人とも」

「まだまだ宵の口じゃよー」

「そうだそうだー!」

「…………」

 

 冷たい視線を2人に向ける紫。

 しかし酔っ払いにそんなものは効かない、無駄に大きな声で再び乾杯の音頭を掛け合う始末。

 制裁を与えてやりたいが、無闇に暴れたら面倒な事になるので、とりあえず紫は咳き込んでいる龍人を部屋から離れさせようとしたのだが。

 

「なんだよ龍人ー、具合でも悪いのかー?」

「けほっ……だって、酒臭いから」

「情けない事言うなよなー、大人になれねえぞー?」

「龍人、ああいう大人になりたくないのなら無視しなさい」

 

 絡もうとする龍哉にしっしと手を振りつつ、龍人を守る紫。

 「横暴だー」、「龍人ー、一緒に飲もう!」などと言っている酔っ払い達だが、当然紫は無視。

 龍人も酒の匂いが余程嫌なのか、龍哉に呼ばれているというのに返事を返さなかった。

 そんな彼の態度に、龍哉とマミゾウは子供のように頬を膨らませ始める。

 ……駄目だこの大人達は、紫は再びため息を吐いた。

 

「んっく……ところで龍人、お前ももう13だよな?」

「えっ? うん、そうだけど……それがどうかした?」

「13といえばそろそろ女に興味を持ってもいい年頃だ。だから心優しいとうちゃんはな……お前にこれを用意したぞー」

 

 そう言って、覚束ない足取りで龍哉は部屋を移動し、何かを持って戻ってきた。

 彼が持っているのは薄めの長方形の物体、紙で作られたそれは所謂“本”と呼ばれるものだ。

 しかし表紙は白一色であり、一体中に何が書かれているのかは判別できない。

 一体なんだろうと視線を本に向ける紫と龍人、そんな2人に龍哉はニマーッと微笑みながら本を開き。

 

「っ!?」

「……?」

 

 開かれた本の中を見た瞬間、紫は一瞬で頬を赤らめ龍人はキョトンとしたまま首を傾げた。

 龍哉が持ってきたのは、“春本”と呼ばれる類のものであった。

 描かれているのは当然成人女性の絵、しかし衣服の類は身に着けていない。

 口をパクパクとする紫に、龍哉とマミゾウは満足そうな笑みを浮かべる。

 更に頁を捲っていくと、成人男性と女性が交わっている絵が――

 

「っっっ、な、なんてものを見せるのあなたは!!」

「おっとっと」

 

 春本を奪い取ろうとする紫から逃げる龍哉。

 ……紫の反応は、ある意味では予想外であったと思いながら、龍哉は口を開いた。

 

「正しい性教育をしようという親心ってヤツだ」

「何が親心よ!!」

「まったく、これだから生娘は……」

「そっちは発情している老婆じゃない!!」

「なっ!? 老婆とは何じゃ老婆とは、わしはまだ若いわい!!」

 

 ぎゃーぎゃーと言い合う紫とマミゾウ。

 その間にと、龍哉は龍人を自身の元に引き寄せ春本を見せる。

 

「どうだ?」

「どうだって……何が?」

「こう、滾るものとか無いか?」

「???」 

 

 そう言われても、龍人にはよくわからなかった。

 しかしそれも仕方がないだろう、彼は今まで山奥で暮らしてきたのだ。

 男と女の交わりなど見た事がないし、知識としても得ていない。

 だからこそ龍哉は、せっかく都に来たのだからと思ったのだが……自分を睨んでいる紫に気づき、龍哉は龍人から春本を遠ざけた。

 

「紫ー、いずれ龍人だって好きな女を抱く時が来るんだからよー」

「そうだとしても、まだ彼には早すぎるわ」

「そうじゃ! こうなったら紫が龍人に実戦形式で教えてやれば……」

「発情狸は黙ってなさい!」

 

 酔っ払いにぴしゃりと言い放ち黙らせる紫。

 酒を飲むなとは言わないが、大人なのだからしっかりしてほしいものである。

 自分はこんな風にならないようにしようと心に決めつつ、紫は龍人へと視線を向けて。

 彼が、障子を開け外をじっと見つめている事に気がついた。

 

「龍人……?」

「…………」

 

 声を掛けるが、龍人からの反応はない。

 訝しげな表情を浮かべながら、紫は彼の隣に移動してから彼が向いている方向へと視線を向け…ある事に気づく。

 

(あれは……結界?)

 

 龍人が向けていた視線の先に広がるのは、貴族達が住まう屋敷が集まる区画だった。

 その中で紫は、ある屋敷に結界が施されている事に気づく。

 防御の為の結界ではない、他者に存在を気づかせなくさせる類の結界だ。

 それにより現在紫が見ている屋敷は、他の者には存在を認知できないようになっている。

 勿論力ある存在には効かないものの、並の存在では決して見破る事ができない高度なものだ。

 紫は境界を操る事によってその結界を見破る事ができているが……。

 

「龍人、貴方もしかして……あれが見えているの?」

 

 今の龍人では、あの結界を見破る事はできないだろう。

 しかし彼が向けている視線はその屋敷だ、だとすると彼は結界で見えなくなっている筈の屋敷が見えているという事に――

 

「っ」

「えっ……!?」

 

 それは、突然の事であった。

 先程から様子のおかしい龍人に再び声を掛けようとした瞬間、突如として彼は窓から飛び出していったのだ。

 当然ながら紫は驚き、酔っ払っていたマミゾウも慌てて窓際へと駆け寄った。

 

「おい、龍人!?」

「おー? どうしたー?」

「っ、いつまで酔っ払ってるのよ、馬鹿!!」

「ぐえっ!?」

 

 未だに事態を把握していない龍哉に苛立ち、彼の腹部をおもいっきり踏みつける紫。

 苦悶の表情を浮かべ蹲る龍哉に冷たい視線を向けてから、紫はすぐさま窓から飛び出し龍人の後を追いかける。

 続いてマミゾウもそれに続こうとして。

 

「――マミ、お前は行かなくていい」

 

 腹を擦っている龍哉に、呼び止められた。

 

「龍哉……?」

「いってー……紫のヤツ、わざわざ足に妖力を込めて踏みやがって……」

「何をしておる、早く龍人を……」

「慌てんなよ」

 

 そう言いながら、龍哉は転がっている徳利の中に少しだけ残っていた酒を口に含んだ。

 

「どういうつもりじゃ龍哉、龍人を追わねば……」

「少し待て。――これも()()だ」

「修業、じゃと……?」

 

 一体何を言っているのか、しかし龍哉は何も説明しようとはしない。

 そんな彼の態度に苛立ちながらも、マミゾウは龍哉に睨まれ結局龍人達を追う事ができずにその場で待機せざるをえなかった……。

 

 

 

 

 静寂が、夜の街を包み込む。

 その中を駆け抜ける2つの影、言うまでもなくその正体は紫と龍人であった。

 屋根の上を駆け抜け、跳躍し、わき目も振らずに走っていく龍人を、紫は必死に追いながら呼び止める。

 

「龍人、待ちなさい!!」

「…………」

 

 だが龍人は返事を返さない。

 落ち着きがなく人の話を聞かない所は確かにあるが、今の彼の態度は普段とは違っていた。

 彼は今焦っている、それが何なのかはわからないがかといってこのままにはしていられない。

 なので紫はスキマを展開、彼の前に出るように空間移動をして無理矢理彼を立ち止まらせた。

 

「待ちなさいって言っているでしょう!」

「……紫」

「いきなり飛び出すなんて、みんな驚いていたわよ?」

「ごめん、でも……」

「……まあいいわ。とにかく一旦戻って」

「っ」

「えっ……!?」

 

 戻りましょう、そう告げようとした紫の横をすり抜けるように、龍人は再び地を蹴った。

 舌打ちをしながら再び彼の後を追う紫、そして彼の横に並ぶように走りながら怒鳴るように声を掛ける。

 

「龍人、いい加減にしなさい!!」

「ごめん紫、とうちゃん達には後で絶対に謝るから!!」

「一体どうしたというの!?」

「……何か、嫌なものが見えたんだ」

「嫌なもの……?」

 

 要領を得ない答えが返ってきて、紫は首を傾げる。

 だがここで紫は、先程彼が見ていたものを思い出す。

 

「龍人、貴方やっぱり結界が見えていたの?」

「結界? 何の事だよ? よくわかんねえけど、向こうの方でなんかこう…モ…ヤモヤしたものが見えたからさ。それに……嫌な予感もしたんだ。行かなきゃいけないって思って」

 

 だから、気がついたら飛び出していたと龍人は答える。

 ……どうやら彼は結界を見破ったわけではないようだ。

 つまり彼の瞳は結界とは違う何かを捉えた、そう考えるのが自然だろう。

 だとすると彼は何を見たというのか、詳細を訊きたいが…どうやら答えてもらう時間はないらしい。

 

――屋敷の前に着地する2人。

 

「あれ? こんな屋敷なんてあったのか……?」

(……やっぱり、結界を見破っていたわけではないようね)

 

 龍人の様子を見て、紫はそう確信する。

 とはいえこれ以上彼の好きにはできない、龍哉とマミゾウも心配しているだろう。

 そう思い紫は龍人に声を掛けようした時には――彼は入口の門を開こうとしていた。

 

「ちょっと龍人、何をしているのよ!」

「だって気になるんだ」

「気になるからって――――――っっっ!?」

 

 紫が静止する前に、門を開いてしまう龍人。

 重い音を響かせながら、門はあっさりと開いてしまった。

 ……それはおかしい、見張りも周囲に見られないというのに何故門が開く?

 それではあまりにも無用心だが……そんな事は、今の紫にとってどうでもよかった。

 

(これは……何!?)

 

 龍人が門を開いた瞬間、異質な空気が一気に紫に襲い掛かった。

 しかもその空気の出所は、結界が張られている屋敷からだ。

 人間が住める場所ではない、屋敷の中はまるで異界のような変質を遂げている。

 妖怪である自分ですら重苦しく思え、粘着質すら感じられる空気が纏わりついてくるかのようだ。

 それだけではなく……中から、ある異臭が漂ってきた。

 

(っ、人間の……血?)

 

 そこで紫は、異臭の正体が人間の血液だという事に気づく。

 それも1人や2人ではない、数十人という人間を解体しなければここまでの強烈な臭いは発しないだろう。

 まるで肌に纏わりつくような血の臭いに、妖怪である紫も顔を歪めてしまう。

 一方、門の前に居た龍人は紫以上にその臭いを受けてしまい、激しく咳き込んでいた。

 

「げほっ、げほっ……!」

「龍人、大丈夫?」

「ごほっ……な、何なんだよこれ……」

「…………」

 

 これ以上先に進んではならない。

 今までの経験と危機回避能力が、紫にそう訴えていた。

 それに逆らう事無く、紫は龍人にここから一刻も早く離れようと進言した瞬間。

 

「――いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 少女の悲鳴が、屋敷の中から聞こえてきた。

 

「っ」

「今のは……」

 

 人間よりも優れた聴力によって、2人は確かに今の悲鳴を耳に入れていた。

 しかし何故だろうか、紫は今の声をつい先程聞いたばかりに思え……。

 

「まさか……妹紅!!」

「えっ――龍人!?」

 

 粘りつくような異質な空気を漂わせている屋敷の中を、龍人は自らの意志で入っていく。

 しかも、何故か妹紅の名を呼びながらだ。

 

(そうか、今の悲鳴は………!)

 

 聴いた事がある声なのは当然だ、だってその声は……妹紅のものなのだから。

 一瞬躊躇い、けれど龍人をそのままにはしておけず紫も屋敷の中へと入っていく。

 

「っ…………」

 

 血の臭いが酷くなり、紫はますます顔を歪ませていく。

 しかしそれには構わず、彼女は龍人の後を追って……すぐさま追いついた。

 廊下の丁度曲がり角に差し掛かった所で、彼は何故か動きを止めている。

 彼を守るように前に出ながら、紫も曲がり角の先へと踏み入れ。

 

――恐怖と震えで動けなくなり、壁に背を預けたまま座り込み涙を流す妹紅と。

 

――そんな彼女を心底愉快そうに見下ろしながら、大きく口を開く藤原不比等の姿を視界に入れた。

 

「も――――」

「――伏せろ、妹紅!!!」

 

 紫が妹紅の名を呼ぶよりも速く、龍人が動く。

 地を蹴り一息で不比等へと間合いを詰め、右手に妖力を流し込む龍人。

 そして、そのまま相手の頭蓋を砕く勢いで右の拳を突き出し――鈍い打撃音が、龍人の首から響き渡った。

 

「――――!!??」

 

 鋭い激痛と凄まじい衝撃を感じながら龍人は吹き飛び、壁へと叩きつけられその中に埋まってしまった。

 その威力を物語るかのように、壁は粉微塵になりパラパラと破片が宙を舞う。

 更に驚くべき事に、龍人を殴り飛ばしたのは人間である筈の不比等なのだから、本来それはありえない光景であった。

 

「龍人!!」

 

 彼の名を呼びつつも、紫は決して不比等から視線を外すような事はしない。

 正直彼女はまだ混乱している、人間である不比等が妖怪と(りゅう)(じん)の血を引いている龍人を殴り飛ばすなどありえない筈だ。

 だがここで混乱したままでは間違いなく自分達は全滅すると認識し、紫はすぐさま能力を発動。

 

 瞬間、龍人が消えた壁と不比等の傍に居た妹紅を呑み込むようにスキマが現れた。

 そのままスキマは2人を呑み込み、次の瞬間には紫の隣に展開されたスキマから2人揃って姿を現した。

 

「龍人、妹紅、大丈夫!?」

「あ……あ……」

「…………いってえ、首が吹き飛んだかと思った」

 

 妹紅は恐怖からかまともな返答を返すことができず、龍人は反応を示すものの表情は苦悶のものへと変わっていた。

 ゴキゴキと首を鳴らしながら、口に溜まった血をベッと地面に吐き出す龍人。

 致命傷というわけではないものの、決して小さなダメージではないようだ。

 

(ますます不可解ね……)

 

 龍人の身体は非常に頑丈だ、並の妖怪など比べ物にならないほどに。

 だというのに、ただの一撃でこれだけのダメージを負うなどそうそうあるものではない。

 ではあれは不比等に化けた妖怪なのか、そんな予測が紫の中で生まれるが……彼女はそれを否定する。

 何故なら、今こうして自分達が対峙している相手は、間違いなく藤原不比等だと彼女自身が認識しているからだ。

 

「……不思議な術を使うな。小娘」

「…………」

「お前……あの時輝夜に斬りかかったヤツだよな?

 だとするとお前は妹紅のとうちゃんなんだろ? なのに、どうしてお前……妹紅を喰おうとしたんだ!?」

 

 痛みに耐えつつ、龍人が問う。

 その問いに、不比等は歪んだ笑みをより深く歪ませた。

 

「それをお前に話す必要があるのかあ? 邪魔をするなら……お前達も喰うぞ?」

「っ、上等だ。やれるもんならやってみやがれ!!」

「――龍人、待ちなさい」

 

 再び吶喊しようとする龍人を、紫は呼び止める。

 その声に反応したのか、龍人はつんのめりそうになりながらも、動きを止めた。

 

「な、なんで止めるんだよ!?」

「落ち着きなさい。――貴方では勝てないわ」

 

 先程の一撃、そして龍人が負ったダメージを計算して……紫は、彼では目の前の存在には勝てないと分析した。

 そしてそれは紛れもない事実であり、彼女の判断は間違ってはいない。

 

「勝てないとかそんなの関係ねえ!!

 ――こいつから沢山の人間の血と肉の臭いがする、こいつが沢山の人間を喰ったのは間違いないし、自分の子供まで喰おうとしたんだ!!

 そんなの絶対に許せねえ!! だから絶対にぶっ飛ばす!!」

「だから落ち着きなさいと言っているの。――誰も、勝てないから逃げなさいなんて言ってないでしょ?」

「えっ?」

 

 その言葉を聞いて、龍人はキョトンとした表情を紫に向ける。

 

 そう、逃げろなどとは言っていないし言うつもりもない。

 そもそも彼が素直に自分の言葉に従うなどとは、紫自身微塵も思っていない。

 ……できる事ならば、逃げてほしいとは思っている。

 相手はどういうわけか、龍人どころか自分よりも力が勝っている事を理解した。

 ならばここでの最良の選択は、全員で逃げ龍哉やマミゾウの助けを借りる事だ。

 でも――紫はその選択を選ぶ事ができなかった。

 

(ここで龍哉達の力を借りて勝ったとしても……いずれ、私達の未来は閉ざされる)

 

 人狼族の大長、五大妖の刹那といつか戦わなければならない時がやってくる。

 だというのにいつまでも龍哉達の力を借りてばかりでは、成長する事はできない。

 だから――紫は第三の選択を選んだ。

 

「――龍人、()()でこの男を倒すのよ」

 

 もう、逃げるだけの生き方は望めないし、紫自身御免だ。

 自らの未来は自らの力で切り開かねばならない時が、既にやってきているのだ。

 故に紫は戦う選択を選んだ、龍人と共に戦うという選択を。

 

「……よーし、いくぞ紫!!」

「ええ。――妹紅はその間に逃げなさい!!」

「で、でも……」

「お願い。あなたを守りながら戦うなんてできないから」

「…………」

 

 紫の言葉を受け、妹紅は躊躇いながらもその場から逃げ出した。

 しかし不比等は追いかけない、まるで逃げても無駄だと言っているかのように。

 

「――人間じゃないが、ガキの肉だ。腹は満たせるなぁぁぁ」

「子供だと思っていると、痛い目を見るわよ!!」

「お前は、俺がぶっ飛ばしてやる!!」

 

 

 

 

To.Be.Continued...


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