やはり比企谷八幡の掃除の仕方は間違っている。(改訂版)プラス由比ヶ浜結衣の場合   作:眠り羊

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やはり平塚静の奉仕部への愛情は間違っていない。

掃除と聞いて思い出されるもの

家の手伝いの風呂掃除、学校での清掃活動、年に一度の大掃除

しかし忘れてはならないのが、心の掃除だろう

 

心の掃除とは即ち、過去の思い出を整理したり、ヤンチャしてた過去を良い風に飾ってみたり、相手にとって酷い過去を自分の都合の良いように改編したりと、まぁスクールカースト上位の奴らが良くやることである。

なんなのあの、久しぶりに会った時、そんなこともあったよね~、今では笑える良い思い出だよね~とか。

やられた側からしてみればそんなのいつになっても笑えねぇよ、そのトラウマをいつまでも抱えてるんだっつーの。

 

そういえば綺麗な思い出には思い出補正という補正がかかってると良く聞くが、そんな補正は俺には無い、いや、あったかもしれないが自ずと補正を無くしてしまう。

なぜなら俺の思い出は黒歴史と呼ばれる物ばかりであり、どんなに綺麗にしようと元から真っ黒なものは黒にしかならないのだから補正など利かないのだ。

こういう場合どのように掃除したら綺麗になるのだろうか・・・しかしいつか掃除してみせる、そう、主夫にとって掃除は必須スキル・・・専業主夫に俺はなる!

 

 

「お兄ちゃんさー、今日休みだよねぇ?」

かまくらを抱いてゴロゴロしてる俺に、受験勉強の息抜きにと掃除をしている小町が声をかけた

息抜きに掃除とか、出来た妹だ、妹でなければ嫁に欲しいほどである

いや待てよ、よく考えれば掃除は専業主夫である俺の仕事、やはり嫁にはバリバリ働いて欲しい

「おー、日本の高校生は大抵が休みだと思うぞ」

今日は日曜日なのだから当たり前なのだが、まぁ部活に青春(笑)を捧げちゃってる奴らは休みじゃないかもしれない

 

「そうだけどさぁ・・・どこか行く予定とかないのー??」

休日は読んで字のごとく休みの日なのだから俺がどこか行くとかあるわけない、小町もそんな事は解ってるだろうに

「なんだー?息抜きに何処か出かけたいのか?」

出掛けるのは可愛い小町の為だから、まぁ良いんだが、懐の事情により奢ることはできんな

「小町もお兄ちゃんと二人でお出かけしたいんだけど~、あ、今の小町的にポイント高い☆」

「でもこれでも小町受験生だから、この時期に誰かに見られて痛くも無い腹を探られるのもねぇ」

ふぅ、と小町の顔が少し暗くなる、アンニュイな受験生の一面って奴だな

 

「ってそうじゃなくて、結衣さんとか、雪乃さんとかさー」

「あー?今日は部活はねーぞ?」

休みの日まで働きたく無い、むしろ一生働きたく無い

「そーじゃなくてさー、もー」

小町がイラっとした表情になる

「お兄ちゃんどいてそのゴミ殺せない!」

「こえーよ、殺生に関わるとかどんな息抜きだよ・・・」

もはや息抜きというより生抜きってレベルだろそれ

 

小町は、はぁ、と溜め息をつくと早く誰かにバトンタッチしたいんだけどなぁと呟いた

「掃除の邪魔だからちょっとどいてごみいちゃん、もしくは吸われて」

「へいよー」

とその場を立ち退いた、言われて立ち退くなんて、なんて素敵なゴミ、まさにゴミキング

まぁ普通に考えて掃除機に吸われるとか、壷から呼ばれて飛び出るよりきついだろ

 

さっきのことでまだ少しイライラしてるのか、ぶっきら棒に小町が言う

「もう、お兄ちゃんもちゃんとお父さんを見習ってよね」

言われた場所を退去し、違う場所でかまくらとゴロゴロしていると、珍しく小町が親父を褒めた。

親父を見習うとかどーなの?むしろ親父に訓練されたせいで今の俺があるのだが。

何のことで親父を褒めたのかと訝しんでいると

「お父さんなら何も言わずに何時の間にかちゃんとどこかへ行ってくれてるよー」

おおう、どうやらゴミとしての自覚はお父様の方が上だったようだ・・・ゴミキングの称号は親父にくれてやろう

むしろ親父のようなクズにはあつらえたような称号だった。

 

 

何の気無しに昨日の事を思い出し、ぼーっとしていると、終業のベルが鳴り、クラスの奴らが帰り仕度、あるいは部活の準備に取りかかる。

俺はというと、死んだように机にうつ伏せになって寝ている振りをしていた。

「ヒキタニ・・・」・・・「どうk・・・」・・・「隼人君・・・」・・・「愚腐腐腐」

クラスの端から俺の名が聞こえたと思った途端、背筋がブルッとする

何か悪寒が走ったんだが・・・

 

ちらりと騒がしい集団に目を向けると由比ヶ浜と三浦と海老名さんが談笑に興じていた。

何か視線も感じた気がしたが・・・気のせいか、と由比ヶ浜を見る

同じ部活に通う者同士だからといって、ちょっと意識しすぎなのかもしれない

いや、あの勝負をしているのだから同士では無く敵になるのか?しかもその裁定は平塚先生の独断と偏見で決まる

どこぞのクイズ番組よろしく、最終問題は1万点ですとか言われたら・・・どうしよう、あの先生なら言い出しそうだ。

そういえばこの間のゲームセンターの時もそんなんだったな・・・結局あの時の罰ゲームはいつ履行されるのだろうか。

出来るなら行きたくな・・・いや、戸塚がいるから行きたい、むしろ戸塚と二人で行きたい!

 

先ほどの集団に耳だけを傾けると、由比ヶ浜達の会話はまだ終わらなそうだった

今日は先に行くか・・・近頃は由比ヶ浜と部室に行く事も珍しく無い

というか勝手に行くと文句を言われる事まである、俺としては、一緒に帰って友達に噂とかされると恥ずかしいし・・・と思ってしまう

もちろんその場合、恥ずかしいのはスクールカースト底辺の俺と一緒にいる由比ヶ浜の方なのだが・・・由比ヶ浜は気にしないらしい

 

そんな由比ヶ浜を横目に、そそくさとクラスを抜け部活棟に向う。

日がいくらか傾いて、柔らかくなった日射しを手で遮ると、欠伸が漏れてしまった、眠い・・・

昨日は寝付きが悪いので、いっそのことと思い少しゲームをしていたのだが、やり過ぎてしまったようだ

いわゆる朝チュンまでしてしまった。朝、雀が鳴いているのをベットで聞いただけなんだけど・・・それは単なる徹夜か。

やはり眠さのせいなのか、頭が全然回らないなと、下らない思考は眠さのせいにした。

 

このまま部室で寝てしまっても良いかもしれない

その場合雪ノ下に、あら比企谷君そのまま永眠しても良かったのに、と皮肉を言われる事くらいは覚悟しておこう・・・

しかし、読み残した小説を片付けてしまいたかったんだが・・・いやそれゲームやらずに本読めよ!と思うだろうが、偉い人は言った、

 

貴方の心が正しいと感じることを行いなさい。行なえば非難されるだろうが、行なわなければ、やはり非難されるのだから。

 

と、だから俺は読みたい時に本を読み、気が乗らない時は読まない!どうせ非難されるのだから!

「比企谷、それはそういう意味で言ったんじゃないと思うぞ。何をブツブツ言ってるかと思えば、全く、お前は変わらんな」

溜息まじりに声を掛けられた

「おおぅ、平塚先生じゃないですか」

眠い時にいきなり声を掛けられるのってびっくりするよね、まぁ過去に数えるほどもないけれど・・・

女性から声を掛けられるとか小町やかーちゃん以外・・・小町やかーちゃんや奉仕部関係者以外ほとんどないまである

 

どうやら眠すぎて、声に出ていてらしい・・・

腐った目をした男が胡乱げな顔でブツブツ言っているとか、それ何て闇の儀式だよ・・・夢の中に出てきて攫われちゃうの?

見られたのが先生だけで良かった、生徒が見ていたらドン引きどころか通報されてそうだ

「いや、私から見てもかなりドン引きだったぞ、通報はせんが・・・」

またもや声に出てしまったらしい、これは重症だな、早く部室で寝た方が良い、むしろ帰って寝た方が良い、帰りたい・・・許されないだろうけど

 

「また下らんことを考えてないか?・・・」

不審そうな目で先生が言った。

俺の思考は駄々漏れなの?どこのサトラレだよ

 

「やけに眠そうだな、なんなら私が起こしてやろう」

と言うと拳を握り締め俺に見せる

「い、いやだなぁ先生、そんな先生のお手を煩わせずとも、目は覚めていますよ、ほらこの目を見てください。」

パチリと目を開け言う。あれを喰らうのはお説教の時だけで充分だ。

・・・・・・一瞬の静寂の後、平塚先生が顎に指を置き首を傾げる

「どう見ても腐った目にしか見えんな・・・」

ですよねー。完全に逆効果だった。

 

先生はふっと笑うと

「冗談だ、ほら比企谷、これでもあげよう、使いたまえ」

と言って小さな容器を投げ渡してきた。

しっかりそれをキャッチ、さすが俺、一人野球を極めただけのことはある

「目薬っすか、先生こんなの使ってるんですか?」

「いや、最近寝覚めが悪くてな、寝起きをすっきりさせたかったんだが、刺激が強すぎて肌?いや眼か、に合わなかったらしい」

「良いんですか?貰っちゃって」

「ああ、その代わり奉仕部活動がんばりたまえ」

と言うと颯爽と職員室の方へ去って行った。




4/5 構成変更(改訂版と由比ヶ浜結衣の場合を別の話に分けました)

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