岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】   作:雷鳥

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「手札から悪魔召喚を発動!!」

という訳で原作での一誠の悪魔召喚回。



【悪魔召喚と二度目の邂逅】

 黒歌の秘密を知ってから数日が経った。その間に多少だが色々あった。

 

 まず一誠は悪魔になったが今まで通り友人として付き合っている。最近はよく二人で登校する時に悪魔の仕事との愚痴を聞いている。

 

 なんでも悪魔召喚のチラシを欲望を持つ人間の住む家のポストに投函しているらしい。それも毎晩。しかも自転車で。完全にチラシ配りのアルバイトである。

 

 祐斗の説明ではチラシ配りは悪魔なら誰もが通る道らしい。それとリアス先輩と小猫ちゃんから名前呼びの許可が貰えたのでこれからは名前で呼ぶ事にした。

 

 それと一誠が深夜の活動が許されているのは一誠の両親にリアス先輩が深夜の行動を認めるように暗示をかけたからだそうだ。やっぱり悪魔はすごい。何でも有りだと思った。

 

 他にも支取先輩と生徒会副会長の真羅椿姫(しんらつばき)先輩が放課後に会いに来た事もあった。どうやらリアス先輩から事情を聞いたらしく、自分達も悪魔だと向こうから教えてくれた。

 

 なんでもこの学園、というよりもこの街はリアス先輩の実家が管理している土地らしく、今はグレモリー先輩が代表として管理を任されているらしい。

 

 ただこの学園に関しては、日の出ている表の時間の学園の秩序と管理を護るのが支取先輩達生徒会の役割で、夜の間の裏の仕事の管理をするのがグレモリー先輩達オカルト部の役割らしい。

 

 因みに支取先輩の本名はソーナ・シトリーと言う名前で、グレモリー先輩と同じ純血悪魔で生徒会は全員彼女の眷属なんだそうだ。更に言うと二人共上流階級の家の生まれらしい。リアルお嬢様だった。

 

『あなたは人間です。あまり我々の世界には関わらない方がいいと私は思います』

 

 いつもの少し引き締めすぎとも思う厳しい表情で忠告してくれた支取先輩に、リアス先輩と同じ答えを返すと、支取先輩はその表情を僅かに緩め、苦笑しながら『あなたはやっぱり変わり者ね』と言って去って行った。その話を遊びに行った部室でしたら朱乃先輩にセクハラされた。

 

 他にも神器には色々なタイプがあることを知ることが出来た。

 

 発動時に一誠の様に武器や防具の様に物理的な形を成す物もあれば、祐斗や自分の様に肉体に融合して力だけ現れる物もある。

 

 祐斗の神器については一誠と神器の話をしている時に祐斗本人が教えてくれた。

 

 祐斗はあらゆる属性の魔剣を生成できる『魔剣創造(ソード・バース)』という神器を持っているらしい。厨ニ全開でカッコイイ。

 

 そう言えば一誠の神器は結局なんなのだろ? リアス先輩も詳しく調べると言って、それっきりだ。個人的には妙な気配をあの神器から感じるので出来れば早く正体を突き止めて欲しいと思う。

 

 他には悪魔や天使、堕天使について一誠と一緒に勉強したりした。一誠にはリアス先輩がメインに教え、自分には朱乃先輩が教えてくれたが、何故か『あらあら、うふふ』と言いながら胸を押し当てられる事が多かった。セクハラである。

 

 ……なんか朱乃先輩にセクハラされた記憶しかない。あんな人だったっけ?

 

 とまぁ大して日常の変化は無く。今日は部室に寄らずに帰っていると、

 

「あっ」

 

「あっ」

 

 移動販売のクレープの列に並んでるレイナーレを見つけた。

 服装は流石にあの際どいのではなく白のブラウスの胸元のボタンを大胆に開け、スカートは黒でスリッドが深めに入ったタイトスカートを穿いていた。

 

 ……どうしたもんかなぁ。

 

 彼女に幼馴染である一誠を殺された。その負の感情は確かに自分の心にある。だが最初の印象が印象だけに、何故か憎みきれない。

 

「あ~うん。見なかった事にっぐえ!?」

 

「待ちなさい。丁度良かった。ここのクレープ一人一つの限定販売なの。私の為に並んで買いなさい」

 

「ええ!? 何故!?」

 

 結局押し切られて一緒に並ばされ、彼女の食べたいと言ったクレープを注文し、近くのベンチに着くなり、二つとも彼女に奪われた。流石堕天使、なんてずるい!

 

「じゃ、もう帰っていいわよ」

 

「ここまで行くともはや何も言えない。ところでレイナーレはなんでこの町にいるんだ?」

 

 一誠の事を言いたいが、それでまた狙われても困る。とりあえず情報を得られないかと、会話を続ける事にした。あと、年上だろうけど、これまでがこれまでなので、さん付けはしない。

 

「なんであんたにそんな事を教えなきゃいけないのよ?」

 

「そうか。じゃあそのクレープの代金を貰おうか」

 

「な、何て卑劣な! これだから人間は!!」

 

 ありえないと言った表情のレイナーレ、それはこっちの台詞である。なんとこの堕天使、クレープのお金を出していない。

 

『私に貢げるんだから光栄に思いなさい』と言われた。そろそろ本気でしばいてもいいんじゃないかと思っている。

 

 因みに払いを渋った理由を尋ねたら、自由に使える程のお金を持っていないらしい。堕天使の組織は以外に経費に厳しいのだろうか?

 

「ちっ。まぁいいわ。ただの人間のあんたには解からないでしょうけど。この世界には不思議な力を持つ人間がいるわ。私達堕天使はその人間の持つ力が危険かどうか監視しているわけよ。つまり人間界を護っているのは私達って訳、感謝して敬いなさい」

 

「はいはい。で? その任務でこの町に?」

 

「だんだん対応が雑になって来たわねあなた。まぁそんな所よ。じゃあ私は行くわ。流石に三度目は無いでしょう。さようなら」

 

 レイナーレはそう言って投げキッスして決まったって顔をしたので言ってやった。

 

「鼻の頭にクリームが付いてる」

 

「先に言いなさいよ馬鹿!」

 

 自分が以前渡したハンカチをポケットから取り出したレイナーレはそれで鼻を拭って走り去って行った。ナルシストなドジっ娘かぁ、新しいジャンルだ。

 

 そんな事を考えていると携帯が鳴った。一誠?

 

「もしもし?」

 

『白野か? 実は今日、初めての召喚を行うんだ! できればお前にも立ち会って欲しいんだ』

 

 ほう。ついに一誠も悪魔として召喚か。確かにそれは見たい。

 

「分かった。立ち会うよ」

 

『ホントか! じゃあ夜になったら迎えに行くよ!』

 

「そ、そうか。じゃあ待ってるよ」

 

 ようやくチラシ配りから開放されるのが嬉しいのか、テンションの高い一誠の声に若干気後れしながら携帯を切る。さて、それじゃあ二人に夜の外泊の事を伝えないとな。

 

 

 

 

「でさ、今日の放課後町でアーシアって言う超絶美少女シスターに出会ってさ。日本語が苦手らしくて困っていたから教会まで案内してあげたんだよ。悪魔になったお陰で今の俺は全ての言語を操るインターナショナル一誠に生まれ変わったからな。道案内くらい楽勝だったぜ!」

 

「ああ、そう言えば悪魔講座で言っていたっけ。ではそんなインターナショナル一誠に、この筆記の英文の解答を英文で――」

 

「調子乗ってスンマセンでした!!」

 

 華麗な土下座を決める一誠。うん。あくまで全ての国の言語を理解できるようになっただけで、本人が書けるようになった訳じゃないからね。まぁ知っててやらせようとした理由は、ドヤ顔にちょっとイラっときたからだ。

 

 それにしても悪魔がシスターを助けるか……一誠らしいと言えばらしいか。

 

 約束通りに一誠が家に迎えに来たので二人で部室に向かうと、部室では朱乃先輩が魔方陣を弄っていた。どうやら転移術式に一誠の情報を登録しているらしく、しばらく待っていて欲しいと言われたいので二人で雑談しながら待つことになった。

 

「それでその子も俺達と同じ神器持ちでさ、傷を癒す能力なんだ。体力は回復させられないみたいだけど」

 

「へ~自分の能力と反対だな。自分は体力は回復できても傷は無理だし」

 

「ホント、その子が教会関係者じゃなければスカウトしたかったわ。重要な回復要員が一気に二人増えると思ったのに」

 

 心底残念だと言いたげに大げさに頭を振って溜息を吐くリアス先輩。そんな先輩だが、この話を一誠から聞いた当初は一誠をかなり強めに叱ったらしい。

 

 なんでも悪魔は聖なる気に弱く、教会などの神聖な場所に行ったり、聖水や十字架等の道具に触れると、効果が弱くても悪魔本人の強さにもよるが、軽い頭痛を感じたり触れた部分を軽く火傷したりするらしい。更に危険なのが天使や堕天使が持つ『光力(こうりょく)』という魔力の対となるエネルギーで、天使も堕天使もこの力で術を扱い、悪魔に深いダメージを与えてくるのだとか。

 

 その光力は祝福という形で人間にも扱えるように出来るらしく、光力を纏う武器を用いて戦う者達を『悪魔祓い(エクソシスト)』と呼ぶ。メイン武装は『光剣』と呼ばれる刀身が光力で形成された剣と『封魔銃』と言う光の弾を打ち出す銃の二つが有名らしい。

 

 これらの話を聞いてリアス先輩が怒るのも無理はないと思った。下手したら一誠はその教会で天使側の連中に消滅させられていたかもしれないのだから。

 

「さて、無駄話は終わり。準備ができたわ一誠。そこの魔方陣に立って」

 

「了解です部長!」

 

 元気の良い返事と共に一誠が嬉しそうにリアス先輩の指示に従う。何故か飼い主に構って貰えて喜ぶ犬の姿が浮んだ。

 

「さっきも言ったけど、今回は小猫の依頼がタブルブッキングしてしまった為、片方には一誠に行って貰って事情説明と共に願いを叶え、見合った対価を貰って来て貰うわ」

 

「ふふ。では一誠君、手を出してください」

 

 朱乃先輩が一誠の手に触れると、一誠の手の甲に部室にある魔方陣と同じ魔法陣が浮ぶ。

 

 悪魔にとって魔方陣は家紋のようなもので、眷属は全て例え外から見えなくても身体に大小の魔方陣が刻まれているらしく、魔力を扱う行為を行う時にも魔方陣は現れるらしい。

 

「OKですわ部長」

 

「これであなたもこの部室の魔方陣にいつでも転移できるようになったわ。魔方陣同士の転移は特殊でね。魔力の消費をかなり抑えられるし、眷属しか移動できない。それにこの魔方陣に刻印を刻めば刻んだ相手に何かあったときに光って知らせてくれる」

 

 おお随分と便利機能満載な魔方陣だ。

 

「白野は刻めないんですか?」

 

「私、というよりグレモリーの眷属である事が絶対条件だから、白野が使うには悪魔になるしかないわ。どう?」

 

「いや、流れで返事しませんから、そんな期待の籠もった顔をしないで下さい」

 

 あら残念。と、全然残念そうじゃない顔で笑うリアス先輩。相変わらずおちゃめな人だ。

 

「では一誠君。転移させますわね」

 

「は、はい!」

 

 緊張から声がうわずる一誠。大丈夫だろうか?

 

 そんな一誠の緊張の高まりと同じく、魔方陣の光は強くなりそして――一瞬で消えた。魔方陣の光の方が。

 

「え?」

 

「は?」

 

「あらら?」

 

「……あ、朱乃?」

 

 その場に居る全員が唖然とした表情で魔方陣と一誠を見詰め、しばらくして正気に戻ったリアス先輩が朱乃さんに声を掛ける。

 

 朱乃さんもその声に我に返って魔方陣を出してそれに触れながら、何かを確認するように目を動かし……困ったような笑みを浮かべた。

 

「え~と、その、誠に言い難いのですが。どうやら一誠君の魔力が少な過ぎて魔方陣が起動しないみたいです」

 

「「……は?」」

 

 自分と一誠の声が重なり、リアス先輩は驚きのあまり表情を固めてしまった。そして……。

 

 

 

「ちくしょぉぉおおおおおおお!!」

 

 一誠は真夜中の町を号泣しながらチャリを爆走させて依頼主の元へと向かった。

 そんな一誠を校門で見送った自分は、彼の背中に向けて自然と敬礼を取っていた。

 

 頑張れ一誠。史上初のチャリ通悪魔として、強く生きろ!!

 




「リバースカードオープン! 魔力不足を発動し、悪魔召喚を無効にする!!」

という訳で転移に失敗しましたとさ。原作読んだ時はマジで『えぇ?』ってなりましたよ。

ぶっちゃけるとこの回はアーシアというシスターの情報を白野が手に入れるためだけの回だったりする。

当初はアーシアと接触させる案もあったのですが……それだと一誠の覚醒フラグが折れると思い直して今回の形になりました。


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