岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】   作:雷鳥

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【赤龍帝VS白龍皇】

「なんでテメェなんかに俺の大事な親父とお袋を! アーシアや白野を殺されなきゃなんねぇんだよ!!」

 

 一誠がブースターを噴かして一気にヴァーリまで肉薄する。

 

「凄いな怒りで力がいっきに上がったぞ!」

 

 一誠の力が上がったことが嬉しいのか、愉快そうに笑うヴァーリに、宝玉が光って答えた。

 

『神器は単純で強い思いほど力の糧とする。それに真っ直ぐな者ほどドラゴンの力を引き出しやすい』

 

「なるほど。そういう意味では兵藤一誠の方がドラゴンとの相性が良い訳か!」

 

 怒りで強くなった一誠にヴァーリはその口を凶悪に歪めフェイスを閉じて空へと上がる。

 

「……今の一誠君に勝てるの?」

 

「イッセー君にはアスカロンがあるわ。でも……」

 

「アスカロン? 確かドラゴンスレイヤーで有名な剣だったか?」

 

 隣に立ったイリナから気になる単語が聞こえたので尋ね返す。

 

「ええそうよ。ミカエル様から友好の証としてイッセー君、正確には悪魔や竜属性の者でも扱えるように調整したのを少し前に渡したの。今は確か『赤龍帝の籠手』に収納されている筈よ」

 

 イリナの説明を聞きながら空を見上げていると、一誠の左の籠手から刀身だけが現れ、一誠はそれをがむしゃらに振るう。

 

 ……あれがアスカロンか。だが……。

 

「お前だけは絶対に許さねぇ! ヴァーリィィイイ!!」

 

「せっかくの龍殺しも当たらなければ意味は無い!」

 

 一誠の単調で大振りの一撃は悉く回避され、ついにヴァーリの一撃を一誠が受けてしまう。

 

「まずい。これで一誠君の力は半減されてしまう」

 

「赤龍帝の鎧は確か倍化能力を好きに発動できるんだったか……だがその分魔力と体力を減らすはず。このままだとまずいな」

 

 それに……。

 

「……友人を馬鹿にされ、その両親を殺すなんて言ったんだ……口にした責任は取って貰うぞヴァーリ」

 

 何よりヴァーリは完全に遊んでる。相手をなめて戦っている。片や一誠は絶対に倒すという意思を持って戦ってる。

 

 その差が、お前追い詰めると知れ。

 

「自分達がすべきなのは一誠の頑張りを無駄にしないことだ。だからみんな……協力してくれ」

 

 振り返ってその場にいる全員に協力を願い出る。全員が自分と一誠を交互に見て、力強く頷いてくれた。

 

 

◆ 

 

 

 くっそぉ、当たらねぇ!!

 

 一撃、一撃だけは絶対にかまさないと気がすまないのに――その一撃が遠い。

 

Divide(ディバイド)

 

『Boost』

 

 減った力を即座に戻す。

 

 しかし奴には減らした力を自分の物にする力があり、更に上限を超える力は背中の光る羽から排出し、調整している。つまりは奴は常に最高の状態を維持できるって事だ。

 

(相棒。このままだとスタミナ切れで負ける。アスカロンは収納して龍殺しの特性を拳に宿せ)

 

(ああ分かった! それと一つ、作戦も浮かんだ)

 

「単調な攻撃と動きだ。それに力の使い方も下手だ。期待外れだな」

 

 ああそうさ。今の俺にできることなんて……それだけなんだよ!

 

 俺は一気にブースターを噴射してヴァーリへと向かう。もう何度も行ってきた行動だ。

 

 ヴァーリは魔弾をいくつも作り出してこちらに向かって放ち続ける。

 

 ――構うもんかよ!!

 

 ブースターを吹かし続けて魔弾を受けながらも加速を続ける。

 

 鎧のあちこちが割れ、肉体に重い衝撃と痛みが走るが無視する。そんな事よりアイツを一発ぶん殴る方が大事だからな!

 

「うおおおおおおお!!」

 

「またただの突貫か。君は本当につまらないな」

 

 ヴァーリが前面にシールドを展開する。それを待ってたんだよ!

 

 回避ではなく防御を選択したヴァーリ目掛けて俺は突っ込み、左手に宿るアスカロンの龍殺しの力を『譲渡』で一気に上昇させる。

 

 そしてそのままシールドに左腕を殴りつける。

 

「なっがっ!?」

 

 シールドは一瞬で砕け、奴が驚いている隙に奴の顔面にそのまま左腕を叩き付ける。

 

 ヴァーリにも予想外だったのか、奴は回避する間もなく兜とフェイスの一部が破壊される。

 

 ここだ!

 

 そして奴の体勢がくずれた瞬間を狙って俺は奴の神器に触れる。

 

「便利な力だな! 強化してやるよ!!」

 

 俺は一気に倍加の能力を使ってその蓄えた力を奴の神器に『譲渡』する。

 

 そしてすぐに離れて倍加の力で自分の力をいっきに最高までもって行く。そして、その時は訪れた。

 

『Divide』

 

「ぐあああああ!?」

 

 一気に俺から力が抜けると同時にヴァーリが初めて悲鳴を上げた。

 

 はっ。ざまぁみろ!

 

 俺は口に改心の笑みを浮かべる。

 

 奴の神器の能力は言ってしまえば吸い取る力と吐き出す力がセットになっている。その力の一方を強化すればどうなるかは……見ての通りだ。

 

 既に自分の力の上限に達していたヴァーリは、俺の力を極限まで奪って過剰すぎる強化が行われた。にも拘らず排出する力は変わらない為に過剰な力の摂取で神器が異常を起こしたという訳だ。

 

 その異常事態にヴァーリの鎧の宝玉が赤や青と言った色々な色に点滅し、奴の動きが止まる。

 

 ここで行くしかねぇ!

 

 俺はすぐに自分の力を倍加で最高値にまで戻して動きを止めたヴァーリに突貫する。

 

『まずいヴァーリ! 体勢を立て直せ!』

 

 アルビオンの叫びにヴァーリが咄嗟に腕をクロスさせて俺の攻撃を迎え撃つ。だが俺はその腕目掛けて拳を振り下ろす!

 

「おらあああ!」

 

「ぐあ!?」

 

 右拳で奴のガードを崩し、すぐさま奴の腹部に空いている方の左拳、つまり龍殺しの宿った方で殴り飛ばす。

 

 奴の白い鎧が全て破壊されてそのまま俺の拳は奴の鳩尾に深く突き刺さる。龍殺しの威力に驚嘆するが、すぐに左腕を引いて、よろける奴の顔面目掛けて全力の左ストレートをおみまいする。

 

「がっはっ!?」

 

 奴はそのまま吹き飛ばされて地面に激突する。

 

 とりあえず親父とお袋、そしてアーシアと白野を狙った分の怒りは叩き返してやった。

 

『代わりにかなりの力を消耗したがな。もう限界まじかだ』

 

 ドライグが警告してくる。

 

(分かってる。きっちり弱らせるさ。そしたらあとはみんながなんとかしてくれる)

 

 他力本願もいいところだが、今の俺がこいつに勝てるなんて思わない。だが引いてやるつもりも無い。俺が負けても『俺達』が勝てばそれでいいんだからな!

 

 それでもムカつくコイツに負けるのはやっぱり悔しいから力の限り粘らせてもらうつもりだ。

 

「……ハハハ! 俺の神器を吹き飛ばすとは、やれば出来るじゃないか。なるほど。その機転の良さは戦わなければ分からなかった。君の実力を少しは認めよう」

 

 立ち上がったヴァーリは、口の端から血を流しながらもこの戦いが思いの他楽しめていることが嬉しいのか、好戦的な笑みを浮かべて俺を称えやがった。こいつ本当になんなんだよ。

 

 戦闘狂の思考についていけずに眉を顰めると、奴は砕けたはずの鎧を纏う。

 

(おいドライグどういうことだ!?)

 

(所有者が死なない限り神器は再生される。勿論神器の力で生み出されたあの鎧もしかりだ。しかしこれはまずいな。本格的に時間が足りない)

 

 ドライグの声にも焦りの声が混じる。くそ、またアイツに殴られたら力を半減させられちまう。

 

 どう対処すべきか悩んでいたその時、足元の青い宝玉に目が留まる。

 

 ……これしかない!

 

 俺はその宝玉を手に取る。

 

(どうした相棒、アルビオンの宝玉なんて手にとって?)

 

(なあドライグ、神器は宿主の思いを糧に進化するんだよな……だったら)

 

 俺は自分のイメージをドライグに伝える。

 

(っ!? 正気か相棒……確かにこの方法が成功すれば現状を打破できるかもしれないが……死ぬかもしれないぞ?)

 

(……死ぬつもりなんてねぇよ。でもよぉ、死ぬ気にならなきゃ届かないってんなら覚悟くらい決めてやるさ!)

 

 白野がそうやって俺達を助けてくれたように!

 

(は、ハハハハハハハ! 良い覚悟だ! いいだろう俺も覚悟を決めた! 共に生きて超えようじゃないか相棒! いや、兵藤一誠!!)

 

 初めて、ドライグが俺の名前を呼んでくれた。それはつまり、ようやく心から俺を相棒と認めてくれたってことなのかもしれない。

 

 それが嬉しくて、俺の心が更に燃え上がった。

 

(ああ超えてやろうぜ相棒!!)

 

「ヴァーリ、アルビオン! お前達の力、頂くぜ!」

 

「何?」

 

 俺は右手の宝玉を破壊する。そしてそこにアルビオンの宝玉を填め込む。

 

 瞬間、激痛が体中を駆け巡った。

 


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