岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】 作:雷鳥
ようやくオカルト研究部と接触はっぱり予想していたより話数が行った(予定では四話だったんだけどなぁ)
「白野いるか!!」
「その声は一誠か? 挨拶も無しに――!?」
夜もいい時間に突然一誠が息を切らせて我が家にやって来た。
一誠はデートの翌日体調を崩したとかで学園を休んでいた。そして今日来た一誠は――背中に半透明の悪魔の羽を生やしていた。
「実は――」
「ちょっと上がれ!」
慌てて一誠を家に上げて部屋に連れて行く。部屋に入ると黒歌が険しい表情をしていた。多分気配を察知して警戒していたのだろう。
「単刀直入に訊く。一誠、お前ここ数日で何があった」
「――その前に白野、俺もお前に聞きたい事がある……夕麻ちゃんを覚えてるか?」
「お前の彼女だろ? それよ――」
「お前は覚えてるんだな!!」
一誠が突然こちらの両肩を掴み、何処か救いを求めるような真剣な表情で詰め寄る。
「いや覚えてるって、そんな忘れっぽくはないぞ。携帯にも残ってる……ほら」
自分の携帯を取り出して以前一誠に貰った画像を見せる。すると一誠は食い入るようにその画像を見詰め、盛大に溜息を吐いた。
「はぁあ~……良かった。やっぱり夕麻ちゃんは居たんだ」
「……本当に何があったんだ一誠? 順に教えてくれ」
「あ、ああ。実はよう……」
一誠はあのデートの日、夕麻ちゃんと確かにデートしたらしい。そしてその後の事を話そうとすると前置きに『夢だと思うんだけど』と言って続きを語った。
「実はその、デートの最後に夕麻ちゃんがなんかこう、急に雰囲気変わったと思ったら、際どい衣装の綺麗なお姉様に変身して、背中から黒い色の天使? みたいな翼を出して、それで光の槍? みないなのに刺されて、ああ俺死んだ。って思ったら、そこにリアス・グレモリー先輩が現れて……って何言ってんだか。ワリィ、やっぱこの辺は夢だから気にしないでくれ」
ありえないとばかりに頭を振って一誠はそこで一度話を切って溜息を吐く。
その間に一度『先日の堕天使の仕業か?』という表情で黒歌に視線を向けると、黒歌もこちらの意図を理解してくれたのか、険しい表情で頷く。
「と、とにかくそんな夢を見た翌日体調が悪くて休んだんだ。今日も身体がだるかったんだけど、夜になったら昨日よりは楽だったから両親に夕麻ちゃんの事を訊いたら、二人共そんな娘知らないって言うんだ。俺の携帯の彼女のメアドや電話番号、写真も消えてて。番号は覚えていたから直に掛けたんだけど通話不能で……それで直接会ってる松田と元浜に連絡したら二人も『知らない。お得意の妄想か』って笑われて、それで次に写真を持ってる白野の所に来たんだ」
一誠はもう訳が分からないといった表情で俯く。
彼女の存在が無かった事にされている? いや、無かった事にしたが、正しいのか。それに一誠の話で出てきたグレモリー先輩……そして一誠の翼の件。
黒歌が以前言っていた悪魔が力ある者を悪魔に転生させているという話を思い出す。
この答えを得る方法は一つしかない。が、そんな性急に動いてもいいものだろうか?
仮にグレモリー先輩が一誠を生き返らせたとして、何故放置した?
「……悩んでも仕方ないか。一誠、とりあえず明日は学園には行けそうか?」
「あ、ああ。でも夕麻ちゃんの事はどうするんだ?」
「きっと彼女なら全ての答えを知っているはずだ」
「彼女?」
「ああ。リアス・グレモリー先輩だ」
一誠と共に学園に登校した自分は、先に教室に来ていた祐斗の席へと一誠と一緒に向かう。
「やあおはよう二人共。どうしたんだい、いつもと雰囲気が違うけど?」
「祐斗……放課後一誠をオカルト部に案内してあげてくれないか?」
「随分急だね。本当にどうしたんだい白野君?」
祐斗の様子を伺うと、本当に驚いていると言うか、困惑している感じだった。もしかしてグレモリー先輩は一誠の件をまだ祐斗には話していないのかもしれない。
「オカルト部に相応しい話を一誠が体験してさ。なんでも黒い翼の女に殺されたり生き返してもらったり、特定の人物の記憶を消されたりといったものらしい」
「――っ!?」
祐斗が驚いたように目を見開く。なんというか、一誠もそうだが祐斗も大分解かりやすい性格をしていると思う。まぁ人の事言えないけど。
「オカルトじみてて普通の人には話し難くてな。そういうのに詳しそうな人に話を聞いて欲しいんだ……頼む」
頭を下げて頼み込むと、慌てて一誠が間に入る。
「お、おい白野。何も頭を下げなくても」
「……分かった、連絡を入れておくよ。だから頭を上げて白野君。君にそんなことをされたら僕は困ってしまうよ」
苦笑しながらいつもの気遣いのある口調で祐斗に促されて頭を上げる。
「ありがとう。一誠、放課後祐斗が迎えに行くから教室にいてくれ」
「あ、ああ。それで夕麻ちゃんの事が分かるんだったら何時間だって待ってやるぜ!」
拳を握って無駄に力強く叫んでクラスに戻る一誠を見送る。そして祐斗が小声でこちらに尋ねてきた。
「白野君は来ないのかい?」
「自分はいいよ。正直困っている一誠に何かしてやりたかっただけだし」
言葉に嘘は無い。実際一誠が心配だから少し性急に接触したわけだし。ただ自分という存在が逆に場を乱してしまうかもしれない可能性もある。それに黒歌にも警告されているから出来る限り避けられるなら避けたい。
ま、祐斗がいれば大抵の事はなんとかなるから、自分がいなくても大丈夫だろう。
そう思っていた時期が、自分にもありましたよっと。
放課後。三人で旧校舎へと向かう……何故だ!?
「なあ? なんで自分も?」
祐斗に理由を尋ねると苦笑しながら答えてくれた。なんでも一誠の話をしたらグレモリー先輩に一緒に連れて来て欲しいと頼まれたんだそうだ。
「それにしてもオカルト部って旧校舎にあるんだな。そう言えば偶に旧校舎の二階の窓から先輩を見かけてたなぁ」
一誠がそう言いながら物珍しそうに校舎内を見回して付いて来る。夕麻ちゃんの事はいいのだろうか?
それにしても外観はともかく、建物内は綺麗だ。
外観は古い印象を受ける様相だったが、木造二階建ての旧校舎の校内は綺麗に掃除されていて蜘蛛の巣も窓枠や壁の端にも堪った埃も無い。まるでここだけ別の空間のようだった。
祐斗の後に続いて二階に上がり、更に二階の奥の教室へと向かう。そして目的の場所に着いたのか、祐斗が足を止めた。
「ここが普段僕らが活動している拠点、『オカルト研究部』だ」
確かに教室のプレイートには『オカルト研究部』と書かれていた。
「リアス・グレモリー先輩がオカルト部に所属しているって噂、マジだったんだな」
一誠がありえないと言った感じに呟く。
確かに普段の彼女、というかグレモリー先輩も含め祐斗も朱乃先輩も想像つかない。まぁ悪魔だからきっと色々事情があるのだろう。
一誠と一緒にプレートを眺めている間に祐斗が扉をノックし、中からグレモリー先輩が答え、まず祐斗が、続いて自分と一誠が入室する。
「な、なんじゃこりゃ!?」
一誠が驚くのも無理はない。なんせ壁や床に見知らぬ文字がいくつも描かれ、部屋の中央には巨大な魔法陣が描かれていたのだから。
これ事情を知らなかったら危ない集団一歩手前な気がする。
自宅ならともかく公共の施設にこんな事したら普通に犯罪である。
部屋の奥には本棚とテーブルを囲うように豪華そうなソファーが幾つか配置され、仕事用かデスクも複数置かれていた。そのソファーには朱乃先輩の他に銀髪でショートカットの小柄な女の子が座っていた。
「あ、あれは一年の
「知っているのか一誠!」
「おう。ってなんで知らないんだよ一年じゃ有名だろ! 寡黙で無表情のクールビューティーでありながら、その愛らしい外見から一部の男子と大多数の女子生徒から可愛いと評判のマスコット系後輩! それが塔城小猫ちゃんだ!」
拳を握って力説する一誠。塔城さんはそんな一誠を一瞥すると特に何も言わずに視線を食べていた羊羹に戻して食事を再開した。なるほど確かにクールだ。が、個人的にはそこではなく彼女の背中の頭とお尻から出ている半透明の悪魔の羽と白い猫耳と二又の尻尾が気になる。多分黒歌と同じ猫又の妖で、後から悪魔に転生したのだろう。もしくはハーフか。
「部長。連れてきました。僕の右手側にいるのが兵藤一誠君です。白野君の紹介は不要ですよね?」
そしてこちらのやり取りをスルーして、祐斗が正面の上座のソファーに足を組んで座るグレモリー先輩へ話し掛ける。
「ええ、ありがとう祐斗。さて、はじめまして兵藤一誠君」
「えっあっ、は、はじめまして兵藤一誠です! あ、あの俺――」
「落ち着け一誠。ほれ、深呼吸」
「あ、ああ。す~~はぁ~~」
ここに来て早く夕麻ちゃんについて知りたいという思いから、焦ってしどろもどろになる一誠を落ち着かせる。
「白野の言う通りよ。焦らないでもちゃんと答えてあげるから。そしてその為に、まずは伝えておくわ……私達は悪魔なの。そして……あなたも」
グレモリー先輩が立ち上がり悪魔の翼を広げる。すると他のみんなも立ち上がって一斉に翼を広げ、そして一誠の翼も呼応するように広げられた。
なるほど。本物の翼が広げられると半透明の方は消えるのか。黒歌も耳と尻尾を出すと半透明の方は消える。もっとも翼の方は逆に半透明のままだった……二重に視えると邪魔だから消えるのだろうか?
一部の者の半透明の部分には触れずにそんな事を考える。きっと事情があるのだろうから自分からは追求しないつもりだ。
「え、えええぇぇぇーー!?」
新たな発見と情報に心の中で頷く自分の横で、一誠が今日一番の驚愕の悲鳴を上げた。
原作では一誠が死んでから数日経ってますが、この作品では死んでからせいぜい二日、三日程度ですね。ですので二度目の堕天使との遭遇は無くなります。