岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】 作:雷鳥
訓練はまだまだ続きます!
放課後の訓練も三日目だ。今日は冥界から帰ってきたリアス先輩も見学している。
ギャスパー君にいつものように神器で時間を止めてもらっていると元士郎がやって来た。
「よぉ! やってるな白野」
「珍しいな、元士郎がこっちに来るなんて。何か用事か?」
「いや、花壇の水やりのついでに噂の新しい眷属を見に来たんだよ。で、どの子?」
元士郎が興味心身と言った感じに視線を巡らせる。とりあえず急な元士郎の登場で一目散に木の陰に隠れてこちらを伺うギャスパー君を指差す。
「あの子だけど」
「うおおおマジか! すっげぇ美少女じゃん!」
「ヒイイィィ!」
慌ててギャスパー君が顔を引っ込めて木の陰に隠れる。
「あ、あれ? 俺ってそんな悲鳴を上げられるような事した?」
「あのな匙……」
傍で筋トレしつつ自分達の様子を見守っていた一誠が哀れむような表情で匙の肩に手を置き、ギャスパー君の事情を説明する。もちろん男で女装癖がある事も含めてだ。
その事実を知った瞬間、元士郎は物凄く肩を落として落胆した。
「マジかよ。つーかなんで見せもしないのに女装してんだよ。ちくしょう、可愛い分余計に悔しいぜ!」
「分かる。分かるぞ匙! 俺なんてあまりのショックにその場で号泣したんだ!」
元士郎と一誠が互いに力強く握手して男の友情を深めていると、不意に強い気配がしてそちらに振り返る。
「――っ!? アザゼルさん!?」
「「え!?」」
「おう。やってるねー少年少女! う~んおじさんも青春時代が懐かしいぜ」
そう言って笑いながら現れたのはアザゼルだった。というか毎回思うがなんでこの人はこうも堂々と敵陣に現れるんだろう。ネタか? 持ちネタなのか?
突然現れた堕天使の長にこの場にいる全員が警戒する。一誠や元士郎も神器を出して備えている。
「……堕天使の総督がいったい何の用?」
リアス先輩が警戒しながら尋ねると、アザゼルは気にした様子もなく答える。
「ま、今度の会談がこの学園に本決まりしたからな。下見ついでにうちのヴァーリが勝手に接触した挙句に軽く挑発したって聞いたからその侘びにな。悪かったなグレモリーの穣ちゃん、アイツはまぁ正直変な奴だが、それでも三陣営の会談前に問題を起こすような馬鹿じゃないから許してやってくれ」
そう言って軽く謝罪するアザゼル。その顔はどことなく問題児を抱えるお父さんや先生のように見えなくもなかった。
「にしても良い感じに神器持ちが沢山いるじゃねーか。おい! そこの吸血鬼」
「はうっ!?」
アザゼルが木の後ろから顔を出してこちらを伺っていたギャスパー君を指差す。
「お前の『停止世界の邪眼』だが、制御できなきゃただの害悪にしかならない神器だ。五感から発動するタイプは本人のキャパシティーが足りないと勝手に発動するからな」
アザゼルの言葉にギャスパー君がその場で蹲って地面にのの字を書き始める。おいこら、折角人が持ち上げた自信を下げるんじゃない。
「因みにアザゼルさん、五感、特に視界を介する神器の場合、魔眼封じとかは有効でしょうか?」
「有効な場合もあるが『停止世界の邪眼』程の物となると難しいかもな。それだったら神器を直接制御する装置を着けちまった方が良い場合もある。ただ悪魔は神器の研究は殆ど進んでいないからまず持ってないだろうな」
唐突な質問だったが、アザゼルは気にした様子もなく答えてくれた。しかし、予想はしていたが悪魔は神器の研究を殆どしていないのか。
「……まあ、転生させるなら『能力があった方が良い』と言うのが悪魔の方針だろうから仕方ないか。となるとやっぱい神器を抜き出す技術のある堕天使の方が神器に関してはかなり詳しそうだな」
「お、興味があるか? 俺もお前の神器には興味があるぜ。なんせ俺が今まで見たことのない神器だ。しかもその能力は魔道具を収納し、その能力を収得するなんていう破格の力だ。興味深いぜ」
ここぞとばかりに勧誘してくるアザゼルに肩を竦めて首を横に振って断る。
「今は大事な後輩の面倒を見ないといけないので断らせてもらいます」
「そいつは残念。さて、ついでだからお前ら二人の神器についても軽くレクチャーしてやるよ」
そう言ってアザゼルは嬉々として元士郎と一誠の元に向かい、神器の講義を始めた。二人はかなり戸惑っていたが、話自体には興味があるのか大人しく話を聞いているみたいだ。
それを見届けたあと、アザゼルを監視するように眺めていたリアス先輩の元に向かう。
「ところでリアス先輩、頼んでいた件はどうなりました?」
「一応一つだけ眼鏡タイプの魔眼封じがあったから持ってきたけど、正直さっきのアザゼルの説明を考えるとちゃんと機能するかは判らないわね」
そう言ってリアス先輩が取り出したのは深紅のフレームの眼鏡だった。見た感じ度は入っていない。
とりあえずギャスパー君につけて貰おう。
「ギャスパー君、これを掛けてみてくれるか?」
「は、はい」
傍にきて貰った彼に眼鏡を掛けて貰い、その状態で訓練をしてもらった。
結果から言えば……ダメだった。やはり神器その物を制御するしかないみたいだな。
因みに自分の浄眼には作用した為、浄眼が暴走した時の為に貸して貰えないかダメもとで尋ねると、使っていないからと普通に譲ってくれた。
さっそく帰ったら解析の魔術で調べよう。物質化制御でいつでも作れるようになれば本体が壊れても一時的に代用可能だし、眼鏡に宿る魔眼封じの魔術術式を解析すれば魔眼効果低下か封印のコードキャストを組む事も出来そうだ。
内心で新しいコードキャストの獲得に胸を躍らせていると、アザゼルから助言を受けた元士郎がやってきて訓練への協力を申し出てくれた。
なんでも元士郎は先程まで自身の神器である『
さらに本人側のラインを別の人物に繋げる事で吸い取った力を送る事も出来るんだとか。やはり神器は色々試して自身でどのような使い方ができるかを考え続ける必要があるみたいだ。
因みにアザゼルは木場の聖魔剣が本命だったらしく、いないと知ると二人のレクチャーを終えるとさっさと帰ってしまった。
そんな訳で元士郎にギャスパー君の『停止時間の邪眼』のエネルギーを吸い取って貰いながら訓練を再開した。
結論から言えばかなりマシになった。失敗回数が大幅に減り、停止ミスも減った。
それを踏まえて後半は難易度を上げる事にした。今まで動かなかったボールを今度は動いた状態で止めるというものだ。
その場でボールを地面に軽く叩きつけて跳ねさせる。最初はドリブルとかギャスパー君に向かって投げるとかも考えたが、停止ミスや停止に成功しても急に動いたりで突き指したりしたら危ないのでその場で跳ねさせる事にした。
新しい訓練に入ると途端に失敗回数が増えた。やはり固定した状態と、動かした状態ではだいぶ差があるみたいだ。
「ううう。全然上手く行きませんでした」
「まだまだ初日だ、気にするな。大事なのは使ったかどうかを確認できるようになる事だからな。それでどうかな? 少しは何か感じるようになったかい?」
「……そう言えば、匙先輩に力を吸ってもらっていた時は、少しだけ何かを感じていたかもです」
力を吸われていた時か……案外そのあたりにヒントがあるのかもしれないな。
「あとは月野先輩が考えてくれた発動キーを言うと発動しやすいってこと以外は……」
「そっか。まぁ気にするな。むしろ三日でこれだけ進めたんだから順調だよ。これからも一緒に頑張ろうな」
「は、はい!」
嬉しそうに笑うギャスパー君。その笑顔を見た匙が悔し気な表情をし、拳を握って振るわせながら呟いた。
「くっそ可愛い。だが男だ」
それに続けとばかりに一誠も同じ表情と格好で呟いた。
「くっそ神様はやっぱり敵なんだ!」
……気持ちは少し分かる。なんというか普段泣き顔が多いせいか、偶に見せるはにかんだ笑顔の破壊力が凄いのだ。
そう考えるとギャスパー君はリップにも似ているのかもな。卑屈な癖に自分の要望はきっちり言ったり、一部の者にイジメられたり、嬉しそうに笑うとこっちも嬉しくなったり……きっと普通に悪魔の仕事をしてたら男女から大人気だったのではないだろうか?
そんな事を考えながら、今日の訓練を終えて帰宅した。
ちゃっかり魔眼封じの礼装をゲットしたハクノン。そしてコードキャストを修得。ふふふ、これで魔眼の類も怖くないぜ。性能にするとだいたいこんな感じかな↓
礼装『魔眼封じの紅眼鏡』
解説:自他関係なく魔眼による呪いや効果を遮断する眼鏡。少し控え目な深い紅色がチャームポイント。
スキル名:《eye wear》
効果:魔眼への耐性を付加するバフ系スキル。ただし付加された耐性以上の能力を防ぐのは不可能。
物資化による性能:解説通りに魔眼の効果を遮断する。ただし眼鏡の性能以上の物は防げない。
まあ大体イメージとしてはこんな感じでしょうか。本当に登場させる場合はもう少し練ってから使わせます。