岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】   作:雷鳥

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 と言うわけで三陣営会談編のエピローグです。次がこの話のエンディングにまります。



【夏が始まる】

「――てな訳で今後ともよろしくな、お前ら」

 

「よろしくね、みんな」

 

「よろしく頼む」

 

 会談襲撃事件から数日後のオカルト研究部の部室、そこにはなんとも言えない空気が広がっていた。

 

 原因その一であるスーツを着崩した堕天使総督のアザゼルは暢気にお茶を飲み、原因その二であるイリナとゼノヴィアは、何故か駒王学園の制服を着て羊羹を頬張っている……いや、なんだこの状況。

 

「えっと、話を纏めるとアザゼル総督はオカルト研究部の顧問と言う名目で僕達グレモリー眷属とシトリー眷属を鍛える。ゼノヴィア達はガブリエルさんと共に天使陣営からこの土地の守護としての任務の為に学生としてやってきた。ということですか?」

 

 さすがは祐斗、こんな時でも冷静だ。

 

 今の祐斗の言葉通り、三人はこの土地の守護として派遣されたらしい。まぁ歴史的な土地となった上に、そこに三陣営の関係者が暮らしているんだから当然の処置とも言える。

 

「その通りだ。今後は私とイリナ、そしてガブリエル様が姫島朱乃の神社で暮らす事になった」

 

 ゼノヴィアの発言を受けて朱乃に確認の視線を向けると、彼女は頷いて説明してくれた。

 

「私が暮らしていた神社は悪魔や堕天使も訪れることが出来ますから。他にも神社に勤める事で参拝者の信仰の一部を日本の神々に譲渡することを条件に、天使が常駐することを容認して貰ったそうですわ」

 

 なるほど。まぁその辺りは神様同士での取り決めなんかがあるのかもしれない。

 

「朱乃は良かったのか? 居候が増えるんだろ?」

 

「問題ありませんわ。私は今後、白野君の家に住みますから。あ、もちろんご両親の許可は貰っておりますわ♪」

 

 ……おやぁ聞いてないなぁ?

 

 おおかた父さん達が自分を驚かせようと黙っていたのだろう……まあ嫌じゃないからいいけど、心臓に悪いから止めて欲しい。

 

「まあそういう訳だ。基本この街の拠点として駒王学園を使うが、そこが使用できない場合は今言った神社を拠点とする」

 

 そう言ってアザゼルは次の話題に移る。

 

「さて、俺の方の説明を改めてするが、旧魔王派からルシファーとレヴィアタンの妹達、そしてその眷属が標的にされる可能性は非常に高い。となるとお前らオカ研と生徒会の連中の戦力強化は三陣営の今後の為にも必要不可欠な案件って訳だ。特にそっちの二人は扱いを間違えれば大惨事を引き起こしかねない代物だしな」

 

「うっ」

 

「あうう」

 

 アザゼルが一誠とギャスパー君の二人を順に指差しながら指摘する。指摘された二人は自分の現状をしっかり理解しているのか言葉を詰まらせて項垂れる。

 

 アザゼルの言い分は理解できる。それに魔力と光力を操り、神器に精通している彼以外にこの案件の適任者はいないだろう。

 

「てことで、改めてよろしくな。でだ白野、お前達は俺の管轄外だ。好きに――」

 

「いや、待ってくれアザゼルさん」

 

 アザゼルさんの言葉を遮る。自分の行動に周りのみんなが困惑した表情をさせる。

 

 その中で、家族全員で話し合って決めていた事を告げる。

 

「自分達も正式に『禍の団』討伐に加えて欲しい」

 

「……どういう風の吹き回しだ、あれだけ嫌がってたろ?」

 

 アザゼルの疑問ももっともだ。

 

「それでも、自分はあの戦いでヴァーリはもちろん魔術師達も沢山殺した。それだけの事をしたんだ、向こうも自分達を許すことは無いだろう。そう考えると自分達のグループだけが単独判断していては、みんなの足を引っ張ってしまうかもしれない。それにできれば情報をすぐに貰える立場で居た方がより生存率が上がる」

 

 そう。あの戦いに参加した時点で、自分達はもう狙われる側、つまり後戻りできない場所に立ってしまったと言っていい。ならば知らずに巻き込まれて慌てるよりは、覚悟を持って渦中に飛び込んだ方が冷静でいられると言うものだ。

 

「いいの白野?」

 

「はい。これは全員で決めた事です。もちろん朱乃にも話してあります」

 

 そう言って朱乃へと視線を向けると、彼女はその視線に答えるように微笑みながら頷いてくれた。

 

「そうか。ならお前らの戦力も当てにさせて貰うぜ。一応表向きは俺がヴァーリを殺したことにしてあるが、本格的に参戦するなら気をつけろよ。情報はどこから漏れるか分からないからな」

 

 アザゼルの忠告に頷いて答える。

 

「それで、訓練の方は基本的にどういう感じになるんですか?」

 

「基本は今迄どおり自由だ。そんでお前らの実力を測って課題を出す。それをこなしたらまた新しい課題をって感じだな。一応俺も教師の仕事や総督としての仕事があるから毎日は無理だが助言が欲しかったら俺が部室に顔を出した時にでも相談しにこい。もちろん白野達もな」

 

 祐斗が訓練の内容を尋ねると、アザゼルがそれに答える。やっぱりなんだかんだで面倒見がいいよなぁこの人。

 

 そんな事を考えていると、会話が途切れたのを見計らって一誠が質問した。

 

「そう言えば、その腕はどうしたんですか? 確か前の戦いで無くなったはずじゃ?」

 

 アザゼルの腕には一誠の言う通り新しい腕が生えていた。正直組織の長くらいになれば腕くらい生やしそうだからそこまで気にしていなかった。

 

「ん? ああこれか? 折角だから人工神器の研究を元に作った本物そっくりの義手だ。光力式レーザーにロケット砲、更にはロケットパンチも可能だ。しかも操作可能!」

 

 一誠の質問にアザゼルは子供のように目を輝かせて左腕をドリルに変形させて発射する。

 

 ドリルはキュイイインと言った嫌な回転音を発しながらしばらくアザゼルの頭上を飛び回り、それを見て自分と一誠は『おお!』と、年甲斐も無く感嘆の声を上げた。

 

 それに満足したのか、アザゼルは嬉しそうな笑顔で腕を元に戻す。敢えて言おう……カッコイイと!

 

「か、かっけえええ!」

 

「確かにカッコイイ」

 

「おお、この良さが分かるか兵藤一誠、いやイッセー! そして白野! 実は白野の義手もこんな感じにしたかったんだが、如何せん燃費が悪くてなぁ。白野だとすぐにオーラ不足になるから必要な機能だけに留める事になった」

 

「くっ、己のオーラ不足が憎い!」

 

 レーザーはともかくロケットパンチはちょっとやりたかった! リップパンチとかちょっと言いたかった!!

 

 悔しさのあまりその場に膝を付く。

 

「そ、そんなにかい?」

 

「いや、まあちょっと残念だけどそこまでじゃない。ノリでやっただけだ」

 

 祐斗が困惑気味に尋ねてきたので、そう返事してすぐに立ち上がる。

 

「ははは! お前は外面が無表情だが、意外とノリが良いから俺様は好きだぜ。さて、話が脱線したが、まぁそんな感じだ。それと悪魔の連中は夏休みになったらしばらく冥界で過ごす事になる。リアスは理由を知っているな?」

 

「ええ。名門、旧家、その手の若手悪魔が何名か集まって顔合わせを行うわ。まぁ一つの慣わしね」

 

 リアス先輩の説明にアザゼルが頷く。

 

「ああ。それとこれはまだ少し先の話だが、サーゼクスの提案で近々若手同士のレーティングゲームが執り行われるって話だ」

 

「テロがあったばかりなのにですかぁ!」

 

 ギャスパー君が驚きの声を上げると、アザゼルが理由を説明してくれた。

 

「当然だろ。むしろ現状じゃ『死なずに戦闘経験を積める場』なんだぞ? やらなきゃ損ってもんだ。それに……」

 

 そこで一度言葉を切ったアザゼルはお茶を飲んで喉を潤してから愉快そうに笑った。

 

「俺はレーティングゲームは今回みたいなのを想定して作られたシステムなんじゃないかと考えている。状況把握、多人数相手の対処、各種族の能力への対応、どれも戦争じゃ知っておくべきスキルだ。しかも大衆の娯楽になって金にもなる。ホント、抜け目ねぇぜサーゼクスは」

 

 アザゼルはそう言って笑いながら肩を竦めて見せる。にしても、冥界で行われるレーティングゲームかぁ、自分は参加できないな。

 

 基本的に冥界は人間が行っていい場所じゃない。場所が場所なら瘴気に当てられて死んでしまう場所もあるらしい。まぁ、黒歌が言うには大きな街なら人間界とさほど変わらないとは言っていた……それでいいのか悪魔よ。

 

「そう言えばお前らにもう一つ伝えておく事があったな。近々冥界天界で新しい特撮アニメが始まる」

 

「特撮アニメ、ですか?」

 

 首を傾げる小猫ちゃんにアザゼルが頷き説明する。

 

「冥界で『サタンレンジャー』っつぅ特撮アニメがやっていたのはリアス達なら知っているな? あれの後番組として、そしてより三陣営の結束を高める目的で色々な種族が入り混じった新たな戦隊ヒーロー物が始まるんだよ。俺とセラフォルー、あと天使陣営から一人来て三人で脚本と演出、撮影の指揮を執る。まかせろ! 面白いもんにしてやるからよ!」

 

 いい笑顔をするアザゼルに一抹の不安を抱えながら、自分達は夏休みを迎えようとしていた。

 




ドライグ「この世界には乳龍帝はいないんですねヤッター!!」

作者「戦隊の一人としているし、一誠はおっぱいで強くなるけどね(笑)」

ドライグ「うわああ俺を一人にしないでくれ白いの! 白いのぉぉおおお!!(絶望)」

アルビオン(霊界)「頑張れドライグ、超頑張れ!!」


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